いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
大きな障害もなく神殿の奥に
玉座に座って
「魔王ザガート……我が息子よ。扉の試練に打ち勝って、よくぞここまで辿り着いた。その知恵の深さ、実に見事である。
諸悪の根源である神ヤハヴェが玉座に座ったまま男に語りかける。難易度の高い試練に打ち勝った魔王の見識の深さを認めて、敵ながら
夢の中で会った時はあからさまに敵意を
「……お前の息子になってやった覚えなど無い」
ザガートが神に父親
「
神がザガートの不満に言葉を返す。人類の祖たるアダムを自分に似せて創造した事、彼は血を分けた息子に等しい事、その子孫である人類全てを我が子のように
「ザガート……汝は今でこそハイレベルの
魔王が転生者である事実を引き合いに出して、転生前が人間であったのなら自分の息子と呼んでも
「ならば神よ、問おう。アンタは血を分けた我が子を、自分を愛さなくなったという、たったそれだけの理由で皆殺しにするのか?」
ザガートが神の主張に疑念を
「……」
魔王に矛盾を指摘されて、神が急に無言になる。それまで
「……私も辛いのだ」
やがて消え入りそうにか
「ザガート、お前は知らぬのだ……私がこれまでどれだけの
自分が今まで味わってきた苦痛について語りだす。
何故人類を滅ぼそうと決断するに至ったのか、動機の説明を始める。
「私はお前が想像するよりも
自分と人との関わりが、手のひらを返され続けた負の歴史だったと明かす。
「今度こそ、今度こそと自分に言い聞かせて、そのたびに約束を
人の善性に期待して、そのつど裏切られてきた事、それを何度も繰り返しているうちに頭がおかしくなりかけた事……それらの体験を生々しい口調で語る。
自身の体験について話す神の言葉は鬼気迫るものがあり、声は震えていて、息遣いは荒い。発せられた言葉の一つ一つに重みがある。
当初持っていた絶対的支配者の余裕は完全に失われて、追い詰められて発狂しかけた末期の皇帝のような焦燥感すら漂わせた。
「教えてくれ、ザガート!! 私は……私はどうすれば良かったのだ!? 人に愛されるために人類を創造した神が、誰にも愛される事なく、孤独のまま
最後は顔を上げて魔王の方を見ると、自分はどうするべきだったのかと
ザガートはどう答えるべきか迷ったようにしばし思い悩んだが……。
「自らが生み出した被造物に見放された創造主の苦悩は察するに
やがて考えが固まったように口を開く。人に裏切られた神の苦悩に一定の理解を示しながらも、それでも人類を滅ぼそうとする相手の行いに賛同しない意思を強い口調で伝える。
「息子を殺そうとする父親と、守ろうとする父親……どっちが父として正しい行いをしたかは、小学生でも分かる事だ」
神のやろうとしている事が人類の父として相応しくないと、ダメ押しの一言を付け加えた。
「……!!」
魔王の言葉が
格下と
しばらく言葉を発しないまま黙り込んだが……。
「……知った風な口を利くなぁっ! ザガートぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおーーーーーーーーッ!!」
顔を上げて目をグワッと見開くと、腹の底から湧き上がる憤激を声に出してブチ
鉄仮面
ヤハヴェはすぐさま玉座から立ち上がると、空間の裂け目に手を突っ込んで一本の鉄製の槍を取り出す。それを魔王の顔面めがけて一直線に投げ付けた。
「ふんっ!」
ゴォーーーッと音を立てて飛んでいった槍の刃先が触れようとした瞬間、魔王の両目がカッと
「なにっ!!」
魔王に投げた槍が手を触れる事なく消し飛ばされた事に、神が一瞬たじろぐ。まさかこうなるなどとは夢にも思わず、想定外の事態に驚きを隠せない。
「ヤハヴェよ……お前の前に立つ資格があると認めたのは、お前自身だぞ。そのお前がこの程度の事で驚いてどうする」
ザガートが腕組みしたままふんぞり返りながら、誇らしげなドヤ顔になる。槍を防がれた事に慌てる神に、こんな事で驚くなと上から目線で説教を
「こんなものは
自身の力を見せ付ける事を強い口調で宣言する。
「ヤハヴェよ。勇者アランは貴様に都合のいい、便利な
魔王が正面に右手をかざして相手の愚行を
「勇者アラン……か」
神が一瞬悩んだ素振りを見せた後、勇者の名を口にする。そう言えばそんなのもいたなぁ、と言いたげな態度を取っており、緊張感など
「思えば彼には気の毒な事をした……なにしろ彼が元いた第八世界を滅ぼしたのは、この私なのだから」
勇者の故郷を滅ぼしたのは自分なのだと、
「……!!」
衝撃的な真実を伝えられた魔王が顔をこわばらせた。一瞬相手が何を言ったのか全く理解できず、思考を停止させたまま銅像のように固まる。
勇者は滅びた世界を取り戻す為に魔王と戦った。魔王を倒したら世界を元に戻してもらう契約を神と
その世界を滅ぼした張本人が神自身なのだとしたら、マッチポンプも良い所だ。
魔王は自身の動揺を誘うために神が嘘をついたんじゃないかと、そのようにすら考えた。
「
神が世界を滅ぼした行為について弁明する。第八世界の崩壊は彼が意図したものでは無かった事、第七世界の人類を根絶やしにしようとした行いが、結果的に他の世界の滅亡を招いた事……それらの因果関係を詳細に語る。
「だがそれも仕方のない事だ。彼らは我が理想を
他の世界が滅びた事に責任を感じた素振りを見せながらも、最後は自分の計画の為に必要な犠牲だったのだと、開き直りとも取れる発言をした。
「………」
神の話を聞き終えて、ザガートがしばし押し黙る。下を向いて重苦しい表情を浮かべたまま、苦悩するあまり言葉を
魔王は勇者に対して友情に近い感傷を抱いた。敵対こそしたが、彼の境遇に
それら全てが神のもたらした結果なのだと知らされた時、心臓がキューーッと締め付けられて、はらわたがグツグツと煮えくり返り、脳の血管が怒りで爆発寸前になる。
しばらく無言のまま棒立ちになっていた魔王であったが……。
「神の
顔を上げて神の方を見ると、ゆっくりと口を開く。最初は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、だんだん声が大きくなっていき、やがてハッキリと聞き取れる声量になる。
「ヤハヴェ……貴様は今までたくさん人を殺しすぎた!! その罪、死を
最後は神が犯してきた罪の責任を取らせる意思を強い口調で叫ぶ。表情は殺気に満ち
「復讐するは
聖書の一節を引用し、神を裁く意思を高らかに宣告するのだった。
「貴様が私を裁く……だと?」
魔王の挑発を受けて、神がそう言葉を発する。下を向いたまましばし物思いに
魔王の発言に怒ったようにも、
「フフフ……フハハハハ……ハァーーーッハッハッハァ!! 面白い! なかなか面白い事を言うな、貴様!! 魔王が神を裁くなど、笑える冗談だ!
突如顔を上げて相手の方を見ると、気が狂ったように大きな声で笑いだす。物語の悪役のような『三段笑い』をして、おかしくなったテンションのまま
「神の力、その目に焼き付けて死ぬがいい!!」
最後は一転して笑うのをやめると、相手への揺るぎない殺意を
「……
開いた両手のひらを胸の前で向き合わせた状態で、技名らしき言葉を叫ぶ。
すると両手のひらの間にある空間に、バレーボールくらいの大きさの光の玉が生まれる。神はそれを右手でワシ
光の玉は魔王の頭上まで来ると、フラフープのような形状へと変化する。そのまま真下に落下して魔王をスポッと包み込むと、円が急速に閉じていって、円の内側にいる相手をギリギリと締め付けようとする。
フラフープはかなり強固な材質で、締め付ける力は強い。古代の恐竜ティラノサウルスさえも内蔵を押し
「その光輪は少しでもよこしまな心があれば、絶対外れないようになっている!! 全ての神と万物の
技の性能について自信満々に解説する神であったが……。
「ふんっ!」
言い終わらないうちに魔王が鼻息を吹かせながら両腕に力を込める。するとブチィッ! と音が鳴ってフラフープが
「なっ……何ィィィィィィイイイイイイイイーーーーーーーーッ!!」
目の前で起こった出来事にヤハヴェが
「ば……馬鹿な!! そんな馬鹿な!! ありえない!! こんなの絶対ありえない!! その光輪は少しでもよこしまな心があれば、絶対壊せないように出来ているのだぞ!! にも関わらず、こうもあっさり壊されるとは、これは一体どういう事だ!? わ、私は何か悪い夢でも見ているというのか!?」
最後は気が動転して周りが見えなくなり、目の前の現実を受け入れられない言葉が次から次へと飛び出す。両手で頭を抱えてその場にうずくまったまま「ありえない、ありえない」とうわ
「さあな……だが『宇宙の因果律』とやらは、俺によこしまな心が無いと、そう判断したらしい」
目の前で発狂する神を見ながら、ザガートが小馬鹿にするように鼻で笑う。神の渾身の技が自身に効かなかった理由を、推測を
魔王の言葉すら耳に入らないように正気を失い続けた神であったが……。
「……まだだ」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう
「まだだ……まだ終わらんぞ、ザガート! 神の力は、まだこんなものではない!!」
仕切り直すように宣戦布告する言葉を吐いて、自身の力がこの程度では済まないと負け惜しみのように言う。
「五体をバラバラに切り裂かれて息絶えるがいい! 八つ裂き光輪ッ!!」
技名らしき名前を叫ぶと、右手のひらに
光輪は空中で分裂して三つに増えると、それぞれ別の方角に飛んでいって、三方向から魔王へと襲いかかる。神の意思によって自在に動く刃で、相手をバラバラに切り裂こうともくろむ。
「ふんっ!」
魔王が鼻息を吹かせながら正面に右手をかざすと、半透明に青く
神が放った光輪は障壁に触れると、ガシャァーーーン! と音を立てて
「なにっ!!」
渾身の大技を防がれた光景に神が
「ヤハヴェ……いつまでも離れた場所からネチネチと飛び道具で攻めるのは、もうやめにしたらどうだ」
ザガートが腕組みしたままふんぞり返りながら言う。技を防がれて
「お前も男だったら小細工を捨てて、正々堂々と
ググッと握り締めた右拳を自身の顔の前に持ってきて、肉弾戦を挑むよう相手を挑発する。