迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

6 / 50
第6話 クスリ屋のひとりあそび

 

カリンと別れた猫又、空手部、パエトーンの5人は、ホロウ内のトンネルで低速走行する電車の上にいた。

 

隠密と俊敏に優れる猫又が車内に先んじて潜入した数分後。

 

「緊急事態だ。」

 

猫又が天井のハッチから顔を出した。

 

「偽装治安官⁉」

「ああ、会話を聞いた。中身はヴィジョンが雇ったチンピラだ。」

エーテリアスの鎮圧目的なら、変装に意味はない。

それはつまり、エーテリアス以外を相手取る意図があることを示す。

 

万が一爆破現場に生存者がいた場合、"鎮圧"しなければならないのだから。

 

「とことんクズですね、あいつら。

もう許せるぞオイ。」

 

憤る野獣は、なぜかスマホを操作しだした。

特殊なロックを解除すると、スマホはまるでハンカチのように柔らかくなる。

 

一時期話題になった超弾力性液晶画面。通称やわらかスマホだ。

 

「あのふざけたスマホ、本当に買う人いたんだ…。」

 

「プロキシ、やりませんねスギィ?

こんな便利な機能他にないぜ?ほら。」

 

野獣は懐から取り出した怪しい小瓶の中身をやわらかスマホに染み込ませる。

 

「超強力クロロホルム・ホモコロリ。成人男性がこいつを嗅げば114514秒は気絶するんだよなぁ。

速攻性で危険な後遺症も無し。やわらかスマホに染み込ませれば物的証拠は残らないってそれ1番言われてるから。」

「ねぇ、こいつ今すぐ世の為人の為本物の治安官に引き渡すべきじゃない?」

 

違法薬物・空手の技・猫又のみねうち。

 

鮮やかな手口で電車内で偽治安官を無力化した空手部と猫又は、列車を奪い避難民のいるところまで運転させることに見事成功した。

 

 

「やるじゃない、あんたたち!」

大きな手土産をもって帰還した猫又を、ニコは笑顔と称賛で出迎えた。

 

 

「住民を避難させる方法は手に入れた。

でも、この人たちの証言だけじゃ手札が足りない。

ヴィジョンにもみ消される可能性が高いわ。

あいつらを一発で黙らせる、起死回生の一手があれば…。」

 

顎に手を当て思案するニコ。

悪徳企業ヴィジョンの最大のアキレス。

それに足りうるものといえば…。

 

「パールマンを拉致する。それがベスト。」

 

ヴィジョンのCEOであり、今回の計画の発案者・パールマン長官。

 

彼を捕らえ、責任者自身に計画を止めさせる。

自らの命を天秤にかけられれば、承認せざるを得ないだろう。

 

しかし、彼奴の身柄はホロウの外の本部にある。

内部には武装した兵士が常駐し、誘拐は困難を極めるだろう。

今の人員でそれらを突破し、帰還するのは不可能だ。

 

「リスクがデカすぎる。他の手を考えるしかないわね。」

 

「ん?パールマンの身柄が欲しいんだゾ?」

「ええ、そうよ。三流悪党が一番惜しいのは自分の命ってことくらい、

池沼のあんたでもわかるでしょ?」

 

「パールマンはここにいるゾ。」

「はいはい、ここにいれば万々歳よ。

出来の悪い二次創作じゃあるまいし、そんな都合のいい展開があるわけ…。」

 

「おい、ニコの親分…。三浦の持ってるバッグの中身、パールマンじゃね?」

 

「ちょっとビリー。馬鹿が感染ったんじゃない?そんなわけが…。

 

いや、これまじでパールマンね!?なんで?どうして?」

 

ビリーが震える手で指さすバッグのなかに納まっていたのは、ヴィジョンのCEO。

粗チンと見紛うほどの小男。

今回の事件の首謀者パールマンその人であった。

 

 

 

 

話は猫又と空手部が列車を制圧した時間にまでさかのぼる。

 

「このままヴィジョンの本部に突入する!?

正気かお前ら!?」

 

猫又の困惑も無理はない。死にに行くようなものだ。

 

「(戦う気は)ないです。」

「ちゃちゃっと行ってパールマンだけ拉致るだけゾ。」

「この装備、僕らが変装するのにぴったりですよ!

元々治安官に偽装してる奴等ですからね。

偽物の中にさらに偽物が紛れてるなんて、気づく奴はナオキですよ。」

 

 

「Fairy、どう思う?」

プロキシは、AIの意見をあおぐ。

「問題が一つあります。ここから本部まではそう遠くありませんが、邪兎屋のいるカンバス区と本部の道は封鎖されています。

空手部がパールマンの身柄を確保し、本部からホロウ経由で徒歩で戻った場合、確実に爆破時刻に間に合いません。」

 

「奴らの車は奪えない?」

 

「不可能。エンジン始動・位置情報・発車記録を含めて管理され、発覚後即座に自動運転で連れ戻されるでしょう。」

 

 

しかし、木村はいたずらっ子のような笑みを浮かべる。

 

「谷岡さんに車で本部近くに来てもらえばいいんですよ。

あの黒塗りの高級車、ばっちり対浸蝕コーティングされてましたよ。」

 

「やくざの副組長を足に使うとか狂ってるだろ…!

いや、そもそも時間・距離・連絡手段!

何もかも足りないんだゾ!

 

ホロウ外はいま、妨害信号まみれで通信できないんだ!奴らの通信機を奪ってもそこから車を走らせてちゃ間に合わない!今すぐにでも連絡しなきゃ!

でも、それも無理だ!

 

ホロウ内でリアルタイム通信なんて芸当ができる奴はこの世に一人しか!

………あ!!」

 

「そうです。ホロウ内のリアルタイム通信技術を持つのはこの世でただ一人!

そしてその人はいま僕らの目の前にいるんです!」

 

木村と猫又の目線の先には、一体のボンプ。

新エリー都、最高のプロキシ。

 

「猫又、谷岡さんの番号教えてくれる?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。