いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
一階の大広間の中央最奥にある大扉を開くと、目の前に巨大な階段が広がる。階段を上がって廊下の突き当たりにある鉄製の扉を開けると、謁見の間と思しき場所に
部屋の最奥にある玉座に一人の男が座る。ダークブルーの騎士鎧を
ザガート達は黒騎士から数メートル離れた場所まで来て一旦足を止める。そのまま相手の出方を
『……
一行の姿を目にして黒騎士が沈黙を破る。マイク
「お前が不死騎王ブレイズか……下の階にいた連中はお前の部下か?」
ザガートが開口一番に問いかける。これまで倒してきた数々の魔物が彼の仲間かどうか、聞いて確かめようとした。
『
ブレイズが吐き捨てるように言い放つ。自身があくまで孤高の存在であり、城にいた魔物達を
とはいえ瘴気を発しただけで魔物が集まってくる事は、彼が
「そうか……知ってるかもしれないが、名乗らせて頂く。俺の名はザガート……異世界から来た魔王にして、この世界の魔族と対立する者だ」
ザガートが
『名は聞き及んでいる……
黒騎士が気遣いは無用と言いたげに言葉を返す。魔王の名声は辺境の地にしっかり届いており、彼が英雄と呼び
「なら話は早い。数日前にこの城を魔族の一団が攻めたのを見たと、山に住む妖精が言っていた。そいつらを返り討ちにした時に、青い宝玉のようなものを落とさなかったか」
ザガートが率直に用件を伝える。プリムから情報を聞いた事を話して、旅の目的に必要な宝玉を持っていないかどうか問いかける。
『……宝玉なら、それがしが持っている』
ブレイズが魔王の問いに答える。ゆっくり立ち上がって玉座の裏側に回り込むと、その場にしゃがみ込んでゴソゴソと何かを取り出す。再び立ち上がって玉座の前まで歩く。彼の右手のひらに
『欲しければ、くれてやる……拙者には無用なものだ』
そう口にすると、右手に持っていた水晶をザガートめがけてヒョイッと投げる。ザガートはそれを左手でキャッチする。じっと眺めて本物かどうか確認すると、サッと
かくして大魔王の城に行くために必要な八つめの宝玉を苦もなく入手した事となる。
「よし、これでこの城でやるべき用事は済ませたなッ! そうと決まったら、さっさとこんな城からおサラバしよう!!」
宝玉を入手した事を確認すると、レジーナが魔王の腕をグイグイ引っ張る。彼が黒騎士と戦いたい欲求が湧き上がる事を懸念して、そうなる前に城から出てしまおうともくろむ。
だが王女がいくら腕を引っ張っても、魔王は決して動こうとはしない。まるで重さ百キロを超える銅像になったかのようにその場に
「ブレイズ……俺と一対一の勝負しないか?」
やがて黒騎士の方を振り返り、決闘の提案を持ちかけた。
「ああっ……!!」
悪い予感が当たったと言いたげにレジーナが頭を抱え込む。強者と戦ってみたい魔王の悪い
「お前は仕えるべき主を千年待ち続けたのだろう? そんなお前をぜひ仲間に加えたくなった。お前ほど高い実力の持ち主、側近として迎えられれば、これほど心強い事はない」
仲間の苦悩など気にもかけず、ザガートが話を続ける。黒騎士の能力の高さに目を付けた事、臣下に加えたくなった意思を伝える。
『魔王よ、気は確かか? かつて世界を救った勇者ですら、それがしを仲間に引き入れる事を諦めた。一旦
ブレイズが我が耳を疑う。遠い昔に戦った勇者を引き合いに出して、自分に実力を認めさせる事がどれだけ困難かを分かりやすく伝える。
「どのみちここで引き下がるようでは、理想の王国を実現させる事など出来はしない……」
ザガートは
男の話を黙って聞いていたブレイズだったが……。
『……フフフッ』
やがて声に出して笑い出す。
『フフフッ……ハハハッ……ハァーーーッハッハッハッ!!』
最初は押し殺すように小さな声で、徐々に声量を上げていき、最後は悪党のように大きな声で笑う、いわゆる三段笑いをする。
相手を馬鹿にして笑う感じではない。どちらかと言うと、魔王の何事にも動じない勇気と覚悟を高く買ったように見えた。
『面白い……面白いぞ、異世界の魔王ッ!
魔王という人物を面白いと感じた心情を打ち明けた。かなりの大物と
『魔王よ……この決闘の申し出、受けさせて頂く! 全身全霊を賭けて挑み、見事それがしを屈服させてみせよ!!』
「ふん……この程度の男、魔王がいちいち勝負するまでもなかろう。ブレイズとやら、
鬼姫が
「よせ鬼姫ッ! 俺の見立てが正しければ、そいつの強さはギルボロスを上回る。お前が戦いを挑めばなます斬りにされてしまうぞ。お前は決して弱くないが、今回ばかりは相手が悪すぎる」
魔王が右手をサッと横に振って、前に出ようとした鬼姫を慌てて止める。かつて戦った魔神の名を引き合いに出して、無茶な戦いを挑もうとする女を制止する。最後に彼女が弱い訳ではないとフォローを付け加えた。
「む……むう。お主がそう言うなら、そうなんじゃろう。いささか不本意ではあるが、なます斬りにされるのは嫌じゃ。仕方あるまい、ここはお主を信じて任せるとしよう」
魔王の言葉を聞いて鬼姫が大人しく引き下がる。納得が行かない心情はあったものの、魔王の考えが正しい事は理解しており、やむなく忠告に従う。不満げに顔をむくれさせながらも男に全て任せる。
(フム……相手の実力を推し
二人のやり取りを眺めていて、ブレイズは戦いが始まる前から魔王に
『では魔王よ……邪魔が入ったが、改めて戦いを始めさせてもらうぞ』
仕切り直すように宣戦布告を行い、戦闘開始を告げる。
『最強の妖刀ムラマサの切れ味に何処まで耐えられるか、確かめさせてもらおう』
一振りの刀を両手で握って構えると、刀の切れ味に絶対の自信を抱く。
世界に三振りあると伝えられた妖刀、その最後の一振りの所在がここに明らかとなる。
不死騎王と魔王、両者は数メートル離れたまま対峙する。ブレイズは刀を構えたまま、ザガートは棒立ちになりながら、相手をじっと見る。女達は戦いに巻き込まれぬよう離れた場所で待機する。
両者は相手の出方を
「ウオオオオオオッ!」
『ヌォォォォオオオオオオーーーーーーッ!!』
二人がほぼ同じタイミングで叫びながら、前方に向かってダッシュする。次の瞬間両者は黒い影のような物体になり、残像を残しながら高速移動する。正面からドガッドガッと何度もぶつかり合って後方に弾かれたり、
「な、なんてスピードだッ! 力はほぼ互角かッ!!」
とても目で追えない速さにレジーナが驚愕する。
「いや……互角ではない。ブレイズは全力で走っておるが、魔王はまだ本気を出しておらぬ。つまり魔王の方が実力は上という事じゃ」
鬼姫が王女の言葉を否定する。彼女だけは二人の戦いを目で追えており、彼らがどれだけ力を出したかも見抜いたようだ。
スピード勝負は数分ほど続いたが、このままでは
ザガートは何事も無かったように平然としていたが、ブレイズは焦りがあったように
(何という事だ……まさか本気を出したそれがしが引き離せぬとは。いや、引き離せないという次元の話ではない。わざと手を抜かれて……遊ばれているッ!!)
ブレイズが相手の実力に驚愕する。
(正直、相手の強さを見くびっていた……これは持てる力の全てを出して挑まねばなるまい)
魔王の強さが想定を
刀を両手で握ったままジリジリとにじり寄るように進んだが、突然フッとワープしたように姿が消える。
次の瞬間ザガートの背後に刀を持ったブレイズが姿を現す。目に見えない速さで移動した訳ではなく、本当にテレポートしたようだ。
『その首、
死を宣告する言葉を発すると、刀を横
自分の首めがけて振られた刃を、ザガートが後ろを振り返らないままその場でしゃがんで避ける。相手が一瞬で背後に回り込んでも驚く素振りを見せず、冷静に対応する。
「フンッ!」
『ヌォォォォォォオオオオオオオオーーーーーーッッ!!』
腹に強烈な一撃を食らった黒騎士が大声で叫びながら豪快に吹き飛ぶ。強い衝撃で地面に叩き付けられて横向きにゴロゴロ転がる。しばらく大の字に横たわる。
攻撃を食らって吹っ飛んでも、刀は右手にしっかりと握られたままだ。その事は見事と言うべきか。
「ブレイズ……お前は確かに強い。俺がこっちの世界に来て、今まで戦ってきた中ではお前が一番だろう」
地べたに倒れたまま起き上がらない黒騎士をザガートが遠巻きに眺める。相手の実力を高いと感じた事を素直に認める。
「だがそれだけの力があっても、俺にはまだ届かんッ!!」