迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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ゼンゼロ ドバーランド

で検索すると一番上にローランド大尉(ディスク堀り♂でみんなお世話になってるイケオジ)が出てくるの風評被害過ぎない???



第41話 stop crying your heart out

緑溢れる新エリー都の県北に建てられた、どことなく夢の国を想起させる入場口を潜った一行。

 

エントランスはライブの主役たるアストラのポスターや垂れ幕があちこちに貼られ、まさに彼女一色という様相だった。

 

 

そうしてゲートをくぐった一行の目の前に、『それ』は現れた。

 

「こ↑こ↓」「はぇ~すっごいおっきい…。」「なんだこれはたまげたなあ。」「ナオキです。」「ポッチャマ・・・」

 

ドバーランドの象徴。

 

全長100メートルを超える、糞土方像が彼等を出迎えた。

 

サイズ比でいえば三頭身のデフォルメ像だが、あまりにも巨大だった。首を真上に傾けなければ頭部のサングラスは視認すら出来ない。

 

ふんどし一枚で大股を開いたその雄々しい姿は、足元に巨大な影を作っていた。

 

暑さ対策のためのだろう。糞土方像からミストが降り注ぎ、来場者が熱中症になるのを防いでいる。

素晴らしい心遣いなのだが、よりによって噴出口が糞土方像の臀部なのがすべてを台無しにしていた。

 

そしてその巨大な像の大木よりお太い足元に、見慣れた怒髪天がいた。

 

「あれ、アンドーさんなんで…ってそうか白祇重工が建てたんだもんね。定期点検とか?」

 

白祇重工の広報担当アンドー・イワノフが、旧知を見て顔を綻ばせた。

 

「応!グレースじゃねぇが、俺らも自分が手がけた建物には愛着みてーなもんが無いわけでもねぇのさ。

歌姫のライブ会場に選ばれるなんざ、親としちゃあ息子の晴れ舞台みたいなもんだろ?

点検は万全にやらねえとよ。サプライズもあるしな!

ライブ、楽しんでけよ!!」

 

快活に笑い飛ばすアンドーと、白祇重工の社員たち。

彼等の仕事に賭ける情熱を知っている人間からすれば、安全性への不安など疑う余地はない。疑っているのは、こんなものを建てた彼らの正気値と倫理観だ。

 

「ふふ、貴方達って顔が広いのね!プロキシってみんなそうなのかしら?それとも、貴方達が特別だからなのかしら?」

不意に、背後から見知らぬ澄んだ声で呼びかけられる。

 

いや違う。聞き覚えがある。この声が紡ぐ歌を、何度も何度も聴いてきたのだ。

 

「「ア、アストラさん!?!?!?」」

「折角遊園地に来たんだもの!遊ばなきゃ損よね!」

 

新エリー都の歌姫アストラ・ヤオその人が立っていた。

しかも、いつもの衣装にサングラスをかけただけというやる気があるのか疑わしい変装で、である。

 

「うわまじで本物じゃんアゼルバイジャン。」「オーラ半端無いですよ。」「ポッチャマ・・・」

あまりに唐突な大スターの登場に、迫真空手部も放心気味である。

 

「ていうかアストラさん流石に身バレ気にしなさすぎじゃない!!?今日ライブするんだよ!?」

「平気よ!だってほら見て!私がいっぱいいるもの!」

 

そういってアストラが指さす先には、確かに同じ格好をした大量のアストラがいた。

 

「ああそうか。ドバーランドはコスプレOKだからね…。そりゃ皆アストラさんの格好をしたいか。」

右も左もアストラだらけである。

ドバーランドの全てがアストラ仕様の今日に限っては、一周回ってアストラ・ヤオは目立たないのだ。

 

「あれ?そういえばこのBGMも…。」

 

そう。ポスターや来場客だけではない。音響もアストラ仕様だ。いつもの創聖のクソエリオンも英雄の証(朗読付き)も流れていない。代わりに澄んだ美しい歌声が響いていた。

 

「ライブ期間中は全部アストラお嬢様の曲に差し替えさせた。汚いからな。」

どうせなら一生このままの方がいいとまで言い放つのは、アストラの敏腕マネヱヂヤアのイヴリンだ。彼女も彼女で大変美人なのだが、流石にマネヱヂヤアのコスプレをする人はあまりいないので目立たないように地味な格好に変装していた。

 

「じゃあなんスか。淫夢が下品なコンテンツだっていうんスか。」

「下品だよ。」「なんで40話ちかく経った頃にそんな当たり前なことを言及しなくちゃいけないんだい?」

「トゥクトゥク言葉やめてください!!トゥクトゥク言葉やめてください!!」

 

あのアストラと遊園地で一緒。これはもはやデートなのではないかと彼等兄妹(特にアキラ)はテンションをあげるが、横で昼間から酒を飲み歩いている三馬鹿がどうにも邪魔だ。自分たちで呼んでおいて随分勝手である。

 

しかし、彼等兄妹は優秀な頭脳とアストラ愛を併せ持ったプロキシである。この程度のことは想定のうちだった。

無言でアイコンタクトで示しあい、三馬鹿の肩を叩く。

 

「ほら、君たちにプレゼントがあるんだ。」

そういってアキラが三馬鹿に差し出したのは、ドバーランドのアトラクションを優先して乗れるエクスプレスチケットだ。

 

「ええ、いいんですか!!?」「三枚も買うなんて太っ腹ゾ!」「御立派ァ!」

 

「いいんだよ。」「いつものお礼。」(いいからはよどっか行け三馬鹿)

 

 

花より団子もとい男子を字でいく彼らには、実に効果覿面である。テンション爆上げでアトラクションに向かう彼らを遠目に、兄妹は無言でサムズアップを合わせる。

 

「心で通じ合う兄妹っていいわね!羨ましいわ。」「お嬢様、あれはただの厄介払いでは…。」

 

Kusai-Ass、Ja In(邪淫)、God in the Toilet、Homoted Mansion、Center of the ass、O K A Y A M A...etc。

 

ドバーランドの名だたる絶叫マシンを嬉々として制覇していく一行。スプラッタ系大好きなリンはともかく、恐怖耐性の低いアキラには色んな意味でかなりハードな内容だったが、あふれるアストラ愛が彼に恐怖に打ち勝つ勇気を与えた。

 

「わァ…あ…」「お兄ちゃん 泣いちゃった!!!」

そうしてアキラがちいかわ状態になりながらもそれらを堪能した一行は、ドバーランドの土産物店に来ていた。

 

ドバーランドは他の遊園地とは違い、グッズ店やクッソ高いカフェだけでなくコンビニとすき家を敷地内に出店している。特にコンビニは飲食品を普通のコンビニ価格で買えるという事もあってか非常に人気があるのだ。土産も比較的良心価格である。

 

「TOPSのお偉いさんへのお土産、毎回迷うのよね。もう全部地下足袋でいいかしら?」

「アストラさん、流石にそれは怒られるよ…。」

「まったく、TOPSの連中は贅沢だな。アストラさんが下賜するならコンビニのツマミだろうがイチジク浣腸だろうが有難く拝領仕るべきだよ。」

「お兄ちゃん、変だよ。三馬鹿になんか盛られた?」

「いや、僕は彼等から受け取った飲食物は手を付けないようにしている。」

「成程、流石は伝説のプロキシ。その程度の心構えは常にできて当然か。」

「ン↑ナ↓(まあ原作からしてこ↑こ↓の章のアキラはおかしいから多少はね?)」

「イアス。人を頭おかしいみたいに言うのはやめてくれないか?」

 

 

そうして土産を物色する一行に近づく、二つの影があった。

 

「あなた方、土産を探しているのかね?」

 

そういって自分達に声をかけてきたのは、金髪にオッドアイと黒髪に切れ長の目の美男子二人という、実に絵になる組み合わせの二人組だった。

 

男二人で遊園地というのは人によっては奇異に映る人もいるだろうが、ここはドバーランド。あらゆるマイノリティに寛容なテーマパークなのだ。気にする人は誰一人いない。

 

普通の人間は、だが。

「(私の警戒網を容易くくぐり抜けて背後を…。こいつら何者だ。)」

アストラが楽しんでいる間、一瞬たりとも警戒を緩めず怪しい人物を近づけないようにしていたイヴリンだが、それ故に、いとも容易く近づけた彼らを訝しんだ。彼らに、ほんのわずかに殺気を当てる。

 

「…」

 

しかし、彼らは微動だにしない。

 

「(殺気を当てられても反応しない。並みの暗殺者ならば反応しまいという反応(・・・・・・・・・・)をしてしまいがちだが、それすらない。ただの客かそれ以上の手練れか。)」

 

イヴリンは直観していた。間違いなく彼らは後者だ。

 

「ええ、そうなんです。色々あって目移りしちゃって....。」

「成程成程。

おっと、失礼。申し遅れた。私はヒューゴ。新エリー都で画廊を営んでいる者だ。そしてこっちは…。」

ヒューゴと名乗る男が優雅なしぐさで隣の男を平手で指すが、それに先んじて本人が前に出る。

 

「ヒューゴさん。俺にもちょっと回してくださいよ。

どうも、氷崎といいます。私はソムリエなんですよ。お土産でしたら____。」

 

そういって、氷崎と名乗る男は土産屋のカタログリストを捲る。ドバーランドの酒とつまみは、一般のコンビニの比ではないほどに充実していることで有名だ。

 

「このワインなどどうでしょう?使われている葡萄は、近年稀にみる出来だった幻の葡萄!……幻のグレープだ!」

そういって氷崎が示したワインは、特段有名でも高いものでもなかった。

 

「上の連中は名高い酒など大抵知っている。その味もな。

しかしながら、奴らが見下す傍流・異分子と呼ばれるものの中にはそれらを凌駕するものだ確かに在るのだよ!」

そう熱弁するヒューゴが、リンには少し怖かった。その二色の眼に、良い土産を紹介しようという親切心以上のものを感じたからだ。

 

あるいは脅迫概念。あるいは憎悪。あるいは狂気。それは一瞬で消えた。

気のせいだったのだろうか。しかし、隣で立つイヴリンはピリついた空気を肌で感じ取っていた。

 

一転してヒューゴは和かになり、咳払いとともに氷崎が話し始める。

 

「"自分達が知らないことを知っている"。

それを示せば、貴女のステイタスもいま以上のものになるやもしれませんね。

テイスティングもさせてもらえるかもしれませんが…、貴女は今宵は控えておくべきですね?」

 

「え?」

氷崎の言葉に、アストラは戸惑う。

 

「今宵は一世一代の晴れ舞台。歌姫の喉は万全を期すべきだ。そうだろう?」

言葉を引き継いだヒューゴは口元に指を当て、いたずらっ子のように微笑んだ。

 

「なに、仕事で培った杵柄というやつだ。あえてアドバイスするなら、帽子の一つでも被るといい。それだけで意外とバレないものさ。」

 

ならばと、アストラの代わりにリンとアキラが味を確かめることにした。

 

「うん、美味しい…!」「これがこの値段なのは信じられないな…。」

確かにその味は、以前ポンペイが振舞ってくれたヴィンテージ物にも引けをとらない味だった。

 

「ほう、お二人ともまだ若いのにわかるのかね!才ある者の周りには自然と別の才人が集まるのは世の常。どうやら貴女は良い縁を持っているようだ。」

「これって……勲章ですよ。」

 

アキラとリンが太鼓判を押したこともあり、アストラはこのワインを土産に決めたようだ。TOPSの土産だけでなく、友人たちや自分の分を含めて多めに注文していく。

 

「アディオス!皆様の舞台と活躍が晴れやかであることを、ささやかながら願おう!」

それを見届けたヒューゴは、恭しく一礼する。

 

「皆様?ステージに立つのはアストラさんだけだよ?」

しかし、リンの言葉を氷崎は否定する。

 

「『この世は舞台、人はみな役者』。

誰しもが皆、人生という己の舞台に立っているのですよ。アストラさんだけでは無い。あなた方兄妹も、後ろの貴女も、そして我々もね。」

 

「『As You Like It(お気に召すまま)』___。旧文明の劇作家を引用するだなんて、最近のソムリエは博識なのね!...ってアレ、もういない!?

わたしまだお礼を言ってないのに!」

 

結局親切に土産を紹介してくれただけの二人組は、彼らが目を離した一瞬に煙のように消えてしまい、どう探しても見つからなかった。

 

 

 

 

 

仕方がなく土産物店をあとにした一行は、ライブ時刻が近づいてきたので迫真空手部と会場で合流した。

 

特別優待ということでVIP席に案内された一行だが、そこには先客がいた。

 

 

「ああ。やっと会えたわね。」

「アストラお嬢様、こちらの方は今回のコンサートのため、事務所が特別にご招待した――」「デウィンター夫人!?まさかお目にかかれるなんて!しかも、私のコンサートで…!」

アストラの敬愛する、故ヨラン・デウィンターの妻であるテッサ氏だった。

 

「デウィンター夫人だなんて…。どうかテッサと呼んで。」

「私、かつてヨランも愛したこのドバーランドでライブをするのが夢だったの!」

彼女を前に、アストラは悲願が成就したことを喜ぶ。

 

「そう…。正直、初デートにこんな場所を選ぶなんてこの人頭どうかしてるんじゃないかって最初は思ったけれど、いまはいい思い出になった気がしないでも無く無く無いわ。」

 

アストラに背を向け、懐かしそうに窓ガラスから見えるドバーランドを見下ろすテッサ。その表情は伺いしれない。

 

 

「人々は口を揃えて、あなたをヨランの跡を継ぐ存在…次のスターだとたたえている。

こんなことを言ったら失礼かもしれないけど、私は内心こう思っているわ。

 

――誰も、彼の代わりになんてなれはしないと。」

 

穏やかに。あくまで穏やかに言葉を紡ぐテッサ。

しかし、その言葉のひとつひとつに形容し難い刺のようなものを感じざるを得なかった。

 

 

「その…ヨランの音楽は、ずっと私を導いてくれたの。彼がいなければ、私は絶対にここまで来られなかった!あなたにもお礼を言いたくて!このコンサートをヨランに捧げるつもりでいたから…あなたの許可が下りたと聞いて、嬉しかったの!」

 

これは世辞でもなんでもなかった。

かつて旧都陥落に巻き込まれたとき。彼のあの小さなライブハウスで行われた最後のライブを聞いたとき。いつだって、彼の歌はアストラに希望をくれた。今日のライブも、彼女なりの恩返しのつもりだった。最後のサプライズで、彼の歌を歌うのだ。

 

「ヨランに…捧げる?今日は貴方にとって、初めてドバーランドで歌う日なんでしょう。ヨランは…もう過去の人よ…。」

 

貴女の歌を歌えばいい。そう告げるテッサの言葉には、小さく、そして決定的な拒絶の色があった。




【TIPS】

小野D(小野Dではない)、AVのドラマパートでロシア語同時通訳しつつドストエフスキー引用するとか明らかに才能の使い所さん間違えてるの好き。
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