活字を愛する変態。性癖が功じて作家として働いている。ジャンル不問の速筆で超人気作家。
姉 文崎 調(しらべ)29歳女
妹に似て書くこと、調べることが好き。そのため記者として働いている。超ヘビースモーカー。
CoCシナリオ イタン の一部ネタバレが含まれます。
ある晩、急に姉が訪ねてきた。勝手に入ってきて勝手に煙草を吸って勝手に寛いでいる。
「何しに来たの?」
「ん~、いやぁ何でもないよ。うんそうだとも」
そういう姉はこちらに視線を向けない。視線どころか体すらもそっぽを向いている。
「お茶は…出さないから。好きにして」
「うん、そうだねぇ。それでいいよ。はいお土産」
何かを投げ渡される。受け取るとそれは薄汚れた手帳と本だった。ありがたくそれを読むことにする。震えた文字で書かれた誰かに対する手紙ととある神様に関する資料だった。読みふけってしばらくするとカリカリと何かを書く音がする。横目で見ればメモに何かを書いていた。一枚書いては新しい煙草に火をつけて、また書き続ける。約10本程だろうか、最後の一本を吸い終えた姉は渋々といった顔でメモの束を眺めている。
「書き終わったの?」
「うん。まぁ、そうだねぇ」
「読ませて」
「そのつもりだよ。なんなら隣で今回の事件について話すつもりさ」
「それはいらない」
肩をすくめる姉を横目に姉が書いたメモに目を通す。元々書いてある走り書きを読めるようにしたのがこれらしい。内容は至ってシンプル。村に取材に来た記者が儀式に巻き込まれる話。いわゆる因習村系の、最近流行っている内容だ。よく見る内容で面白みもないが読むことに意味がある私にとっては関係ない話だ。しかし不思議なことにこのメモにあることはどれも無駄に信頼性がある。まるで本当に経験したことを、その場で書いたみたいな。先程読んだ手帳や本のお蔭でより一層雰囲気を感じる。
「どう?多少は読める内容になってるかな」
「…読むというよりは見るが正しい。でもこれは何?」
「んー、お察しの通り、私が先週体験したこと。その時書いてたり撮ってたのをメモにして、あんたに見せに来たの。写真もあるよ」
「助かるけど…急ね。わざわざ銀がいない日を狙って来るなんて」
「あえてだよ。化け物の写真見せるわけにはいかないし。それに銀煙草嫌いだしね」
「私もだよ」
「知ってる」
写真、と言われメモの裏を見ると全部まとめられていた。いつ、何時に、どこで見たか。事細かに書かれたそれはメモの信憑性を増させる。写っているものは化け物や死体など、目を覆いたくなるようなものがそこにいた。
「悪いね、勝手に見させて。でも誰かに話したかったんだ」
「だろうね。そんな気がする」
「最近ニュースになっていただろう?山火事の奴、本当は私が記事を書く予定だったんだ。まぁこの写真を載せる訳にもいかないし、警察には止められたしで。色々あってね。誰かに見せたい欲が出たのよ」
「良いんじゃない別に。これで一本書けるくらいには内容まとめられてるし。ただ、呪われないの?これ見せられて」
すると姉はふっと笑った。その眼はどこか悲しそうで思わず珍しいなと思ってしまった。
「結末はもう見ただろう?村人の死によって神と生贄達は満足して消えていった、って。おそらく、大丈夫だよ」
「………凄く、適当」
「であろうね。というか新は既に何度か経験しているんだろう?なら少し因縁が増えたっていいじゃないか」
「良くはないかな。まぁ経験は多いことに越したことはないけど。可能なら他人から聞くだけでいい」
ふと本に影が入る。顔を上げると姉の顔が目前に会った。煙草の匂いをこれでもかと纏い、笑顔を張り付けた顔を見せてくる。水色の虹彩がキラキラと、それでいてどこか濁っている。
「解っているとも。私は君の異常性をよぉく解っている。これは君のためなんだよ、新。私が経験したことを君は読めばいい。気が向いた時に書けばいいんだ。それは君が望んだことだろう?」
「そうね。確かにそう。よく解っている。銀とは違う意味で」
「嬉しいねぇ」
「でも、文字さえあればいいから。写真は持ってこなくてもいい」
「それは無理だ。私のアイデンティティでもあるからね。君程才は無いからこそ、写真に頼るんだよ」
「まぁ…好きにして。もう帰っていいから」
「寂しいねぇ。でも帰るとするよ。そろそろ銀が戻る頃だ」
姉は満足したのか立ち上がる。写真だけ持ってさっさと玄関に向かっていく。
「次はもっと面白いのを書いてくるよ」
「そう。待ってる」
玄関が開いて外気が入ってくる。姉と煙草の匂いが薄まっていった。姉はまた来るね、と一言残してさっそうと帰っていった。
帰ってきた銀には煙草臭いと文句を言われてしまったので次は消臭剤も持ってきてもらおうと、心にとめておこう。