迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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集うべきは何↑処↓ぞ 集うべきは何↑処↓ぞ

どっかでTONが哭いてゐる

いえいえ

あれはさうぢゃない 甲高き声が聞こえやせぬか

闇より黒き鋏で以て 切り取られしがBBぢゃ

ねっとの海にほもが舞ひぬ 羽より軽き りてらしぃ

何↑処↓へ行こうか行くまいか 誰も聞かぬし応えんし

集えと指差す屋敷の破風に ゴー、ゴッ、ゴー!!


正岡子規 (一八六七〜一九○二)



第34話 野獣邸集うべし

リンがホロウに落ちてしまったあと、彼女と合流できたのは六課の星見雅ただ一人だった。

 

通信機も不調のなか、即席コンビながら互いの得意分野を活かしてホロウを脱出せんと協力する二人には奇妙な友情が芽生え始めていた。

 

そんななか、突如雅の持つ妖刀・無尾が暴走。

 

制御装置たる鞘に二人がかりでなんとか押し込んだまではよかったが、慣れない作業に加えてエーテル適応体質ではないのにホロウ内で長時間滞在した結果、致死量のエーテルに暴露したリンは昏睡状態に陥ってしまう。

 

リンが決死の覚悟で弾き出した脱出ルートを、彼女を抱えたまま星見雅が大立ち回りを演じながら脱出した数十分後…。

 

 

「あかんこれじゃ患者が死ぬゥ!」「生き返れ生き返れ」

対ホロウ六課・邪兎屋・カリュドーンの子・迫真空手による決死の救命隊(生かせ隊)の括約により、なんとかリンは一命をとりとめた。

 

急速なエーテル浸蝕による痺れが徐々に抜けていき、耳慣れた声がゆっくりと聞こえてくるようになった。

 

 

「どうだ…。起きたか。…おお!店長が目を開けたぜ!」「『おお』じゃないが。」「これは『おお』だろ。」

 

光を取り戻したリンの視界には、顔を真っ青にしてこちらを見つめる肉親の姿があった。

 

「やっと起きてくれた…。気分はどうだ?痛みは?」

 

「うう。鳩尾とほっぺがひりひりする。」

 

「ああ、心肺蘇生措置をしたからね。みんな、君を助けるために必死で救助してくれたんだ。」

 

「安心してくださいプロキシ。昨今の世相もありますからね。女性相手にAEDなんて使いませんよ。」

「そうだよ。俺らは敵襲の警戒に専念したゾ。」

「女の子同士で助け合うのは常識ってそれ一番言われてるから。」

 

「あんたらの醜聞はもはや癌の特効薬か世界平和でも作り出さないと取り消せないと思うけど、それでもありがとう。助かったよ。」

 

 

六課によるリンの連行は一時保留となり、当初の予定通りすべてが明らかになるまでは共同戦線を張ることで見解の一致を見た。

 

目下の目標は、襲撃者によって連れ去られたパールマンの確保である。

 

本来なら今すぐ全員で捜索に入りたいところだったが、ホロウ探査の要であるリンが重体から脱したばかりなこともあり、いったん切り上げて二手に分かれることとなった。

 

Fairyの交差分析の結果、パールマンと思しき生体反応が検出されたバレエツインズのホロウ探索を請け負うのは、対ホロウ六課と木村と三浦。

 

郊外からリンを病院に送り届けるのは邪兎屋と野獣の役目となった。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

数時間後。RandomPlay店内。

 

 

 

 

 

「バレエツインズか。たしかに、飛行船ハイジャックのときもあのビルで正体不明の武装集団に襲われた…何か関係があるのか?」

 

「うん…あの時はヴィジョンの裁判をご破算にしようと動いてたけど、今回だって証人のパールマンを狙ってきてる。やっぱ同じ動機なのかな?

背後にブリンガーがいる筋は通るけど…でも、どうしてわざわざパールマンを生かしてるんだろ?ちょっと怖い話になるけどさ…。」

 

と、今までの行動に疑問を感じるリン。

 

「そうですねえ。黒幕の目的がヴィジョンのスキャンダルを葬ることなら、パールマンが死んでくれたほうがよっぽど都合がいいってはっきりわかんだね。」

 

「スケープゴート以外でパールマンを生かすメリットが奴らにはあるのか…?例えば何かしらのオトリとか…。」

 

 

 

 

 

 

アキラの予測は的中していた。

 

同時刻、彼らがバレエツインズのホロウを探索する様子をポッチャマ・ボンプを介してFairyは観測していた。

 

拘束されていた武装集団を鮮やかな手際で蹴散らし、パールマンを確保した六課であるが、脱出ルートであるホロウの裂け目で予想外の相手と対面することとなる。

 

 

 

 

「これはこれは…本当に予想外の邂逅だ!」

 

そこにいたのは部下達とサラを引き連れたブリンガー長官であった。

 

「パールマン!ヴィジョン・コーポレーション事件の黒幕め!

司法府の飛行船を乗っ取り郊外に逃げたかと思えば、選挙のデリケートな時期に乗じてこの街に戻ってくるとはな。

よほど治安局に捕まりたいとみえる!

それと....H.A.N.D.所属、対ホロウ六課の執行官達か。

重大な被疑者であるパールマンと共に現れたということは、やつのホロウへの出入りを幇助していた可能性もあるな。」

 

したり顔で彼らを見据えるブリンガー。すべては、彼らの罠だったのだ。

 

「ヤヌス区治安総局副総監の名において....治安総局で、じっくり話を聞かせてもらえるかね....?」

 

 

 

ブリンガーがそう言って片手で合図を送ると、背後に控えた治安官たちが銃を構えてこちらへ向ける。

 

「星見雅課長。君は重要事件の犯人パールマンと不正な取引をしていた疑いがある。君の部下達とともに我々とご同行願おうか。」

 

しかし、それを制するように前に出るものがいた。

 

「お待ちください!ブリンガー長官。どうやら貴方は大きな誤解をされているようです。

対ホロウ六課内部で重要な容疑者と水面下での接触を行った疑惑があるのは確かです。

 

ですが…それは課長の個人的な行動にすぎません。」  

 

六課の副課長であり頭脳・月城柳である。

 

その言葉に、迫真空手部は驚く。

「え、なにそれは」「 上 司 を 売 る 」

 

空手部を無視して柳は言葉を続ける。

 

「我々は対ホロウ六課として、上司の不適切な行動を止めるべくここへ駆け付けました。それが今ご覧になっている状況です。」

 

淡々と虚構を述べる柳。

 

しかし、両者の権力関係を考えればこれが今できる最善の一手である。

 

星見雅にすべての責を集中させることで、六課という組織自体は依然として動くことができる。

 

 

「ハハハ!つまり…君たちは無関係だと?君は、次期総監たるこの私を、たわけだと思っているのかね?」

 

「ただ事実を述べているだけです。異議があるのでしたら、治安局の監察官に報告し、検証を要求することもできます。」

  

 

 

柳の言葉を静かに聞いていた雅は、怒るでもなく小さく頷きパールマンに問いかける。

 

「『心頭滅却すれば』、…これに続くのは?」

「ええと…『火もまたアツゥイ』?」

 

パールマンのふざけた返答に「チッ」とデカめの舌打ちをすると、雅はパールマンを蹴りあげた。

 

「な…なにをする!うああああああああああああああ!」

 

そのままパールマンは、命からがら出てきたホロウに再び叩き込まれる。

 

 

「星見雅!何をしている!?」

 

「私の質問にクッソ汚い語録で返してきたので、怒りからか不幸にもバレエツインズ・ホロウに叩き返してしまった。

今ので分かっただろう。部下達は与り知らぬ。全ての責を負った六課の長たる私に対し、治安局副総監ジャスティン・ブリンガーが出した示談の条件とは…。」

 

「お前精神状態おかしいよ…。(これ指摘したら淫夢厨ってバレるな)」

「貴女もバッチェ語録使ってるじゃない。(これ指摘したら淫夢厨ってバレるな)」

 

星見雅のやりたい放題に、ブリンガーもサラもドン引きした。

 

「はい、このように星見雅は現在心神喪失状態であることはあなた方も理解できたことでしょう。」

 

「そういうことだ。捕えたければ、捕えればいい___私だけを、な。」

 

「チッ…いいだろう。お望みどおりにしてやる!ヤヌス区次期総監の名において―――対ホロウ六課課長・星見雅を公共の安全を脅かした容疑により…逮捕せよ!」

 

「はっ!(これ指摘したら淫夢厨ってバレるな)」

 

ブリンガーの命令に従い、控えていた治安官たちが取り囲む。

 

「治安官だ!大人しくしろ!」「3人に勝てるわけないだろ!!」「馬鹿者お前私は勝つぞお前(天下無双虚狩り)」「うわっ!ちょっ!力強…!ダメダメダメ!絶対!無理無理無理!痛い!痛い!……ごめんなさい!ごめんなさい!あああああぁぁぁ無理ぃぃぃ…ああああぁぁぁ無理無理無理無理無理!すいま・・・無理です無理です無理です!ごめんなさい!ごめんなさい!無理ごめんごめんごめんなさい!ああぁぁ……痛てぇぇぇぇ……。」

 

 

「課長すいません。ややこしくなるのでほんとここは大人しく捕まってください。」

 

 

この緊急事態をパエトーンに報告すべく、即座にFairyは動く。

 

 

しかし、それは叶わなかった。

 

 

『警告!.....&%$ビデオ屋に接近する反応....アリ....##%%....くぁwせdrftgyふじこlp』

 

 

工房のTVモニターがにわかに火花を散らし、室内の照明も不規則な明滅を始めた。

 

 

「これは――!システムがまた攻撃されているのか!?新エリー都に、Fairyのガードを破れる奴なんていたのか…!」

 

「なんか変だよ!システムのネットワークじゃなくて、ウチヘの送電網と…HDDシステム本体が標的になってるみたい!」

 

 

次の瞬間、防犯カメラの映像をチェックしていたアキラが表情を歪めた。

 

 

「リン!店の外に人がいる!このいでたちは…!」

 

 

アキラが店のカウンターに顔を出すと、既に野獣が訪問者の対応にあたっていた。

 

そこにいたのは、制服に身を包んだ若い治安官だった。

 

「ファッ!治安官さん?俺なんも通報されるようなことしてないっすよ!?」

 

めっちゃくちゃ後ろめたいことがあるかのように野獣は脂汗をだらだらと流すが、若い治安官は気さくに微笑む。

 

 

「お客さん、騒がしくしてすいません。市政選挙の期間中、六分街をパトロールしてるんです。すぐ済みますから、どうぞお買い物を続けてください。

 

 

あ、店長さん!すみませんが、ドアを開けて頂けませんか?」

 

そういって、アキラの背にあるHDDシステムが隠されたドアを指さす。

 

 

「こちらの部屋は?」

 

 

「…ただの物置です。私物や古いビデオ、しばらく使わない機材なんかを置いていて。」

 

「念のため、開けてみても?」

 

「こんなところまで見せる必要が?見てもらった通り、娯楽目的でビデオを貸し出しているだけの店なんです。」

 

「そうは言っても、選挙期間中のありふれた決まりでして。すみませんがご理解ください。」

 

治安官の背後で野獣が「やべえよ やべえよ」といいたげな真っ青な顔をする。

 

 

 

 

 

「開けないのなら___こちらで開けますよ。」

 

 

 

「あっ、待ってくださいよ!」

 

有無を言わさずドアを開けようとする治安官の肩を掴んだのは野獣だった。

 

そのまま、彼の両肩を掴んで己に向き直させる。

 

「ちょっと、困ります…。邪魔をするというのなら、公務執行妨害で逮捕しますよ。」

 

流石に治安官もムッとした表情で野獣を見返した。

 

彼も治安官。秋吉から手ほどきを受けた迫真空手の有段者である。

 

肩を掴むその手を引きはがそうとする。

 

しかし、できない。

 

 

まるで大木がのしかかっているかのような重圧に、その手を外すどころか身動き一つとれない。

 

「(な、なんだこの汚物!ただものじゃない!!?まるで…)」

 

 

野獣そのものではないか。そう言いかけたとき、目の前の男がゆっくりと口を開く。

 

「お前のことが好きだったんだよ!!」

 

「「ファッ!?」」

 

治安官。そしてアキラも素っ頓狂な声をあげた。無理もない。大胆な告白は女の子の特権である。

 

だというのに、野獣はそのまま有無を言わさず治安官を押し倒した。

 

 

「何してんすか!!やめてくださいよ本当に!」「暴れんな!暴れんなよ・・・!」

 

田所(ターミナル)さん!?ちょっと、まずいですよ!?」

突然治安官に蛮行を働き出した野獣に、流石にアキラも止めに入る。

 

しかし、踏み出すアキラを鋭い眼光で一瞥する。

 

 

ただそれだけ。

野獣の眼光に睨まれただけで、アキラは蛇に睨まれた蛙のように足がすくんでしまった。

 

 

「やめてください・・・!」

「な、な、暴れんなって!」

 

やわらかスマホを懐からとりだし、ホモコロリを沁み込ませる。

 

 

しかし、そのときアキラは気づいた。

 

やわらかスマホの液晶画面に文字が打たれていた。

おそらくホモコロリを沁み込ませながら野獣が打ち込んだのだろう。

 

【じかん かせぐ にげろ】

 

 

 

野獣は、己が罪を犯してまで自分たち兄妹を逃がそうとしてるのだ。

 

 

 

野獣は手慣れた動きでやわらかスマホを治安官の口に押し当てる。

 

「な、何してんすか!?ちょっとホントに!?……う、羽毛。」

 

「お、お兄ちゃん!!?そっちでなにが起こってるの!!?」「リン!!なにがあっても開けちゃだめだ!!絶対に!!!」

 

アキラは扉を背に、叫んだ。

 

誰か。誰か助けてくれ。

 

この世の終わりみたいなこの状況を打開できる誰かを。

 

 

 

 

 

 

その願いが届いたのか、店の扉が勢いよく開き、見知った声が響いた。

 

「待たれよ。」

 

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

 

そこに現れたのは、特務捜査班の朱鳶と青衣であった。

 

 

 

「新たな指令です。街頭パトロールに人手が要りま……す。

 

な、なにをしてるんですか!!!彼から今すぐ離れなさい!!発砲しますよ!!!」

 

朱鳶が手早く銃を構え、警告する。

 

銃に一瞬野獣が怯んだのを見逃さず、そのまま青衣が三節棍を振りぬいて顔面を殴打する。

 

「ハアッ!!」

すかさず朱鳶は懐に入り込み、野獣の腕を掴んで背負い投げた。

 

「オオン!?」

店全体が揺れるほどの衝撃とともに、野獣が組み伏せられた。

 

青衣が懐から手錠を取り出し、組み伏せられた野獣の腕にかける。

 

 

「午後2時55分、確保!!あなたを、公務執行妨害及び強姦致傷の現行犯で逮捕します!」




【TIPS】
8/10に投稿するホモ書きの鏡。

良い子の皆は8/10に野獣邸に集うとかそんなことしちゃダメだろ...!(マジメ)
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