Sie・Brechen・Online〜恋に初心なふたりと紡ぐフラグ回収〜 作:海澪
アンファングの奥地にある、
────んー、どうしようかな。囲まれてるし、キョウはログアウトしてるみたいだし……うん。手早く片付けよう。
僕は軽く息を吸ってから声を張り上げる。スキルを発動する。
────《挑発》
「……ウォォォアアアッ!!!」
この瞬間、ガサガサと周りから物音が響き出す。釣れたと確信した。
「く、クソッ! 挑発使いやがったぞコイツ!」
「だ、ダメっす! どうにも出来ないっすよ!」
「ここら辺は初心者ばっかのはずだろ!? なんでこんなやついんだよ!」
挑発というスキルは10秒間だけ挑発を発動したものから一定の距離から離れることが出来ない。ただそれだけのもの。
「はい。静かにしてくれる? ちょーっとだけ僕の話聞いてくれるだけで良いんだ」
パンッと渇いた音が響く。ちょうど10秒。
「僕はついさっき始めたばかりでさ、そこまできてたんだ。でも索敵にきみたちのが引っかかってね。それでなんだけど……きみたちのその頭の上についてる赤背景のドクロってどういうものなのかな?」
やはり仮想の体。リアルの僕だと表情筋死んでる自覚あるから今にこやかに笑えてるのが不思議だし懐かしさすら感じてるよ。まぁ、ちゃんと笑えてるか分かんないけど。って目の前のことに集中しなきゃ。
「あ、あー、こ、これね? これは〜……」
目の前の男の言葉に耳を傾けつつ、不意に背後から気配が近づくのを察知する。《危機感知》スキルも反応した。僕はわざと後退しつつ振り向き様に鞘から抜いた打刀を薙ぐ。ザシュウッという音の後に一人のプレイヤーの首が落ちる。
「殺気に気付けて良かった。それとー……うん。大丈夫みたいだね。やっぱりゲームの中ってことだ」
「……んなっ、っそだろ?」
初めて人を殺した。とはいうものの、ゲームの中だから人は死にはしない。そういうセーフティがあるおかげか、そこまでの抵抗感は無かった。
「あ、ごめんね話遮っちゃって。それで? そのマークがなんなの?」
──────
────
──
初心者狩り。当初、ゲーム開始から数ヶ月はそんなことは起こらなかった。しかし、誰しもがこの世界に慣れてしまったら話は別である。
「それは……本当ですか?」
「あぁ。どうやらこの『ラビットキラー』はアンファング奥地の森に潜んでいる」
厳かな雰囲気の中、白銀の鎧を身につけた藍色髪のプレイヤーと正反対の黒銀の鎧を身につけたプレイヤーは話し合っていた。
「すまないが、向かってくれるか?」
「はい。行って参ります」
その言葉と共に黒銀の鎧を身につけたプレイヤーはその場を後にした。その後、一人残ったもう片方は深く息を吐いて、豪奢な背凭れに深く背を預ける。
「────何も無いと良いが」
その呟きは何処に届くということもなく、虚空へと消えた。
──────
────
──
アンファング奥地の森、【名無しの森】に着いたあたしは周囲の警戒を怠らないように先を進む。
「……? この音……っ!? もしかして!」
金属が打ち合う音が届いた。もしかしたら誰かが戦ってるのかもしれない。もし何かあれば力にならなければと疾駆する。そして次第に見えた光景にあたしは驚くしかなかった。
「────────────……え?」
一人のプレイヤーが複数人相手に相手取っていたからだ。けれどそのプレイヤーは身なりからして初心者。あたしは直ぐに左腰の剣に手を向けて走る。
「……は、ぁああっ!」
初心者プレイヤーに背を向けるように立って、後ろからの攻撃を防ぐ。
「うわっ! びっくりした……。って、えーっと? きみは……」
「助けに来たのよ。大丈夫よね?」
「あーまぁ。うん。ちょっと遊んでただけだけどね。でもありがとう」
「今は退くわよ」
「……そうだね。もう感覚は掴んだしそうしよっか」
「……? えぇ。こっちよ」
近くで見て分かった。男性プレイヤーだということが。あたしは彼の手を取って走る。
「だいぶ深くまで入ってたのね」
「そうみたいだね。それはそうとさっきはありがとう。えっと……あ、僕はミカだよ。きみは?」
「あたしは……」
一瞬言い淀む。名前を言っても良いのかと。けれど、彼……ミカが先に言ったのだし、こっちが言わないと失礼よね。
「……あたしはヴェインよ。よろしくミカ」
「ヴェイン、か。かっこいい名前だね。よろしくね」
ヴェイン、良い子。かわいい。
もしお楽しみいただけた方はお気に入り、星、いいね等よろしくお願いします