【仮面ライダーセイバー】 リマジ版セイバーライダーズの設定・短編集 作:北村 貴之
ここは大阪府、日本橋…。
そこにあるカードショップにて、対戦が行われていた。
「これが俺のマイ・フェイバリットカード!闇の支配者ゾーク!」
そう高らかに宣言しフィールドにその名のカードを出したのは、遊城十代という栗色の髪に黒のジャケットを羽織った男だった。
現在は結婚・恋愛アドバイザーとして日本各地を流浪している。
かつては孤島に存在する高校に在籍しており、卒業してからは日本各地の恋に悩む男たちの相談に乗り、時には式場の手続きまでも行う、日本では知る者はいない男だ。
そんな彼だが、日本橋のアニメイト近くのカードショップで、相談相手とデュエルをしていた。
十代とのデュエルに勝てばなんと相談料は無料だ。
しかし、負ければ普通通り代金を請求されてしまう。
「ワンターンでここまで高レベルのモンスターを出すなんてな…」
そう言うのは、東野真澄という男だ。
今回は恋愛相談するために、たまたま日本橋にいた十代にデュエルを挑んだのだ。
しかし、その実力は真澄の予想以上だった。
十代は瞬く間に東野の場をズタズタにし、今にもフィニッシュを決めようとしていた。
「しゃあないわ…」
東野は諦めたように天を仰いだ。
「…そうか。じゃあ行くぜ」
「こ、来いや!」
十代は東野の言葉を聞き、
「それじゃ、ゾーク、フレイムウィングマンでダイレクトアタックだ!」
と宣言し、がら空きの東野にとどめをかけた。
「あ、あかんか…」
東野は頭を抱え、負けを認めるような素振りを見せた。
「ガッチャ!いいデュエルだったぜ。相談料は約束通り5万円の支払いだな。それで…。どんな相談なんだ?」
十代は勝利して気持ちよさそうだ。
ギャンブル要素のあるゾークを使用しているが、100%当たりの効果を引き当てて毎回勝利している。
「えっとな…。ソードオブロゴスとかいう組織を知らんか?」
東野は本題である相談を切り出した。
「ソードオブロゴス?」
「そうや。この世界で異世界の王たる組織、ハンドレッドという組織と戦ってる組織なんやけどな」
東野は十代に説明を始めた。
「…で?そんなことを俺に相談か?」
十代は当然の疑問を投げかけた。
「それなら…。葛城直己って知っとるか。ソードオブロゴスの剣士で仮面ライダーセイバーとかいう名前なんやけどな」
「結婚や恋愛の相談じゃねえじゃねえか…」
東野からの問いかけに困惑し、面倒くさそうに目線をそらす十代。
そんな彼に苛ついたのか、東野は十代の顎をグイっと持ち上げ、
「アドバイザーな癖にそんなんも知らんのか!」
東野は十代に凄んだ。
「だから恋愛と結婚以外は…」
十代は再び、自分のアドバイスの内容を話す。
「もうええ!お前に話持ちかけた俺がアホやった。こうなったら根性、叩き直したろ!」
苛立ちが限界の東野は懐から何かを取り出した。
東野が取り出したのは何やら変身ベルトのようなものだった。
彼がそれを取り出すと同時に、音声が鳴る。
「デザイアドライバー」
彼の手にするドライバーの名前のようだ。
ドライバーの真ん中には、茶色の小さなIDが着いている。
そのIDにはイノシシの頭部を模した絵が描かれていた。
「そ、それは…?」
十代は東野の手にするドライバーに疑問を抱いた。
「このベルトで変身して、戦うんや」
そんな十代に東野はそう答えた。
「戦う?」
「そうや。答えられへんお前をしばくためにな」
そう言って、東野はドライバーを腰に当てた。
すると、ベルトから帯が飛び出し、彼の腰に巻かれる。
そして、ドライバーの左のスロットに、手裏剣のような飾りのついた大型のバックルを装填する。
「ニンジャレイズバックル」という、デザイアドライバー専用のバックルだ。
「SET」
東野がバックルを装填するとそのような音声が鳴る。
そして、
「変身」
東野がそう呟くと、彼の姿は頭部がイノシシのようなマスクに包まれ、胴体は忍者のような黄緑色を基準としたカラーリングのボディ。
東野は「仮面ライダーターボン ニンジャフォーム」に変身したのだった。
「な、なんだよその姿…!?」
十代がターボンの姿を見て怯えるような素振りを見せていた。
彼にとって、仮面ライダーの姿は見たことがないためにその反応は当然であった。
ターボンは十代の胸ぐらを掴む。
「答えい!ソードオブロゴスは…。葛城直己はどこやっ!」
「し、ししししししし、知るかってぇ…!」
十代はターボンの気迫に押され、またもや知らないと返答した。
「そうか…。ならしばいたる!」
ターボンはそう言うと、十代を殴り飛ばした。
「ぐはっ…!」
「まだまだいくでぇ!」
ターボンはそう叫ぶと、そのまま倒れた十代を何度も蹴りつけた。
カードショップにいた客たちはターボンに恐れをなして店を出ていった。
一方その頃…。
ソードオブロゴスの剣士、葛城直己は休暇を利用して日本橋へと来ていた。
「相変わらず外国人のおっさんが多いな…」
そう呟きながら直己がふらりと歩いていると…。
「うわ〜っ!」
叫びながら何かから逃げる者たちの姿が直己の目に入った。
「ど、どうした?」
直己が、逃げていた男にそう尋ねると…。
「あっちのカードショップに、仮面ライダーみたいなのが…!おっさんを襲ってるよ」
と答えられた。
「…なるほどな」
直己はそう言うと、懐から「火炎剣烈火」が納刀された変身ベルト「聖剣ソードライバー」を取り出し、自らの腰に装填し変身した。
「変身!」
「烈火抜刀」
直己の姿が「仮面ライダーセイバー ブレイブドラゴン」に変わる。
セイバーに変身した直己は、一目散に現場へと急行した。
「…なんや。大人しなってもうた」
カードショップで大暴れし、十代をボコボコにしていたターボン。
数回にわたり暴行されていた十代は気を失っていた。
「待てっ!」
と、彼を制止する声が店の外から聞こえてきた。
「…来たな」
そんなターボンは店の外へと向かう。
そこには彼のお目当ての仮面ライダーセイバーがそこにはいた。
「ハンドレッドか?」
「せや」
ターボンはそう言うと、セイバーははっとしたような反応を見せた。
「その声…。まさか東野か!?」
セイバーはターボンの声を聞き、その正体に気がついたようだ。
「そうや。東野真澄。元お前のライバルや」
ターボンはどこか嬉しげな声でそう言った。
「お前…。どうしてハンドレッドに…?」
セイバーはそう言い、身構えている。
「よく聞いてくれた。それはな、お前を倒すためや」
ターボンは意気揚々と回答する。
「…そのためにこいつを?」
と、セイバーは、倒れている遊城十代を目にしてそう言った。
「アドバイザーやから相談したけど、シラばっかきるからちょっと根性叩き直したった」
(な、なんてことを…)
と、セイバーはターボンの回答を聞いて思った。
「それでどうするんや?」
と、ターボンはセイバーに尋ねる。
「もちろん、お前を倒す!」
そう言って、セイバーが聖剣を構えると同時にターボンも、ニンジャフォーム専用の武器である双剣「ニンジャデュアラー」を召喚し、それを装備した。
「懐かしさにふけってるのもここまでや。今日お前の首とそのドライバーをもらい、俺はハンドレッドのお偉いさんになるんやっ!」
ターボンはそう叫ぶと、セイバーに襲いかかった。
剣と剣がぶつかる音が鳴り響く。
セイバーは火炎剣烈火でターボンのニンジャデュアラーの攻撃をしのぎつつ、反撃の機会を伺っていた。
「どないした?威勢が足りんでぇ!」
ターボンはそう言うと、ニンジャデュアラーでの攻撃を更に激しくした。
セイバーが火炎剣烈火の一刀流に対して、ターボンは二刀流。
直己は中学生時代、他の学校に在籍していた東野から何回か喧嘩をふっかけられていた。
しかし、直己は昔から喧嘩が強かったためか東野を何度か跳ね除けていた。
そんな東野がいま、こうして仮面ライダーに変身し剣を振るっている。
それも素人の剣の振り方ではない。
直己を倒すために鍛錬してきたのだろう。
しかしながら、直己も負けてはいられなかった。
かつての知り合いがこうして悪の組織に身を落とし、自分を倒すために剣を振るっている。
直己はそんな東野に負けたくないと強く思った。
「うおりゃあ!」
セイバーが火炎剣烈火を一閃すると、ニンジャデュアラーの一本を弾いた。
そして、そのままもう一本のニンジャデュアラーも弾き返す。
「くっ…!」
ターボンは二本のニンジャデュアラーを手放してしまったため、丸腰となった。
「これで決める!」
セイバーはそう言うと、火炎剣烈火を一旦ソードライバーに納刀し、そして烈火のトリガーを2回引いた。
「必殺読破!ドラゴン一冊斬り!ファイヤー!」
ソードライバーから音声が鳴ると、セイバーは天高く飛び、その後怯んだターボン目掛けてキックを繰り出した。
「グッ、流石や…」
ターボンはそう呟くと、爆散した。
ターボンの変身が解除され、東野の姿へと戻る。
セイバーは変身を解除すると同時に、倒れている十代の元へ駆け寄った。
「大丈夫か?」
直己が十代に声をかける。
すると、彼は目を覚まし…。
「ああ…」
と答えた。
かなりボロボロにはなっているが、命に別状はなさそうだ。
十代の無事が確認できたところで、直己は東野の元へと向かう。
足元には先程彼が装備していたデザイアドライバーとレイズバックルが落ちている。
直己は足元にあったそれを拾った。
「か、返せ…!」
東野が手を伸ばして直己からドライバーを取ろうとするも、彼はドライバーとレイズバックルを懐にしまい…。
「ちょうどいい。たまたま来てくれて手間が省けたよ」
と言った。
「…どういうことや?」
東野は当然の疑問をぶつける。
「コーネリア軍の新戦力の開発に参考になる資料を持ってこいって言われててね」
直己のその発言により、東野は一瞬納得しかけたような表情を見せる。
「さ、さっさとそっちへ!」
すぐに怒りの表情になりそう叫んだ。
しかし、突如東野の身体が消えかかった。
「な、なんやっ…?」
まるでノイズのように、東野の肉体が少しずつ消えかかっている。
直己はその様子を見るのは始めてのようで、驚いていた。
「お前…」
東野の身体は徐々に透けていく。
ザザザ…、とノイズをたてながら消滅していく。
「お、覚えとけ…。お前はいつか、我らがハンドレッドが…!」
東野はそう言うと、彼の姿は完全に消滅した。
「ハンドレッド…。貴様らは一体…」
直己はドライバーとバックルを手にしたまま、東野がいた場所を呆然と見ていた。
その翌日。
京都府は京田辺市、コーネリア城にて。
その中の四混沌の執務室にて、直己と、仮面ライダーバスターこと高田銀之丞、仮面ライダーサーベラこと月ヶ瀬麗子がいた。
麗子はスマホをみている。
「昨日の件、もうニュースになってる」
麗子は紅茶をすすりながら、昨日の日本橋での騒動は瞬く間に記事になっていた。
「そうか…」
直己はそう呟く。
「襲われた恋愛アドバイザーの遊城十代さんは命に別状はないって」
「ほお」
銀之丞がそう答えると、麗子はスマホから視線を外す。
ここで、コーヒーを飲んでいた直己が麗子にこんな質問をする。
「そうだ麗子さん。昨日の遊城十代っておっさん…。ホントに恋愛・結婚アドバイザーなのか?」
昨日助けた男が何やら聞いたことのない職業に就いていたことに直己はふと疑問を感じていた。
「ウソっぽいと思うけど本当よ。あのみすぼらしい見た目からは想像できないけどね」
昨日出会った遊城十代はどこか汚れが目立つ黒のジャケット、何ヶ月も洗濯されていないであろう黒のシャツにジーンズ、そして顎に生えた髭が何かと目立っていた。
そのため、彼がそんな職業に就いて仕事をしているとは直己は思ってもいなかった。
「そうなのか…」
直己はにわかに信じがたいといった様子だ。
「なんでもあの人に紹介してもらった人たちとのカップルは一度も離婚や浮気がないそうよ」
麗子はどこか嬉しそうに直己にそう話す。
「確かにそれはすごいな…」
直己も驚いた様子だった。
麗子が続ける。
「私の知り合いの子も結婚する際お世話になって。式場の紹介、手配から手続きまで、色々とやってもらったらしいの」
「そ、それで式場はどこや…?」
銀之丞が気になる様子で麗子に尋ねる。
「リッツカールトンよ」
それを聞き、直己と銀之丞は顔を合わせる。
「マジか…」
口をそろえて、ふたりは驚く。
「もしあなたも結婚したいなら彼を頼ってもいいかもね。5万を払って」
麗子は微笑を浮かべて直己を見る。
紅茶はもう飲み終えていた。
「い、いや。自分でなんとかするさ」
直己はそう言って、コーヒーを飲む。
「ならいいけど」
麗子はそう言って席を立つ。
「じゃあ私はこれで失礼するわ」
「おう。お疲れさん」
銀之丞がそう返すと、彼女は執務室を後にした。
「…なあ、銀ちゃん」
直己の呼びかけに銀之丞は反応する。
「なんや?」
「世の中には色んな職業があるんだな…」
直己は椅子にもたれてそう言った。
「ふふっ、まあ色んなのがあるんがおもろいかもな」
銀之丞は笑いながらそう返した。
はたして、直己にいい人は舞い降りるのか?