Sie・Brechen・Online〜恋に初心なふたりと紡ぐフラグ回収〜   作:海澪

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10.世界の真実

 

【壁画の内容。一部崩れているため判読不可】

 

『はじまりは人々の██から始まりました

 

 人々は考えたのです

 

 悟ったのです

 

 至ったのです

 

 自分たちは()になるしかないと

 

 故に人々は神に成り変わることに決めました

 

 その計画に様々な人々が協力しました

 

 まずは自分たちで『人間』を作ることから始めました

 

 ですがそれは成功にまで至りません

 

 それはあまりにも『人間』と呼ぶにはお粗末だったからです

 

 『人間』らしい姿は持っていましたが、それはただの機械(にんぎょう)

 

 でした

 

 命令を待つだけの『人間』だったのです

 

 人々は苦悩します

 

 そこで人々は目を背けるために抱き合いました

 

 ()()()()は生まれるので願ったり叶ったりです

 

 それはとても簡単なことでした

 

 でもそれは人々が目指す『人間』ではないのです

 

 そこで再度どんな『人間』を生み出したいのか話し合いました

 

 結果、『()()()()()()()()()()()寿()()()()()()()()()()()()()()()

 

 が最適だと判断しました

 

 その点で見れば『機械(にんぎょう)』は『人間』でした

 

 人々はその『人間』を上手く作るために作り直しました

 

 あぁ、失敗しました

 

 また人々は作り直しました

 

 次の『人間』はニンゲンらしい『人間』でした

 

 感情はそれなりに持ち合わせ、最初の『人間』よりは自立的に動いていたから

 

 です

 

 素晴らしい! もっと作ろう!

 

 人々は賞賛し、躍起になり、より高度な『人間』を目指して作り量産しました

 

 そして人々は『塔』を作り始めました

 

 『塔』を作り終えた後も人々は心を満たすために

 

 動物たちを狩りました

 

 そこで人々は人々同士で争いが起きました

 

 ソレは自分たちのだと言い争い、果てには殺戮が

 

 争いをしなかった人々はそれを楽しんでみていました

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それがその人々の考えでした

 

 住処を追い出された動物たちは人々によって殺されました

 

 人々はその命を有り難るわけでもなく、自分たちのお腹を満たすために食べまし

 

 た

 

 そうして人々の悪意(よくぼう)という悪意(あくい)はどんどん、どんどん、

 

 どんどんと膨れ上がっていきました

 

 とうとう動物たちは少なくなり、困窮した人々は人々を食べ始めました

 

 するとどうでしょう

 

 気付けば人々は取り返しのつかない事態にまで発展しました

 

 それでも人々は反省することはありません

 

 人々は『()』なのですから反省はしません

 

 ここでまた『悪意(あくい)』が澱のように溜まっていきます

 

 人々は嵐に見舞われますが対策は立てません

 

 だって自分たちは死ぬわけじゃ無いから

 

 ですが何もしなかったから何かが出てきました

 

 『悪意(かみ)』が形となり誕生してしまいました

 

 それは人々が追い求めた存在でもありました

 

 █████████████

 

 ███

 

 ████████

 

 ████████████████████

 

 ███████████████████

 

 大地は選択しました

 

 ███████████

 

 人間に救いを与えます

 

 でもそれは忘れることはないように

 

 これから生まれる人々に知ってもらう為に

 

 大地は人々が作り上げたものを天空に押し上げました

 

 『悪意(かみ)』諸共、天空へ

 

 ███████████████

 

 ███████████████

 

 ███████████████

 

 これから来る人々を█████

 

 『貴様たちの██████』

 

 『悪意(かみ)』はそう伝えました』

 

──────

────

──

 

 それは凄惨なものだった。信じがたいものだった。そんなことあっていいのかと疑った。けれど……それは、現実でも起こりうることで、過去起こったことものもあるものだ。読んでいる最中に顔が険しくなっていたのだろう。ヴェインは心配そうに見つめていた。

 

「ど、どうしたのよ。そんな顔して」

 

「…………この壁画の内容、知りたい?」

 

「え、ま、まぁ……気になるかならないかで言えば大変気になるけど……。でもあんたの顔を見てるとひどいことが書いてありそうね」

 

 僕はなるべく気分を落ち着かせるように息を吐いてから解読出来た部分を掻い摘んで教えた。ヴェインは先ほどの僕のように険しい顔をしていった。

 

「な……なによそれ。そ、んなの自業自得もいいとこじゃない!」

 

「それは、そうだね」

 

「それでなんで被害があたしたちが被るわけ!? 理不尽じゃない!」

 

「……でもそれがこのSBOの、この世界の真実なんだ。ううん。というより、これは本当に開発側が作ったことなのかな?」

 

「どういうこと?」

 

「だってこのゲームを作ったのはアサのご両親の会社なんだよね?」

 

「え? えぇ、そうよ」

 

「…………なら益々、こんな悪趣味な……いや、待って。こんな感じの内容どこかで……そうだ。『()()()()()』……旧約聖書に記されてる『バベルの塔』をモチーフにしてるんだよこれ」

 

「んぇ? ご、ごめん。それ何?」

 

 僕はヴェインに『バベルの塔』について教えた。

 

「『バベルの塔』は旧約聖書の創世記に記されてるもので、正確には『街とその塔』だとかで記載されてて、ストーリーは単純に言えば、ノアの方舟で逃れた人類は塔を作ろうとするんだ。

 確かそれは神に選ばれた人がノアで、そのノアによって逃げ延びた人たちなんだから自分たちは()()()()()()。だから塔を作ろう。そうすれば神に届くんじゃないか。っていう傲慢さで塔を建築して、それが神の怒りに触れて人々の意思疎通をごちゃ混ぜにして、離散させたんだ」

 

「それって……つまり、あたしたちがいる今の島も全部そいつらに作られたってこと?」

 

「……いや、どうだろう。この壁画を見る限りだと人々は『()()』を作っていた。それでその完成したあと、人々は躍起になって環境を変えたんだ。環境のヒエラルキーを変えるなんて、モチーフから考えれば傲慢すぎるよ」

 

 恐らくこの浮いてる島々はその()()がランダムに選定したものなんだろう。

 

「……あたしたちは、何を見せられて……」

 

「ゲームの世界とはいえ、これは頭が痛くなる内容だよね……」

 

 まぁ確かにキリスト教徒やよほどの読書家やクリエイターだとかでも無いと聖書の内容なんて調べもしないか。

 

「ねぇ。これ、アサ様たちには……」

 

「見せよう。さすがに僕たちの手には負えない」

 

 首を振り、せめて撮れたらとスクリーンショットをして、救済措置なのだろう。転移陣を見つけて、その場を後にした。

 

 

 

 転移陣で戻ったあと、アサのもとに急いで向かった。アサは膝を抱えて待ってて、僕たちを見れば安堵してか大号泣して僕とヴェインで慰めた。

 

「……ズズ、っ……それで……。このまま進めるのか?」

 

「いや、帰ろう。僕のポーションは落ちた矢先で全部ダメになった。ダメージは負わないつもりでいてもミスひとつが命取りだしね」

 

「分かった……。なぁ、ミカ、ヴェイン。もうあんなことはしないで? 私もひとりにはしないで?」

 

 アサの態度に2人して顔を見合わせ苦笑する。

 

「勿論だよアサ」

 

「当たり前じゃない」

 

「……よかった」

 

「それじゃあ帰ろう? アサ」

 

「ん。分かった。でも……ん」

 

 アサが手を出してきた。薄らと何をして欲しいのか理解したけれど……。

 

「流石にダンジョンの中でそれはキツくないかなぁ……」

 

「やだ。してほしい」

 

「なんでこんなに我儘なのよアサ様」

 

「ごめん。僕も分からない。でも……仕方ない。帰りは頼める?」

 

「はぁー……。分かったわよ。モンスターはあたしがやったげる。でもリアルでパフェ奢ってもらうからねミカ」

 

「了解。それでいいよ」

 

 アサの手を握り、ヴェインに索敵と退治を任せてダンジョンをあとにした。

 

──────

────

──

 

 翌日の放課後、阿佐上(あさがみ)さん、畔倉(あざくら)さん、斉藤くん、杏香(きょうか)を図書室に呼んだ。

 

「昨日、詩能(うたの)さんと玲音さんとでアインスブーセのダンジョンに行った時に罠にかかって、罠のあった道が崩落したんだ。それでその下で見つけたものなんだけど、これを見てほしいんだ」

 

 あのあと、スクリーンショットしたあの壁画をハードディスクからスマホの方に転送してその画像を見せる。

 

「え、待って? お兄ちゃん、確か罠見破るやつ持ってたよね?」

 

「うん。だけど感知したのと発動したのがほぼ同時なんだ」

 

 とはいえかかったのは僕じゃなく玲音(れいん)さんだ。それを僕が引っかかったことにした。嘘をいうのはちょっと気が引けるけど出来事的には大差ないのだからそれはそれだ。玲音さんは申し訳なさそうな目をしたけど見ないフリ。

 

「なんだこの絵。すげぇ良くわかんねぇけど」

 

「これはSBOの世界の始まりなんだ。多分あの崩壊もそれを見せるためのギミック、って考えても良さそうかな」

 

「罠なのに?」

 

「罠なのに」

 

「それに落ちたら高さにやっては即死だろ?」

 

「ギリギリ生きてた」

 

「あの装備様々だな」

 

「ほんとにね」

 

 僕はこの壁画の内容を2人にも教えた。斉藤くんは「なんじゃそりゃ」と頭を抱えて、杏香は何か思いついたのだろう。

 

「それ、『バベルの塔』じゃん」

 

「え、杏香ちゃん知ってるの?」

 

「さすが、理和の妹だな」

 

「ほんとそうね」

 

「杏香は僕よりもいろんなゲームに触れてたらするからね」

 

 杏香は斉藤くんに『バベルの塔』がどういうものか教えていた。

 

「はー、なるほどなぁ……。そんでこれがどうしたってんだ?」

 

「これ、何かのクエストのフラグ……って言うんだっけ? そういうの。多分そうなんじゃないかなって」

 

「根拠は?」

 

「カン。だけど特にこの壁画の最後。『悪意』って書いてあるけどこれは多分、『神』って読むんだと思うんだ。それでその神が「今は見逃してあげるけど、近いうちにもう一度審判の時は訪れる」とかなんとかそんな感じに近いことを言ってるんだと思う」

 

 まぁ、ただの推論だけど。

 

「カンってとこにおいとは思ったけど……お前の推察を聞くに、信憑性は高そうだな」

 

「でしょ?」

 

「お兄ちゃんはこれをわたしたちに見せたってことはそのあるか分からないクエ受けるってことだよね?」

 

「勿論。だけど、あるか分からないってことは()()()()()()()()()っていうのと同義なんじゃないかな。つまりは残りの島も攻略する。そしてそのあとに訪れることが出来るんだと思う。どうかな? 僕と一緒にこの不確定なことに挑戦しないかな?」

 

 斉藤くんと杏香は顔を見合わせて、頷いた。

 

「「乗ったっ!!」」

 

 2人の答えに僕は安堵する。

 

「詩能さんと玲音さんもするよね?」

 

「あぁ。勿論だ」

 

「当たり前でしょ。やってやるわよ」

 

「良し。僕たちで今度の土日とか使って、第三の島以降を攻略しよう」

 

 全員の顔を見て強く頷く。『SBO』の世界の真実を知った今、これを知らなかったことなんて出来ない。このゲームはきっと。

 

──────

────

──

 

 SBO、第三の島──三獄砦(さんごくとりで)

 このフィールドに入った瞬間、とんでもない蒸し暑さが襲った。

 

「あっつ……!? えっ、こんなに暑苦しいの? 炎城のは全然そんなことなかったんだけど……?」

 

「冷感ポーション飲もうぜ」

 

「さんせー……んくっ」

 

「やはりここは何度来ても慣れん……」

 

「ほんとそうねぇ……早く切り上げたいところだわ」

 

 皆、冷感ポーション一本飲み下す。

 

「まさかこの装備でも暑さが貫通するなんてね……」

 

「それも防ぐのか?」

 

「そうだね。とはいえ、暑さも寒さも75%カットだからちょ〜っと暑い? とか寒い? みたいになるって感じだね。でもここはそんなものを無視して来る感じ」

 

「まるでサウナだよなぁミカ」

 

「うーん。ごめんニノマエくん。サウナ入ったことないや」

 

「んなっ……!?」

 

 そうして駄弁っているとヴェインが手を叩いた。

 

「はいはい。お喋りはここまでにして行きましょ。ポーションの効果時間あるんだし」

 

「そうだね。行こっか」

 

 ここは乾涸びた大地で、視界の至る所でマグマが噴出している。恐らく、いま僕たちが歩いているところも下はマグマ溜まりが流れていそうだ。そして、入り組んだ道の先にはボロボロの砦があった。

 

「ここって出てくるのって何?」

 

「リザードマンだな」

 

「リザードマン……?」

 

「トカゲが人型みたいなデカさで武器持ってるヤツね」

 

「でもそこまで厄介じゃないよ〜」

 

「戦い方のコツは炎城の時のスケルトンとあんま変わねぇと思うぜ」

 

「じゃあ安心だね」

 

 一度目を閉じ、息を吐いて意識を切り替える。良し。

 

「早速お出ましのようだね。相手は僕がしても?」

 

 全員頷いて、ぽんと背中を押される。それに驚き、隣を見ると、アサが微笑んでいた。その目を見つめて笑い合う。目を合わせただけで「行ってくるね」「行ってこい」という会話をしたのだと互いに理解する。

 

 ──────ザリッ! タッ。

 

 地面を踏み締め、地面を蹴り、長刀の鞘を左手で握りながら柄に右手を近づけた状態で肉薄する。リザードマンは途中で気づき、湾曲した剣を振りかぶる。

 

「──────シッ!」

 

 鞘から走らせながら振り下ろされる剣を弾く。返す刀で長刀を逆手で握り柄頭をリザードマンの腹に突き出す。

 

『ギュェェエエアアアア!?』

 

「フッ……!」

 

 リザードマンは声を荒げるように上げながら剣を振り回してくる。逆手を順手に戻しながら逆袈裟で再度剣を弾く。

 

「……!?」

 

 よろめいたリザードマンは背を向けたと思えば再度前を向きながら尻尾を振り回してきた。尻尾の振り回しの範囲外に出るように一度距離を取る。

 

 ────ふぅーーーーー。ありがたいのはそこまで強くはないこと。剣を弾きやすいし。

 

「……良し」

 

 だいたい動きは見た。装甲も薄い。外皮は刃が通るか分からないけどさっき柄頭で突いた時には柔らかい感触だったから、そこを斬れば良いか。

 

「ギャギャアァァアァアアァアアア!」

 

 リザードマンは咆哮を上げた。ザラリと嫌な予感を抱く。

 

「皆! ちょっとまずいかも!」

 

「あぁ! ミカの推測通りだ! 仲間を呼んだんだ!」

 

「駄弁ってる時間ねぇぞ! 来やがった!」

 

「こっちは任せて! お兄ちゃんはそっち集中して!」

 

「でも……」

 

「安心しなさい! あたしたちはあんたが思うほどヤワじゃないのよ」

 

 ヴェインの言葉にハッとして考えを変える。

 

「分かった。そっち頼んだ」

 

『了解!』

 

「団長さん、ミカのとこには向かわせねぇようにしよう」

 

「分かっている!」

 

 とはいえ、こっちにも2体来てることなんだよね。似たような装備してるのが1体。丸盾を持ってるのが1体。

 

「仲間呼ぶなんて、ちょーっと空気読めてないでしょきみ」

 

 そう毒吐きながら疾走する。先に身軽のリザードマンから屠ろう。

 

「キシィャァアアアッ!」

 

「シィッ!」

 

 リザードマンは唾液を撒き散らしながら剣を振り上げる。僕は左手で持っている鞘で弾き、ガラ空きになった腹に長刀を突き、グリッと捻り上げ、上に斬りあげる。返す刀でさらに振り下ろす。血振りをすると同時にそのリザードマンは倒れた。

 

 ────まずは1体。

 

『シィヤァアアァアアッ!』

 

 左から鳴き声とともに盾持ちが突っ込んでくる。まだ軽装が残ってるけど……多少の順番が変わっても良いか。

 

『キギィ!?』

 

 盾持ちの剣が振り下ろされる前に横凪で胴体を一閃し振り向きざまに残りのリザードマンに向けて蹴り、鱗の上からでも刃が通るのか試すのもあるが、思い切りぶつかったリザードマン2体に向けて長刀をぶん投げる。《投擲》のスキルが発動し、ものすごい速さで飛んでいき、容易に突き刺さっていくのが見えた。

 

「────、わーお」

 

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

 

 自分自身驚いた。まさかの成果だ。長刀を回収するために向かいつつアサたちの方に目を向ける。そっちも終わったようだった。

 

「おつかれ、ミカ」

 

「お疲れ様アサ」

 

「一瞬見てたがまさかそれを投げるとはな」

 

「いやー、実験として通るかなって。リザードマンって種はいわゆるドラゴンの亜種? みたいなものなんだよね。見た目的に」

 

「まぁそうだな」

 

「だから通るかなーって」

 

「それで通らなかったらどうするつもりだったんだ?」

 

「その時はその時かなぁ……?」

 

 リザードマン2体は消失し、その場に斜めに長刀が地面に刺さっていた。地面から抜いて、左腕を曲げ、肘辺りの裾で拭ってから納刀する。

 

「次は鱗の外から斬りつけたら通用するか、だね」

 

「ま、まだ試すのか?」

 

「うん。出来るだけ攻略の手札は増やしたいしね」

 

 アサは苦笑しつつ諸手を上げたのを察してこちらも右手を出してハイタッチする。

 

「おーい、そろそろポーションの時間切れるぞ〜」

 

「おっと。飲みながら進もう」

 

 そういえばここって安全地帯とか無いのかなと思いつつポーション片手に進んだ。

 

 

 

 砦フィールドをかれこれ1時間くらいかな。まだ全部をまだ見て回ることは出来ておらず、マップを確認すればグレーゾーンがまだ7割もあった。

 

「そういえばさ、ここってボス出るの?」

 

「出るとは聞いたな」

 

「そうね。詳細は分からないのよね」

 

「それまたなんで?」

 

「この特殊なフィールドのせいだね〜」

 

「ミカは平気かもしれんけどこれはちとSAN値削れてくぜー?」

 

「ふーん、そういうもんなんだ。みんなも辛かったら言ってね。その時は一度戻ろう」

 

 コレのせいでそういったところは不明かぁ。どんなボスなんだろう。

 

「僕の推測あるんだけどさ」

 

「お、良いねぇ。聞こうじゃん」

 

「このフィールドで出てくるモンスターはリザードマンじゃん? じゃあドラゴン系のがボスなんじゃないかなって。安易かな?」

 

「有り得るかもな」

 

「有り得そうね」

 

「ん、待って? アサもヴェインも肯定的じゃない?」

 

「いや、そんなことないぞ〜」

 

「おなじくー」

 

 2人の様子がおかしい。なんというかぼーっとしているというか。

 

「あっ! もうほら、辛かったら言ってって言ったじゃん! ニノマエくん、キョウ、ヴェインのほうお願い!」

 

「りょうーかいっ」

 

「あいよー」

 

 手分けして2人を介抱する。なるべく涼しいところ……が無いため、一度転移陣に戻ることに。

 

「……ぅう、すまない。……ミカ」

 

 後ろで身動ぎしたのに気付きほんの少しだけ顔を向ける。

 

「謝らなくていいよ。一応僕が司令塔出してたのに気付いてなかったのが悪いから。だから今は転移陣つくまで背中でゆっくり休んで?」

 

「…………んぅ、そう、する」

 

 胸甲が痛いと思いつつそれを顔に出さないようにしてアサを背負い直し歩く。耳許に掛かる吐息にこそばゆさを感じるが。

 

「つ、ついたぁ……やっぱり転移陣にはフィールド効果は乗らねぇみてぇだ」

 

「良かったぁ……だいじょーぶー? ヴェインちゃん」

 

「……ちょっと、キツい……かも、まだ」

 

 運が良かったことにリザードマンのリポップに被らなかったことだ。先にキョウたちが転移陣についたのを確認して、僕たちも入る。

 

「ゆっくり降ろすよ?」

 

「……あぁ」

 

 数秒を掛けてしゃがんで、アサを地面に降ろす。力なく座るアサに心配を抱きつつ3人を見る。

 

「……今日はもう辞めよう」

 

「「……え?」」

 

「……それが良いわな」

 

「ん、そうだね」

 

「これ以上の無理はさせられない。アサとヴェインを休ませてる間に進むことも出来るけど、僕はみんなと歩きたい。だから今日はもうおしまい。ね? アサ、ヴェイン」

 

 優しい口調で言いつつ、2人を見ると憔悴した顔つきだけど申し訳なさを感じる目で頷いた。

 

「あはは、大丈夫だよ。そんな顔しなくても」

 

「し、しかし……」

 

「またあした出来るでしょ?」

 

「それは、そう……だが……」

 

「迷惑をかけてごめん、ミカ」

 

「謝らなくていいって。それに仲間なんだから迷惑かけてなんぼだよ。ね?」

 

 2人はコクと頷いた。

 

「良し。じゃあ今日はもう解散。各々、アンファングに戻ったらログアウトしよう」

 

 その時、裾を引かれた。そちらに顔を向けるとアサが物悲しそうな顔をしてた。このままは嫌なのだろう。仕方ないなぁと思いつつ頷いて、アンファングに戻ったあとログアウトする。

 

──────

────

──

 

「っふーーーーー」

 

 ヘッドセットを取りながら起き上がり、持ってきていた冷たくなったコーヒーを飲む。スマホを手に取り、阿佐上さんにメッセージを送る。今日はヘッドホンじゃなくてイヤホンにしよう。確かここに……あった。

 

 ──────プルルルルルル……。

 

 イヤホンを装着時に通話がかかって来る。3コール後に緑のボタンを押す。

 

「もしもし、詩能さん」

 

『……も、もしもし』

 

 あはは……。気分沈んでるなぁ。だから明るめの口調で慰めるように聞いてみる。

 

「どうしたの?」

 

『……すまない』

 

「大丈夫だよ」

 

『ほんとう……か?』

 

「うん。大丈夫。だから気を落とさないで?」

 

 阿佐上さんとの通話が日課のようになっていると思う。その度に僕より先に安心したのかいつも阿佐上さんが寝てしまう。それを繰り返して今日もまた阿佐上さんの寝落ち通話に僕は付き合う。

 

「────────────…………おやすみ、詩能さ……詩能」

 

 寝息が聞こえて聞こえてはいないだろうと練習で呼び捨てで呼んでから妙な気恥ずかしさを感じつつ通話を終える。

 

「…………なんで扉の外で見てるかな?」

 

「ありゃ、バレちゃった。妹は大人しくたいさーん」

 

 気付いたら扉の方から光が入っていてそちらを向いたらニヤニヤしながら見られていた。目敏いなぁほんとに。

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