いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。   作:大月秋野

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第131話 その後、世界はどうなったか

 ザガートがキャンプ地に戻ると数百人の村人が総出(そうで)で彼を出迎える。世界を救った英雄の活躍を口々に称賛しながら、中央にある大きなテントへと連れていく。

 テントの中へ入ると宴会の準備は万全に整っており、(みな)が主役の帰還を心待ちにしていた。

 

「我らが英雄のご帰還に、カンパァーーーーイ!!」

 

 バーラ村長が乾杯の音頭を取り、皆が一斉に酒やジュースを飲みだす。用意された肉やパンなどの料理を食べて、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎに興じる。ある者は歌を(うた)いながら踊りだし、ある者は雑談に花を咲かせて、ある者はひたすら肉をかっ食らう。数人はザガートや仲間達から、これまでの冒険について(たず)ねる。

 

 皆が世界に平和が訪れた喜びを満喫していたが、今後の事について考えた者は一人もいない。唯一ザガートだけが、これからの構想を頭の中に思い描いていた。

 

 宴会が終わった翌日、ザガートは世界の大小様々(さまざま)な国を治める国家元首全員に呼びかけを行い、彼らを大きな建物の一室にある会議場へと集める。

 およそ五十人ほどが集まった会議場内において、ザガートは彼らに向かってこう宣言する。

 

「千年帝国ザカリアス……それを建国する構想がある事を、俺は今ここで、諸君らに対して宣言するッ!!」

 

 

 

 ……魔王が一同に対して伝えた方針は以下の通り。

 

 これまで魔族の支配領域にあった(ため)、どの国にも(ぞく)していなかった西大陸の広大な空白地帯を我が領土としたい事。そこに新たな国家を建設する構想があった事。

 

 既存の国家の利益を侵害する事は無く、領土拡大の為の戦争は断じて行わないと約束する用意があった事。隣国とは同盟を結び、末永(すえなが)く友好的な関係でありたいと願った事。軍備を整えるのは自国内の盗賊や反乱勢力などの脅威(きょうい)に備えてのものであり、侵略の意図など持ち合わせていない事。

 

 この場にいる一同で多数決を取り、過半数の賛成が得られれば承認されたと看做(みな)し、国家の建設に向けて動き出す事。

 

 

 

 ……これらの方針が、その場にいる全員に伝えられた。

 会議場は一瞬大きくどよめいた後、数時間に渡り話し合いが行われる事となった。ある者はザガートにより詳しい話を聞いて、ある者は(となり)にいる仲間とヒソヒソ声で話し、ある者は意見が対立する相手と激しい舌戦(ぜっせん)を繰り広げていた。

 ヒルデブルク国王ら数人の者は直接ザガートの(そば)まで行って、彼の構想に賛成する意思を伝える。

 

 最後は魔王が提案した通り採決で決める方向に話が進められて、この場にいる全員で投票による多数決を取る事となった。

 

 ……開票を行った結果、会議に参加した者の三分の二が賛成する(がわ)に回り、魔王の新国家建設計画は承認される運びとなる。

 

 各国の王の思惑(おもわく)は次のようなものだ。

 新国家建設の計画に最初は戸惑ったものの、自国の利益が(そこ)なわれる訳ではない事、魔王が約束を破らない事に一定の信頼を置いた事、何より彼と表立って敵対するより、良好な関係を築いた方が総合的な利益に繋がるだろうという計算……それらが主要たる国の王に賛成票を投じさせた。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 晴れて周辺国の承認が得られると、ザガートは早速(さっそく)新国家の建設に向けて動き出す。

 

 まずは空白地帯の中央に広がる平原を首都の建設予定地に定めると、誰の手も借りず、魔法だけで都の建造に取り掛かる。材木や石や鉄製のブロックが(ひと)りでに宙に浮き上がり、王都の建設予定地まで飛んでいって、ちょうどいい大きさに加工されて、パズルのように組み上がっていく。材木は凹凸(おうとつ)をビッタリ()めて、石や鉄は接着剤を使ったように隙間(すきま)なく接着される。

 

 最初に空き地を正方形に(かこ)った広大な城壁が出来上がり、その中に大きな街が出来て、最後は中央に巨大な城が建てられた。何も無かったはずの平原に十日()らずで、一人の労働者も雇わず、魔王の魔力だけで帝都が出来上がったのだ。

 

 都が完成すると、ザガートは魔族の襲撃で家を焼かれて住む場所を失った人々に帝都への移住を(うなが)す。帝都に住む者には住居と仕事が与えられる事を約束すると、多くの流民が彼の元へと集まっていき、都の人口は五十万人を超える規模となる。

 (さら)に森や川などの資源を有効活用するために、辺境にいくつかの村や街を建設すると、そこにも移住希望者が集まってきて数百人から数万人の規模へと(ふく)れ上がる。馬車が通るための道路が整備されて、各村や街への移動が快適になるように整えられた。

 

 ザガートが帝都の建造を始めてから一ヶ月と()たないうちに、帝国は新造とは思えないほどの一大強国へとのし上がった。人々は彼が成し遂げた偉業に称賛と畏怖(いふ)の言葉を送ったと言い伝えられている。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 ――――帝都が出来上がって三ヶ月が経った頃。

 

 

 王宮の前にある広場……そこに数万の聴衆が集まっていた。

 人々が今か今かと待ち()びていると、王宮の三階にあるバルコニーに一人の人物が姿を現す。

 

「ザガート様っ!」

 

 現れた男の姿を見て、数人の聴衆が彼の名を呼ぶ。それから数秒遅れて、その場にいる全員が「ワァーーーッ」と一斉に大声で叫ぶ。世界を救い、今となっては一大強国の王ともなった英雄に尊敬の眼差しを向ける。

 

「……静粛に」

 

 ザガートが合図を送るように右手を掲げながら、聴衆に静まるように言う。

 彼の命を受けて、それまで騒がしかった聴衆が一瞬にして黙り込む。訓練された軍隊のように魔王の指示に的確に従う。

 聴衆が静まったのを確かめると、魔王がゆっくりと口を開く。

 

「諸君……君達も知っての通り、この国はまだ出来て日も浅い。(すで)に総人口百万を超える強国へとのし上がったが、それでもまだ正式な国号を定めておらず、建国の宣言を行っていない。それで今日諸君らにこの場に集まってもらったのは、正式な国号の発令を行うと決めて、それを皆に聞いてもらいたいからだ」

 

 聴衆をこの場に集めた用件を伝える。これまで先送りにしていた建国の宣言を今日行うと決めて、それを民の前で発表するために集まってもらったのだという。

 

「千年帝国ザカリアス……それをこの国の正式な呼び名とし、この魔王ザガート自ら初代皇帝に就任する事を、今ここに宣言する!! 俺が生きている千年の間、帝国の繁栄が保たれ続ける事を、この場にいる全ての国民に対して(げん)(ちか)おう!!」

 

 両腕を左右に広げて天を仰ぐようなポーズを取ると、帝国の国号と自分が皇帝に就任する事、自分が生きている間は帝国が栄え続ける事を、全ての民に対して強い口調で宣言した。

 

「うっ……うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおーーーーーーーーーッ!!」

 

 魔王の言葉を聞いて、感極まった聴衆が割れんばかりの大声で叫ぶ。一度は静まった民がまたも「ワァーーーッ」と歓声を上げて、その場が歓喜一色に染まる。

 

「ザカリアス帝国ばんざーーーい! ザガート皇帝陛下ばんざーーーい!」

 

 (みな)が皇帝の就任を心から歓迎する。何度も何度も両手を上げて万歳(ばんざい)しながら、帝国の繁栄が約束された事を大いに喜ぶ。民の歓喜の叫びは都の外まで聞こえるほど大きく、いつまで()っても鳴り止まない。

 

 魔王は人々の熱狂を目の当たりにしながらニヤリと口元を(ゆが)ませて、長年の宿願を果たせた達成感で胸がいっぱいになるのだった。

 

 

 

 ……かくして世界を救った名声を足掛(あしがか)りにして、一大強国を築き上げるという男の野望は、ここに一つの達成を見た。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 ――――建国宣言を行ってから三ヶ月が()った頃。

 

 

 帝都の表通りに広がる街並みを、背丈四メートルで人の形をした魔物が、のっしのしと誇らしげに歩く。魔物は二体いて、それぞれ外見が異なる。

 彼らは街の治安を守る(ため)の巡回を行っているらしく、ゆっくり歩きながら街の隅々(すみずみ)まで()めるように観察して、異常が無いかどうか確かめる。道端にゴミが落ちていたら、拾ってゴミ箱に入れる。

 

 彼らが表通りを巡回していると、魔物の姿を見かけた住人の一人が声をかける。

 

「レッサー様っ! ミノス様っ! 今日もお疲れ様ですッ!」

 

 魔物の名を短縮形で呼びながら、彼らの労を(ねぎら)う。

 

 ……人の形をした二体の怪物はレッサーデーモンとミノタウロスだ。牛頭は終戦前から魔王に付き従っていたが、中級悪魔は生命創造(クリエート・ライフ)で創造し直された個体だ。当然復活前とは異なる優しい心を持っている。

 

「フム……何か街におかしな点は無いか? もし少しでも事件の(にお)いを()ぎ取ったら、どんな()(さい)な事でも教えてくれ」

 

 中級悪魔が住人の挨拶(あいさつ)に言葉を返す。街に不審な点が無いかどうかを聞いて、もしあったら報告して欲しい(むね)を伝える。

 

「お二方(ふたかた)が日夜巡回なさっているおかげで、街は平和そのものです……何しろ強盗や傷害が起きれば、何処であろうと貴方がたが一瞬で駆け付けて、犯人を捕まえて牢屋にブチ込んで下さるのです。今となっちゃ、この街で犯罪を起こそうとする(やから)などおりませぬ」

 

 最初に話しかけた男性の(となり)にいた老婆が深々と頭を下げる。魔物達のおかげで街の治安が守られている事を伝えて、自分達が安心して暮らせる環境を整えてくれた事への感謝の気持ちを言い表す。

 

「アンタらと陛下サマのおかげで、俺達は安全に暮らせてるんだ。感謝するぜ」

 

 少し離れた場所にいた中年男性がゆっくり近付いてきて、老婆と同じように感謝する。

 

「ミノおじちゃん! 今度ボクの(ウチ)に遊びにおいでよッ!!」

 

 (みな)の会話を聞いていた小さな子供がタタタッと駆け寄ってきて、牛頭の獣人に抱き着く。筋骨隆々とした大男を憧れの眼差しで見ながら、家に遊びに来るよう提案する。

 

「おお、構わんぞ。今度休みが取れたら遊びに行ってやる……と言っても、俺の体じゃ人間の家は小さすぎて入れないがな。ハハハハハッ」

 

 ミノタウロスがニッコリ笑いながら少年の頭を優しく()でる。招待の申し出を(こころよ)く受けながらも、自分の巨体では家に入れないと冗談とも本気とも付かない言葉を口にして大きな声で笑う。

 その場にいた他の者達も釣られて一緒に笑い、周囲が(なご)やかな空気に包まれる。

 

 そうして(みな)が楽しそうに笑っていると、ブワッと一陣の突風が街に吹き抜けた。

 

「ああ、あれはッ!!」

 

 会話に参加した一人の男性が大声で叫びながら空を指差す。

 彼が指差した方角に皆の視線が向けられると、とてつもなく巨大な鳥らしき物体が、翼を羽ばたかせながら街へと飛んでくるのが見えた。

 空を飛んでいたのはティラノサウルスより大きな(オス)の孔雀の外見をした鳥、神鳥ガルーダだ。背中に大人の男性らしき人物を乗せている。

 

「ザガート様だッ! 領内の視察からお戻りになられた!!」

 

 鳥の背中に乗っていた人物を見て、レッサーデーモンが大きな声で叫ぶ。外での用事を済ませて帝都への帰還を果たした主君の勇姿を皆に知らせる。

 

 鳥が大通りの真上まで来ると、この場に集まっていた人々がサッと後ろに退()いて、円状のスペースが出来上がる。鳥はそこを着地点と見定めて、ゆっくり降下していって地面に着地する。

 鳥が地面に降り立つと、背中に乗っていたザガートがぴょーーんとジャンプして華麗に着地する。スタスタと数歩進んで獣人達の前に立つ。

 

「陛下、よくぞご無事にお戻りになられました」

 

 ミノタウロスが主君の帰還を歓迎しながら、片(ひざ)をついて頭を下げる。レッサーデーモンも彼と同じ動作を行い、その他の民衆達は地べたに両手をついて土下座するようにひれ()す。

 

「フム、治安を守る(ため)の巡回ご苦労……諸君らはこのまま巡回を続けてくれ。俺は王宮に戻ってやらなければならない事がある」

 

 ザガートは配下の魔物に(ねぎら)いの言葉を掛けると、自分の用事がまだ残っている事を伝えて、部下に仕事を続けるよう命じる。別れの挨拶(あいさつ)を済ませると、ガルーダの頭を数回()でてから王宮がある方角に向かって全力で走っていく。

 

 魔王が去りゆく姿を見届けると、ガルーダは翼を羽ばたかせて大空へと舞い上がり、王宮があるのとは別の方角へと飛び去る。

 

「神鳥ガルーダ……なんと勇ましく、強そうな鳥だ。俺ら程度の力では足元にも及ばない」

 

 ミノタウロスが空の(はる)か彼方を見ながら鳥の迫力ある姿に見惚(みと)れる。見る者を圧倒させる大きさの鳥が、優雅に空を舞う光景に憧れの感情を抱く。

 

「当然だろう……ガルーダ様はかのバハムートに匹敵する強さを持ち、終戦後は鬼姫様、ブレイズ様と並ぶ帝国三騎将に(れっ)せられたお方なのだからな」

 

 レッサーデーモンが、何を今更(いまさら)と言いたげに言葉を返す。神鳥が竜王と同等の強さを持ち、世界が平和になった後はザガート配下の幹部の一人になった事実を述べる。

 

 

 ……かくして帝都の平穏な日々は今日も過ぎてゆくのだった。

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