いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
『結局……
ブレイズがこれまでの流れを
虚無感に
しかも彼を裏で操っていたのは、他ならぬ人類を創造した神だというのだ。その事実が皆を不安にさせた。
大魔王から言われた言葉にショックを受けたあまり、誰もが放心状態になっていると……。
「……ムッ!?」
ザガートが何かに
「何だ!?」
城が激しく揺れだした事にレジーナが血相を変える。まだショックから立ち直れていない時に起こった異変に、とても冷静ではいられない。
城を揺るがす地震の規模はこれまでに無い大きさで、城が倒壊しかねない勢いだ。王女はてっきりもう神の攻撃が始まったのかと、そう考えた。
「この城は大魔王の魔力で浮いていた……その大魔王が死んだために浮力を失い、城が物凄い速さで落下しているんだ! このまま脱出しなければ、あと数分と持たずに城は地表に激突する!!」
ザガートが一連の出来事について語る。大魔王の魔力によって宙に浮かんでいた城が、支えを失って地上に向かって落下しているというのだ。
「そそそ、それなら早く脱出しないと我らは全員死んでしまうではないか! ままま、魔王ッ! はよう何とかせい!!」
鬼姫が顔を真っ青にしてパニックになる。眼前に迫った危機を知らされてとても落ち着いてなどいられず、魔王に一刻も早く状況を打開するよう懇願する。
ザガートが転移の呪文を唱えようと思い立った瞬間、部屋の壁がドガァッ! と音を立ててブチ破られて、巨大な何かが飛び込んでくる。
「皆さん、早く私の背に乗って下さい! ここから脱出します!!」
部屋の中に飛び込んできたのは、一行を浮遊城まで連れてきた巨大な鳥ガルーダだ。障壁を破るのに体力を使い果たして休憩していたが、すっかり全快したのかピンピンしている。今どうなっているのか状況を把握済みらしく、一行に自身の背中に乗るよう
一行が言われるがまま背中に乗って
神鳥が離れてから二分と
「危ない所でしたね……皆さんが無事で良かった」
ガルーダが飛び続けたまま、背中に乗る一行に声をかける。彼らの身を案じていたようで、犠牲者が一人も出なかった事にホッと一安心する。ひとまず手頃な地面を見つけて、そこに降り立つ。
神鳥が地面に着地すると、一行は彼女の背から一人ずつ順番に降りる。全員が地面に降り立つと、危機が去った実感が湧き上がり、胸が安心感に包まれる。
「ありがとう……おかげで助かった」
ザガートが命を救ってくれた感謝の言葉を口にした時……。
何も無い空が突然ピカッと光りだす。何度も点滅するように白く発光した後、雲一つない青空だというのにゴロゴロと
「我が名はヤハヴェ……天地を創造した神なり」
何者かの声が空から発せられた。マイク
空に巨大な人の全身像が浮かび上がる。その者は中世の騎士のようなフルプレートの鎧を着た、マッチョな大柄の男性だ。頭部はフルフェイスの
頭上に天使の
神と言えばゼウスのように白い衣に身を包んで木の杖を持った老人をイメージしがちだが、このヤハヴェという神は大柄な男性の騎士のようだ。
空に映し出されたヤハヴェの姿は山のように大きかったが、半透明に
神の姿は遠く離れた場所からでも視認する事ができ、ソドムの村からも見えた。
「おお神よ……魔族に
村の住人達が
ヤハヴェはしばし
「……
開口一番、村人の要求にノーを突き付けた。口調は重く、村人を見つめる瞳は兜
「聞くがいい、我が子らよ……もはや百万回祈ろうと、
人類に対する失意の言葉を次々と投げかける。もはや完全に人に愛想を
村人からすれば訳が分からない話だ。罪で穢れた魂だと言われても、何の事だかサッパリ分からない。事情を知らない彼らからすれば、神がいきなり怒りだしたようにしか見えない。
神の意図がサッパリ読めず、村人がポカンと口を開けたまま棒立ちになった時……。
「
ヤハヴェが目をグワッと見開いて、揺るぎない殺意に満ちた言葉を吐く。村人を殺そうと思い立った意図を隠そうともしない。
「ザラズズール・ギラズズール・ディルケイム・ザザートマ……天の光よ、裁きの
両手で
「……
呪文名らしき言葉を大声で叫び終える。すると次の瞬間、ソドムの村の
「なっ……!!」
村人は何が起こったのか分からないまま、白い光に飲まれて意識が途絶えた。
爆発の規模は凄まじいものだ。大地は裂け、空気がビリビリと振動して、地球を三周しても消えないほど大きな爆発音が鳴る。爆発の衝撃が伝わっただけで、半径十キロメートル圏内の木々がバキバキに
最後はダイヤモンドを一瞬で融解させる超高熱の嵐が、村があった場所へと吹き荒れた。
その魔法の威力は、ザガートが元いた世界の原子爆弾二万発分に相当するものだった――――。
……数分が経過して、着弾地点に吹き荒れた炎の嵐が
ソドムの村は神の裁きの
「聞くがいい、我が子よ……今一つの村が地上から消えた。だがこれは終わりではない。むしろ始まりに過ぎない。これから全ての村や町が、同様の裁きを受ける。神の裁きは最後の一人が死ぬまで終わる事は無い。人類は
ヤハヴェはソドムの村を焼き払った事を全世界に向けて告げると、他の村にも同様の仕打ちをすると伝える。全人類を滅ぼす意思を固めた事を明確にする。
「裁きが下る最期の瞬間まで、せいぜい自分の罪深さを悔いるがいい……」
死刑宣告のような言葉を吐くと、空に映し出された立体映像がスゥーーッと薄れて消えていく。最後は何も無いただの青空へと戻り、元の静寂が訪れる。
「……何という事だ」
村が滅ぼされた光景を見て、ザガートが
こっちの世界に来てから大抵の事に驚かなかった彼が、これまでに無いほど深く動揺する。頭を強く殴られたような衝撃があった。
ソドムの村は一行の現在地から離れた場所にあったが、村を焼いた爆発の規模が大きかったため、遠くからでも肉眼で確認できた。それにより村人が全滅した事実を把握するのは容易だった。
ザガートは村があった方角へとダッシュして途中で足を止めると、さっきまで神の姿が映し出されていた空に向かって大きく口を開けて叫ぶ。
「神よ……神を
ナイカーーーーッ、ナイカーーッ、イカーーッ、カーーッ……。
ザガートの魂の叫びは残響音となって荒野に
彼の疑問に答えられる者などいない。
◇ ◇ ◇
ザガート達はソドムの村があった場所へと向かう。神による第二撃があるのではないかと警戒したが、今の所それが行われる気配は無い。
爆心地へと
「どうするんだ? ザガート。さすがに死体すら残ってないんじゃ、蘇生は難しいと思うが……」
レジーナが今後の方針について問いかける。村人が
「心配ない。たとえ死体が残っていなかったとしても、死後十二時間が経過していなければ、俺なら生き返らせられる」
魔王が案ずるなと言いたげに言葉を返す。
「我、魔王の名において命じるッ!
両腕を左右に広げて天を仰ぐようなポーズを取ると、蘇生の呪文を高らかに叫ぶ。すると天から白い光が無数に降り注いで、村があった地面へと落ちていく。
光が落ちた場所にはかつて死体があったのか、光は次第に大きくなっていき、人の形を取っていく。光が消えてなくなると、五体満足な状態の人が、生前と同じ服を着たまま地面に倒れていた。
「ううっ……俺は一体」
意識を失っていた村人がゆっくりと目を開ける。最初に生き返った村人が目を覚ますと、他の村人も次々と意識を取り戻す。数百人いた村人は全員が生き返った形となり、一人の犠牲者も出ない状態となる。それどころかペットの犬や猫、家畜の牛やニワトリまでも生き返る。
ただ
彼らは起き上がって周囲を見回したが、何が起こったのか把握できていない。爆発の閃光に
「魔王様、これは一体どういう事なのでございましょう?」
村長のバーラが、不思議がるように首を
「実は……」
ザガートは一瞬言いにくそうに言葉を詰まらせたが、覚悟を決めて口を開く。神が魔族を差し向けた黒幕だった事、神自ら人類
◇ ◇ ◇
「……チクショウ! 神サマだか何だか知らねえが、ふざけたマネしやがって!!」
話を聞き終えて、村人の一人がたまらずに大きな声で叫ぶ。自分達が殺された事実を知らされて、憤激のあまり脳の血管がブチ切れそうになる。神に対する怒りは一向に収まらず、八つ当たりするように地面をドカドカと踏む。
村人からすれば、ザガートがした話は
「何という事だ……」
男性の老人が真相を知らされて
「神が俺達を殺そうとしたなんて……」
「もうおしまいじゃ……」
「神が死ねと命じたら、俺達は死ぬしかない……」
「おお
村人達の口から次々に悲嘆の言葉が漏れ出す。
彼らが
「……俺達にはもう祈るべき神も、縋るべきものも、
彼らの中で比較的若い見た目の男性が、失意の言葉を口にした。この先自分達が生き延びる道は無いのだと知らされて、心底落胆する。
「……いるじゃねえか」
最初に激怒した中年の男性が、そう口にしてニヤリと笑う。良からぬ
「俺達には魔王サマ……いや、救世主サマがいらっしゃるじゃねえか! 神の裁きで死んだ俺達を生き返らせてくださった、俺達人類の救世主サマがよッ!!」
ザガートの方へと向き直ると、彼を紹介するように両手を向けたポーズしながら、自身の考えを村のみんなに伝える。異世界から来た救世主こそ、神に代わる新たな信仰対象であると高らかに叫ぶ。
「おっ……おおおおおおおっ!!」
男の言葉を聞いて、他の村人達が歓喜の言葉を漏らす。その発想があったかと言いたげに表情が明るくなり、興奮のあまり全身の細胞を打ち震わせた。
「魔王様……我らの新たな神となって下さいませ!!」
「俺達はもう神様には祈らねえ! 魔王様に祈りを捧げる!!」
「おお救世主よ……神の裁きから我らをお救い下さい」
「貴方様こそ、
口々に魔王を神と
他の町はどうか分からないが、この村にヤハヴェを崇める者などもはや一人もいない。自分に死ねと命じた神に祈る物好きなどいないのだ。
(やれやれ、何とも大きな仕事を任されたものだ……彼らにとっての神になるという事は、信仰を繋ぎ
ザガートは内心面倒な仕事を押し付けられたと困り顔になる。何とも言えない表情しながら頭を手でボリボリと
崇敬の念を抱かれた事に悪い気はしなかったが、大役を任されたプレッシャーは大きい。ともすれば重圧に押し
それでも神に見放された彼らを放っておけない気持ちがあり、期待に応えねばならぬのだと使命感を燃やす。どのみち英雄の名声に責任感が
「何処までやれるか分からないが……やれるだけの事はやってみよう」
自分に出来る範囲の努力をすると、そう村人に伝えるのだった。