いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
魔王がギルボロスを倒した日の晩、村を挙げての宴会が開かれた。
大人達は酒と肉をかっ食らいながら楽しそうに笑い、歌を
ザガートがふと目を覚ますと、
一行は酒場がある宿屋の二階に
魔王は女がいなくなったのが気がかりになり、ベッドから起き上がって普段着に着替えると部屋の外に出る。ドアを閉めて廊下を歩き、ゆっくりと音を立てないように階段を下りる。下の階に来ると、酒場の方から何やら物音が聞こえる。
音が聞こえた方角に向かって歩き、酒場の
ザガートが酒場に入ると、
彼女は
魔王はしばらく離れた場所から様子を見ていたが、やがて女の方が男の存在に気付く。
「何ひゃあ……魔王……おぬひも起きよったか。どうひゃ……いっひょに飲まぬか? たのひいぞ……ウヒャヒャヒャヒャ!!」
鬼姫が魔王を見ながら楽しそうに笑う。完全に
女の口からプゥーーンと酒のニオイがする。あまりの強烈さに男は思わず鼻を
「いっひょに……飲もうや」
鬼姫がそう言いながら椅子から立ち上がる。男を飲みに誘おうと、正面へと歩き出す。けれども足元はふらついており、おぼつかない。案の定、数歩進んだ所で足がもつれてコケそうになる。
「危ないっ!」
男が
「……うっ!」
次の瞬間、鬼姫の顔が真っ青になる。慌てて男から離れると、床に四つん
「おええええええええっ」
そのままゲロを吐いてしまう。体がぐらついた事で胃が刺激されて、吐き気を
(何をやってるんだ、全く……これじゃ仕事帰りにヤケ酒をかっ食らうアラサーのOLじゃないか)
ザガートは思わず頭を抱え込んだ。酒を飲んで酔い
それでも彼女を放っておけず、
「しっかりしろ……体の具合は大丈夫か」
優しく言葉を掛けながら、女の背中を手でゆっくりと
床にぶちまけられた内容物は魔王が人差し指を向けて魔法の言葉を唱えると、何事も無かったかのようにサッと消える。
「ああ……もう大丈夫じゃ。心配かけてすまんのう」
鬼姫が背中を摩られたまま申し訳なさそうに謝る。思いっきり吐いてスッキリしたのか酔いが覚めており、普段の落ち着きを取り戻す。
「急にどうしたんだ……酒に
女が落ち着きを取り戻したのを見て魔王が問いかける。彼女がヤケ酒を
「我は……我はもうダメなんじゃ」
鬼姫が下を向いたまましゅんっとなる。親に
「……昼間の事を気にしているのか」
ザガートが心当たりを口にする。昼間の事というのはもちろん鬼姫がギルボロスに勝てなかった事を指す。彼女が魔神に力が及ばなかった事を気にかけているのではないかと、男はそのように考えた。
魔王の指摘に鬼姫がコクンと
「……嫌になったのじゃ」
ボソッと小声で
「我は自分では強い方だと思っておった……少なくともニッポンにおいては敵なしじゃった」
自らの実力に自信を持っていた事、東の国においては最強だった事実を誇らしげに語る。
「……じゃが、こっちの国に来てからはどうじゃ? お
悲しげな表情になりながら顔を上げると、自分が井の中の
「我は
「そう自分を
声を押し殺して泣く鬼姫の頭を、ザガートが優しく
(そうだ……彼女は決して弱くなどない。むしろ強い。そもそもアスタロトほどの強さがあれば、一地方を
彼女を落ち込ませる原因となった魔神の強さに思いを
「じゃが……」
魔王に
「それでも我は許せぬ……許せぬのじゃ! 散々大口を叩いておきながら、村の一つも守れなかった自分を……」
自身の非力さを心の底から嘆く。大切なものを守りたいと一心に願いながら、それが果たせなかった
「もういい……もういいんだッ!」
ザガートは大声で叫ぶと、話を
「……ッ!!」
突然の出来事に鬼姫が思わず黙り込む。男の腕に抱かれたまま、思考停止したマネキンのように固まる。一瞬何が起こったのか脳に思考が追い付かず、頭の中が真っ白になる。
女が抵抗しない様子を見て、男が彼女を抱いたまま口を開く。
「いくら頑張ったって、力が及ばない事もある……
この世には力の届かない限界がある現実を教えて、自分を責める行為の不毛さを説く。彼女を非難する者など一人もおらず、それ
「お前にやれない事があったら、全て俺に任せろ。秒速で駆け付けて、一瞬で解決してやる。何だってやってやる! 俺がお前の力になって、全ての困難を背負ってやる!!」
仲間の弱さを全力で受け止める覚悟を強い口調で伝える。彼女が自分の存在を重荷に感じないよう、全てを任せろと訴える。言葉の一つ一つに相手を気遣う優しさが
「魔王……」
男の説得に心を動かされたのか、鬼姫の表情が明るくなる。これまで胸に抱えたモヤモヤが消えてスッキリしたような、晴れやかな顔になる。胸の奥底から急激に熱いものがこみ上げて、今にも泣きそうになる。
「うっうっ……うわぁぁぁぁぁぁああああああああんっ……」
感激のあまり瞳を涙で
自分の弱さがもどかしかった。妖怪の王を名乗りながら敵を倒せなかった事に恥ずかしさを覚えた。穴があったら入りたい気持ちにすらなった。いっそこの世から消えてしまいたかった。
自分の存在を否定するほど追い詰められた彼女にとって、魔王の言葉がどれほど嬉しかったか……彼女はもう他に何もいらなかった。
赤子のように泣き続ける彼女を、魔王が両腕で受け止めるように抱く。
木の枝に
◇ ◇ ◇
……男の胸に顔をうずめたまま泣き続けた鬼姫だったが、やがて泣き疲れたように眠ってしまう。目を閉じたままスゥスゥと気持ちよさそうに寝息を立てる。
魔王は少し困ったような顔しながら彼女をお姫様抱っこし、そのまま宿の中を歩き出す。音を立てないように階段をゆっくりと上がり、二階の廊下の突き当たりにある寝室へと向かう。
部屋に入ると、ドアを閉めて鍵を掛ける。ベッドが二台置かれた部屋の
「……ッ!!」
眠っていたはずの鬼姫がクワッと目を開ける。今がチャンスと言わんばかりに男の肩を両手で
「我を……我を抱いてくれぬか? 落ち込んだ夜に一人で寝るのは寂しいのじゃ……」
性行為に誘う言葉が口から飛び出す。傷心を
「俺をベッドに引きずり込むために、わざと寝たふりをしたのか? ふふっ……全く、大した女だ」
ザガートが不敵な笑みを浮かべる。この状況に持っていくために魔王を騙す演技をしてみせた女のしたたかさに一杯食わされた気になり、思わず顔をニヤつかせた。
「……
鬼姫が瞳を涙で
魔王はもしかしたら清純そうな若い娘が好みであり、自分のような吉原の遊女の格好をしたアラサー女は相手にされないのではないか……そんな考えが胸の内にあった。
「……」
ザガートは女の問いにすぐには返答しない。相手をじらすように黙り込んだまま頭の中であれこれ考える。体を起こして女から離れると、全体像をじっくりと
身長百六十センチ代
極端に太っても
褐色肌と肌色の中間のような小麦色の肌は、まだ酒が残っているのか汗ばんでおり、
だらしなく
確かに清純派とは呼べないが、熟した
ザガートは考えが固まると、再び女の上に覆い被さってグイッと顔を近付ける。
「安心しろ……むしろ好みのタイプだ」
獲物を前にした悪魔のようにニヤリと笑うと、体を前に倒して、互いの体を密着させたまま強引に服を脱がせ始めた。そして――――。
その晩、ザガートと鬼姫は激しく愛し合った!!!!
数時間後……宿の主人が一階の調理場で、どろり濃厚なクリームシチューを調理し始めた時。
「……」
あられもない姿となった鬼姫が、横向きにベッドに寝転がる。魔王に背を向けたままずっと黙っている。嬉しそうに笑ったりもしなければ、悲しんでいる風でもない。
魔王はやはり女に背を向けたまま、
「……まだ鬼族の復興を願っているのか?」
酒を飲み終えると、背を向けたまま話しかける。
「……もうとうに再興の望みなど捨てておるわ」
鬼姫が寝そべったままボソッと小声で
「我は一族の同胞も、鬼族の誇りも、全て失った……今の我には何も無い。
桃太郎に敗れて全てを失った事を
ザガートは後ろを振り返り、女が寝ていたベッドの前まで移動する。その場に
「……だったら俺が居場所を与えてやる。お前の生きる目的に、俺がなってやる。お前はいい
女の横顔を上から
鬼姫は数秒ほど黙っていたが、寝そべったまま体を動かして男の方を向く。互いに数センチしか顔が離れないまま、見つめあった状態になる。相手の鼻息が顔にかかり、
「……嬉しい事を言ってくれる」
鬼姫はフッと笑みを浮かべると、目を閉じたまま顔を近付けて、男の