いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
……魔王が四つに分けた空間、その二つめの場所での出来事。
ザムザ達が戦ったのと同じような荒野の大地に、二人の男女が十メートルほど離れて立ったまま
ツェデックは彼愛用の木の杖を持っていたが、鬼姫はまだ異空間から刀を取り出していない素手の状態だ。
二人はこの場に来てから一歩も動いていない。両者共に相手の出方を
「ムフフフフッ……鬼姫よ、お前さんの事は聞いておる。なんでも数百年生きた妖怪の王だとな……じゃがワシは相手がロリババアならぬエロババアでも気にせんよ。何しろワシは元いた世界では人間ではない多数の女の魔物ともハメハメしまくった、ハメハメハ大王じゃからのう」
いやらしい笑みを浮かべてだらんと鼻の下を伸ばす。口から
七つの大罪の『色欲』を絵に描いたようなエロ
「たわけめ。
鬼姫が規制されたピー音を交えて男のセクハラに
「
明確な殺意を抱くと、正面に右手のひらをかざして呪文の詠唱を始める。
ツェデックも一瞬遅れて、彼女に続くように呪文を唱えだす。
鬼姫は手のひらに、ツェデックは女に向けた杖の先端に、魔力を集中させたように炎が集まっていく。炎は凝縮されて一つの火球となり、メラメラと激しく燃えさかる。
「我が力よ……炎の龍となりて全てを焼き尽くせ」
「我が力よ……炎の龍となりて全てを焼き尽くせ」
両者共に術の詠唱を声に出して行ったが、発せられた詠唱の言葉は全く同じものだった。
二人は同じ呪文を唱えようとしているのだ。
「
「
それぞれ異なる言語で詠唱を終えると、彼らの前に生成された火球が巨大な炎の
「グオオオオオオーーーーーーッ!」
二匹の龍は空中で衝突すると、蛇のようにグルグルと相手の体に巻き付く。そのままギリギリと締め付けて相手の龍を殺そうとする。
二匹の龍は
二匹の龍はどちらか一方が勝った訳ではなく、互角の力でぶつかり合い、相討ちになって命を散らせたようだ。
目の前で花火のような爆発が起こり、それによって飛び散った火の粉が、鬼姫の頭上へと雨のように降り
「うわぁぁぁぁああああああーーーーーーっ!」
女が大きな声で叫びながら、慌てて自分の顔を手で覆い隠す。この展開は彼女にとって予想外だったらしく、冷静ではいられない。敵がどうなったか気にかける余裕すら無い。
やがて火の粉の落下が
その時彼女の背後から「フーーッ、フーーッ」と生暖かい鼻息のようなものが吹きかけられた。火の粉に気を取られている間に、魔道士が女の背後へと回り込んだのだ。
魔道士は何処かにやったのか杖を持っておらず、素手の状態だ。
「……ッ!!」
生命の危機を感じた鬼姫は反射的に後ろを振り返ろうとしたが、ツェデックが右手による手刀を繰り出して、女の右脇腹に強烈な水平チョップを叩き込む。ドガッと鈍い音が鳴り、女の脇腹に大きな激痛が走る。
「ぐあっ!」
女が激痛に顔を
魔道士は女が動けなくなった隙を見計らい、彼女の体に手を伸ばすと、とてもここでは書けないような事をした!!!
「ああーーーーーーっ!!」
鬼姫の切ない悲鳴が荒野に響き渡る。
十八歳未満には見せられない恐ろしい行為が、
「うらぁっ!」
女は慌てて後ろを振り返ると、老人の
「へぶるぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁああああああああっっ!!」
老人が
鬼姫は乱れた着衣を慌てて着直すが、顔は真っ赤で、目は涙目になっている。表情は怒りの色に染まっており、ハァハァと全力疾走したように呼吸が乱れている。魔道士のセクハラに激怒した様子が一目で分かる。
「……よくも」
そんな言葉が口を
「よくも……よくも
顔を上げて目をグワッと見開くと、腹の底から湧き上がる憤激を声に出してブチまけた。揺るぎない殺意に満ちた言葉が次から次へと飛び出す。もはや一分一秒たりとも老人を生かしておけない気持ちになり、何としてもはらわたを
美女と見れば
「千の肉片に切り刻んでくれる!!」
鬼姫は敵意を
鞘から刀を引き抜いて両手で握って構えると、敵めがけて全速力で駆け出す。
ツェデックは大の字に地べたに倒れていたが、
鬼姫は近接戦の間合いに入ると老人めがけて斬りかかる。
「おりゃりゃりゃりゃーーーーーーーーっ!!」
腹の底から絞り出したような雄叫びを発しながら刀をむやみやたらに振る。相手をバラバラの肉片に切り刻もうともくろむ。
ヒュンヒュンヒュンッと音を立てて振られた刀をツェデックが紙一重でかわす。剣筋を読んでいるのか、素早さが圧倒的に上なのか、攻撃は
「ヒョッヒョッヒョッ……遅すぎてあくびが出るのう」
挑発する言葉が口から飛び出す。完全に女をおちょくっており、わざと相手を怒らせようと侮蔑の言葉を浴びせる。
女は老人の挑発には乗らず、ただがむしゃらに刀を振り続けたが……。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
数分が経過すると刀を振る腕が止まる。全身からドッと汗が噴き出し、手足がガクガク震えて腕に力が入らず、背筋を曲げてうなだれたまま両
スタミナ切れを起こした彼女は敵の真ん前だというのに動けなくなる。
ツェデックは鬼姫が疲労
「んんんんんーーーーーっ!」
女があまりの不快感に悲鳴のような声を漏らす。激しく体を動かして抵抗しようと暴れたが、ただでさえ疲れていた事もあり、老人の腕はビクともしない。
「ぶっちゅう」と唇と唇が完全に密着しており、互いの肌の感触が相手に伝わる。
鬼姫は内心死にたいと思った。ザガートのようなイケメンでなく、シワシワの老人と唇が重なり合い、腐った魚のような加齢臭が鼻に入ってきたからだ。この世の終わりを見たような深い絶望に
それでもこのままではいけないと冷静な思考が働いて、力を振り絞って右足を動かすと、老人の股間に
「ぐおっ!」
男の急所に強烈な一撃を叩き込まれて、ツェデックが苦痛に顔を
「ふんっ!」
鬼姫は間髪入れず男の腹に正拳突きを叩き込む。ドガァッと腹に拳が命中した音が鳴ると、男の両足がフワリと宙に浮く。
「ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおーーーーーーーーッッ!!」
足の底が地面から離れた瞬間、男がまたも
鬼姫は空間の裂け目から
老人は寝っ転がったまま起き上がろうとしない。
「きたない戦いだなぁ」
……この勝負を見ていた第三者がいたら、そう言っただろう。
鬼姫とツェデック以外この空間には誰もいないが、もし誰かに見られていたら、とても見るに
あるいはヤハヴェがこの戦いを魔力によって見ていたなら、「イヤァーーーーッ!」と悲鳴を上げて頭を抱え込んで、泡を吹いて卒倒したかもしれない。人類を創造した神である
ともあれ鬼姫が相手の出方を
老人は女の方を向くと、ニタァッといやらしい笑みを浮かべる。好みの女とキス出来た喜びに胸を
「どうじゃ? ジジイのキスの味は……ワシの言いなりになる獣人奴隷になった
発情したオス馬のように下品な笑いをする。この精力を
鬼姫はもはや怒りを通り越して
「……もう
うんざりした口調で語る。めんどくさそうな表情を浮かべて「はぁーーっ」とため息を漏らしながら、頭を手でボリボリ
「ツェデックとやら……
別の相手と戦うべきだったと深く後悔した思いを口に出す。彼女にとってツェデックと関わった記憶は負の思い出でしかなく、一刻も早く抹消したい衝動に駆られた。
「くだらん茶番はこれくらいにして、さっさと勝負を終わらせよう!!」
速攻でケリをつけて、この不毛な戦いを終わらせると宣言するのだった。