いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。   作:大月秋野

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第18話 アダマン・ゴーレム

 ザガートがムーア村で戦っている(すき)を突いて、ヒルデブルク城に魔族の本隊が攻め寄せる。ミノタウロスと人間の兵士が城を守ろうと外に出る。

 彼らの前に姿を見せたのは、白ウサギの姿をした猛獣……ボーパルバニーという名で知られた恐ろしい怪物だった。見た目で油断した兵士をたやすく一撃死させる。

 

 ミノタウロスは兵士を城内に下がらせると、ウサギとの戦いを一手に引き受ける。熟練の暗殺者の(ごと)き前歯の斬撃も、(はがね)のように屈強な肉体には全く通用しない。牛男が全力の一撃を放つと、ウサギの群れはあっさり蹴散らされる。

 

 敵の集団を全滅させても、勝利の余韻に浸る(ひま)は与えられない。牛男の前に二つの人影が姿を現す。

 それこそ本物のケセフが岩の巨人を引き連れた姿に他ならない。

 

「この私自ら、城を攻め落としに参りましたよ……アダマン・ゴーレムを連れてねッ!!」

 

 ケセフが自信に満ちた表情で巨人の名を口にする。

 

(アダマン・ゴーレムだと!? 宇宙最硬鉱物アダマンタイトを素材にしたゴーレムという事か。恐らく俺が(かな)う相手ではない……だがここで引く訳には行かん! この命に代えても、敵の進軍を押し(とど)めるッ!!)

 

 敵の材質を知らされて、ミノタウロスが自身の手に負える相手ではないと冷静に戦力を分析する。それでも(あるじ)から与えられた使命を(まっと)うするため、命を捨てる覚悟を決める。

 

「お前達をここから先には一歩たりとも進ませんッ! うおおおおおおっ!!」

 

 勇ましい言葉を吐くと、両手で握った大斧を高く振り上げたまま突進する。近接戦の間合いに入ると、敵の腹めがけて一直線に振り下ろす。

 

 斧の刃がゴーレムの腹に触れた瞬間、ギィィィインッ! とけたたましい金属音が鳴る。牛男の両腕に電流のような衝撃が走り、斧の(つか)を握る手を離してしまう。男の手を離れた斧は物凄い速さで飛んでいき、ガランッガンと音を立てて地面に転がる。

 

(グッ……なんて硬さだ!!)

 

 想定を上回る相手の強度に牛男が驚愕する。殴り付けた反動で両腕がビリビリ(しび)れた感覚に、武器が通用しない事実を突き付けられた。

 

「ならば、今度は力で勝負ッ!!」

 

 それでも男は一切(もの)()じしない。両腕を左右に開いた構えで自分より大きい相手に組み付くと、相撲の取っ組み合いのように敵の腰に手を回して、力で押し戻そうとする。

 だが男がいくら力を振り絞っても巨人はビクともしない。男が必死に「ンオオオッ……」と(りき)む声だけが(むな)しく響き渡る。ただボーッと突っ立ってるだけの岩の巨人を、筋骨隆々とした牛男が顔を真っ赤にして押そうとする光景はある種の滑稽(こっけい)さすら漂わせた。

 

「グモモモモッ……」

 

 ゴーレムが突如奇声を発しながら前に歩き出す。一気にドカドカ前進するのではなく、体の重さによるものか、映像をスロー再生するようにゆっくり体を動かす。

 牛男は彼の進軍を止められず、地に足をついて両手で組み付いたままズルズルと後ろに押されていく。さながら大人の力士に力負けした子供のようだ。

 

(クッ、力勝負でも駄目か……だったら!!)

 

 このままでは(らち)が明かないと踏んで、ミノタウロスが慌てて敵から離れる。一旦後ろに下がって大きく距離を開くと、腰を落とし込んだガニ(また)になり、全身に力を()める。その姿勢のまま数秒間静止する。

 

「うおおおおおおおおーーーーーーーーっっ!!」

 

 天にも届かんばかりの大きな声で叫ぶと、大地を強く蹴って駆け出す。敵の前に立つと、両拳を駆使した高速のラッシュを放つ。機関砲のように繰り出されたパンチの連撃が、ゴーレムの腹にドガガガガッと音を立てて命中する。

 いくら殴られても巨人の体は一ミリも後ろに下がりすらせず、腹には全く傷が付かない。それでも男はいつか手傷を負わせられるはずと信じて、ひたすら殴り続けた。

 

 その光景が、およそ五分ほど続いた――――。

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 牛男が激しく息を切らす。敵を殴る手が止まり、ガクッと(ひざ)をついてうなだれた。(ひたい)からは汗が滝のように流れ出し、手足が震えて力が入らない。完全に精根尽き果てて疲労困憊(こんぱい)する。

 敵を殴り続けた拳は相手の強度に打ち負けて血だらけになる。

 

 当のゴーレムは(かす)り傷一つ負わない。牛男の拳の血痕が付着しただけで、小石の一粒すら欠けていない。

 レッサーデーモンなら間違いなくバラバラに吹き飛んだ威力の乱打を受けたにも関わらず、全く被害を受けていない。その硬さは(まこと)に驚嘆すべきものがあった。

 

「……グフフフフッ」

 

 体力が底を尽きたミノタウロスをゴーレムが(あざ)笑う。無駄な努力だったな、と言いたげに小馬鹿にする態度を取る。

 

「フンヌッ!」

 

 (かつ)を入れるように一声発すると、右足のつま先で相手の腹を思いっきり蹴飛ばす。

 

「ぐああああああああっ!!」

 

 腹を強く蹴られた牛男が悲鳴を上げながら吹き飛ばされて、ゴロゴロと地面を転がる。蹴られた腹を(いた)わるように両手で押さえたままゲホゲホッと苦しそうに()き込む。

 内蔵が砕けて骨が折れたのか、すぐには起き上がれず、ウウッと(うめ)き声を漏らしたまま力なく横たわる。

 

 ゴーレムは倒れたミノタウロスに向かってゆっくり歩いていき、動けない彼を勝ち誇ったように見下ろす。殺そうと思えばいつでも殺せるぞという、強者の余裕が伝わる。

 

「ホッホッホッ……さっきとは完全に立場が逆転したようですねぇ。ミノタウロスさん」

 

 戦いを眺めていたケセフが、劣勢に立たされた牛男を見てニヤニヤする。とても嬉しそうに口元を(ゆが)ませて、嫌味ったらしい笑顔になる。ボーパルバニー戦を引き合いに出して、今度は男が追い込まれる(がわ)になった事実を突き付けた。

 

「ミノタウロスさん……貴方が以前と別人格である事は理解しましょう。ですがやはり、大魔王様を裏切った行いは到底許されるものではありません。その(むく)いを受けさせてもらいます。貴方にはここで死んで頂きますよ」

 

 元同僚に対して、主君を裏切った罪を糾弾(きゅうだん)する。

 

「さあゴーレム! その男を踏み(つぶ)してしまいなさいッ! 我ら魔王軍に(たて)突いた罪深さを、あの世で後悔させるのですッ!!」

 

 男を指差して部下に処刑を命じる。

 

「フンガァァァァァァアアアアアアアアーーーーーーーーッッ!!」

 

 ケセフの命を受けて、ゴーレムが任せてくれと言わんばかりに大きな声で叫ぶ。右足を高く上げて、ミノタウロスめがけて一気に下ろそうとする。

 彼の体重から考えれば、足で踏み潰されたら牛男が絶命する事は目に見えている。

 

(ウウッ……俺はここで死ぬのか!? 与えられた使命も果たせぬとは、何と不甲斐ない! 主君の顔に泥を塗るに等しい所業ッ!!)

 

 ミノタウロスが自身の非力さを嘆く。あまりの情けなさに涙が出そうになる。それでも何の手立ても思い付かず、ただ(とど)めを刺されるのを待つしかない。

 

(我が(あるじ)よ……非力な(わたくし)めを、どうかお許しを……)

 

 主君に謝る言葉が頭をよぎった時……。

 

 

 

 それは(わず)か一瞬の出来事だった。

 黒い大きな(かたまり)がゴーレムの真横から飛んできて、脇腹にドガァッと体当たりしたのだ。その衝突の威力は凄まじく、ゴーレムの体がフワリと宙に浮く。

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

 直後岩の巨人が奇声を発しながら弾き飛ばされる。強い衝撃で地面に全身を打ち付けて、ドガガガガッと大地の土を豪快に(えぐ)り上げた。地面に体が半分めり込んでおり、自力では起き上がれそうにない。

 

「なっ……何だぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーーーっっ!!」

 

 ケセフが(のど)が割れんばかりの絶叫を発する。突然の予想外すぎる出来事に表情が真っ青になる。

 

「なっ、何だこれは! 何が起こった!? これは一体どういう事なんだッ!!」

 

 声に出してうろたえながら、両手で頭を()(むし)る。体中にブワッと汗が噴き出て、心臓の鼓動が激しくなり、動悸(どうき)()(まい)がして吐き気が止まらなくなる。頭がグルグル回る感覚に襲われて、(あや)うく気を失いかけた。

 

 とても正気ではいられなかった。アダマン・ゴーレムの重さは(ゆう)に数トンはある。ミノタウロスがいくら力で押しても微動だにしなかった。それが『何か』をぶつけられただけで、あっけなく吹き飛んだのだから。

 

 ケセフが(なか)ばパニックに(おちい)りかけた時、巨人に体当たりした黒い物体が、男に背を向けた状態で着地する。それはよく見るとローブを羽織(はお)った人の姿をしていた。体当たりに見えたのは巨人への飛び蹴りだったようだ。

 

「ケセフよ……今度こそ本当に久しぶりだな。俺が()ない間に城を攻めた代償は高く付くぞ」

 

 ローブを羽織った男が後ろを振り返りながら道化師に言い放つ。

 

「きっ、貴様はザガート……異世界の魔王ッ!!」

 

 目の前に現れた男の姿を見て、ケセフが驚きながら名を口にする。

 

 とても信じられるものではなかった。城から村まで(ゆう)に数十キロは離れており、全力で走ったとしても数時間は掛かる計算だ。男がいくら強大な魔力の持ち主でも、遠く離れた城まで一瞬で来れる(はず)がない。そう確信したから偽者を使って時間を稼ぐ作戦に出た。

 

 だが不可能だと確信した『それ』を、男は平然とやってのけた。その事実が到底受け入れられず、ケセフは頭がおかしくなりかけた。

 

「ザガート様ぁーーーーーーっ!」

「ミノタウロス、無事かッ!」

「師匠、待って下さいッス!!」

 

 道化師が困惑していると、魔王が飛んできた方角から三人の少女が遅れて駆け付ける。方法は分からないが、彼女達もこの場へと来ていた。

 ルシルは負傷したミノタウロスの元へと駆け寄り、回復魔法で傷を(いや)す。他の二人は牛男を(かば)うように立つ。

 

「おおザガート様……我が魔王ッ! よくぞ……よくぞお戻りになられた!!」

 

 傷を癒されながら牛男が感激の言葉を漏らす。絶体絶命の危機に駆け付けた主君の頼もしさに胸を打たれて思わず泣きそうになる。

 

「ミノタウロス……俺が戻るまでよく持ち(こた)えた。その奮戦ぶり、()めて遣わす。お前のような素晴らしい戦士を配下に出来て俺は幸せ者だ。その事をどうか誇りに思うと良い」

 

 ザガートが(ねぎら)いの言葉を掛ける。自分が帰るまで城を守り通した牛男の忠義を素直に称賛する。

 

「ああ……(わたくし)めには過ぎたお言葉にございますッ!!」

 

 優しく声をかけられて、ミノタウロスが感動のあまりむせび泣く。目から大粒の涙が(あふ)れ出し、ウッウッと声に出して泣く。これまでの苦労が(むく)われた気がして、嬉しくてたまらなくなる。

 

 新しい魂を吹き込まれた今の彼にとって、ザガートは生みの親に等しい。だがその事実が無かったとしても、アザトホースと比較して、魔王こそ忠義を尽くすに(あたい)する存在だと確信を抱く。かつて魔王軍に(ぞく)した時、優しく言葉を掛けられた事など一度もありはしなかったのだから……。

 

 彼らがそうしたやりとりをしていると、呆気(あっけ)に取られて棒立ちになっていたケセフがハッと正気に立ち返る。

 

「ザガート……貴様どうやってここへ戻ってきた!!」

 

 城へ帰還した方法を慌てて問い(ただ)す。

 

「どうやって来ただと? 簡単な事だ……転移(テレポート)の呪文を唱えた。一度来た場所なら、どれだけ離れていようと仲間を連れて一瞬で行ける。例外は無い」

 

 男の質問に魔王が答える。さも当然だと言いたげに腕組みしながらフフンッと鼻息を吹かせて、誇らしげなドヤ顔になる。

 

(転移の呪文だと!? そんな馬鹿げた話があるかッ! あれは(わず)かでも失敗すれば即座に石の中にワープするような、集中力を(よう)する術だぞ! それを数十キロも離れた場所に、仲間を連れて正確に移動するなどという話は聞いた事も無い! 異世界の魔王……やはりこいつに不可能は無いというのかッ!!)

 

 魔王の返答を聞いて、ケセフは視界が真っ暗になる。あっさり不可能を可能にしてみせた男のデタラメぶりに()(まい)がして気が遠くなりかけた。

 

「……ズモモモモッ」

 

 道化師が立ちくらみを起こした時、魔王に蹴られて地面に倒れていたゴーレムが動き出す。体が大地に埋まって動けずにいた彼であったが、(みな)が会話に気を取られて時間の余裕が生まれた事もあり、力を振り絞って土をどかし、自力で起き上がる。

 二本の足でしっかり大地に立つと、視界の先にいる魔王を目指してゆっくりと歩き出す。

 

「ほう……アダマン・ゴーレムか」

 

 向かってくる巨人を目にして、ザガートが思わず感心したように(うな)る。希少な鉱物で作られた魔物に興味が湧いたのか、(あご)に手を当てて、物珍しそうにしげしげと眺める。

 

「ホッ……ホワッハハハハッ! そうですッ! 宇宙で一番硬い物質アダマンタイトで作られたゴーレム……それがこのアダマン・ゴーレム! 万一貴方が戻ってきた時の(ため)に、大魔王様が私に与えて下さった切り札ッ!!」

 

 ケセフが(あご)が外れんばかりの大きな口で笑う。これまで狼狽(ろうばい)したのが一転して余裕に満ちた笑顔になる。男が瞬間転移した事に一度は慌てたものの、ゴーレムが負ける(はず)がないという考えがあり、気持ちを切り替えた。

 

「こいつに攻撃の呪文は一切効きませんッ! バハムートを仕留めた細胞を爆裂する呪文も、恐らく効かないでしょう! そしてミノタウロスを上回るパワーと強度の持ち主ッ!!」

 

 巨人がどれだけ強いのかを流暢に語る。魔王の攻撃が通用しない事に絶対の自信を抱き、嬉しさのあまりウキウキが止まらなくなる。

 

「魔王ザガートッ! 貴方にこいつを倒す手段など、一つも存在しないのです! つまり貴方の敗北は約束されたも同然ッ! 無駄な抵抗を諦めて、魔王軍に逆らった事を後悔しながら死んでいきなさい! ウッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

 

 死を宣告する言葉を発すると、顔を(ゆが)ませて見るからにブサイクな表情しながら下卑(げび)た笑いを浮かべる。口から大量の(つば)が飛んで地面が汚れる。ネズミのような小男が発狂したように笑う姿は見るからに滑稽(こっけい)だ。

 

「ならば……試してみるか?」

 

 道化師の話を聞いて、ザガートがニヤリとほくそ笑む。巨人の強さを知らされても恐れを抱く様子は全く無く、それどころか男を(あざけ)るようにククッと声に出す。

 

 両者が言葉を()わす間にゴーレムが魔王へと近寄る。二メートルほどしか離れない間合いに立つと、右足を高く上げて、魔王を一思いに踏み(つぶ)そうとした。

 

 ザガートは右拳をググッと握り締めて力を()めると、ゴーレムの腹の正面へと瞬間移動する。

 

「フンッ!」

 

 (かつ)を入れるように一声発すると、全力の正拳突きを叩き込んだ。

 

 男の拳が触れた瞬間、ドォォォーーーーンッ! と大陸中に響かんばかりの爆発音が鳴る。そこから発せられた衝撃波が周囲へと伝わり、大地が激しく揺れて空気がビリビリと振動する。異変を察知したカラスの群れがギャーギャーと鳴きながら空の彼方に逃げる。

 

 殴った魔王も、殴られたゴーレムも微動だにしない。映像を止めたように、拳が当たった時の体勢のまま静止する。戦いを見ていた仲間達も無言のままそれを見守る。緊張感が胸に湧き上がり、ゴクリと(つば)を飲む。

 

 場に(にわ)かに静寂が訪れて、カラカラと(かわ)いた風が吹き抜ける音だけが鳴る。

 そのまま数秒間が過ぎ去ったかに思われたが――――。

 

 

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

 ゴーレムが突如悲鳴を上げて苦しみ出す。数メートル後ろへと下がると、両手で(かば)うように腹を押さえたままうずくまる。

 次の瞬間、殴られた箇所からビシビシと亀裂が入りだす。亀裂は(またた)く間に全身へと広がっていき、ガラガラと音を立てて崩れ去る。

 

 無敵であったはずの巨人は、ただの物言わぬ瓦礫(がれき)の山と化した。

 

「ひぃぃぃぃ! なんて事だッ! いくら魔王が肉体強化の術を使ったとはいえ、宇宙で一番硬いゴーレムを素手で破壊するとはッ!!」

 

 頼みの(つな)の部下がやられた事に、ケセフが声に出してうろたえる。それまで抱いた余裕は一瞬で吹き飛び、心の中が焦りと恐怖で支配される。

 

「フンッ……何を勘違いしている? 俺は魔法で肉体強化なんかしちゃいない。素の腕力で、思いっきりぶん殴った……たったそれだけだ」

 

 慌てる道化師をザガートが鼻で笑う。手に付いた(ほこり)をパンパンと叩いて払うと、侮蔑する眼差しを向けた。

 

 ザガートは腕力強化(アタック・ブースト)の呪文を使わなかった。ただ純粋に、自らの力でゴーレムを打ち砕いた。それは彼が魔術においてだけでなく、肉弾戦においても最強クラスである事を意味する。

 

 ケセフも、そして魔王の仲間達も、彼が魔術に特化した人物だと思い込んだ。彼が強大な魔力の持ち主であった事、これまで多くの敵を魔術で(ほふ)ってきた事が、そう思わせる要因となった。

 

 それがとんだ思い違いだったと知らされて、ケセフは頭を抱え込んだ。

 もはや魔王に弱点など無いのか……そんな言葉が胸をよぎり、目の前が真っ暗になる。

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