「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
山本三十六普通(1884~1943)
レイヴンロック家に連なる忌まわしい血脈を明らかにしたヒューゴ。
その目的はレイヴンロック家の家督を簒奪者から奪取し、TOPSにおいて頂点を目指すことであると告げる。
そのためならば、現当主であるハルトマンを亡き者とすることも、TOPSの対抗馬であるメイフラワー市長を追い落とすためであれば讃頌会の企てるサクリファイスによるテロの幇助すらも厭わない、と。
未曽有の混乱を防ぐため、そして嘗ての師との約束を守るため、ライカンたちはヒューゴとの決別を選択するよりほかに道はなかった。
闘争の末ライカンの手によって胸を貫かれたヒューゴは、ホロウに呑まれて消えていった。
そして、ハルトマンはその混乱に乗じてサクリファイスやヒューゴが秘匿していたコアを持ち去ってしまい、一行の探索は無残な結果に終わってしまうこととなった。
さらなる調査を続けるべく、ライカンと氷崎はそれぞれ独自のルートを探るとのことだ。
沈痛な面持ちの氷崎の「ビビアンを頼みます。」との頼みをパエトーンと迫真空手部は聞き入れ、黙り込んだ彼女をビデオ屋まで案内した。
一人では居たくないという彼女の願いもあり、ビデオ屋の一室に彼女の寝床を用意して一夜を明かした次の朝。
「宴だアァアアアアアアアアアアアアアア!!」「みんな踊れ~~!!」「ダイナモ感覚☆ダイナモ感覚☆yo yo yo yeah」「ビール!ビール!あっつー↑!」「「あ~はやくビール飲もうぜ~。おい、冷えてるか〜?」「んああ大丈夫っすよ、バッチェ冷えてますよ。フゥー↑」「DJDJ…(届かぬ想い)」
「五月蠅いな」「五月蠅いよ」「「五月蠅いのです」『五月蠅いんじゃい!』
喪中だのなんだのしったことかと言わんばかりに迫真空手部が荷物を抱えてRandamPlayを訪ねてきた。
「俺が来ただけで、嬉しいくせに。」「うれしいダルォ!?」「ま、多少はね?」
勝手知ったる我が家だといわんばかりに店の奥の居住スペースに上がり込み、酒やら料理やらの準備を始める迫真空手部。
「元気出せよホラホラホラホラホラホラ。」「よく考えたら親睦会もなにもやってませんでしたからね。」「妹とシエナさんの娘さんも連れてきたゾ~。ほら、見てないでこっち来て。」
そういって三浦の大きな体の背後から出てきたのは、金髪に赤目の少女と、白い猫のシリオンの少女だった。
「ああ、柳さんと蒼角が言っていた妹さんだね。」
「そーなの。」
赤目の少女・
「あ、あはは…。口癖おんなじだ…。」
「可愛いだルォ!?」
その横でシリオンの少女がビビアンに向かう。
母親と瓜二つの容姿に、ビビアンが目に見えて狼狽えた。
「あ、わ、…私。
…ごめん…なさい。
あなたが、ママにちゃんとお別れをいう時間すら…作ってあげられなかったのです。」
しかし意気消沈するビビアンに、シリオンの少女はゆっくり被りをふった。
「ううん。ママを病院に運んでくれた金髪のトラックの子が言ってたよ。
お姉ちゃんたちがママを危ないホロウから連れて帰ってくれたって。
お姉ちゃんたちが居なかったら、ママはホロウの中に消えちゃってなんにも残らなかったって。
そしたら、ママが私にお金を残すことも出来なかったって。
だから、ありがとう。」
そういって、ビビアンの手を握る。
「そんな…私。私が…。」
「なんだよVVAN嬉しそうじゃねえかよ。」「いやそんな…。」
野獣の言葉を否定しつつも、ビビアンの口には静かに笑みが浮かんでいた。
相変わらず邪兎屋とは別ベクトルにカスと好漢を反復横跳びする迫真空手部に兄妹は苦笑しつつ彼らの持ってきた品を並べて準備を手伝っていると、インターホンが鳴った。
「おや、おかしいな。店には休業の張り紙を出していたんだけど。」
怪訝そうにドアに向かうアキラに野獣がついてきた。
「あ、待ってくださいよ。俺がルミナスクエアの煮釜に火鍋セット注文してたんすよ。」
「他人の家に勝手に配達頼んだのかい…(困惑)。全く…。」
そして玄関をあけたアキラの目の前にいたのは、ルチャドールのマスクを被り攻殻機動隊の笑い男マークが描かれたTシャツを着ている変態だった。
「なんだこのオッサン (驚愕)!?」
「何言ってんよ。煮釜のマスクド永谷園さん じゃんアゼルバイジャン。
お届けありがとナス!ご苦労様ッス!」
さも当然の如く応対し、野獣は怪しいおっさんから荷物を受け取る。
箱に印字されているロゴは、確かに煮釜のそれだった。
「!?だ…だって煮釜の店長は辛味ちゃんだったはずでは…?」
アキラの記憶の可愛らしい女の子と目の前の怪しいおっさんはどう見ても同一人物ではない。
「抵抗しても無駄アルヨ。諦めるアル。」
「諦めるアル!?仮にも中国資本のゲームでこんな口調のキャラが許されるのか!?」
「いや自分タイミーなんでちょっとわかんないっす…。でも原作でもこんな喋りだった気がするネ。」
「あったま痛くなってきたな…。」
どんどんクッソ汚くなる世界観に頭を抱えるアキラを尻目に、野獣は火鍋セットを開封して「白菜かけますね。」とちびっ子二人と仲良く準備を始める。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あのさぁ…(呆れ)」
「…なんです?」
「親睦を深めようってときに初手で
「リンちゃん!?僕にボンビー擦りつけるながらそんなこと言っても説得力がナオキですよ!?」
「ふふん。乗っ取りカードを切るのです。
木村の持っているシモキタザワ駅の撮影スタジオを奪うのです!」
「やめてくれよ(絶望)」
「アメリカ発祥が過ぎるだろ…。」
お腹一杯食べて遊び疲れた少女二人がソファーで可愛らしい寝息を立てる中、一行は課題をサボる大学生が如く酒盛り暴食ゲームの三連コンボをキめていた。
「そういえばビビアンはなんでパエトーンのファンなんだゾ?」
「そういわれてみれば珍しいですよね。
パエトーンは有名っちゃあ有名ですけど、ビビアンさんはどっちかというと探索より戦闘側ですもんね。
六課とかあの辺に憧れるならわかりますけど。」
「んにゃぴ。でも大丈夫かよ?
俺らが言えた口じゃねぇけど、プロキシって結構なアウトローな稼業だぜ?」
子供たちが寝静まったこともあり、話はビビアンのパエトーンへの憧れの話に波及する。
「…ほんとに貴方たちがどうこう言えた立場ではないのです!
そ、それに私が最初にパエトーン様に惹かれたのは、伝説のプロキシだからというわけではないのです。」
ポツリポツリとビビアンは過去を語り始める。
小さい頃からずっと不幸をもたらす子だと見なされてた彼女のまわりでは、どこであろうと予期せぬ出来事が起きた。
多くの場所を転々とし、その度に同じ結末を迎えてもはやどこへ行けばいいのかも、わからなくなったある晩、とあるスレッドで自分のことが議論されているのを見つけたのだという。
「そこではわたしの知っている人も、知らない人も、わたしが呪いをもたらしたのだと決めつけて…。
ある人は悪意から揶揄し、ある人はわたしに消えてほしいと願い、ある人は邪な憶測を広げ…まるで、わたしの存在そのものが災いであるかのようでした。
私なんて消えてしまえばいいんだ、と…そう心に決めたときです。
スマホが鳴りました。
この世界が私にくれる最後の言葉、それが誰からのものなのか気になって、最後に、見ておこうと思ったのです…。
それは、あなたからのメッセージでした。
『パエトーン』様。」
ビビアンがリンを憧れと感謝を孕んだ眼差しで見つめる。
「私が…?」
「はい。もう一人の「パエトーン」様にも確認済みなのです!
その期間、アカウントを使って投稿をしていたのはあなたのほうだと。
ですが、きっとあなたは覚えていらっしゃらないと思います。
あれは、なんでもない日にネットに現れた、なんでもない投稿に過ぎないのですから。
それでも、わたしはその夜、ようやく自分がどこへ向かうべきかを知ることができたのです――。
あなたが歩んだ道を歩き、あなたが見た景色を見たい。いつかあなたの前で、そのすべてを直接伝えられるときまで。」
「そういう...関係だったのか。」
「え?リンちゃん、仕事用垢(非合法)で赤の他人にレスバ仕掛けたんですか?」
「怖いなーとづまりしとこ。
あんま派手にやるとスレ民に開示されっから、気をつけた方がいいと思うけどなぁ俺もなぁ?」
「私としてはあんた達がインターノットで消息どころか卒アルの流出すら起きてないことに驚きを隠せないよ。」
リンが三馬鹿に呆れつつ彼らが用意した大量の料理の中から寿司桶に手を伸ばす。
「んぐっ!?なにコレ!?」
しかし寿司を嚙んだ瞬間、口内に違和感が走って吐き出した。
ティッシュの中でかみ砕かれたシャリの中に紛れ込んでいたのは、箱の賢者と名乗るゴミ箱に住む変人が集めている協会記念コインだった。
「あ、当たりだゾ。」
「当たり!?当たりって何!?超怖いんだけど!?」
「サプライズで中に景品仕込んだんスよ。ガレット・デ・ロワってやつっスね。」
野獣と三浦はしたり顔で腕を組む。
「寿司に入れた時点でガレット・デ・ロワでもなんでもないよ!?
てかこれだいたい野ざらしの段ボールとか植木鉢ん中に入ってるやつじゃん!?
素材交換に使えるからありがたいけど、渡し方考えなよもう…。」
「ポッチャマ…。暗号化マスターテープはデカすぎて食い物に仕込むスペースなかったんだゾ…。」
申し訳なさそうに三浦が顔を覆う。
「なんでそんなに食べ物に詰め込みたがるんだい…。」「努力の方向音痴すぎるのです…。」
「すいません許してください!
ほんとはポリクロームを詰め込めるだけ詰めっ詰め込もうぜって考えてたんだけどよォ…。」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「AKYS先生、時代は『仮想通貨』です。
先生、いまやビットコインは1ビット何百万ディニーもしますよね?
ですが、そんなビットコインも始まった2009年当初は、なんと1ビット0.07ディニーの価値しかなかったんです。」
もし、その当時ビットコインを100ディニー、いや10ディニーでも買っていたら…。
そう考えると夢、ありません?」
「でもそれはたらればの話ゆんね?
今時ちゃんとした仮想通貨でビットコイン並みの
価格高騰なんか起きないゆんよ?
お前『敵』ゆんか!? 」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「やはり慣れないことをするべきではありませんでした…。
まさかあの仮想通貨、114514コインがあんなナオキな大暴落を起こすなんて…。」
「「「『あっ(察し)』」」」
意気消沈する迫真空手部の表情からすべてを察した兄妹・Faily・ビビアンはそれ以上なにも言えなかった。
「き、君たちそんな素寒貧なのになんでこんなに一杯ごちそうを…。」
「あ、それはむしゃくしゃしてその辺のチンピラホロウレイダーをシメてガン掘りしたときにカツアゲしたあぶく銭の産物なので気にしないでください。ナオキキキキキ。」
「今日の宴会代もレシート取ってあるからあとで割り勘で請求するゾ~。」
「俺たちは転んでもただは起きないってはっきりわかんだね。」
「ええ…(困惑)」「ほんっっっとクズね、あんたたち…。」「アホなのです。」
『仮想通貨には気をつけよう!』(Faily注意喚起シリーズ)