迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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「野薔薇は花を守るため、棘を身につけ武装したのだ。」

アーイキソ・トンプソン・シートン(1860〜1946)




第47話 PIECE OF LOVE

郊外で落ち合った依頼人である未亡人・シエナの情報によると、この区域にブリンガーの残した遺物があるとのことだ。

 

その対価として彼女の無くした結婚指輪を探してほしいとの依頼を受けた一行だが、探せど探せど影も形もない。

 

 

座標が間違っているのではないかとシエナの待機場所に戻った一行だが、そこで見つけたのは地に伏せ事切れたシエナだった。

 

 

他殺の痕跡はなく、エーテリアスに襲われたにしても外傷がない。

 

不審に思った元医学生の野獣が遺体を検分し、違和感に気づく。

 

 

 

「え…、軽い。…軽くない?」

 

その体は一般的な成人女性と比べてもあまりに軽かった。

躊躇いつつも袖や腹部をめくってみれば、服の下の身体は枯れ木のようにやせ細っていた。

 

 

エーテルを操る術法に長けた木村がその冷たくなった体に触れて調べ、息を吞む。

どこもかしこも病魔の巣だらけだった。

 

「こんなの、立ってるだけでもやっとだったはずですよ…。」

「なんで…。」

 

戸惑いと悲しみで上手く言葉が出てこない迫真空手部とリンだが、その静寂を破ったのはビビアンだった。

 

 

シエナの側に膝をつき、安らかな死に顔の髪を整え、遺体の手を取って組ませる。

「これは…ペテン師が、その最期に仕掛けたペテンなのです。」

 

 

ビビアン曰く、木村と野獣の検死通りシエナの身体は病に犯され余命いくばくもない状態だったのだという。

 

延命治療を選択することも出来たが、それよりも彼女は一人娘のために保険金を残すことを選んだ。

 

無論、死病に侵された人間に多額の保険金のでる生命保険などあとから加入できるはずがない。

審査を誤魔化すにあたり、いくつかの不正な手続きをとったことは明白である。

 

「つまり、俺たちはまんまと保険金詐欺の片棒を担がされたわけだ。」

 

腕を組みシエナの遺体を見下ろす三浦。

その顔に、侮蔑の色は無かった。

 

幼い妹を養う三浦には、たとえ外法であっても金を残してやりたい気持ちは痛いほど理解できたからだ。

 

「ビビアンさんもこの件に一枚噛んでたってことですか?」

 

木村の問いかけに、ビビアンは首を振る。

 

「いいえ。シエナの策略を知ったのはほんの数分前でした。彼女と初めて会ったのだって、あなた方と同じなのです。

ホロウの中に入ってすぐに、…見えたのです。」

 

「??」

 

「…信じてくれなくてもいいのです。

私は子供のころから、様々なことを予見する力がありました。

 

けれど、見えるのは不幸ばかり。病に死、災い…。ずっと、そういうものしか見えなかったのです。

 

いつも…いつもこうなのです。

見えたとしても、私にはそれを変えるすべがない。

時々思うのです。すべては、そこに不幸を見出した私のせいなのではないか…。

ともすれば、私そのものがこうした不幸を招き寄せている元凶なのでは、と…。

 

あのときだってそうでした…。

 

私の予見通り監督がたまげたことで、あの当時は若くお金が必要だった大学生は球団から指名を回避され、後の世のインターノットのミームが一変してしまったのです。」

 

 

沈黙するビビアンには、暗い記憶からどうにか抜け出したような疲れが感じられる。

 

「たまげようがたまげまいがビビアンはセーフ(無実)じゃないかな…。」

 

「そうだよ(便乗)。

アブソルだって『わざわいポケモン』のレッテルを貼られてたけど、本当は皆に危険を知らせてくれる優しいポケモンだったゾ。

悪いのはそれをイカせなかった周りの人間ゾ。」

 

「レッテルなんて気にしちゃ駄目だぜ!元気出せって!

俺も巷で昏睡レイパーとか四章の眠らせてくる奴とか散々言われてっけど全然気にしてねぇしな!」

 

「人は自由で良い。我儘で良いんです。

なにもかも諦めたナオキな人生なんて、生きてる意味がありませんよ!」

 

「自由に…、我儘に…。ふふ、可笑しな方々なのです。」

 

迫真空手部の慰めに、少し元気を取り戻したビビアン。

 

彼女の様子にリンは、「こいつらの自由とか我儘って性犯罪が多分に含まれてるから、参考にしちゃだめだよ。」という口から出かけた一言を飲み込んでその肩に手を置いた。

 

 

 

「…とにかく、このままにはできません。

シエナの遺体を放置してしまえば、浸蝕されて塵になってしまいます。

そうなっては保険金が下りません。

私と共にブリンガーの遺物を探す者と、彼女をお家に帰してあげる者が必要なのです。」

 

「なら、その役目は俺がするゾ。ホロウの出口で落ち合おう。

木村、田所。二人を頼んだゾ。

 

プロキシ。すまんがナビゲーションを頼むゾ。」

 

三浦がインカムをつけてシエナの遺体を背負い、胴着の帯で固定する。

 

 

三浦に後のことを託し、一行は探索を続行する。

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

照りつける太陽が、ホロウ特有の圧迫感も相まってみるみる彼らの体力を奪っていく。

 

「ぬわあああああん疲れたもおおおおおん」「チカレタナノデス…」「いやもうキツかったっすね今日はー」「ええもう今日は…すっごくキツかったのです。」「ホントに…」「何でこんなキツいんすかねぇ~も~…」「キツいですね…」

 

目当ての遺物はなかなか見つからない。

 

「のどか、喉乾かない?」

野獣は隣で喋っているリンの方向を間違えて声をかけるほどに集中力を欠いているようだ。

 

「あー喉渇いたわね。」

かくいうリンも、ホロウに入れるようになったばかりで体が慣れきっていないのかいつも以上に疲れていて相槌も適当になる。

 

 

 

しかし、突如野獣が大声をあげる。

 

「ファッ!?自販機あるじゃんアゼルバイジャン!!」

 

野獣が指さす先には、確かに自販機が並んでいた。

 

「いや流石にホロウ内の自販機はダメでしょ…。

浸蝕されてて飲めたもんじゃないってそれ一番言われてるから。」

 

リンのツッコミも聞こえていないのかダッシュで自販機のもとまで駆け抜ける野獣だが、いくらボタンを押たところで反応があるはずもなく、当然飲み物など手に入るわけがない。

 

「ジュースが入ってないやん!どうしてくれんのこれ(憤怒)!

お前…ホンマ…使えんわー…はーつっかえ!

ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラ!!」

 

怒りのまま、壊れた自販機をホラホラ・ラッシュで殴りつける。

 

「いい歳こいて物にあたるのやめなよ。」

 

 

リンが野獣に近づいて止めようとするが、突如メキメキと嫌な音が野獣の足元から聞こえて歩みをとめる。

 

 

 

「あっ…(察し)。」

 

やはりホロウに長く浸蝕されていたのがまずかったのだろう。

 

自販機を地面に固定する基礎はすっかり腐り落ちており、そこに無理な衝撃が加われば崩落するのは必然であった。

 

自販機が倒れ込む。

 

野獣の目の前に巨大な影が差し、視界を覆った。

 

 

「ヌゥン!ヘッ!ヘッ!

 

ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛

 

ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!

 

ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!

 

フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!

 

フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!(大迫真)」

 

 

自販機君による迫真の一転攻勢に、野獣は成すすべなく押し倒された。

 

 

「アホなのです。」「馬鹿じゃないの。」「ナオキです。」

 

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!待って!助けて!待って下さい!お願いします!ワアアアアアアアア!!!!!(発狂)」

 

「もうこいつこのままホロウに放置したろか…。」と三人は内心で思っていたが、エーテリアス化して襲ってこられても厄介なので渋々三人がかりで自販機を押し倒して救出してやった。

 

 

「オォン!アォン!」

 

ほうぼうの体で自販機の下からはい出した野獣。

その拍子に、壊れた自販機から何かが転がり落ちた。

 

 

 

「なにこれ。ノート…?」

 

「こっ!これは…!」

 

その古ぼけたノートを拾い上げ、ビビアンが驚きの声をあげる。

 

「間違いありません。このノートこそ、ブリンガーの遺物…!私たちが探し求めていたものなのです!」

 

「まさかこんなところに隠されたなんて…。」

 

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

(何かにひらめく先輩BB)」

 

 

「「「(うるさっ!!!?)」」」

 

突如、野獣は屈伸運動を繰り返して甲高い音をまき散らした。どこから音が出とんねんとかそういうツッコミは野暮である。雁木に聞け。

 

「やりましたねぇ!!

俺のIQ.114514の頭脳はここにブリンガーの遺物が隠されてるってバッチェ見抜いてたんスよ。

やっぱ最後に頼りになるのは淫夢の大黒柱たる俺ってはっきりわかんだね。」

 

したり顔で「うんうん」と頷く野獣だが、リンも木村もビビアンも彼女を盛大に無視してブリンガーのノートを読み解き始める。が、エーテリアスの咆哮が耳を打って解読を遮った。

 

 

 

 

 

しかし次の瞬間、思いがけない姿がエーテリアスの前に立ちふさがり、あっという間に斬り伏せてしまった。

 

 

「ここかぁ…ここが里か…!」

「これはこれは…久しいな、プロキシくん。たったいま君たちの命を救った男たちに対して、その驚愕した眼差しは正しいのかね?」

 

 

ヒューゴと氷崎。

 

かつてドバーランドで知り合い、そして先日は闇オークションの一件で新聞の紙面を飾った怪盗が目の前にいた。

 

 

驚くリンと迫真空手部だが、ビビアンの顔はすぐれない。

むすっとした顔で二人に近づく。

 

「どうしてノコノコ出てきたのです。

あなた方がいなくても、プロキシさんはわたしだけで守れるのです。」

 

 

「ビビアンの実力を疑ったことなどありませんとも。

しかし。

いや!もしかしたら!?もしかするかもしれないじゃないですかこれは…!はい。」

「なに…ほんのついでだ、ビビアン。仲間たちの実力に、俺は絶対の信頼を置いている。」

 

新エリー都を揺るがす大怪盗に対してあまりに気安いビビアンの態度は、とても初対面だと思えない。

 

 

「待った…仲間?知り合いだったの?」

「三人は、どうゆう集まりなんだっけ?」

 

呆然とする一行の前に、ビビアンは「しまった。」と口を押えた。

 

「すみません、言うのをすっかり忘れていたのです。わたしは、怪盗団・モッキンバードの一員です。」

 

「その通り。俺たちがあのオークションにたやすく潜入できたのも、すべてはこちらのビビアン嬢が、会場のバックヤードに細工をしてくれたおかげというわけだ。

だが安心したまえ、プロキシくん。俺たちに誓って悪意などない。

 

君も知ってのとおり…新エリー都を震撼させた怪盗団・モッキンバードのメンバー達は、長年にわたる暗躍にもかかわらず、依然として謎に包まれているのだ。

 

だが、たったいま君にその正体を明かしてみせた…。

これは「怪盗」にとって、示すことのできる最大級の誠意だとは思わないかね?」

 

「これって勲章ですよ?」

 

 

 

 

「ところで、依頼人はどうしたのだ?姿が見えないが、一緒ではないのかね。」

 

「そ、それは…。」

「私が、…説明するのです。」

 

彼等に、シエナの顛末と三浦に遺体の運搬を任せたことを告げる。

 

シエナが保険金を得るために死を選んだことについてはヒューゴたちも予想外であったようで、流石に面食らっていた。

 

「そうか…。我が子のために、保険金を…。」

 

「プロキシさん。

三浦さんの座標を送っていただけますか?

冷却ドローンをいくつか飛ばしておきましょう。

多少ですが、ご遺体が痛むのを防げるかと。

 

ヒューゴ、構いませんね。」

 

「無論だ。ここで手を差し伸べないようでは、モッキンバードの名折れだ。」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「キャンプ場!?ハァ…!帰ってこれたんだ…生きて帰ってこれた!」

「あぁ外だ!本当だぁ!」

「あぁ…本当だよ!」

「帰ってこれたよ~ア~ッハッハッハッハッハ!帰ってこれた~ハッハッハッハッハ!」

 

 

 

「よォ。来たな。

ホトケさんは任せな。運び屋・カリュドーンの子が責任をもって家まで送り届けるぜい。

冷却装置が一緒で助かったぜい。郊外じゃあ氷を作んのも一苦労だかんなぁ。」

 

モッキンバードと共にホロウを脱出した迫真空手部とリン。

彼等を三浦と共に境界線で出迎えたのは、アイアンタスクに乗ったカリュドーンの子の運転手・パイパーだった。

 

三浦と別れたあと、直ぐにリンはカリュドーンの子に連絡を取っていたのだ。

 

棺に納められたシエナの遺体は、速やかに氷崎の冷却ドローンと共にアイアンタスクに運び込まれて家族の元に帰っていった。

 

 

 

遠く小さくなるアイアンタスクを、見えなくなるまで一番最後まで見届けていたのは以外にもヒューゴだった。

 

「片や子のために命を縮めてまで金を残す母。片や金のために子を売り飛ばす母…か。」

 

その呟きは、郊外の乾いた風にかき消されていく。

 

 

「ヒューゴ…。なにか言いましたか?」

 

ビビアンがどこか悲しげなヒューゴの背中に語り掛けるが、振り向いたときには彼はいつもの頼れるリーダーの顔に戻っていた。

 

「なに、ただの感傷だ。

…それより仕事の話をしようではないか。

 

俺たちの目的は至ってシンプル…。

モッキンバードとして、君という優秀なプロキシと長期的な協力関係を結びたい、それだけなのだ。」

 

「ええ。我々には、あなたの力が必要なのです。」

 

 

 

アウトロー・建設会社・高級家事代行サービス・治安局・運び屋・対ホロウ六課・歌姫。

そして新エリー都市長ときて、今度は希代の大怪盗。

 

ソシャゲ主人公特有の拒むことを知らない人脈野郎と化したパエトーンだが、その交流に「穴が広がってないか?(懸念)」と待ったをかける者たちがいた。

 

 

「ふざけんな!(声だけ迫真)

オッドアイ(ルルーシュ)怪盗(ジョーカー)吸血鬼(ドラルク)は流石に盛りすぎなんだよ!」

 

「なめてんじゃねぇぞ、この福⚪︎潤の欲張りセット野郎が!

アストラさん(超時空歌姫)の方がまだ自重してましたよ!?」

 

「そうだよ。(名曲)」

 

悲しいことに上記のアウトローに含まれるパエトーンの協力者にして、一生インターノットの晒し者。迫真空手部である。

ちなみに彼らが他の協力者たちに対して勝る点など、BBの数くらいである。

 

 

「やめなよ空手部。男のジェラシーはみっともないよ。」

「あ、待ってくださいよ。嫉妬は女の子の華ッスよ。」

 

「プロキシ君。これは君のためを思って言わせてもらうが、友人は選ぶべきだぞ。」

「凄いね。これ言われるの2回目だしなんも否定できないよ。」

 

 

「全く度し難いな…。

まあいい。こうしよう。まだ君に憂慮があるというのなら、此度の協力にはライカンを連れてくることを許そう。いかがかね?

あの男の存在だけでも、俺への牽制としては十分だろうが…。奴のバックには市長勢力がついていることだしな。

君もさぞかし安心だろう?

むろん、他のお友達を連れてくるのもいいぞ――治安局や対ホロウ行動部は御免被るがね。」

 

「そこまで言うなら…わかったよ。」

 

「契約成立、グーなのです。

プロキシさん、これをあげます。

わたしたちの最初の協力を記念して、取っておいてください。」

 

そういってビビアンが手渡してきたのは黄金色に輝く手乗りサイズの人形だった。

 

「えっ何これは…。」

 

「幸運を呼ぶ『金のドカちゃん』人形です。新エリー都ドバーランド来場者114514人目記念の品だそうです。」

 

「汚いクリス〇ルひとし君だなぁ…。」

 

 

 




【Tips】
キツスギィ!キツキツ!ンナーッ!ヴェスポお姉ちゃんの危局がキツスギるます!(千夏すり抜けS級ビリー確保のためガチャ禁民)
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