迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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「私の人生は楽しくなかった。だから私は自分の人生を創造した。」

コ↑コ↓・シャネル(1883~1971)



第48話 WHITE of CRIME

 

「やっと揃いましたね。…ヒューゴ、また遅刻ですよ。」

「困りましたねえ、後藤(ヒューゴ)さん。」

 

遅れてやってきたヒューゴをビビアンと氷崎が詰る。

ブリンガーの残した手記を解析した結果とある座標が浮かびあがったため、一行は現地にて集合することになっていた。

 

「仕方なかろう。どこぞの誰かに絡まれたせいで、時間を無駄にしたのだから。」「……」

 

二人で並んで歩幅を合わせ、しかし決して視線を合わせまいとするヒューゴとライカン。

 

聞けば、どうやらここに来るまでの行程が見事にブッキングし続けてしまったらしい。

袂を分かって以来、今の今まで会話どころか連絡すら一切取っていなかった彼らの関係は、「嫌いじゃないけど好きじゃないよ(至言)」の一言では言い表せないほど拗れに拗れてしまっていた。

 

 

 

「…ブリンガー様のノートに記されていた座標が、まさかこの場所だったとは。」

「またここか壊れるなぁ。」

 

解析の結果導き出された座標の場所は、なんの偶然かパエトーンや迫真空手部とヴィクトリア家政の縁が始まった場所であるバレエツインズであった。

 

「なんだ。思い入れがある場所のような口ぶりだな?」

 

「…お前より知っているだけだ」「ま、多少はね?」

 

逐一ライカンに皮肉気に食って掛かるヒューゴに、パエトーンと迫真空手部は肩を竦める。

 

「ダンマー兄貴もさぁ、いい加減仲直りしたらいいじゃんアゼルバイジャン。」

「誰がモロウィンドウ出身だ。耳が尖っているだけでここまで言われるかね。」

「多分だけどこいつの言ってるダンマー(淫夢)はタムリエルじゃなくてシモキタザワ生まれだよ。」

 

 

 

 

襲い来るエーテリアスを苦も無く蹴散らしていく一行だが、その歩みを固く閉ざされた扉が遮った。

「プロキシ様、残念な知らせでございます。こちらの回路に問題が発生したらしく、現在は遮断されている模様…。」

 

「ヴィクトリア家政の誇る執事様が、回路のひとつもくっつけられないのかね?」

「…修理は可能でございます。ですが、少なくとも回路図が必要になるかと。このタイプの回路図であれば、以前に見たことがありますので。

とはいえホロウ外との連絡手段がない以上は…。」

 

リンにチラチラと視線を送るライカン。どうやらここは、プロキシとしての面目躍如の働きを見せるときのようだ。

 

「簡単簡単、任せて!」

 

手早くホロウ外のアキラと連絡をとり、回路図をダウンロードしていく。

 

送られてきたデータを確認して、ライカンが満足げに頷く。

 

「感謝致します、プロキシ様。それでは、回路の修理を開始しましょう。」

 

 

 

 

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

(何かにひらめくVV(ビビアン)BB)」

 

「「「(うるさっ!!!?)」」」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!待って!あの、さっきから何か引っ掛かっていたのですが…ようやくわかりました。」

「ビビアン、俺としては屈伸でおかしな音をだすお前の膝のほうが引っ掛かるのだが?」

 

「ホロウの中から外と通信し、回路図のデータを入手できる…。そんな芸当が可能なお方はただ一人…!」

 

「無視か…。」

 

「あの…あなたのお名前って…もしかしてその…『パ』で始まって『ン』で終わったり…!?

ありえないことはわかっているのです、ですが、ですが…こんなことができるのは、やはりあのお方に他なりません…。

あなたのことは、優れたプロキシで、とてもいい人だと思ってはいました…まさか、ほんとにほんとに、『パエトーン』様なのですか!?

そういう…関係だったのですか!?」

 

顔を赤らめ、熱い視線をリンに送るビビアン。

 

その様子をみて、これ以上隠すのは彼女のためにも良くないと、リンは正体を明かすことを決心した。

 

 

 

 

 

 

「うん、そうだ「そうだよ(便乗)。」

「…」

 

「…空!」「…気!」「…読!」「…め!」

肝心なところでカミングアウトを被せる三浦の尻に、リン・ヒューゴ・木村・野獣のタイキックがさく裂した。

 

 

「信じられない…!『パエトーン』様!あの、わたし…もうずっと前からあなたのファンでしたスギなのです!ああ、『パエトーン』様がずっとそばにいたのに、全く気づかなかったなんて…夢みたいなのです!あなたの…いえ、あなた様の、サインなんか頂いてしまってもよろしいでしょうか?あと、一緒にお写真とかヴォイスドラマ企画とか…!それと、それと――」

 

「いいよ。ただ、まずはホロウを出てからにしよっか。」

「あっ、ごご、ごもっともなのです…!すみません、わたしったら舞い上がっちゃって…。」

 

「無理もなかろう。憧れの人物と対面してしまってはな。」

 

「俺も世間に名乗り出る…出たほうがいい?」「多分あんたが名乗り出たらブーム終わるよ。」

 

「だが先を急ぐべきだ。ホロウは歓談に適した場所でもないからな。」

 

先に進むことを選択した一行だが、歩みつつもビビアンの興奮は醒め止まない。

 

「プロキシさんが『パエトーン』様で、『パエトーン』様がプロキシさんで…!これは夢なのか、現実なのか…。暑い真夏の夜、加熱した欲望は、ついに危険な領域へと突入してしまいそうなのです…!お気を付けください。『パエトーン』様!『パエトーン』様、わたしがお守りするのです!『パエトーン』様、ご気分は?お疲れでしたら休憩なさいますか?喉渇いた…喉渇かないですか?この辺にぃ、美味しいパスタ屋さんの屋台、来てるらしいのです。」

 

押し寄せるエーテリアスを蹂躙しながら怪文書を垂れ流すビビアンに、リンは感謝しながらもドン引きした。

 

 

「あ、あはは。お…お気遣いどうも。けれど私はこの通り、元気だから。」

 

「はわわわわ。パエトーン様に気遣われてしまったのです…。

 

と、というか二人とも!さっきからなんですの私を見るその生暖かい眼差しは!?

さてはパエトーン様の正体はずっと前から知っていましたね!?」

 

顔を真っ赤にしたビビアンがヒューゴと氷崎を指さすも、二人は悪びれることもなく、「何って…怪盗の、ライフですよ!人生そのものですよ!」「お宝には自身の手で真実に辿り着くほうが、よほど意義があるというものだ。」と告げた。

 

 

 

順調に進むかに見えた探索だったが、再び固く閉ざされた扉が彼等の行く手を阻んだ。

 

『マスター、前方の仕掛けは少々複雑です。通過には、離れた3か所にある装置をそれぞれ起動する必要があります。時間を節約するため、三組に分かれて同時進行することをお勧めします。』

 

そして運悪く、今度の扉は外部から回路を入手して即完了とはいかないようである。

 

「3か所にそれぞれ行って、仕掛けを解かないといけないのか…。」「三回だよ三回。」

 

「さ、三組に分かれるのですか?ではプロキシ様は、わたしがお守りするのです!」

 

「じゃあもう一か所は僕ら迫真空手部が――。」

テキパキと担当を決めていく一行。

 

 

 

 

「では、残る1か所は私が――。」

だが、ライカンが名乗り出たときに異議を唱える者がいた。

 

「あ 待ってくださいよ。ライカンはんはヒューゴはんと一緒に行ったほうがいい…良くない?」

 

野獣先輩が、ライカンとヒューゴを一緒に行動させることを提案した。

 

「どういうつもりかね。…君からこんな仕打ちを受ける謂れはないはずだが?」

 

気の乗らない提案にヒューゴが眉をひそめるが、野獣は不満気に腕を組んで反論した。

 

「あんたたちさっきから、歪みあってばっかでやりませんねスギぃ!

そんなんじゃ咄嗟のときにこっちも安心して連携できないじゃんアゼルバイジャン。

ホロウん中でそんなことしてる場合じゃないってそれ一番言われてるから。

反省して、どうぞ。

 

 

窓際行って、…シコれ。」

 

その言葉にライカンとヒューゴはバツが悪そうに顔を見合わせ、渋々といった様子で部屋の隅でペタペタと四股を踏み始めた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そっちじゃないでしょ!?

いやホロウでアレされても困るけど。」

 

男前二人が雄々しく四股を踏む様はそれはそれで見応えがあったが、今はそんな場合ではない。

 

「?? パエトーン様、他にも『しこ』などございましたか?」

 

不思議そうに首を傾げるビビアンの純粋無垢な瞳を、彼らは直視できなかった。

 

「んまぁ、そう、よくわかんなかったですね。(乙女を慮る女の子の鏡)」

「嗚呼。ビビアンは綺麗なままでいてね。」 

私はもう汚れちまったよとリンは内心で続けた。

 

 

「パエトーン様、そんな、綺麗だなんて...///」

「ビビアンはん、ホモコロリいる?女の子同士、安くしとくぜ?」

「おいそこの汚物!俺の相棒に余計な前科を追加するのはやめろ!」

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

一行が目当てのホロウの裂け目を潜り抜けると、開けた場所に飛ばされた。

 

そして、その先にこそ目的のものが鎮座していた。

 

 

 

 

「この、繭みたいなものは…」

 

「皆様、ご注意ください…!私の見間違えでなければ…その中にいるものこそ、サクリファイスでございます。

…もし目覚めたとしたら、非常に厄介なことになるでしょう。」

 

金色に輝く結晶化した繭の内側で、怪物が静かに胎動していた。

 

「相手モンスターを吸収して装備するコントロール奪取はサクリファイスの十八番!恐ろしいモンスターだゾ…。」「だ、大丈夫ですよ!いまどき対象を取る除去なんてチェーンして不発にさせればナオキです!」「サウザンドアイズのほうも禁止解除されて10年くらい経つし、多少はね?」

 

「待って、それでは…ブリンガーのノートに記してあった地点には、どこもこのようなサクリファイスが一体ずつ眠っているということなのですか?」

 

ビビアンがたいして面白くない空手部のボケをスルーしつつブリンガーの手記を震える手で捲って、顔を青ざめさせる。

 

「…もしそうなら、現時点でわたしたちが把握できているだけで、十数体ものサクリファイスがいるということになるのです!

休眠状態とはいえ、讃頌会にはこれらを目覚めさせる手段があるはず…。サクリファイスがホロウの外でも存在できることを考えたら、とんでもないことではないですか!」

 

何十というサクリファイスが目覚め、人々の暮らしている場所に現れるようなことになれば、旧都陥落に匹敵する大災害へとつながるころは想像に難くない。

 

 

すぐさまサクリファイスの破壊に着手しようとする一行だが、まるで見計らったかのような形で邪魔者が現れる。

 

「サリファイスを見つけてくれて感謝する。だがすまないな、そいつがお前たちのものとなることはない。」

 

武装した一団を引き連れ現れた身なりの良い紳士には、見覚えがあった。

 

 

 

「…あの鼻持ちならない変態おじさまなのです!どうしてここに?」

「やべえ、ホワイトマンじゃん。」

 

「ハルトマンだ!いい加減覚えろ!お嬢さん、言葉と友人の選択肢には気をつけたほうがいい。」

 

そこに現れたのは、大金をはたいてバカ乳首像を購入した大富豪ハルトマン・レイヴンロックその人であった。

 

「あなた様の目的は、最初からこのサクリファイスでしたか…。

ずっと我々を尾行していたのですね?それも慎重に距離を保って…。私としたことが。」

 

ドジを踏んでしまったとライカンが苦虫を食い潰したような顔を浮かべる。

 

 

「オオカミのシリオンはやはり鋭い。

だがここまでうまくいったのはひとえに、君の元相棒があらかじめ君たちの情報をリークしてくれたおかげだ。」

 

「私の…元、相棒?」

その言葉に、ライカンが目を見開く。

 

 

 

「そう呼ばれるのは些か気に食わないがまあよかろう。」

 

肯定するようにヒューゴが一歩前に出て、ハルトマンのそばに立つ。

 

 

「ハルトマン殿と俺は、事前に取り決めを交わしたのだよ。

そういうわけだから皆…どうかこのサクリファイスを俺たちに譲ってはくれないだろうか?

もちろん拒否してもかまわない――その場合は、こちらも強引な手を使うしかなくなるがね。」

 

 

「その男に、一体何を渡したんですか!」

 

「サクリファイスについて、現時点で俺たちが知りうるすべてだ――。もちろん、あのコアについてもな。」

 

「人間の屑がこの野郎…」「でも…どうしてそんなことを?」

 

ビビアンの疑問に、ヒューゴは「当然だろう?」とでも言いたげな表情で肩を竦める。

 

「簡単なことさ。俺は『上』に行きたいんだ。

こちらのハルトマン殿は、俺にTOPSへの仲間入りをするチャンスを約束してくださった。こんな好条件を拒むやつがいると思うかね?」

 

「ははは。残念だったな!

会社のブログで『自分を売る』などと自己PRで嘯いておきながら先輩を売り飛ばすような畜生*1でなければ、TOPS(ニッペ)ではやっていけないのだ!*2

 

さて、目撃者には消えてもらわねばな…。やれ。」

 

ハルトマンが引き連れてきた武装集団が一向に銃口を向けるが、彼らが引き金を引くより先に迫真空手部の拳がその鼻先を粉砕する。

 

「この畜生めがァ!」

憤怒の表情で放つ三浦の裏拳が、ナイフを以て襲い掛かる兵士を壁の染みに変える。

 

「追いの木村、加速します。」

その背後では、木村が目にも止まなぬ高速体術で大勢を翻弄していた。

 

「ん、そうです。そして天は鳴き、大地は震えるだろうね。」

そして野獣の剣が嵐となって蹂躙する。

 

 

 

「くそ、なかなか手ごわいな…!ヒューゴ!ボサっと見ていないで、お前も手を貸したらどうだ?

それと約束通り、サクリファイスのコアをさっさとよこせ!」

予想外に手強い迫真空手部に業を煮やしたハルトマンはヒューゴに加勢を言いつけるが、当の本人はどこ吹く風である。

 

「……約束?なんのことやら皆目わからないな。

貴公、名をホワイトマンというのだろう?

俺が約束したのはハルトマン氏だ。」

 

突然のヒューゴの乱心に、ハルトマンが怒りを滾らせる。

 

「貴様‼ふざけるのもいい加減に…!」

「そうやってすぐに感情を露わにするのは止めたまえ。ポーカーフェイスは魑魅魍魎の跋扈する新エリー都で必要不可欠な技術だぞ。歌姫のマネージャーあたりに教えを乞うてはどうかね?

 

 

まあ、それも致し方無いか。何せ貴公はレイヴンロック家の継承資格を持っていないのだからな?」

 

その言葉に、ハルトマンが驚愕と困惑の色を浮かべる。

 

 

「まだ俺の正体に気づいてないとみえる。ひとつヒントをやろう。

俺はヒューゴ…。ヒューゴ・ヴラド…レイヴンロック。」

 

「バカな!?お前が…わが一族の人間だと!?」

 

「認知されることのなかった落とし子として、俺の体には貴公と同じ血が流れている…。

 

俺こそが、レイヴンロック家の正当な継承者だ。」

 

 

*1
根も葉もない噂です

*2
そんなことはありません




(ちち)後継(こうけい)

 (こころ)(つえ)

 (てき)なのか…!?
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