いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
サトルに母親を見つけると約束したザガートは、彼に事件現場までの道案内を頼む。
サトルは魔王に言われるがまま一行を自分の住む家まで案内する。ドアを開けて中へ入ると、母親がいなくなった台所まで連れていく。
一行が足を踏み入れると台所は
魔王は一行を入口で立ち止まらせると、自分だけが中へ入っていって台所を
最後に台所の
「何か分かったのか?」
魔王が何かを突き止めたらしき反応を示した
「ああ……
魔王が後ろを振り返らないまま王女に言葉を返す。台所の中に魔力の
「魔族の仕業だって!?」
魔王の言葉を聞いて仲間達が
台所の調査が終わった為、入口で待機していた仲間達が魔王の元へと集まる。仲間と一緒にいたサトルも同じようにする。
「それで……それで母さんは何処にいるの!?」
サトルは真っ先に魔王の
少年に質問された魔王は無言のまま、台所のある一点を指差す。
魔王が指差した方角……そこには顔を映すための鏡が置かれていた。
「……鏡?」
台所の
男が指差した鏡は一見何の変哲もない、ただの鏡だ。この中にルミエラがいると言われても彼女にはピンと来ない。
「そう、鏡だ。魔力の痕跡は鏡の中へと続いている。恐らく敵は鏡の中と外を自由に
女の疑問に魔王が言葉を返す。台所の中で感じた魔力の
「サトル、俺は今から鏡の中へと飛び込んでいく。俺が無事に戻ってくるまでここで待ってろ」
男は少年の方を振り返り、母親の救出が終わるまで大人しくしているよう
「僕も一緒に行かせてよっ!」
サトルが自分も一緒に付いていくのだと言い出す。とても魔王の帰還を待っていられる様子ではなく、一分一秒でも早く母親に会いたくてウズウズしたようだ。
「鏡の中がどうなってるかは俺でも分からん……とても怖い目に
魔王があらかじめ危険な目に遭うかもしれないと忠告する。彼が
「母さんがいなくなるより怖い事なんか無いやい!!」
危険を知らされてもサトルの意思は断固として揺らがない。何としても大切な家族を助けるのだと思いを強くする。
「そうか……なら俺の手をしっかり握れ。俺が握るのをやめるまで、絶対に手を離すんじゃないぞ」
魔王は少年の説得を諦めて危険な場所への同行を許す。少年に右手を差し出して、安全が確認されるまで手を強く握っているよう命じる。
「うんっ!」
サトルは男の言葉を聞いて笑顔で
ザガートは少年と手を繋いだ状態になると、仲間達の方を振り返って「後は任せた」と言いたげに無言で目配せする。四人の女は魔王の頼みを承諾したようにコクンと
「では……行くぞ!!」
魔王は再度鏡のある方角を見ると、少年と二人で歩いていって鏡の前に立つ。決意に満ちた言葉を吐くと、少年と手を繋いだまま鏡に向かってピョーーンとジャンプする。
すると二人は白い光に包まれて光球のような姿になった後、次第に小さくなっていってゴルフボールくらいの大きさになる。最後は掃除機で吸われたように鏡にヒューーンと吸い込まれていって姿が見えなくなる。
「ザガート様……どうかご無事で」
鏡の中に飛び込んだ男の無事を、ルシル達は天に祈る事しか出来ない。
◇ ◇ ◇
鏡の世界に飛び込んだザガートとサトル……白い光に包まれて何も見えない状態だったが、数秒が経過すると光がうっすらと消えて徐々に視界が開けてくる。
やがて光が完全に消えて無くなり、周囲が見渡せる状態になると、魔王達はさっきとは違う場所に立っていた。
「ここが鏡の向こう
ザガートが周囲を見渡しながら開口一番に
鏡の世界といっても物体が反転したりはしていない。何処かの城の地下にありそうなレンガ
「この迷宮の何処かに母さんが……」
サトルが広大な迷宮を前にしてゴクリと
迷宮の中はシーーンと静まり返っていて、物音一つしない。魔獣が徘徊する足音も聞こえなければ、窓が無いために風が吹き抜けたりもしない。ただ自分達の呼吸音が聞こえるだけだ。その静寂さがより一層不気味さを引き立てる。
魔王は少年の手を握るのをやめると、
「迷宮の中に
やがて目をグワッと見開くと、両手で
魔法が発動したらしき白い光が一瞬放たれると、魔王の頭の中に迷宮全体を映し出した地図のようなものが浮かび上がる。魔族がいた事を示すらしき赤い点が遠く離れた場所に、人がいた事を示すらしき青い点が魔王達から近い場所にあった。
「……ルミエラの居場所を突き止めたぞッ! サトル! 俺は今からお前の母さんがいる場所まで走っていくから、全力で付いてこい!!」
魔王は女の居場所を突き止めた事を告げると、
サトルは一瞬驚いた顔をした後、慌てて魔王の背中を追いかける。男に引き離されまいとするのに必死だった。
ザガートは少年とはぐれてしまわないよう、わざと速度を調整しながら走る。全力で走ったら当然少年が付いていけないスピードになるので、そうならないようにする。
曲がり角を二つ曲がった先にある通路を直進すると、床に何かが転がっているのが見えた。二人はその何かの前まで来て足を止める。
「これは……!!」
目の前にある物体を見て、ザガートが
床に転がっていたもの……それは人
ただルミエラの表情は何処か悲しそうに見えた。
「母さんっ! 僕だよ、サトルだよ! 助けに来たよ!!」
サトルはすぐさま球体へと駆け寄ると、ガラスの壁を手でバンバン叩いて中にいる母親へと呼びかける。けれど何度息子が呼びかけてもルミエラは一切反応しない。外の音が届かないのか、魔法で眠らされているのか、目を閉じたまま時間停止したように固まっているだけだ。
それでもサトルが
「クククッ……無駄なあがきはやめるんだな」
少年の行為を
「誰だッ! 姿を見せろ!!」
ザガートが声の主に向かって
男が探知魔法を唱えた時、敵は遠く離れた場所にいた。だが今、敵の反応はすぐ近くにある。それは敵が何らかの手段を
敵が単なる小悪党ではないと感じて、魔王はより一層警戒心を強めずにいられない。
「クククッ……そう慌てずとも、今から俺様の姿を見せてやるよ」
声の主が魔王を侮蔑するようにクスクスと笑う。完全に相手をおちょくっており、あくまで余裕の態度を崩さない。
それから数秒後、壁に飾られた無数ある鏡のうち一つから、黒い影のような物体がスゥーーッと
鏡の中から出てきた物体……それは妖怪の一反木綿を黒一色に染めたような、あるいは影が実体化した悪霊のような姿をした化け物だった。顔らしき場所にあったのは目だけで、鼻や口は見当たらない。その目は不気味に赤く光りながらニヤニヤしている。体は一枚の紙のように
一見するとゴースト
「……お前がルミエラをさらった張本人か?」
鏡から出てきた影のような悪魔にザガートが素性を問い
「
魔王の問いに悪霊が誇らしげに自らの名を明かす。
「何の魔力も持たない女性をこんな所に閉じ込めておくとは、一体何が狙いだ?」
ザガートが、ルミエラをさらった真意を問い
彼女が生きていた事は魔王達にとっては
敵が何を目的としてそうしたのかが分からず、
「クククッ……俺は人間の悪意が具現化した悪魔。その俺にとっては、ヒトから生まれた絶望の感情こそ極上の
魔王の問いにガストが笑いながら答える。自分が人間の悪意から生まれた存在である事、だからこそ人間の絶望を生命活動の源としていた事……それらの情報を包み隠さず教える。
「この女は絶望したんだよ……息子に嫌われた事にな。俺は彼女を魔法で眠らせて、結界の中に閉じ込めてやった。彼女はこの先死ぬまで眠ったまま絶望し続ける……俺はこの女から湧き出る絶望を食らい続ける。俺にとってこの女は、いわば便利なエサ係という訳さ……」
ルミエラが深い絶望に
「母さんはお前のエサなんかじゃない! 僕の母さんを返せ!!」
サトルが自分の母親をエサ呼ばわりされた事に激高する。大切な家族を馬鹿にされて許せない気持ちになり、感情の
「やかましい! 大人しくしてろ、このクソガキが!!」
ガストが目をグワッと見開いて少年を
「うぁぁぁあああああっ!!」
全力で頬をぶっ叩かれたサトルが悲鳴を上げながら豪快に吹っ飛ぶ。地面に叩き付けられて横向きにゴロゴロ転がると、最後はうつ伏せに倒れたまま起き上がらない。
ザガートが慌てて駆け寄り少年を助け起こすと、サトルの頬は焼いた
「クソガキめが……忘れたのか? これはお前が望んだ結果なのだぞ!! 母親なんかいなくなればいい……お前は確かにそう言った。俺はそれを聞いたから、お前の望みを
ガストが少年の犯した罪を
「分かったら母親の事など諦めて、とっとと
最後は母親の救出を諦めるよう忠告して、迷宮内に響かんばかりの大声で高笑いした。
「うっうっ……」
サトルが地面に両手をついて四つん
彼なりに母親を傷付けた責任を感じたのか、ガストの
「………」
ザガートの表情がみるみる怒りに染まる。感情を抑えている
魔王の中に少年を責める気持ちなど