いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。   作:大月秋野

5 / 134
第5話 村娘とセックス

 ザガートが村を救った日の晩……ギレネス村はお祭り騒ぎになる。

 村を焼かれた爪痕こそ残ったものの、それでも一人の犠牲者も出ずに魔族を退けられた事に皆が大喜びする。英雄の誕生に歓喜しながら、飲めや歌えのドンチャン騒ぎに(きょう)じていた。

 

 村のそこかしこで大人達が酒と肉をかっ喰らいながら、ガハハと楽しそうに笑う。数人で肩を組んで歩きながら「魔族なんか怖くないぞ」と即興で作った歌を(うた)う。

 子供達は『ザガートごっこ』をして遊ぶ。村を救った魔王を英雄としてもてはやす。

 

 宿屋と一体化した村の酒場も大盛況だ。ひっきり無しに注文が出されて、皿に乗せた料理を女性店員が大慌てで運ぶ。コックは手の休まる(ひま)が無い。

 村の大人から子供まで、誰もがお祭りムードを楽しんでいた。

 

「……」

 

 酒場にいた客の中でただ一人、ルシルだけが大人しくしていた。椅子(いす)に座ってボーッとしたまま黙り込む。皿に乗せて運ばれたフランクフルトを、何も言わずにモグモグとおいしそうに食べる。彼女は内心困惑していた。

 

 最初、魔王を恐ろしい人だと思っていた。他人を傷付ける事を躊躇しない、血も涙も無い冷血漢に見えた。村に(あだ)なす危険人物かもしれないと考えた。

 だが彼は言動や実力こそ魔王のそれだったが、村を救ってくれた。魔族に殺された村人の命を生き返らせてくれた。魔族の手から人々を守ると約束してくれた。

 

 破壊と殺戮(さつりく)を望む魔族のそれではない。野心家ではあったが、歴史に名を残す英雄、大陸の統一を目指す覇者のような力強さが感じられた。巨大帝国を支配する皇帝のようなカリスマ性があった。

 

 食べかけのフランクフルトをじーっと眺めながら、ルシルは彼の事を思い出す。魔王の事を考えただけで、心臓がドキドキ高鳴る。高熱にうなされたかのように、体の(しん)から熱くなる。何もされていない(はず)なのに、魅惑(チャーム)の魔法を掛けられたかのように彼の事で頭がいっぱいになる。

 

 村を救われたお礼をしたい気持ちがあったが、勇気が出ず足がすくんで動かない。気後れした猫のように下を向いたまま小さく縮こまる。

 

 少女が自分の臆病さをもどかしく感じていると……。

 

「ルシルや、こんな所にいたのか」

 

 彼女の祖父であるテラジが話しかけてきた。孫を探してあちこち歩き回ったらしい。

 

「村の者が話しておったぞ。お前がザガート様に村を救うようお願いしたそうじゃな。まずはその事に感謝せねばなるまいて」

 

 魔王に村を救わせた孫娘の行為に深く感謝する。

 

「お(じい)様……」

 

 ルシルがゆっくり顔を上げる。明らかに浮かない表情をしており、悩みを抱えている事が一目見ただけで十二分に伝わる。

 孫娘の心情を察して、テラジが背中を押そうと口を開く。

 

「ザガート様は明日の昼には村を出るそうじゃ。何でもここから西に向かった所にあるヒルデブルク城へ向かうとか」

「……ッ!!」

 

 魔王が村を離れる事を伝えると、少女の表情が(にわ)かにこわばる。深いショックを受けたあまり顔がサーッと青ざめた。もう彼に会えなくなるかもしれない事実に胸が激しくざわつく。

 

「ザガート様は、この宿の二階に泊まっておられる。伝えたい思いがあるなら、今のうちに伝えておきなさい。でないと、一生後悔する事になる……」

 

 テラジがそう言ってニッコリ笑う。魔王が宿に泊まっている事を伝えて、孫に奮起を(うなが)させようとした。

 

「お爺様、私……ッ!!」

 

 ルシルがガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。力強い足取りで階段へと向かっていき、スタスタと階段を上っていく。その表情には一切迷いが無い。

 

「頑張るんじゃぞ……」

 

 孫娘の勇気ある行動を、村長は真剣な眼差しで見送った。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 宿の二階に上がって廊下突き当たりの寝室にいたザガートは、ベッドの上に紙の地図を広げていた。

 ギレネス村の西にそびえ立つヒルデブルク城、(さら)にその西にある、深い森に(かこ)まれた村……それらをじっと眺める。

 

(まずは情報を集めねばならん……この世界に関する情報が()らな()ぎる)

 

 (あご)に手を当てて気難しい表情になりながら考え込む。これからどうするべきかについて思いを()せる。

 いくら力があっても、それだけで全て解決する訳ではない。彼はこの世界の歴史も、大魔王の事も、何も知らないのだ。まず第一にそれを知る必要があると考えた。王城に向かおうと思い立ったのも、その(ため)だ。

 

 ザガートが今後について思案していると、コンコンとドアを叩く音が鳴る。

 

「入れ」

 

 男が許可を出すと、ドアが開いて一人の少女が入ってくる。

 少女は慎重に辺りを見回すと、音を立てないように後ろのドアをそっと閉めた。

 

「ルシルか……何の用だ」

 

 少女の姿を目にして、ザガートが「何だお前か」と言いたげな顔をする。紙の地図を折り(たた)んで、一旦ベッドの下に隠す。

 別段怒っていた訳ではないが、特に歓迎する様子もない。考え事に集中していた所に水を差された思いがあったのか、無愛想な態度を取る。

 

「あ、あの……私……お礼が言いたくて」

 

 男に要件を問われて、ルシルがしどろもどろする。よほど言い(づら)い事だったのか、相手の機嫌を(うかが)うように(うわ)()遣いで見ながら、体をモジモジさせた。

 

「村を救ったら何でもするって約束したから……約束を果たしに来ました」

 

 それでも勇気を振り絞って、部屋に来た理由を伝える。

 

「ん? お、おお……そう言えばそうだったな」

 

 ザガートが一瞬間の抜けた受け答えをする。約束をすっかり忘れていた(ため)、不意を突かれる形となった。

 彼が村を救ったのは彼なりの打算的な考えがあったからで、少女が何でもすると言ったからではない。たとえ少女が何も言わなくても、男は村を救うつもりでいた。

 

「では……今ここで服を脱いで、裸になってもらおうか」

 

 それでもイジワルしてみたい気持ちがムクムクと湧き上がり、ニタァッと邪悪に口元を(ゆが)ませた。少女が本当に何でもするか試したい好奇心に駆られて、わざと無茶な要求をぶつけてみた。

 

「はい……(おお)せのままに」

 

 ルシルは恥ずかしそうに顔を赤くして、目を閉じて下を向くと、すぐに上着を脱ごうとした。

 

「ま、待てルシルっ! 早まるんじゃない! 良いか落ち着け、落ち着くんだっ! 何でもするというのは冗談だと思っていた! まさか本当に服を脱ぐとは思わなかった! きっ、貴様は俺が死ねと命じれば、命までも差し出す覚悟なのか!?」

 

 魔王が(なか)ばパニックに(おちい)りながら、少女の行動を慌てて止める。予想だにしない相手の反応に、心の底から動揺した。

 彼女がそこまで大きな決断をしたとは考えておらず、全く想定外の事態となった。

 

「冗談なんかじゃありません……私、本気です。貴方が助けてくれなかったら、今頃私も村のみんなも、とっくにオークに殺されてた……こうして無事でなんかいられなかった。私、貴方に深く感謝してるんです」

 

 ルシルは真剣な表情で相手を見ながら、切実な思いを打ち明ける。

 魔王が村を助けた行為に心から感謝している気持ちを伝えて、自分の必死さをアピールしようとした。

 

「私、貴方に恩返しがしたい……貴方が喜ぶなら、どんな事だってしたい。貴方がそれを望むなら、私はこの身を喜んで差し出します……」

 

 涙で瞳を(うる)ませながら、決して(いつわ)らざる気迫に満ちた言葉を吐く。相手のどんな要求も受け入れる覚悟を明確に示す。

 

「………」

 

 彼女の悲壮な決意を知らされて、ザガートがしばし黙り込む。少女の思いにどう応えるべきか悩む。

 言葉通りに『何でも』して良いのかという迷いはあった。好意に甘えて彼女の大切なものを奪う事に、良心の()(しゃく)があった。

 

 だが彼女は自分を喜ばせたくて、ここに来た。自分に喜んでもらう事こそ、彼女が(もっと)も幸せになれる選択肢だと結論付けた。

 好意を無下(むげ)にすれば、彼女が深く傷付いて落胆するであろう事は想像に(かた)くない。自分に女の魅力が無いと誤解して落ち込むかもしれない。

 

 考えが決まると、ザガートが数歩進んでルシルの前に立つ。数センチしか離れない距離まで顔を近付ける。

 

「……自分の決断を後悔しない覚悟はあるか」

 

 相手の顔をじっと見ながら、念を押すように問いかけた。

 

「……はい」

 

 ルシルが消え入りそうにか細い声でコクンと(うなず)く。

 

「ならば……俺の女になれ」

 

 そう言うや否や、ザガートが少女の体を両手でグイッと抱き寄せた。強い力でぎゅうっと抱き締めたまま、二人の(くちびる)と唇がビッタリと重なり合う。

 

「んっ……」

 

 強引にキスされても、ルシルは一切抵抗しない。(おび)えるように目を閉じて体をプルプル震わせたが、相手のなすがままにさせる。

 少女に抵抗の意思が無いと判断して、ザガートがそのままベッドに押し倒す。果物の皮を()くように、乱暴に服を脱がしていく。そして……。

 

 

 

 その晩、ザガートとルシルは激しく愛し合った!!!!

 

 

 

 ――――数時間後。

 

 チュンチュンと小鳥が鳴く朝……カーテンの(すき)()から日光が部屋に()し込む。

 

 全裸のまま毛布にくるまったルシルが、ベッドで横向きになって眠る。ベッドの下に乱暴に脱ぎ捨てた二人の服が散乱する。

 少女の乱れた髪、汗でじっとり濡れたシーツ、ゴミ箱に山のように積まれた使用済みのティッシュ……それらが昨晩の行為の激しさを物語る。

 

 ザガートは全裸で窓辺に立つと、カーテンを開けて日の光を肌で浴びる。男のたくましい汗ばんだ肉体が、日光を反射してキラキラと輝く。

 男は窓から村の景色を一望しながら、料理として部屋に運ばれた『とろけるチーズサンド』を、手で(つか)んでムシャムシャとうまそうに食べる。

 

 彼にとってこれが初めてのセックスとなったが、転生時に五百年分の経験を得た為か、童貞を捨てた感慨は無い。昨晩の行為も、まるでやり慣れたかのようにスムーズだった。

 

 それでも(けが)れを知らない無垢(むく)な乙女に、オンナの(よろこ)びを教えられた達成感があった。何か大きな事をやり遂げた満足感に(ひた)る。

 いけない事をしてしまった背徳感、清らかな乙女の純潔を穢してしまった罪悪感があったが、そのドキドキ感すら(くせ)になりそうだ。

 

 

 ……思えば、前世では何一つとして手に入らなかった。

 チンピラに絡まれた少女を助けたのに、無実の罪を着せられた。誰からも感謝の言葉を掛けられなかった。

 勉強もスポーツも必死に頑張ったのに、たった一つの失敗で全てを失った。

 最後は幼い少女を助けて命まで失った。

 薄れゆく意識の中で、自分のクソみたいな人生を呪った。もう人助けはコリゴリだと、そう誓ったはずだった。

 

 だがこの世界に来てからは、全てが良い方向に転がった。

 魔物をブチ殺せば感謝され、死者を生き返らせれば英雄扱いされ、助けた女性には好意を抱かれた。

 力、名声、女……一晩で欲しい物全てが手に入った。

 これまで抱いた(かわ)きが満たされて、ようやく生きている実感が湧いた。生きてて良かったと思える事象に巡り会えた。

 人助けも悪くない……初めて、そう思えた。前世の行いが(むく)われた気がした。

 

(まだだ……まだこんな所では立ち止まれん。俺が目指すものは、ここよりずっと遠い先にある……)

 

 ザガートが、この程度で満足すまいと自分に(くぎ)を刺す。欲が満たされてスッキリしそうになった気持ちに、(かつ)を入れて初心を思い出させようとした。

 こんな小さな村一つ救った程度で終わる気など、彼には毛頭無い。世界に英雄の名を(とどろ)かせるのだと野心を燃やす。

 

 その為には、何としても大魔王(アザトホース)を倒さねばならない。

 彼が生きている限り、真に世界を救った事にはならないのだから――――。

 

 

 決意を胸に抱いたザガートが後ろを振り返ると、ルシルは相変わらずベッドで熟睡している。よほど昨晩の行為で疲れたのか、スゥスゥと気持ち良さそうに寝息を立てており、一向に起きる気配が無い。

 

 ザガートはベッドに近寄ると、ぐっすり眠る少女の(ほほ)を、からかうように指で突っつく。指で触れた肌の感触がモチモチする。

 

「んっ……」

 

 それでも少女は(かす)かに体をピクッと震わせただけで、全く起きようとしない。完全に意識が夢の中にいる。

 

(……かわいい娘だ)

 

 子犬のような少女の寝顔がたまらなく(いと)おしくなり、ザガートはルシルの頬にそっと優しくキスした。

 

  ◇    ◇    ◇

 

 太陽が(のぼ)った昼下がり……村の入口で、ザガートとテラジが別れの言葉を交わしていた。

 英雄の旅立ちを見送ろうと、多数の村人が門に集まる。ルシルはテラジの(となり)にいる。

 

「村長……俺がいなくても村が大丈夫なように、これをアンタにやろう」

 

 ザガートはそう言うと、服の(そで)から小さな宝石の付いた指輪を取り出し、老人の右手の中指に()める。魔王が嵌めているものとは外見が異なる。

 

「ザガート様、これは一体何ですかな?」

 

 突然の贈り物にテラジが困惑しながら問いかける。

 

「その指輪を嵌めれば、魔力を持たぬ者でも中級の魔法が使えるようになる。それも回数無制限にだ。致死風(デッドリー・エア)だって使い放題……ゴブリンやオークの大群程度なら、余裕で返り討ちに出来るだろう。それでも倒せない敵が襲ってきたら、その時はすぐに助けに向かう」

 

 ザガートが指輪の効果について説明する。それは村長が強力な魔法を使えるようになる魔道具だった。村人に自衛の手段を与える事で、自分が不在でも村の安全を保証しようという(こころ)みだ。

 

「おお……これは何とも心強い。これで村の未来も安泰ですじゃ」

 

 魔王の気遣いにテラジが深く感謝する。男がしばらく村を開ける事に内心不安があったが、その懸念が払拭された事実に大いに感激する。

 

「……」

 

 村長の隣にいたルシルが浮かない顔をした。言いたい事があっても言い出せないように、下を向いてモジモジしながら黙り込む。

 

「……お前も一緒に来るか?」

 

 少女の心情を察して、ザガートが誘いを掛けた。

 

「私なんかが……」

 

 私なんかが付いていっても、足手まといになるだけだから……そう言いかけて、少女が口をつぐむ。

 

「若い娘が、大人に気を遣うものではない……自分の気持ちに正直に生きなければ、いつか大きな決断に踏み出せず、一生後悔する事になる」

 

 男が彼女の煮え切らない態度を(たしな)めた。少女の決断を後押ししようと、背中に手を回して自分の方へグイッと抱き寄せて、体を密着させる。

 

「心配するな……俺が守ってやる」

 

 相手の顔をじっと覗き込んで、優しく言葉を掛けた。

 

「……はいっ!」

 

 男の力強い言葉に、ルシルが嬉しそうに返事した。これまで胸に抱えたモヤモヤが払拭されたように晴れやかな笑顔になる。

 男の好意に甘えて良いのかという迷いはあった。だが彼はそれをして良いと言ってくれた。その好意に素直に甘える事にした。彼ならばそれが出来るという確信があった。

 

 ザガートとルシルは恋人のように体をくっつけて肩を抱き合うと、そのまま村の外に広がる荒野へと歩き出す。村人達の声援を背中に受けながら、次なる目的地のヒルデブルク城に向かう。

 

 これから過酷な旅が待ち受ける事は想像に(かた)くない。だが二人の心に不安は無い。

 この先どんな困難が待ち受けようと、自分一人じゃない……愛しい人と一緒なら、どんな苦難も乗り越えられる。そんな気持ちが彼らの中にあった。

 

 二人の晴れやかな旅路を祝福するように、太陽が燦々(さんさん)と照り付けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。