いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
西大陸の西の果て……海に面した場所に切り立った
草原のド真ん中に十平方メートルの石床が
異世界の勇者アランとその仲間達、ここに眠る――――。
またそれとは別に、五つの墓にそれぞれ埋葬されたと思しき者の名が刻まれている。
アラン、バルザック、クリムト、ツェデック、ザムザ……かつて魔王一行と戦い、命を落とした異世界の英雄達だ。ここは彼らの遺体を埋葬した墓所のようだ。
冷たい風がビュウビュウと吹き抜ける
男は左手にワインが入った
「極上のブドウで作った赤ワインだ……きっと気に入ってもらえる」
男はそう口にしながら注ぎ終えると、勇者の墓の前にあぐらをかいてドガッと座る。最後に自分の前にもコップを置くと、それに残りのワインを注いでからグイッと一気に飲み
「お前達を殺した事、許してくれとは言わない……せめてこうして月命日に墓参りする事で、お前達という英雄がいた事を、俺だけは一生死ぬまで忘れないようにしたいと、そう感じている……」
頭に
「この世界の住人達は、俺の事を世界を救った英雄として
空を見上げながら物思いに
男の瞳は何処か遠くの空を見ているようで、表情は
「だが……自分達の世界を救う
一転して
二度も激しく敵対した。一度目の戦いでは命までも奪われた。
だが彼らに対する憎悪やわだかまりなど一辺も無く、ただ彼らという良きライバルがいた事、彼らが神の計画の犠牲になった事……それらの事実があっただけだ。
世界を救う勇者であった彼らを手にかけた事は、魔王の心に一生消えない傷となって残る。何より彼自身、その事に負い目を感じ続ける事こそ死者への
「やはりここにおったか……探したのじゃぞ」
魔王が感傷に
「鬼姫か……よく俺がここにいると分かったな」
魔王が
「今日は
魔王の驚きに女が言葉を返す。今日が何の日であったかを覚えており、それによって男の居場所を突き止めた事を伝える。
「ブレイズに頼まれて俺を連れ戻しに来たのか?」
魔王が自分を探しに来た用件を率直に問う。
「ああ……お主が行き先も告げずにいなくなったから、
女が魔王の問いかけを肯定する。男が突然行方をくらました
「そうか……皆に心配かけた。すぐに戻る」
魔王が若干すまなそうに小声で謝りながら、重い腰を上げて立ち上がろうとした。
「……戻らずともよい」
鬼姫が背後から優しく抱き締めて、立ち上がろうと中腰になった魔王を制止する。ふわりと包み込むような両腕、相手をいたわる思いやりに満ちた言葉は、愛する我が子に向けた母親の愛情のように穏やかだ。
「お主が日々の雑事で疲れておる事は、
相手を抱き締めたまま女が背中
「そうしたいのは山々だが、仕事が
魔王が両腕で抱かれたまま後ろを振り返らず声をかける。女の主張を正しいと認めながらも、事情があって簡単にはそれが出来ない苦悩を
「仕事なら明日、妾が半分
鬼姫が溜まった仕事の消化を手伝うと約束する。休息を取れば仕事が溜まるが、溜まった分の仕事は彼女が分担して
「そうか……ならお言葉に甘えさせてもらう」
女の意見に同意して、魔王が休みを取る提案を承諾する。立ち上がろうと起こした体を再度地べたに座らせて、女に両肩を支えられたまま体をゆっくり後ろへと傾けていって、
「鬼姫」
相手の顔をじっと見ながら魔王が女の名を呼ぶ。
「なんじゃ?」
女が男の顔をまじまじと見つめながら返事する。
「ありがとうな」
魔王が感謝の言葉を口にしてフッと笑みを浮かべる。言葉数は少ないが、女の献身ぶりを心からありがたいと感じた心情が
「礼など
鬼姫は若干照れがあるように
「ああ……そうさせてもらう」
魔王は相手の言葉に甘えると、女の
しなければならない仕事は山積みだ。国民の声に耳を傾け、領内を巡回して、理想とする統治が行われたかどうか見なければならない。民が
裁判が開かれれば傍聴に出かけ、災害が発生したら復興作業を手伝い、民が窮状を訴えたら直接話を聞きに行く。下から上がってきた政策や予算申請の書類に
ひとたび外に目を向ければ、悪王が民を苦しめていないか
皇帝の職務は多忙を極める。人手不足の社員のように多くの仕事をこなさなければならず、心の休まる
だが……どれだけ過酷だったとしても、皇帝の職務を途中で投げ出したりはしない。
魔王には仲間がいる。愛する女達と、有能な臣下がいる。何より、彼を
理想の世界実現までの道のりは決して平坦ではない。大きな重圧が
全ての民が安心して平和に暮らせる世界を作る事こそ、俺の理想なのだ! その
……男はそう自分に言い聞かせながら、愛する女の
DarkLord Messiah
The End.