【仮面ライダーセイバー】 リマジ版セイバーライダーズの設定・短編集 作:北村 貴之
西大寺渉。
コーネリア城の城主にしてコーネリア軍の総帥である「神皇ガーランド」こと西大寺賢を父に持つ高校生の少年だ。
通っている高校はコーネリア高校で、表向きは普通の高校なのだが裏では異世界侵略を目的とする謎の組織「ハンドレッド」に抵抗するための部隊であった。
そんな渉だが、彼自身もハンドレッドと戦っている。
「覇剣ブレードライバー」と「無銘剣虚無」、そして「エターナルフェニックス」ワンダーライドブックを使用して「仮面ライダーファルシオン」としてハンドレッドと戦っている。
コーネリア軍には「ソードオブロゴス」という仮面ライダーに変身し、聖剣で戦う部隊と、その上官にあたり同じく仮面ライダーに変身して聖剣を武器にし戦う「四混沌」という部隊がおり、渉は彼らとともに日本を脅かすハンドレッドと戦っている。
学業とライダーを両立させ、多忙な毎日を送るそんな渉の1日を、今日は見ていこう…。
「…」
場所はコーネリア高校の教室。
制服姿の渉は授業を受けていた。
しかし、渉は教科書とノートを開いたまま、うとうととしていた。
なぜかというと、この日の前日に、ハンドレッドの眷属である怪異「アナザーライダー」の討伐に出かけていたためだった。
その日はソードオブロゴスと四混沌の面々も共に戦ってくれたわけだが、北は大阪の茨木、南は堺と、複数の場所で出没情報が寄せられ、渉たちは対応に追われたのだ。
結局アナザーライダーをすべて討伐したのは夜遅くになってしまい、帰った後は疲れ果ててすぐに眠ってしまった渉は朝起きたら出欠ギリギリの時間だったため、急いで学校に来たというわけだ。
そして今、こうして眠気に襲われているのである…。
そんな渉に、声がかかる。
「西大寺くん。この数式解けるなら前に出て解答してください」
そう声をかけたのは、コーネリア高校の数学教室の耳成山茶(みみなし つばき)であった。
艶やかな黒髪をひとつの三つ編みにした、男が思わず二度見しそうな美貌を持つ美女だ。
黒縁の眼鏡をかけており、いかにも知的な雰囲気を醸し出している。
普段はこのコーネリア高校で教師をしているが、実は神皇ガーランドの一家に仕えるメイドも兼業している。
教師をしているときはいまのように、白い長袖のブラウスに黒のタイトスカート、ストッキングといった出で立ちだ。
山茶に呼びかけられるも、渉は無反応。
どうやら聞こえていないようだ…。
「西大寺くん?西大寺くん!」
山茶は主人の息子である渉をそう呼んでいるが、賢からの指示で、渉を学校にいるときはそう呼ばされている。
「西大寺くん!呼びかけたんですから反応なさい!」
そう言うと、山茶は持っていた白のチョークで、器用に渉の額目掛けてダーツのように投げつけた。
チョークは見事に渉の額に直撃した。
「あいてっ…!」
渉が思わず額を抑える。
「う…」
そんな声を出して目を瞑ったままの渉に、山茶は呆れた顔をしていた。
(坊ちゃま…。この調子では次期神皇は務まりませんよ?)
山茶は心の中でそう渉に語りかけると、渉に声をかけた。
「西大寺くん。この数式解けるなら、前に出てください」
山茶にそう言われた渉は額を押さえながら前を向くと…。
「…はい」
そんな短い返事をして、ヨロヨロと歩きながら黒板の方へと向かっていった。
クスクスと他の生徒の笑い声が聞こえていたが、渉の耳には聞こえなかった。
渉は、残る眠気に耐えながら、チョークの音を立て数式を解いていった。
授業はすべて終わり、渉は帰宅していた。
というのも、渉ら西大寺家はコーネリア城内に専用の住居を構えているため、すぐそこにある高校は時間をかけて行く必要はない。
高校を城に併設しているコーネリア城はそれだけの大きさを誇っていた。
高校と城の連絡通路を通り、豪華そうな装飾のある廊下を渉は進み、西大寺家の住居へと戻ってきた。
広々としているため開放感のある空間だ。
置いてある家具はどれも高価そうなものだ。
渉は住居内を見回し、まだ父も母も帰ってきていないのを確認していた。
大型モニターのある部屋へ向かってみると、そこには父である神皇ガーランドこと賢が、映画を鑑賞していた。
白髪混じりの黒髪で眼鏡をかけ、黒のポロシャツとオリーブ色のズボン姿の中年のイケおじだ。
「ああ、おかえり」
そう言って渉の帰りを出迎える賢に、渉は挨拶を返す。
「ただいま父さん、ところで、母さんはまだ帰っていないのか?」
そう問う渉に、賢はこう答えた。
「ああ。まだ京都らしい」
「そっか」
そう言いながら渉は部屋を出ようとする。
母である美月はお茶会に誘われており今は不在だ。
映画を見ていた賢は、テーブルに置いてあったリモコンで映画を一旦停止させ、出ようとする息子を呼び止めた。
「あっ、渉」
父に呼ばれました渉が振り返る。
「なんだい?」
「今度の金曜、空いてるか」
賢は、渉にそう聞いていた。
「金曜日?あぁ、予定はないけど」
そう返す渉に、賢は言った。
「そうか。ならその日は母さんと3人で一緒に食事にでも行かないか?お前も色々と大変だろうからな。久しぶりにみんなと飯でも食いに行こう」
そんな父の提案に、渉は少し考え込んだあとこう答えた。
「よし、良いぜ。で、時間は…」
「授業が終わった後、夕方以降だな。終わったならラインをくれないか。場所は大阪だ」
賢はそう返すと、再びリモコンを手に取り映画を再生した。
「わかった」
渉は父にそう返答すると、部屋を後にした。
アナザーライダーやハンドレッドの出没情報もなく、無事に金曜日を迎えた。
学校が終わった渉はそそくさに両親が待っているであろう住居へ向かう。
渉にとっても家族だけで過ごす時間は実に久々であった。
幼少期の頃からただでさえ両親は仕事が忙しく遊んでもらった記憶はほぼなかったが、高校生になりハンドレッドとの戦いが激化したことによりさらにそんな時間は減り、今となっては数える程度しか一緒に食卓を囲むことはなかった。
ソードオブロゴスや四混沌の面々との時間が大半であり、両親と過ごす時間が渉にとってはかなり貴重であった。
「ただいま」
そう言って渉が玄関の扉を開けると、奥から返事が返ってくる。
「おかえりなさい渉。」
黒く長い髪の着物姿の女性、美月が迎えてくれた。久々の家族での外食というわけで、いつもよりも着物が豪華なものになっている。
美しい鶴の刺繍が、気品さを際立てている。
「母さん。父さんは?」
美月に、渉がそう問いかけた。
「もう来ると思うわ」
そう美月が言うと奥から父がやってきた。
賢は数週間前に仕立てた黒のスーツを纏っている。
「待たせたな。じゃ、行こうか」
賢は車のキーを持っている。
こうして西大寺家は、久々の外食へと出かけて行ったのだった。
妻と息子を乗せ、賢が運転しているのは黒のスカイラインだ。
2年前くらいに購入した賢の愛車で、乗り心地は抜群だ。
賢は運転しながら、後部座席に座る渉と美月にこう話していた。
「こうして家族で出かけるのも久しぶりだな」
そう話す父に、渉が返す。
「そうだね父さん。母さんとも最近あまり一緒に過ごせていなかったし…」
そんな渉に美月が言う。
「確かに久しぶりね、家族総出で車に乗るなんていつ以来かしらね」
美月はそう言うと、バックミラー越しに渉を見て微笑んでいた。
そしてそんな3人の乗る車は、大阪へと向かっていった…。
西大寺家の今晩の食事する場所は、上本町であった。
難波と鶴橋の間に存在する、ビルが多くそびえる街だ。
今回賢たちが赴いたのは、庶民ではまず向かうことはないであろう日本料理店であった。
こじんまりとしていて上質な空間の静かな店内なので、落ち着いて食事をすることができそうだ。
西大寺家は個室で食事をすることとなった。
壁には黒い筆文字の書かれた掛け軸が飾られている。
部屋を照らす間接照明や雅な装飾品も相まって、落ち着きのある雰囲気だ。
渉はこうしたお店に入ったことが滅多にないためかどこか緊張した面持ちだった。
逆に両親は慣れているためか普段通りの表情をしている。
賢たちは個室で普段ではお目にかかることはないであろう雅な日本料理を堪能した。
土鍋炊きのご飯、新鮮な魚を使った原始焼きやお造り、厳選した農家から仕入れた野菜で調理された煮物など。
渉は今まで食べたことのないであろう、次々と出されていく料理を味わっていた。
親しくしている友人たちに多少の申し訳なさを感じていたが、店内の雰囲気や料理の味により吹っ飛んでしまった。
賢と美月は黙々と、しかしじっくり味わいながら料理を平らげていた。
沈黙の時間が流れ、食事は進んでいった…。
食事を終えた3人は、店近くにある高級ホテルに宿泊していた。
時刻は21時を過ぎている。
渉はふかふかの大型のベッドに仰向けになり、スマホを触りながら延長した野球中継を客室内の大型のテレビで視聴していた。
美味しい日本料理の味と、午前からの学校のためか疲れている様子だ。
目は半開きになってはいたが寝落ちまでは至ってはいないようだ。
(直己や校長も見てるんだろうか)
テレビのモニターに、選手がホームランを決めている様子を見ながら渉がぼんやりとそんなことを考えていた。
賢と美月は隣の部屋に宿泊している。
渉はどういうわけかひとりでこの部屋で休むことになっていた。
なぜそんなことになったのか渉はわからなかったが、へとへとなので考えている余裕はいまはなかった。
本来なら食事をして京田辺に帰る予定ではあったのだが、デザートの後、賢が、明日は土曜日だし泊まっていこうかと言い出したため、渉と美月は同意した。
大阪と京田辺はそこまで距離は遠くないため、一泊したくらいでは普段の生活にはなんら支障はないからだろうか、それとも家族でたまにはこういう非日常を過ごしたかったのか…。
「…」
気づけば野球中継も終わりに差し掛かっていた。
選手がヒーローインタビューを受けている。
風呂に入りバスローブに着替えていた渉は、意識を失ったように、ベッドの上で眠りについていた…。
一方、同じくして賢と美月が宿泊している部屋。
賢はバスローブに着替え、シャンパンを飲んでいた。
小さめのグラスに注がれた金色のシャンパンをじっくりと喉に流し込みながら、堪能する。
シャンパンのアルコール度数の高さからか、賢の顔が赤くなる。
だが、そんな賢の顔はもっと赤くなった。
「お・ま・た・せ」
美月の声がしたので、渉は前方を向く。
そこには、セクシーな下着姿となった美月がいた。
高校生の息子を持っているにも関わらず、目を見張るプロポーションと美貌だ。
着物を脱ぎその姿を晒したためか、足の純白の足袋は履いたままだ。
美月の下着は黒のレースだった。
渉の視線が、推定Fカップと思わしき乳房に釘付けになる。
「うっふふ…」
顔を真っ赤にして固まる渉に、美月が妖艶に微笑む。
「高かったのよね〜、この下着。可愛いでしょ」
美月はそう言いながらバスローブ姿の渉に近づき、彼の隣に腰掛けた。
「うおっ…!」
驚いた顔をする渉。
間近には美しく整った顔立ちで、歩いただけで大きく揺れるふたつの大きな果実をぶら下げている妻がいる。
長い付き合いとはいえ、賢は冷静さを保っていながらも内心では心臓を激しく振動させ、興奮していた。
「ああ…。可愛いし、綺麗だよ」
目をそらしがちにしながら返事をする渉。
夫の反応を見て、美月は頬を赤くしてこう言った。
「京都市街にいい下着屋さんがあってね、そしたらこんなやつがあったから、衝動買いしちゃったわけ」
「…!」
賢が、美月が身につけている下着を見てさらに心臓を早く鼓動させる。
「どう?似合ってる?」
そう聞く美月に、渉は目を泳がせながらも答えた。
「あ、ああ…。よく似合ってるよ」
「ありがと」
そう言って美月はウインクした。
まさに芸術とでもいえる裸に近い妻に、賢は興奮していた。
息子である渉を隣の部屋に泊まらせた理由。
これだった。
我を抑えていたが、シャンパンのアルコールのせいか、賢は無意識にすぐ近くの美月の肩をガシッと掴んだ。
「きゃっ…」
美月が驚いたような反応を見せる。
しかし、その表情にはどこか理解していた様子が見て取れた。
だが、賢は構わずそのまま押し倒すと彼女の両手首をがっちり押さえ込み、馬乗りの体勢となった。
「ちょっと…、あなた…」
驚く妻に、賢は言った。
「さ、やるか」
そう呟くと、賢は妻の唇に自分の唇を近づけた。
隣の部屋の渉はテレビをつけたまま、完全に眠りについていた。
すうすうと寝息を立て、夢の世界に入り込んでいたようだ。
隣にいる両親のことなどすっかり頭になかった。
母が隣で嬌声をあげていることにも当然、気づいていなかった。