【仮面ライダーセイバー】 リマジ版セイバーライダーズの設定・短編集   作:北村 貴之

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その1 紅生姜と剣士

京都府京田辺市にある牛丼屋にて…。

 

仮面ライダー剣斬に変身する少女、桜井レオナは、彼と共に異世界からの侵略者「ハンドレッド」と戦う、仮面ライダーティルヴィングこと香芝直幸と牛丼屋でひとときの時間を過ごしていた。

カウンター席に座り牛丼の並盛りをを頼んだ彼らのもとに、数分も立たぬ間に注文した牛丼は届いた。

レオナと直幸は、その牛丼を食べながら、会話に花を咲かせて…。いなかった。

ふたりとも、黙々と目の前の牛丼を食べるのに夢中であった。

そんなレオナの様子を見てみよう。

「…」

レオナは、牛丼を食べながら、隣の席の、直幸とは別の男に視線を送っていた。

その男は、眼鏡をかけた冴えない男性だった。

俗にいう「チー牛」と呼ばれる男だが、頼んでいたのは普通の牛丼であり、チーズがないいたって普通の牛丼だった。

男は、スマートフォンを横向きにして動画を見ながら牛丼を食べていたようだ。

イヤホンもせずにスマートフォンに映された動画を見ているためか、音量が大きく聞こえていた。

「女剣士カナン!使われたらカナンわぁ〜…。はい!アルトじゃ〜…、ナイトっ!」

男が視聴していたのはお笑いの動画のようだ。

レオナは冷えた目で、男のスマートフォンに視線を送っていた。

「…」

そんなレオナは、無言だったが、我慢できなかったのかこう口にした。

「なにが使われたかカナンよ。バッカじゃないの?」

レオナの声は呟きではなく、隣の直幸にも聞こえるほどの声量だった。

それに気づいたのか、直幸が、

「おいバカ、やめろ!」

と注意してきた。

「だって直幸!あんな低俗なモン見て恥ずかしいと思わないの!?」

レオナと直幸に気づいた男。

器はもう食べ終わっていたようで空だった。

「何が低俗や!ああわかったわ。もう帰る!」

男は立ち上がり、金を払ってそそくさに立ち去ってしまった。

「あ、帰っちゃった…」

「お前が帰らせたんだろ…」

やれやれと、直幸はため息をついた。

「だって!あんなの見てたらバカになるわよ!」

「あのなぁ…。ああいうのは、ああやって笑いをとろうとしてんだよ。それを低俗だのバカだの言うから…」

「だって!…あ」

そんな声を荒げているレオナの視線は、直幸の牛丼に止まる

「ねえ、あんたの牛丼…」

「ああ、これ?」

直幸の牛丼には、紅生姜がたっぷりと乗せられていた。

これを不思議に思ったのか、レオナが直幸に問う。

「な、なんでこんなに牛丼に紅生姜乗せてんの?」

「え?」

直幸はそんなレオナの質問に目が点にする。

レオナはトッピングせずに牛丼を食べていた。

紅生姜の味を知っていた彼女は、直幸がなぜこんなにも大量に牛丼の上に乗せているのか疑問でならなかった。

「それだと味が…」

「あらお嬢さん、紅生姜ディスってます?」

直幸がからかうように、レオナに言った。

「だって、紅生姜って不味いじゃない。なんでこんなの乗せるのかなって…」

直幸はそれを聞いて呆れたのか、こうレオナに言う。

「わかってないな。紅生姜は牛丼の味を引き立てる最高のスパイスなんだよ」

「え…?」

そんな直幸の答えを聞いて、レオナは言葉を失う。

「あ…、ああそう…」

それを聞くと、レオナはこれ以上言うことをやめることにした。

「そのうちお前もわかる。紅生姜の素晴らしさがな」

得意げに直幸がそう言ってきたが、返答する気も起きなかったようだ。

 

…が、ここでレオナがこんな質問をする。

「ねえ。あんた、まどかちゃんとは最近どうよ?」

まどかとは、直幸とレオナの仲間である二階堂まどかのことだ。

まどかは水勢剣流水とライオン戦記ワンダーライドブックで仮面ライダーブレイズに変身する少女だ。

そんなまどかだが、どうやら直幸と何やら関係がありそうだ。

「お前、いきなり何を言うんだ…」

「あんたとまどかちゃん、仲いいじゃない。もしかして付き合ってるのかな〜、なんて」

レオナのその発言に、直幸は顔を赤らめた。

「違う!俺とあいつはそんな仲じゃない!」

どうやら直幸にとって図星だったようだ。

レオナが直幸をからかっているが、レオナ自身、実は密かに直幸に好意を抱いていた。

このように子供っぽく元気な彼女だが、直接好きと言える勇気はなかった。

「…そ。ならいいけど」

「どういうこった…」

直幸が後頭部を掻く。

「もしあの子誰かに取られたらあたし付き合ったげてもいいよ」

「はぁ…?」

直幸が困惑する。

「だって、あの子カワイイし、良い子だし、料理もうまいし…」

「…いやいいよ」

「なんで?あたしなんか問題ある?」

「別に問題ないけど…」

直幸はレオナから顔を逸らした。

彼は彼で顔が赤くなっているためか、レオナの顔を直視できなかったようだ。

そんな彼に、レオナはこう告げた。

「そ?ならいいけど」

とだけ言って、ふたりは牛丼を再び食べ始めた。

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