いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
アビスウォームを倒した魔王一行は次なる宝玉を求めて旅を続ける。ミントベリーの町には戻らず、そのまま砂漠を突っ切る。最後の宝玉のありかが書かれた
砂漠を越えた平原を
魔物に襲われる事なく森の中をサクサク進むと、木々の密集度合いが下がっていく。日の光が射し込むのが見えて、そこを目指して進んでいくと、次第に空間が開けてくる。最後は森の切れ目へと辿り着く。
「おお……!!」
森を抜け出た瞬間視界に飛び込んだ景色に女達が目を輝かせた。
彼女達が見たもの……それは大自然に
泉は公衆浴場くらいの広さがあり、数人なら余裕で入れるスペースだ。まるで冒険者にここで休んでいけと言わんばかりに用意されたような場所だ。
「フム……人が入るのに適した水温だ。毒も酸も含まれていない」
ザガートが泉の前にしゃがみ込んで、指で触れて水質を確かめる。指先の感触だけで泉の成分を事細かに分析し、人体に無害だと判断する。
「この泉には精霊の力が宿っている……彼らが邪悪な者を排除する結界を張り巡らせて、魔族が
泉が聖なる力で
魔王は最初、泉は罠ではないかと内心で疑った。周囲に何も無い場所におあつらえ向きとばかりに泉があるのを不自然に感じたからだ。それが
「よし、それならここで水浴びしていこう! ちょうど長旅で汗をかき始めていた所だっ!!」
レジーナが体を洗う事を提案する。泉が安全だと知るや、意気揚々とはしゃぎながら服を脱ぎだす。水に浸かりたくてウズウズしたようだ。
「王女様……はしたないです」
「
人目もはばからず豪快に脱衣する王女を見てルシルとなずみが苦笑いする。女の恥じらいを微塵も持ち合わせない彼女に心底
「俺達はちょっとその辺を見て回ってくる……泉に入れないとはいえ、魔物が潜んでいないとは言い切れないからな」
ザガートとブレイズは泉に入らず、周囲の森を散策する意思を伝える。女達の肌や下着には全く興味を示さず、さっさとその場から立ち去ろうとする。
「ん? なんじゃ、お主は一緒に水浴びせぬのか?
肉食系男子にあるまじき男の態度に鬼姫が拍子抜けした顔をする。いやらしい展開になると期待したにも関わらず、そうならない事に不満を漏らす。最後はとても卑猥な提案をして顔をニヤつかせた。
「……体は一人で静かに洗いたい主義だ」
ザガートはそっけなく言葉を返すと、後ろを振り返りもせずズカズカと森の中へ歩いていく。女の提案にイラついたのか、声の調子は少し不機嫌だ。
鬼姫は男の塩対応にガッカリし、なずみはムフフでスケベな展開にならなかった事に心底安堵するのだった。
◇ ◇ ◇
四人の女達は
四人は水に浸かるとそれぞれバラバラな行動を取る。ルシルは静かに水に浸かったまま全身の汚れを落とすように指でなぞり、なずみはプールで遊ぶようにバシャバシャ泳ぎ、鬼姫とレジーナは水の冷たさにはしゃぎながら互いに水を掛け合って遊ぶ。
裸の女達が
平和な
「な、なんですかっ! 急に!!」
視線に気付いてルシルが慌てて胸を両手で覆い隠す。
三人が見ていたもの……それは彼女の胸だ。弾力ある肉の
三人は自分と彼女の胸を見比べて「はぁーーっ」とため息を漏らす。胸の大きさで負けた事に、強い敗北感に打ちのめされてガクッと肩を落とす。
深い失意の奈落へと突き落とされたまま黙り込んでいたが、やがて鬼姫が思い立ったように顔を上げる。表情は激しい怒りに満ちて、ギリギリと割れんばかりの勢いで歯
「グヌヌゥゥ……けしからんッ! なんじゃ、その肉のスライムは! いや、もはやスライムなどと呼べるレベルではない! 八匹のスライムが合体した、スライムの王……肉のキングスライムが二体もそこにおるではないか!!」
腹の底から湧き上がる憤激を声に出してブチまけた。胸の大きさで優劣を付けられた事に激しく
「四人の中で一番エロい女は
性的魅力において負けてしまった苦悩を
「ええい、腹立たしい! かくなる上は、その肉のスライムをこうしてくれるわ!!」
鬼姫はそう叫ぶや
「ああーーーーーーっ!!」
ルシルの切ない悲鳴が森の中にこだまする。なずみは目の前で繰り広げられた光景をとても直視できず、
「やめろ、鬼姫ッ! そんな
レジーナが慌てて仲間の暴走を止めようとした時……。
王女の言葉に反応したように、泉のすぐ
「まさか、師匠がオイラ達の裸を覗きに来たんスか!?」
なずみが期待で目をらんらん輝かせた。本来恥ずかしがるべき状況なのに、何故かとても嬉しそうだ。
「いや……そうではない」
鬼姫が仲間の言葉を即答で否定する。覗き魔の正体におおよその検討が付いたのか、表情は暗く、口調は重苦しい。
「魔族じゃ……魔族が、
大魔王の手下の魔法生物が、エッチな覗きの犯人だった事を明かす。
「ギギギィィーーーーーーーーッ!!」
女が大声で叫んだ瞬間、黒いモゾモゾした物体が森の中へと走り去る。正体に
「あっ!」
泉の側に脱ぎ捨ててあった衣服を漁ったなずみが、思わず声を上げた。
「どうしたんだ!?」
少女が何に驚いたのかをレジーナが問う。
「下着が……オイラ達の下着が無くなってるッス! きっとあの黒い変な魔物が盗んでいったに違いないッス!!」
なずみが、衣服の中から自分達の大事なものが無くなった事を明かす。
これまでの状況から推測するに、覗きの犯人が彼女達のパンティとブラジャーとふんどしを盗んだ事は疑いようがない。
「捕まえるのじゃ! もしここで
鬼姫が覗き魔を追う事を提案する。自分達が置かれた状況の深刻さを伝えて、一刻の
「○○○が丸見えになるのは嫌ッス!」
「何としても覗き魔を捕まえましょう!」
「捕まえて、拷問して吐かせてやる!!」
仲間達が口々に彼女の言葉に同意して
「待てぇぇぇーーーーーーーーっっ!!」
四人の女達が大声で
当の下着を盗んだ魔物は森の中を軽快に動き回る。体が小さいだけあって、動きはかなり俊敏だ。いつまで
「ヘヘヘッ、ノロマな
魔物が勝ち誇った
そのまま森の外へと逃げおおせるかに思われたが……。
「!?」
突然魔物の動きがピタッと止まる。金縛りに
「
一人の男が魔法の原理について説明しながら森の奥から姿を現す。
「きっ、貴様達は……!!」
目の前に現れた男の姿を見て魔物が顔面をこわばらせた。彼を待ち伏せていた二人の男こそ、魔族の宿敵たるザガートとブレイズだったからだ。
魔物は人間の子供くらいの背丈をした、裸のゴブリンのような小悪魔だった。背中にコウモリの羽を生やし、耳は
彼の右手には女達が脱ぎ捨てた衣服から盗んだ下着の
「貴様が泉の近くに潜んでいた事は最初から気付いていた……俺達は森の中を散策するふりをして泉から離れて貴様を油断させ、いくつかの逃走経路を想定して、それら全てに罠を張って待ち伏せていた……という訳だ」
ザガートがこれまで取った行動の真意を明かす。魔物の気配を瞬時に察知しており、捕らえるための入念な仕込みを行っていたのだという。
「……彼女達から奪ったものは返してもらう」
そう言うや
「フンッ!」
最後に
「ウゲェェェェエエエエエエーーーーーーーーッッ!!」
今にも胃の内容物を吐き出しかねない奇声を上げて、魔物が豪快に吹っ飛ぶ。軌道上にあった木を何本もなぎ倒した挙句墜落するように地面に激突すると、うつ伏せに倒れたまま手足をピクピクさせた。
全身を包んでいた光は消えており動きを封じる術は解けたようだが、蹴られた痛みのあまり思うように動けない。
「ザガートっ!!」
裸のまま敵を追いかけてきた四人の女達が森の奥の方から走ってくる。魔王の姿が視界に入ったため、彼の元へと集まる。
ルシルとなずみは恥ずかしそうに顔を赤らめて大事な所を手で隠すが、鬼姫とレジーナは女の恥じらいが無いように平然としている。
「ほれっ、そこでブッ倒れてる悪魔から取り返してやったぞ」
ザガートはこれまでの
魔王は地べたに倒れた悪魔の前までズカズカと歩くと、その場にしゃがんで相手の頭をじっと見る。
「貴様……何者だ? こんな所で何をしている」
ゴミを見るような目で相手を見ながら、目的と素性を問う。
「ケケケッ……俺様はインプ。女の裸とパンツが大好きなエロ悪魔さ」
小悪魔が顔を上げて
「最初はただ泉に入れず、女冒険者を近くから眺めてるだけだった……下着を盗んだのも、ただの嫌がらせだった。だがそれを何度もやってるうちに、だんだん病み付きになっちまってな……今となっちゃ、それをやるのが楽しくなっちまった」
現状に至った理由を話す。泉に侵入できない腹いせのつもりで行った
「頼む! ここは見逃してくれッ! 俺は冒険者を一人も殺しちゃいない! それは自白魔法を掛けられようと事実だッ! ただ女の裸を
立ち上がったと見るや、すぐさま土下座して許しを
口ぶりから察するに、覗きと下着泥棒をやめる気は皆無のようだ。
「ど、どうか命だけはお助けをッ!!」
ついそんな
「……ほう」
インプの言葉を聞いてザガートがニタァッと口元を
「良いだろう……ならば言葉通り、命だけは助けてやる。命だけは……なっ!!」
マントを右手でバサッと開いて風にたなびかせると、悪魔を殺さない事を大声で約束する。だが表情に殺意を
「
両手で
扉の向こうに広がる地下世界が、ビュオオオッと音を立てて周囲の空気を吸い込み出す。扉のまん前にいたインプが強い力で引き寄せられて体が宙に浮く。
「あーーーーれーーーーっ!!」
魔物が
悪魔を完全に
「
ザガートが小悪魔を幽閉した魔法の効果を語る。精神が耐え切れないほどの苦痛を与える恐ろしい技だという。対象の命を奪わない技だと言っても、実質的には死刑判決に等しい。
「相手を殺さないと宝玉が手に入らないため、魔王軍十二将には使えないのが難だ……と言っても、完全即死耐性がある者には術自体が発動しない仕組みなのだが」
敵にとどめを刺さない技であるが
(なっ、なんて恐ろしい魔法だ……千年も炎で焼かれるくらいなら、ブラックホールに放り込まれて死んだ方がまだマシじゃないかッ!!)
レジーナが術の効果を知らされて心底震え上がる。自分が地獄の奈落に幽閉される痛みを想像して背筋が凍る思いがした。それを実際に受けたインプに、敵ながら
同じ異空間に放り込む技としてアビスウォームを思い出し、彼の方がマシだったと考える。
「で……お前達はさっきからそこで何をしている? 受け取った下着を何故
状況が一段落するとザガートが女達の方を向く。レジーナと鬼姫が下着を手に持ったまま一向に着ようとしない事に疑念を抱く。
「お主こそおかしいじゃろ! こんなスッポンポンのエロい女が目の前におるのに、何故欲情せぬのじゃ! あんなものやこんなものが見えておるのじゃぞ!! ほれほれ」
鬼姫が魔王の反応に不満を漏らす。年頃の若い女の裸が丸見えなのに、全くムラムラした素振りを見せない塩対応に怒りの感情すら湧く。わざと女の大事な所を見せようと、何度もいやらしいポーズを取る。さながらストリップのショーだ。
「ならお前達は、俺がウヒョーーだのムホホだの言って、顔を真っ赤にして鼻の下伸ばしてデレデレしながらルパンダイブする姿が見たいのか?」
魔王が鬼姫の疑問に言葉を返す。クールなイメージのある自分が、性欲丸出しにした昭和のエロ親父になる姿が見たいのかと問う。
「……見たくない」
レジーナが下を向いたままボソッと小声で
「ならさっさと泉に戻って着替えるんだ。もう十分に体を洗っただろう……本来こんな所で遊んでいる余裕は俺達には無い。こうしている間にも魔族が人を殺しているかもしれんのだからな」
ザガートが泉のある方角を指差して服を着るように言う。水浴びを切り上げて先に進むべきだと忠告する。女の態度に
「………」
レジーナと鬼姫が無言のまま泉のある方へトボトボと歩く。父親に
ルシルとなずみが彼女達の後ろを歩く。二人を
(つまらぬ……全くつまらぬ! これが年頃のウブな童貞男子なら、もっと面白い反応が見られたというのに……これではイジリ
鬼姫が他の人に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声でブツブツと文句を
歴史の英雄を骨抜きにした傾国の美女の