いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。   作:大月秋野

68 / 134
第68話 魔女の名はワルプルギス

 両親が魔王と会ってる間に家を抜け出したマイは再び廃墟を訪れる。どんな危険を冒してでもカナミと一緒にいたい思いを伝える。

 友の気持ちを知らされてカナミが泣きそうになった時、彼女を屍人に変えた魔女が魔物の正体を現す。それは見るもおぞましい骸骨の化け物だった。

 

 魔女はカナミに電流を流して痛め付ける。マイは必死に止めようとしたが何も出来ない。

 少女が悲嘆に暮れた時、何処からか火炎光弾(ファイヤー・ボルト)が放たれて魔女を攻撃する。魔女は咄嗟(とっさ)に攻撃をかわし、電流を流す作業が止まる。

 

 二人の窮地を救った者……それは他ならぬザガートその人だった。

 

「イッ、異世界ノ魔王……何故ココニ!?」

 

 男の姿を目にして魔女が驚くあまり声を(うわ)()らせた。予想外の展開にショックを受けたあまり口をあんぐりさせて、全身をわなわな震わせる。表情に焦りの色が浮かび、呼吸が荒くなる。「アワワ」と声に出してうろたえる。

 

 それは彼女にとって決してあってはならない事だ。この辺境の田舎に自分の邪魔をする者などいないと思って今まで好き勝手やってきた。そこによりにもよって、救世主と呼ばれた男が現れたのだ。(まさ)に餌場に土足で踏み入られた心地がした。

 

「俺は貴様のような悪党がいる場所なら、何処へだって駆け付ける……」

 

 ザガートがあえて恰好(かっこう)付けた言い回しをする。宝玉のありかが書かれた地図を頼りに旅してきた事は言わない。

 

「フンッ……マァ良イサ! ドノミチ大魔王様カラハ、アンタヲ見カケタラ殺スヨウ(メイ)ジラレタカラネ! チョウド良イ! コノ場デ始末シテヤルヨッ!!」

 

 魔女が何としても魔王を返り討ちにせんと息巻く。上司から男の抹殺を命じられた事を教えて、興奮気味に鼻息を荒くさせた。

 

「モウ知ッテルダロウケド、(アラタ)メテ名乗ラセテモラウヨ。アタシハ、ワルプルギス……魔王軍十二将ノ一人ニシテ、カツテ災厄ノ魔女ト恐レラレタ女サ」

 

 挨拶(あいさつ)代わりに自己紹介する。魔王軍の幹部の一人だったと教えて、伝説の魔女として恐れられた事を誇らしげに自慢する。

 

「……」

 

 マイは二人のやり取りを呆気(あっけ)に取られて聞いていた。予想外の展開に思考が追い付かず、フリーズしたように頭が真っ白になる。まさか本当に救世主が駆け付けるなどとは夢にも思わず、口を開けたままポカンとさせた。

 しばらく茫然(ぼうぜん)自失になっていたが、カナミの電流が解かれた事に気付いてハッと我に返る。

 

「カナミちゃんっ!」

 

 慌てて駆け寄り少女を助け起こすと、両手で抱き(かか)えたまま魔王達の方へと走り出す。彼らの(そば)にいれば安全だろうと判断する。

 魔王の仲間達と合流すると、両手で抱えた少女を一旦地面に下ろして寝かせる。

 

「うっ……」

 

 カナミが目を開けて言葉を発する。マイの姿が視界に入り、安心したようにニッコリ笑う。(すで)に屍人だからというのもあるが、電流を流された事による負傷はそれほど大きなものでは無いようだ。

 

「お二方(ふたかた)はオイラが全力で守るッス! あの(みにく)い骨婆さんには一切手出しさせないッス!!」

 

 短刀を構えたなずみが少女達に背を向けて立つ。いたいけな少女を悪しき魔女の犠牲にさせまいと思いを強くする。

 

「キィィーーーーーッ! アタシヲ醜イ骨ババアトハ、ヨクモ言ッテクレタネ! コノ東洋人ノ不愉快ナ(メス)ガキ! アタシャ、アンタヲ絶対許サナイヨッ!!」

 

 魔女が容姿を悪く言われた事に激しく憤慨する。金切り声を発してヒステリックに(わめ)き散らす。プライドを傷付けた子供を許せない気持ちになる。

 

「ハラワタヲ ブチ()ケテ死ヌガイイ! 死光線(デス・ビーム)ッ!!」

 

 正面に右手の人差し指を向けて呪文の詠唱を行う。指先に紫の光が集まっていって小さな(かたまり)になると、そこから一筋の光線がなずみめがけて放たれた。

 

「フンッ!」

 

 ザガートは一瞬でなずみの前までワープすると、飛んできた光線を手で弾く。

 

「ワルプルギス、挨拶代わりに受け取れッ! ゲヘナの火に焼かれて消し(ずみ)となれ……火炎光弾(ファイヤー・ボルト)ッ!!」

 

 間髪入れず反撃の魔法を唱える。男の手のひらに魔力の炎が集まっていき、圧縮されて一つの火球になると、正面にいる魔女めがけて一直線に撃ち出された。

 

 轟々(ごうごう)と燃えさかる灼熱の業火が目にも止まらぬ速さで飛んでいく。魔女は自分に向けて放たれた火球を避けようともしない。何の回避行動も取らず、ただ棒立ちになる。そのまま攻撃魔法の餌食(えじき)になるかに思われたが……。

 

「……何ッ!?」

 

 次の瞬間目にした光景にザガートが驚きの言葉を発する。

 火球は魔女の体をスゥッと通り抜けてしまい、背後にある空間へと飛んでいく。そのまま地面に落下して爆発する。

 よく見ると最初に会った時は実体があった魔女の姿が、今はうっすらと半透明に()けてボヤけている。まるで立体映像か幽霊になったようだ。

 

(どういう事だ……?)

 

 攻撃魔法が当たらなかった事にザガートが困惑する。あれこれ推測を巡らせたものの、すぐには答えが出ない。

 

「考エ事ヲシテイル(ヒマ)ハ無イヨッ! 死ネ! 死光線(デス・ビーム)ッ!!」

 

 魔王が物思いに(ふけ)た時、魔女が男の(すき)を突くように攻撃呪文を唱える。半透明になったにも関わらず、魔女の指先からはしっかり光線が放たれる。

 男に光線が迫った時、鬼姫がすかさず彼の前に立ち、手に持っていた刀で光線を弾く。

 

「何をボーッと突っ立っとる! お主らしくないぞッ!!」

 

 戦闘中に考え事をした魔王を鬼姫が(しか)り付ける。もし彼女が(かば)わなければ、効いたかどうかはともかく、魔王は確実に光線を食らっていた。それは普段の彼らしからぬ失態だ。

 

「ああ……すまない」

 

 魔王が自身の不注意を()びる。一瞬どうすべきか悩んだ素振りを見せた後……。

 

「鬼姫……ついでに一つ頼まれてくれないか。俺は敵の能力を探るために、今から一分半ほど無防備になる。その間、敵の攻撃を全力で受け切ってもらいたい」

 

 女の肩に手を乗せて頼み事をする。

 

「なっ……何じゃとぉぉぉぉおおおおおおーーーーーーーーッッ!!」

 

 鬼姫が大声で叫んで仰天する。敵の攻撃に九十秒間耐え続けるという注文はあまりに無茶振りだった。

 

「……こんな事を頼めるのはお前しかいない」

 

 ザガートが念を押すように一言付け加えた。

 

「しょ……しょうがないのう! そこまで言うなら、頼まれてやるわい! その代わり一つ貸しにしておくぞ! 後で何でも言う事を聞いてもらうからのっ!」

 

 鬼姫がしぶしぶ承諾する。かなり無茶な頼み事であったが、魔王にそこまで親身に頼られてはとても断れる空気ではない。貸しを作っておく事を、困難な仕事を引き受ける条件とした。

 

「さて、そうと決まったからにはそこの骸骨ババアよ! ここから先はこの鬼姫が相手となろう! 他の者には指一本触れさせぬゆえ、いつでも掛かってくるがよい!!」

 

 気持ちを切り替えて魔女の方を向く。両手で握った一振りの刀を構えると、自身に注意を向けさせようと挑発的な言葉を吐く。

 

「キィィーーーーーッ! アンタマデ、アタシヲババア()バワリスルノカイ! (マッタ)ク許セナイネェ! トイウカ、何百年生キテルアンタモ、アタシト(オナ)ジババアダロッ!!」

 

 ワルプルギスがまたも老婆呼ばわりされた事に憤慨する。鬼姫が自分と同様に長く生きている事を指摘して、お前にだけは言われたくないと言いたげに声を荒らげた。

 なずみは心の中でババア同士の対決が始まったと思ったが、あえて口には出さない。

 

「ハラワタヲ ブチ()ケテ死ヌガイイ! 死光線(デス・ビーム)ッ!!」

 

 魔女がザガートに発射した魔力の光線を、今度は鬼姫に向けて放つ。

 

「フンッ!」

 

 鬼姫が鼻息を吹かせながら光線を刀で弾く。光線は刃にぶつかると鏡に触れたように反射して、別の角度へと跳ね返される。魔女の光線はマサムネに傷を付けられない。

 

死光線(デス・ビーム)ッ! 死光線ッ! 死光線ッ!」

 

 それでも魔女はひるまず光線を撃ち続ける。威力を増すための詠唱を省略し、数に任せた戦法に切り替える。右手だけでなく左手からも発射して、両手の人差し指から交互に撃ち続ける。その動きは壁のボタンを押しているようにも、リズミカルにダンスを踊っているようにも見えて、何とも奇妙だ。

 

「フンフンフンフンフンッ!」

 

 鬼姫も負けじと刀を振り回して相手の攻撃を弾く。魔女の光線はおよそ一秒に一発のペースで放たれたが、女は正確に反応しており、一発の防ぎ漏らしも無い。魔女より女の方が反応速度が上回っていたようだ。

 

 魔女が光線をピュンピュンピュンと発射し、鬼姫がキンキンキンッと刀で防ぐ。そんな激しいせめぎ合いが続く。

 鬼姫の後方にいたザガートは目を閉じて眉間(みけん)(しわ)を寄せて、(ひたい)に人差し指を当てて意識を集中させる。なずみ達他の三人はカナミとマイを(かば)うような配置で立つ。

 

 魔女と鬼姫の滑稽(こっけい)な攻防が一分半ほど続いた後……。

 

「……ムッ!」

 

 ザガートが突如目をグワッと開いて言葉を発する。

 

「魔王よッ! あやつの能力に気付けたのか!?」

 

 仲間が何かに気付いたらしい素振りを見せたため、鬼姫が後ろを振り返らないまま声だけ掛ける。いい加減時間稼ぎにも疲れてきたらしく、表情に焦りの色が見えた。

 

「ワルプルギスは……ヤツは今この場にいないッ! ヤツは自分の姿を()した幻影だけを映し出し、本体は別の空間にいるッ! その本体を叩かない限り、ヤツを倒す事は出来ない!!」

 

 魔王が鬼姫の問いに答える。魔女が自分達とは異なる空間に潜伏しており、そこから一方的に攻撃を仕掛けてきていた事実を突き止める。

 

「ならば今すぐ本体を叩くがよい! お主ならたやすい事じゃろう!」

 

 鬼姫が魔女の潜伏先を割り出して倒すよう求める。魔王ほどの力があればそれが可能だろうと考えた。

 

「そうしたいのは山々だが……ヤツは探知魔法を阻害する結界をも張っている。おかげでヤツがどの空間に潜伏しているか割り出すのは、俺の力を(もっ)てしても容易ではない。何とも厄介な事だ……まさかこれほど念入りに防御策を練っていたとはな」

 

 一転して魔王の表情が(けわ)しくなる。仲間の期待に応えられない自身の不甲斐なさを深く嘆く。

 魔女が居場所を割り出されないよう対策を取っていた事、魔王でもそれをすぐには破れない事を伝えて、敵の周到さに一杯食わされた気分になる。

 

(だが、どうしても分からない事がある……それほど強力な結界を維持し続ける(ため)には、膨大な魔力が必要になる。ヤツはその魔力を一体何処から得ている……?)

 

 ある一つの疑問が湧き上がり、またも下を向いて物思いに(ふけ)る。まだ魔女の能力に明かされていない秘密があると考えて、それを突き止めようと躍起(やっき)になる。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 魔王が考え事に没頭した時、魔女の息が上がる。表情に疲労の色が浮かび、両腕をだらんと下に伸ばして攻撃をやめた状態になる。一分半光線を撃ち続けて、彼女も相当魔力を消耗したようだ。

 

「……ソロソロ魔力ヲ補給スルトシヨウ」

 

 そう言いながら右の拳をグッと握り締めた瞬間……。

 

「うっ……うああああああああああっっ!!」

 

 地面に寝かされていたカナミの体に電流が流れ出す。

 

「カナミちゃんっ!」

 

 友の体に電流が走った事にマイが慌てふためく。反射的に手を伸ばして、またもバチッと感電してしまう。

 

「これは一体ッ!?」

 

 突然の出来事にレジーナが困惑する。少女に電流が流される光景を見たのはマイは二度目だが、他の連中はこれが初めてだ。そのため全く状況が(つか)めず、どうすればいいか分からず悲嘆に暮れる。

 

「そうか……分かったぞ!」

 

 一行の中で真っ先に状況を把握したらしき魔王が言葉を発する。

 

「左手の薬指に()めた指輪からカナミに電流を流す……その電流でカナミがもがき苦しむ事により生まれた精神エネルギー、それがヤツの魔力の源ッ! ヤツはカナミから得た膨大な魔力を、探知魔法を阻害する結界を維持する事に使っていたんだ!!」

 

 魔女が少女を痛め付ける行為によって魔力を得ていた事、それこそが魔女が自身の居場所を隠匿する力の正体であった事実を瞬時に突き止めた。

 

「……なんて事をッ!!」

 

 拷問の理由を知らされてルシルが激昂する。いたいけな少女を自身の野望の踏み台にする敵の行いを許せない気持ちになる。はらわたがグツグツと煮えくり返り、怒りで脳の血管がブチ切れそうになる。

 

「ヒヒヒッ……悔シイカイ? デモアタシヲ()メルノハ、オ門違(カドチガ)イダヨッ! コレハ、ソノ子自身ガ望ンダ事……アタシトソノ子ハ、ソウイウ契約ヲ()ワシタンダカラネッ!!」

 

 深く(いきどお)るルシルをワルプルギスが小馬鹿にするように笑う。一連の出来事をカナミが望んでいたと主張して、自分は悪くないと言いたげに開き直る。

 

「アタシハ、ソノ子ノ願イヲ(カナ)エタ……ソノ見返リトシテ、ソノ子ハアタシノ奴隷ニナッタ。一生アタシニ搾取(サクシュ)サレ続ケルダケノ、(アワ)レナ奴隷ニネ……イーーーッヒッヒッヒッ!!」

 

 少女を魔力供給の源にしたのは等価交換の結果だと明かして、心の底から愉快そうに大笑いした。

 

「カナミちゃん……」

 

 マイが悲しそうな顔をする。電流を流され続ける友を(あわ)れむような目で見る。魔女の便利な道具としてこき使われた彼女の境遇を()(びん)に感じる。

 

「ごめんね、マイ……私、ずっと黙ってた」

 

 カナミが電流を流され続けたまま口を開く。全身を駆け回る痛みに苦しんではいたが、気を失うほどではなく、言葉を交わす余裕もあった。

 

「私、悪い子なの……学校に行くのが嫌で、学校なんて無くなっちゃえって魔女にお願いしちゃった。そしたらおっきな爆発が起きて、パパもママも、村のみんなも、全部消えちゃった。私のせいで……私が悪いお願いしちゃったせいで!!」

 

 魔女に願い事をした事、それが村の崩壊に繋がった事を教える。

 

「私、バカだった……頭の悪い、小さな子供だった。悪い魔女だって本に書かれてたのに、無視して封印を解いた。私、村が滅びて欲しかった訳じゃない……ただ学校に行きたくないって……そう思っちゃっただけなのに」

 

 取り返しの付かない事をしたと後悔する念に駆られて、声に出してすすり泣く。瞳から大粒の涙がボロボロと(あふ)れ出し、ウッウッと()(えつ)が漏れ出す。年端も行かぬ少女が自分を責めて泣く姿は見るからに痛ましい。

 

「みんなが死んだのは私の責任だから……責任取らなくちゃ。だから私、決めたの。これから一生、魔女の奴隷になるって。魔女に痛め付けられて、自分に罰を与えて、罪を償わなきゃいけないんだって……」

 

 魔女に電流を流されるのは彼女自身が望んだ事、自分に苦痛を与え続ける事が、やらかした罪の償いになると考えた事を伝えて話を終わらせた。

 

「……」

 

 少女の話を聞かされて(みな)が黙り込む。彼女の苦しみを取り除きたいと願ったものの、掛ける言葉が見つからない。

 

 少女は何も悪い事などしていない。ほんのちょっとしたイタズラ心が湧いただけだ。年端も行かぬ子供なら、誰もが一度は頭をよぎる事……それを魔女に願った事が大惨事を引き起こした。

 いたいけな子供が、悪い魔女の甘言(かんげん)に踊らされただけだ。誰が彼女を責められようか。

 

 少女は二十年間苦しみ続けた。村人を死に追いやった事に責任を感じて、電流を流される事がせめてもの償いになると考えて、ずっと一人で苦しんでいた。

 取り返しの付かない事をしたと責任を感じる胸の痛みは、ひょっとしたら、電流を流されるよりも辛い事だったかもしれない。

 

(……カナミちゃん)

 

 少女の深い悲しみを知って、マイは胸が詰まる思いがした。彼女が今までどれだけ辛い思いをしたか、それを想像しただけで心臓がズキズキと痛む。何としても彼女を辛い苦しみから解放せねばなるまい……そう思いを抱く。

 

「……カナミちゃんっ! その薬指に()めてる指輪、あたしが引っペがしてあげるっ! そうしたらもうカナミちゃんが痛い思いをしなくて済むからっ!!」

 

 胸の内に湧き上がった思いを声に出す。彼女の手から指輪を外せば電流を流されずに済むと、そう結論付けた。

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

 倒れた少女に駆け寄って左手に手を伸ばすと、力ずくで指輪を引き抜こうとした。

 

「うっ……うああああああああああっっ!!」

 

 案の定、少女の手に触れたマイに電流が流れ出す。屍人なら耐えられる痛みも、生きた人間が味わえばかなりの激痛になる事は間違いない。

 

「マイ、バカな事するのはやめてッ! このままだと貴方、死んじゃうかもしれないんだよ!?」

 

 友の無謀極まりない行動にカナミが大慌てになる。彼女からすれば、マイの取った選択はあまりに理解不能だ。普通の人間が電流を浴びれば死ぬ危険性だってあったのだ。そのリスクを言葉で伝えて、(ちょ)(とつ)猛進な行いをやめるよう忠告する。

 

「嫌だ、絶対離さない! 絶対離さないって、そう決めたもんッ!!」

 

 カナミに(くぎ)を刺されても、マイは決して手を離そうとはしない。体中を焼けるような痛みが駆け回っても、必死に耐えて()せ我慢する。

 

「悩みも、苦しみも、痛みも、もうカナミ一人に全部背負わせない! 私が一緒に背負う! 私が一緒に背負って、辛い事も、苦しい事も、半分こにするっ! どんな辛い事も、二人一緒なら乗り越えられるっ! だって私達……親友だもんっ!!」

 

 痛みを背負う覚悟を強い口調で伝えた。本来一瞬触れただけでバチッと激痛を味わうほどの電流に長時間耐え続ける精神力は、(まさ)に友を思う気迫と執念が()せる技だった。

 

「でぇぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁあああああああああっっ!!」

 

 腹の底から絞り出したような大声で叫ぶと、カナミの左手の薬指に嵌めてあった指輪を両手で引き抜く。

 

「こんな指輪、無くなっちゃえ!!」

 

 ポイッと地面に投げ捨てると、間髪入れずに足で踏み付けた。グシャァッとガラスが踏まれたような音が鳴り、金属製の指輪が粉々に砕ける。その瞬間二人に流れていた電流が止まる。

 

「ナッ!? 馬鹿ナ……アタシノ(チカラ)ノ源ガ……ウワアアアアアアアアアッ!!」

 

 魔力の供給を絶たれた事に困惑したワルプルギスが大きな声で叫ぶ。目の前に映し出されていた魔女の幻影がスゥーーッと薄れて消えてゆく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。