いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
ザガートがキャンプ地に戻ると数百人の村人が
テントの中へ入ると宴会の準備は万全に整っており、
「我らが英雄のご帰還に、カンパァーーーーイ!!」
バーラ村長が乾杯の音頭を取り、皆が一斉に酒やジュースを飲みだす。用意された肉やパンなどの料理を食べて、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎに興じる。ある者は歌を
皆が世界に平和が訪れた喜びを満喫していたが、今後の事について考えた者は一人もいない。唯一ザガートだけが、これからの構想を頭の中に思い描いていた。
宴会が終わった翌日、ザガートは世界の大小
およそ五十人ほどが集まった会議場内において、ザガートは彼らに向かってこう宣言する。
「千年帝国ザカリアス……それを建国する構想がある事を、俺は今ここで、諸君らに対して宣言するッ!!」
……魔王が一同に対して伝えた方針は以下の通り。
これまで魔族の支配領域にあった
既存の国家の利益を侵害する事は無く、領土拡大の為の戦争は断じて行わないと約束する用意があった事。隣国とは同盟を結び、
この場にいる一同で多数決を取り、過半数の賛成が得られれば承認されたと
……これらの方針が、その場にいる全員に伝えられた。
会議場は一瞬大きくどよめいた後、数時間に渡り話し合いが行われる事となった。ある者はザガートにより詳しい話を聞いて、ある者は
ヒルデブルク国王ら数人の者は直接ザガートの
最後は魔王が提案した通り採決で決める方向に話が進められて、この場にいる全員で投票による多数決を取る事となった。
……開票を行った結果、会議に参加した者の三分の二が賛成する
各国の王の
新国家建設の計画に最初は戸惑ったものの、自国の利益が
◇ ◇ ◇
晴れて周辺国の承認が得られると、ザガートは
まずは空白地帯の中央に広がる平原を首都の建設予定地に定めると、誰の手も借りず、魔法だけで都の建造に取り掛かる。材木や石や鉄製のブロックが
最初に空き地を正方形に
都が完成すると、ザガートは魔族の襲撃で家を焼かれて住む場所を失った人々に帝都への移住を
ザガートが帝都の建造を始めてから一ヶ月と
◇ ◇ ◇
――――帝都が出来上がって三ヶ月が経った頃。
王宮の前にある広場……そこに数万の聴衆が集まっていた。
人々が今か今かと待ち
「ザガート様っ!」
現れた男の姿を見て、数人の聴衆が彼の名を呼ぶ。それから数秒遅れて、その場にいる全員が「ワァーーーッ」と一斉に大声で叫ぶ。世界を救い、今となっては一大強国の王ともなった英雄に尊敬の眼差しを向ける。
「……静粛に」
ザガートが合図を送るように右手を掲げながら、聴衆に静まるように言う。
彼の命を受けて、それまで騒がしかった聴衆が一瞬にして黙り込む。訓練された軍隊のように魔王の指示に的確に従う。
聴衆が静まったのを確かめると、魔王がゆっくりと口を開く。
「諸君……君達も知っての通り、この国はまだ出来て日も浅い。
聴衆をこの場に集めた用件を伝える。これまで先送りにしていた建国の宣言を今日行うと決めて、それを民の前で発表するために集まってもらったのだという。
「千年帝国ザカリアス……それをこの国の正式な呼び名とし、この魔王ザガート自ら初代皇帝に就任する事を、今ここに宣言する!! 俺が生きている千年の間、帝国の繁栄が保たれ続ける事を、この場にいる全ての国民に対して
両腕を左右に広げて天を仰ぐようなポーズを取ると、帝国の国号と自分が皇帝に就任する事、自分が生きている間は帝国が栄え続ける事を、全ての民に対して強い口調で宣言した。
「うっ……うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおーーーーーーーーーッ!!」
魔王の言葉を聞いて、感極まった聴衆が割れんばかりの大声で叫ぶ。一度は静まった民がまたも「ワァーーーッ」と歓声を上げて、その場が歓喜一色に染まる。
「ザカリアス帝国ばんざーーーい! ザガート皇帝陛下ばんざーーーい!」
魔王は人々の熱狂を目の当たりにしながらニヤリと口元を
……かくして世界を救った名声を
◇ ◇ ◇
――――建国宣言を行ってから三ヶ月が
帝都の表通りに広がる街並みを、背丈四メートルで人の形をした魔物が、のっしのしと誇らしげに歩く。魔物は二体いて、それぞれ外見が異なる。
彼らは街の治安を守る
彼らが表通りを巡回していると、魔物の姿を見かけた住人の一人が声をかける。
「レッサー様っ! ミノス様っ! 今日もお疲れ様ですッ!」
魔物の名を短縮形で呼びながら、彼らの労を
……人の形をした二体の怪物はレッサーデーモンとミノタウロスだ。牛頭は終戦前から魔王に付き従っていたが、中級悪魔は
「フム……何か街におかしな点は無いか? もし少しでも事件の
中級悪魔が住人の
「お
最初に話しかけた男性の
「アンタらと陛下サマのおかげで、俺達は安全に暮らせてるんだ。感謝するぜ」
少し離れた場所にいた中年男性がゆっくり近付いてきて、老婆と同じように感謝する。
「ミノおじちゃん! 今度ボクの
「おお、構わんぞ。今度休みが取れたら遊びに行ってやる……と言っても、俺の体じゃ人間の家は小さすぎて入れないがな。ハハハハハッ」
ミノタウロスがニッコリ笑いながら少年の頭を優しく
その場にいた他の者達も釣られて一緒に笑い、周囲が
そうして
「ああ、あれはッ!!」
会話に参加した一人の男性が大声で叫びながら空を指差す。
彼が指差した方角に皆の視線が向けられると、とてつもなく巨大な鳥らしき物体が、翼を羽ばたかせながら街へと飛んでくるのが見えた。
空を飛んでいたのはティラノサウルスより大きな
「ザガート様だッ! 領内の視察からお戻りになられた!!」
鳥の背中に乗っていた人物を見て、レッサーデーモンが大きな声で叫ぶ。外での用事を済ませて帝都への帰還を果たした主君の勇姿を皆に知らせる。
鳥が大通りの真上まで来ると、この場に集まっていた人々がサッと後ろに
鳥が地面に降り立つと、背中に乗っていたザガートがぴょーーんとジャンプして華麗に着地する。スタスタと数歩進んで獣人達の前に立つ。
「陛下、よくぞご無事にお戻りになられました」
ミノタウロスが主君の帰還を歓迎しながら、片
「フム、治安を守る
ザガートは配下の魔物に
魔王が去りゆく姿を見届けると、ガルーダは翼を羽ばたかせて大空へと舞い上がり、王宮があるのとは別の方角へと飛び去る。
「神鳥ガルーダ……なんと勇ましく、強そうな鳥だ。俺ら程度の力では足元にも及ばない」
ミノタウロスが空の
「当然だろう……ガルーダ様はかのバハムートに匹敵する強さを持ち、終戦後は鬼姫様、ブレイズ様と並ぶ帝国三騎将に
レッサーデーモンが、何を
……かくして帝都の平穏な日々は今日も過ぎてゆくのだった。