いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。   作:大月秋野

21 / 134
第21話 なずみとセックス

 ケセフが根城にしていた洞窟の探索を終えて、一行はムーア村へと帰還する。

 魔王がオークとゴブリンを引き連れた事に村人は最初驚いたものの、彼らが邪悪な魔物ではないと知り、その存在を受け入れた。

 持ち帰った金銀財宝は村ではすぐに換金できないため、大きな街に着くまで異空間にしまわれる事となる。

 

 一行が村に帰った日の晩……住人が寝静まった真夜中。

 時計の針が十二時を指した頃、なずみがベッドから起き上がる。周囲を見回して仲間が熟睡している事を確認すると、荷物をまとめて部屋を出る。宿の主人に気付かれないようコソコソと歩き、そっとドアを開けると、静かに建物の外へと出ていく。

 

 暗闇に覆われた村の中を、少女が足音を立てずに歩く。ホゥーホゥーと鳥が鳴く声が聞こえて、時折(ときおり)風が吹き抜けて木の葉をカサカサと揺らす。

 松明(たいまつ)を持った自警団の若者が辺りを巡回していたが、建物の陰に隠れてやり過ごす。見つからないように(さく)を飛び越えて村の外に出ると、早足で森を突っ切る。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 二百メートルほど走った後、息を切らして足を止める。ふと来た道を振り返ると、木と木の間から村が小さく見える。その景色を目に焼き付けながら、これまでの出来事を回想する。

 初めて三人と出会った日の事、温泉でのコントのような会話、森でのゴブリンとの戦い、その後の出来事……全て彼女には忘れ(がた)い思い出となった。それらが走馬灯のように頭をよぎり、楽しかった記憶が(よみがえ)って、別れるのが辛くなる。

 

「あそこにオイラの居場所なんて、無いんス……」

 

 自分に言い聞かせて、鈍りかけた決心に(かつ)を入れる。

 

「レジーナの(あね)さん……ルシル姉さん……師匠……短い間だけど、とっても楽しかったッス。会えなくなるのは辛いけど、みんなと一緒にはいられない……これでお別れッス」

 

 別れを惜しむ言葉を口にした時……。

 

「師匠に何の断りもなく、一体何処へ行くつもりだ?」

 

 そんな声が、なずみの背後から発せられた。

 声に反応して少女が慌てて後ろを振り返ると、目の前にデデーーンッと男が立つ。

 

「し、師匠……」

 

 男の姿を目にして、なずみが思わず後ずさる。(ひたい)に冷や汗をかき、蛇に(にら)まれたカエルのような棒立ちになる。

 そこにいたのは、(まぎ)れもないザガートその人だ。腰に手を当てて、胸を前面につき出してふんぞり返りながら仁王立ちする。無断で宿を飛び出した弟子を詰問するような眼差しで見下ろす。

 

「師匠、どうしてここに? みんなと一緒に熟睡してたんじゃ……」

 

 行く手を(はば)むように立ち(ふさ)がる魔王に、少女が問いかける。

 男は完全に寝ていた(はず)だった。そう確信できたから宿を出られた。だが少女の確信はいともたやすく(くつがえ)される。

 

「お前の異変に気付けない俺とでも思ったか? 俺に隠し事はできん。ベッドで寝たふりしてお前が宿を出た後、先回りするなど造作(ぞうさ)も無い事だ」

 

 ザガートが自信に満ちた口調で言い放つ。少女の()(さい)な挙動を見落とさず、それによって行動を先読みした事実を伝える。

 

「どうも様子がおかしかった。ウェアウルフに人質に取られた時から……いや、メデューサと戦った時から(すで)におかしかったかもしれん。何があった? 遠慮せず話してみろ」

 

 これまで気付いた違和感を教えて、悩みを打ち明けるよう訴えた。

 

「……」

 

 なずみは下を向いたまま黙り込む。顔を合わせ辛そうに目を(そむ)けたまま、口をモゴモゴさせた。何ともバツが悪そうな表情をしており、どうにかしてその場をごまかせないか思案しているようだ。

 だが魔王をごまかせる訳が無いと観念したのか、恐る恐る口を開く。

 

「オイラ、役に立ちたかった……みんなの役に立って、腕に自信が持てるようになって、オイラはここにいて良いんだって胸を張って言えるようになりたかったッス」

 

 ボソボソと聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で(つぶや)く。

 

「でも……何の役にも立てなかった! メデューサの時も、ウェアウルフの時も、オイラ足を引っ張ってばかりで、何も活躍できなかった! これじゃ誰かに守られるだけの、小さな子供ッス! いない方がマシっす!!」

 

 今度は一転して大きな声で叫ぶ。これまで()まった鬱憤(うっぷん)を晴らそうとするように早口で(わめ)き散らす。

 

「気付いちゃったッス……師匠にオイラの力は不要だって。このまま一緒にいても足手まといになるだけで、師匠に何の得にもならないって。そうと分かって旅を続けても、オイラがどんどん(みじ)めになるッス。だからみんなと一緒にいられないって、そう思ったッス……」

 

 最後は(まぶた)を閉じて顔をうつむかせると、両肩をプルプル震わせて苦悶の表情になる。目にうっすらと涙が浮かび、今にも泣きそうになる。

 (とし)()も行かぬ少女が自分を卑下(ひげ)して落ち込む光景は何とも()(びん)だ。子犬のように縮こまって震える姿からは、どれだけ深く追い詰められたかが痛いほどよく伝わる。

 

「……」

 

 少女の本音を聞かされて、ザガートはしばし無言になる。余計な事をしてしまった罪悪感に(さいな)まれて、何とも言えない気持ちになる。

 

 仲間を危険な目に()わせたくなかった。大切な家族を守ろうと必死だった。それが活躍の機会を奪い、自信を失わせる結果に繋がったのではないかと深く悔いる。

 全て分かったつもりでいた自分の未熟さを反省する。

 

「すまなかった……お前の気持ちを知りもせず、出過ぎたマネをしてしまった。どうか許して欲しい」

 

 ()びの言葉を述べながら数歩前に歩く。少女の前に立つと、両肩に手を乗せる。

 

「お前は断じて足手まといなどではない。しっかり役に立っている。今はまだ仲間になって日も浅く、活躍の機会に恵まれないだけだ。もっと自分に自信を持て」

 

 相手の顔をじっと見ながら、優しく語りかける。少女の才能を()めて、落ち込んだ気持ちを立ち直らせようとした。

 

「嘘ッス! オイラ、全然何の役にも立たないッス! 師匠にオイラの力なんて不要ッス! なのに、どうして……どうしてオイラを引き止めようとするッスか!!」

 

 なずみは顔を上げて半泣きになりながら(なぐさ)めの言葉を否定する。何故魔王がそこまで自分を引き止めようとするかが分からず、疑問に感じて問いかけた。

 

「……お前に(そば)にいて欲しいからだ」

 

 魔王はそう言うや否や、少女を両手で包み込むようにそっと抱き締めた。

 

「……ッ!!」

 

 突然の出来事に少女が棒立ちになる。予想外の展開に頭が真っ白になり、手足が岩のようにカチコチ固まる。金縛りに遭ったように舌が動かず、驚きの声すら上がらない。調理されるのを待つだけの、まな板の上の(こい)と化す。

 

 幼い少女を抱き締める男の腕は太くてたくましい。普段は衣服に隠れて見えないが、思った以上にガッシリしている。布()しでも相手の体温が伝わる。

 力強い男の抱擁(ほうよう)に、父親のような頼もしさを感じてしまい、少女は胸がドキドキしだす。今まで味わった事の無い感情を抱く。

 

 抱かれたまま抵抗しない少女を見て、魔王が安心したように口を開く。

 

「お前達三人といると、とても楽しかった。あえて口にはせずとも、心の中でずっと感謝していた。失ったものを取り戻せた気がした。ようやく本当の家族と呼べるものを得られた……そんな気がしたんだ」

 

 仲間と一緒にいて心が満たされた事を明かす。一言一句、(いつわ)らざる本音を吐き出す。

 

「もしここで引き止めなければ、二度とお前に会えなくなる……そうなったら一生後悔するハメになる。あそこで引き止めれば良かったと、悶々(もんもん)とし続ける事になる。俺はもう人生の選択を(あやま)らないと、そう誓った」

 

 なずみと今生(こんじょう)の別れをしたくない事、それが全力で引き止めようとする理由だと伝える。

 

「俺は一度全てを失った。もう二度と、手にした大切なものを失いたくない……その(ため)ならば手段を(いと)わない。お前を何処にも行かせはしない」

 

 切実な思いを打ち明けて、少女を絶対に手元に置こうとする決意を語る。

 

「なずみ……俺のモノになれ」

 

 そう口にすると、強引に顔を近付けて、互いの(くちびる)を触れさせた。

 

「んっ……!!」

 

 いきなりキスされて、なずみが深く困惑する。(ふさ)がれた唇から言葉にならない声が漏れ出す。無意識に手足をバタつかせて暴れようとしたが、野生の熊のようにたくましい腕でガッチリ固定されており、ビクともしない。

 

「……んっ」

 

 やがて暴れるのをやめて大人しくなる。抵抗は無意味だと悟り、何をされても受け入れるしかないのだと観念する。

 もう自分は魔王のモノになるしかないと考える。それを心の何処かで嬉しいと思う気持ちがあった。男の野性的なたくましさに力ずくで奪われる事に快感すら抱く。

 

 互いの顔が近付いて、相手の生暖かい吐息が触れる。ドクンドクンという心臓の鼓動が伝わり、男が興奮しているのが分かる。唇がねっとり触れ合う感触が情欲を()き立てて、相手を繋がりたい異性として強烈に意識する。

 

 しばらく唇を重ねていた二人だったが、やがてザガートがキスをやめて互いの顔が離れる。魔王は腹を空かせた狼のようなギラついた瞳になると、少女を強引に地面に押し倒す。

 少女が押し倒された地面は落ち葉が敷き詰められた天然のベッドになっており、体に傷は付かない。こうなる事を見越して準備したようだ。

 

 魔王は少女の服を一枚ずつ手で脱がしていく。無垢(むく)な乙女の柔肌(やわはだ)が、月光に照らされてあらわになる。少し緊張したのか、汗で濡れた肌がプルプル震える。

 

「し、師匠……駄目ッス。オイラ、まだ心の準備が……師匠と一線を越えちゃったら、今までと同じ関係でいられなくなるッスよ……」

 

 全裸のまま地べたに寝そべったなずみが、大事な所を手で隠す。生まれたままの姿を魔王に見られる事に耐えられず、恥ずかしそうに顔を()らす。表情に困惑の色が浮かび、性交に及ぶ覚悟が出来ていない事を伝える。

 

 少女は心の底から彼を尊敬していた。神にも等しい人物だと思った。決して自分には手が届かない存在だと考えた。

 雲の上のように思っていた男が、自分に好意を向け、男女として愛し合おうとする。その事への喜びと、恐れ多さとが入り混じる。自分なんかが……と謙遜(けんそん)する思いに駆られた。

 

 複雑な感情が混ざり合って、気持ちが一つにまとまらない少女に、魔王がグッと顔を近付ける。

 

「俺に抱かれるのは嫌か?」

 

 念を押すように問いかけた。(おど)すような口調でなく、相手の意思を尊重する優しさがある。もしここで少女が断ったら、本当に行為をやめそうな雰囲気だ。

 

「……」

 

 魔王の問いに、なずみがしばし黙り込む。目を閉じて(ほほ)を赤く染めると、気持ちを落ち着けようと深呼吸する。緊張で言葉が出ないのか、口がパクパク動く。

 

「……嫌じゃないッス」

 

 やがて絞り出したように小さな声で(つぶや)いた。

 

「分かった……なら、全て俺に任せろ」

 

 魔王が少女の耳にそっと(ささや)く。

 少女は無言のままコクンと(うなず)くと、大事な所を隠すのをやめて、葉っぱの上に大の字に寝る。全身の力を抜いて、相手を受け入れる体勢になる。

 

 魔王は自らも服を脱ぐと、少女の上に全裸のまま覆い被さる。

 二つの影が重なって一つになった瞬間、満月を見上げた狼がワオーーンと鳴く。男女の行為の声を隠そうとするように……。

 

 

 

 その晩、ザガートとなずみは激しく愛し合った!!!!

 

 

 

 ――――数時間後。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 なずみが目を(つむ)って顔を赤くしたまま激しく息を切らす。横向きに寝たまま手足をだらんとさせる。完全に精根尽き果てて疲労困憊(こんぱい)しており、足の指先も動かない。全身汗でグッチョリ濡れており、(ほの)かに湯気が立ち(のぼ)る。汗の(しずく)が月明かりを反射してキラキラ光り、裸体の美しさを際立てる。

 

 疲れ切った少女の背中を、全裸のザガートが地べたに座ったまま見下ろす。汗で濡れた肌をからかうように指で突っつくと、敏感になっているらしく一瞬ビクッとなった後、プルプルと小刻みに震える。その様を見て少女をモノに出来た満足感に胸を(おど)らせた。

 

「師匠……オイラ、本当に全然何の役にも立たないッスよ。それでも師匠の(そば)にいて良いんスか……?」

 

 なずみが背を向けたまま口を開く。体を重ねても(なお)、自分の存在意義に疑問を抱く。

 

「お前達が側にいてくれる……それだけで俺は力が湧いてくる。勇気をもらえる。俺は本当は弱い……命に代えても守りたいと思うものが無ければ、本気で強くなれない。お前達三人のうち、一人も欠けて欲しくない……」

 

 ザガートがグッと顔を近付けて、穏やかな口調で話す。娘を愛する父親のように優しい眼差しを向ける。

 自分が実は心の弱い人間であり、内面では少女達に依存していた事を明かす。言葉の節々から、どれだけ仲間を大事に思ったかが十二分に伝わる。

 

「これは命令ではない。お願いだ。これからもずっと側にいて、俺を支え続けて欲しい……」

 

 切実な思いを打ち明けて、自分の側にいるよう懇願する。

 

(師匠……)

 

 男の言葉に少女は胸を深く打たれるものがあった。

 魔王が心の内では大きな孤独を抱えていて、もしかしたら深い心の傷を負ったかもしれない事、仲間を失うのを酷く恐れていた事、その内面の弱さを包み隠さず(さら)け出した事に、(あわ)れみの感情が湧く。

 

 少しでも彼の孤独を(いや)せるなら、力になりたい……そう思いを抱く。

 

「……分かったッス。オイラ、これからもずっと師匠と一緒にいるッスよ!」

 

 顔を上げて後ろを向くと、歯を見せてニカッと笑う。心の不安が払拭されたような晴れやかな笑顔になる。

 ザガートはそんな少女の頭を優しく()でると、おでこにチュッとキスした。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 チュンチュンと(すずめ)が鳴く朝……太陽が空に昇って外の景色が明るくなり始めた頃。

 

 (さく)で囲まれた村の入口に、出発の準備を終えたザガート達一行が立つ。彼らを見送るべく、ゾシー村長と数人の村人がいる。

 村人の(となり)にオークの一団と、さっき生き返ったばかりのメデューサとアダマン・ゴーレムがいる。後ろの方では村の子供達がゴブリンと楽しそうに鬼ごっこして遊ぶ。

 

(ケセフだけは生き返らなかった……やはり魔王軍の上級幹部は『生命創造(クリエート・ライフ)』とは別の魔術が使われているようだ。だがまあ良い……これだけ戦力が整っていれば、並みの魔物では手を出そうとすら思わないだろう)

 

 道化師の男を使役できない事を魔王が内心悔しがる。バハムート同様に、今の力では配下に出来ないと悟る。それを仕方のない事だと自分に言い聞かせた。

 

「オーク達は村の守りとして置いていく。この先どんな敵が攻めて来ようと、彼らが守ってゆくだろう……どうか仲良くしてもらいたい。平時には農作業を手伝わせたり、力仕事を任せたりしても良い」

 

 ザガートが魔物を村に残す方針を伝える。忠実な配下を住まわせる事で、自分が()ない間でも村の安全が保障されるよう配慮した。

 魔王の言葉に了承するように村長がコクンと(うなず)く。

 

「いずれ大魔王を倒した(あかつき)には、必ずお前達を迎えに行く。それまで村の事を頼んだぞ」

 

 ザガートはオークの方を向いて、今後の方針を伝える。部下に会いに来る約束を()わして、使命をしっかり果たすよう念を押す。

 

「はっ、お任せをっ! 我ら一同、主君の顔に泥を塗らぬよう、しっかりと使命を果たしてご(らん)に入れます!!」

 

 集団の先頭に立つリーダー格と思しきオークが、握った拳で心臓のある左胸をドンッと叩きながら、頼もしい言葉を吐く。アダマン・ゴーレムもメデューサも、主君との別れを惜しむように敬礼する。

 

「何から何まで村のために良くして頂き、何とお礼を言って良いやら……」

 

 ゾシーが深く頭を下げて感謝する。長い間村を悩ませたスライムを退治し、村に攻めてきた魔族の群れを撃退し、(さら)に今後の安全まで保障してくれた魔王に、返しても返しきれない恩義を感じる。

 

「森を抜けて西に進んだ所に、大きな湿地帯があります。その奥へと進んでいくと、リザードマン達が住む村がある。彼らは大魔王が生み出した魔法生物ではない、天然の魔物……人類を敵視しておりません。彼らに会えば、きっと力になってくれるでしょう」

 

 魔王の旅の手助けになるよう、新たな目的地を示す。西に進んだ所に亜人の村がある事を教えて、そこへ行くよう勧める。

 

「ありがたい、ぜひ向かわせてもらう……短い間だったが、村での生活は素晴らしいものだった。住人は(みな)好意的だし、有益な情報も得られた。温泉も料理も、とても良いものだった。この村の事は一生忘れない。村長、元気でな」

 

 ザガートが心から感謝の言葉を述べる。自分を(こころよ)く迎えてくれた村を素直に()(たた)えて、熱い友情で結ばれたように村長とガッチリ握手を交わす。

 

 別れの挨拶(あいさつ)を済ませると、村の外に広がる大森林に向かって歩き出す。村人達は別れを惜しむように手を振って見送り、魔王も何度も後ろを振り返っては、彼らに手を振り返す。そうしている内に一行の姿は森の中へと消える。

 

「魔王の姿をした勇者……魔王救世主(ダークロード・メサイヤ)、か」

 

 彼らが去った後、村長が小声でそう(つぶや)く。

 魔王の活躍を脳裏に浮かべて、一行の()(すえ)に思いを()せた。

 彼らなら、大魔王に支配されつつある暗黒世界に光を取り戻せるだろう……そう確信を胸に抱く。

 

 一行の未来に(さち)あらん事を……そう願って()まない。

 

  ◇    ◇    ◇

 

「フッフ、フッフフーーーン」

 

 なずみが楽しそうにスキップしながら歩く。上機嫌に鼻歌を(うた)っており、何度も足を止めては魔王の方をチラッチラッと見る。目線が合うとニコッと笑う。

 魔王は少女と目が合うと一瞬顔を合わせ辛そうに視線を()らした後、ゴホンと(せき)をする。

 

 明らかにいつもと様子が違う二人に、レジーナとルシルが疑問を抱く。

 

「はっ! ザガート……まさかお前、(つい)になずみとヤッたのか!!」

 

 レジーナが思わず声に出して問いかけた。

 

「ああ……ヤッた」

 

 魔王は居心地が悪そうな表情になりながらも包み隠さず答える。

 

「なっ……貴様ぁぁぁぁああああああっ!! (だい)の大人が事もあろうに、十二歳の女の子に手を出して、あんな事やこんな事をした挙句、気持ちよくなってスッキリしてしまうとは、見損なったぞぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!」

 

 王女が森全体に響かんばかりの大きな声で叫ぶ。小さな女の子と事に及んだ魔王を深く軽蔑する。

 

「ザガート様のバカっ! バカっ! ロリコンっ! 肉食系っ! ジャンボフランクっ! ハレンチ大魔王っ! 夜の帝王っ!!」

 

 ルシルが早口で罵詈雑言を(わめ)きながら、魔王の頭をポカポカ殴る。男のストライクゾーンの広さに心底(あき)れる。

 レジーナも彼女の後に続くように男を殴りだす。二人して魔王の頭をポカポカ殴り続ける。

 

「ま、待て二人ともっ! 落ち着け! 落ち着くんだっ! 気を悪くしたなら謝る! この埋め合わせは必ずするっ! だからどうか、殴るのをやめて欲しいっ!!」

 

 彼女達に何発も殴られて、魔王が慌てて釈明する。必死に頭を下げて謝り、怒りを(しず)めようとした。だが彼女達の怒りが収まる事は無く、暴力行為は数分ほど続いた。

 

「フフフッ……三人とも、何してるんスかーー。早くしないと、日が()れるッスよーー」

 

 なずみが後ろを振り返りながら言う。微笑ましい光景を目に焼き付けてニッコリ笑うと、再び前を向いて歩く。その足取りは心の(もや)が晴れたように軽やかだ。

 

 今のパーティを居心地の良い場所だと感じて、自分がそこに()て良いんだという喜びに(ひた)る。この幸せが一生続くようにと心に願う。

 尊敬する人に必要とされた事、素晴らしい仲間に出会えた事……それらを噛み締めて、前に進むのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。