いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
最後の宝玉を求めて雪山に足を踏み入れた一行……洞窟の中で巨大なドラゴンと遭遇する。全身が氷で出来た龍は自らスノードラゴンと名乗り、魔王軍の最後の幹部であると告げた。この山を凍らせた恐ろしい龍こそ、一行が探し求めた相手に他ならない。
「コノ山ハ、精霊ノ
龍が山にいた目的について語る。この場所が特殊な魔力に満ちており、それを吸い上げて自分のものにしていたというのだ。かつて緑あふれる大地だった山が急に雪に覆われだしたのは、龍が力を吸い上げたからだろう事が容易に想像付く。
「今ガソノ決戦トイウ訳ダ……死ネ、ザガート!!」
そう叫ぶや否や、龍が魔王めがけて猛然と突っ込んでいく。大きく口を開けたまま体当たりし、鋭い牙で相手を噛み砕こうとする。
「フンッ!」
魔王は小馬鹿にするように鼻息を吹かすと、正面に右手をかざしてバリアを張る。手のひらを中心として半透明に
バリアにぶつかるとドォォーーーンッ! と激しい衝突音が鳴り、龍の体が強い力で後ろに弾かれた。
「グアアアアアアアアッ!」
思わぬ反撃に遭いドラゴンが悲鳴を上げた。洞窟の壁に激突して全身を強く打ち付けられると、一瞬
「敵が氷で出来た龍なら……やる事は一つ!」
ザガートが大声で叫びながら手のひらを敵に向ける。
「ゲヘナの火に焼かれて消し炭となれ……
攻撃魔法を唱えると大量の炎が手のひらへと集まっていく。炎は圧縮されて一つの火球になると、正面にいる敵めがけて一直線に撃ち出された。
「ギャァァァァアアアアアアーーーーーーーーッッ!!」
灼熱の業火で焼かれる痛みにドラゴンが悲鳴を上げた。どうにかして炎を鎮火させようとジタバタ暴れたものの、炎は消える事なく龍の体を焼き続ける。氷で出来た体がドロドロに溶け出し、完全な液体になると
「やった! ドラゴンを倒したぞッ!!」
跡形もなく消滅した敵の姿を見てレジーナが大はしゃぎする。魔王が間違いなく勝利を得たと確信し、嬉しさのあまり鼻歌を
(やけに
ただ一人浮かない顔をしたザガートが、敵の弱さに拍子抜けした瞬間……。
一度は大気に散った水蒸気が、ドラゴンが死んだ場所へと集まる。洞窟内の気温が急激に下がると空気中の水分がビキビキと凍りだし、水蒸気が何かの形の氷へと変わっていく。
一箇所に集まった水蒸気が完全に凍り付いた時……そこに一匹のドラゴンがいた。
「なん……だと!?」
目の前で起こった出来事にザガートが驚愕する。
それは
間違いなく息の根を止められたはずの魔物が、時間を巻き戻したように生き返った姿は、
「俺ハ不死身ダ……ドンナ攻撃ダロウト、俺ヲ殺ス事ナド
ドラゴンが自分の不死身ぶりを得意げに語る。魔王に精神的ショックを与えられた事に気を良くしたのか、とても機嫌が良さそうなニコニコ顔になる。
「ならば……試してみるか」
ザガートがそう口にしてニヤリと笑う。敵が復活した事に一度は慌てたものの、すぐにいつもの冷静さを取り戻す。
「
正面に右手をかざして呪文の詠唱を行う。男の手のひらに魔力と思しき青白い光が集まっていき、凝縮されて一つの光球になる。
「……
魔法の言葉を叫ぶと、手のひらにあった光球が龍めがけて一直線に撃ち出された。ダチョウの卵くらいの光の玉がグングン加速していって音速を超えた速さになる。
攻撃魔法が眼前に迫っても龍は避ける素振りを全く見せない。最初から受け切る気でいたような棒立ちになる。
光弾が命中すると、龍の体が空気を注入した風船のように
「カッ……」
何か言いかけた瞬間、龍の体がバァンッ! と音を立てて破裂した。粉々に砕けた氷の破片が四方八方へと飛び散り、洞窟の大地に散乱する。氷はピクリとも動かず、完全に息絶えたようにシーーンと黙り込む。
(こいつに生という概念があるなら……この魔法を受ければ確実に死ぬ!!)
ザガートが術の効果に絶対の自信を抱く。相手が生きた生物なら、これで仕留めたはず……そう確信した瞬間。
大地に散らばった氷が、自ら意思を持ったようにモゾモゾと動きだす。百を超える破片が一箇所に集まり、隙間を塞ぐように互いにくっつき合うと、破損箇所がみるみる修復されていって元のドラゴンへと戻る。
「……ッ!!」
敵が二度目の復活を遂げた光景を見て、魔王が思わず絶句した。想定を
「クククッ……」
深く動揺する男の姿を見てドラゴンがニタァッと笑う。戦闘状況において優位に立てた満足感で胸が
「言ッタハズダ……俺ハ不死身ダト」
改めて自分が完全なる不死であると告げるのだった。
「おい、どういう事じゃ魔王ッ!
敵の再生能力の凄さに鬼姫が血相を変える。勝ちが全く見えない状況に
「スライムなら、
女の問いを魔王が即答で否定する。少なくともスライムと同種の魔物ではないという。
(恐らく本体を叩かねば死なぬ魔物というのは本当なのだろうが……クソッ! 洞窟内に渦巻く瘴気が探知魔法を邪魔していて、敵の正体が
仲間の言葉を半分正解だとしながらも、それだけでは龍の弱点を知る事は出来ないと悟る。
ここに来る途中で魔王が懸念した通り、洞窟内には邪悪な力が働いていて、敵の本体が何処に潜んでいるか分からなくしていた。それが魔王に事態の行き詰まりのような焦燥感をもたらす。まんまと敵の
「ルシル、レジーナ、なずみ! 俺は今から敵の本体を突き止めるために意識を集中させる……その間無防備になった俺を、お前達三人で周囲を固めて守れ!!」
魔王は今後の方針が決まると仲間にテキパキ指示を出す。龍の本体を探る行為に専念すると伝えて、その間の自分の護衛を三人の少女に託す。
「分かりました!」
「任せてくれ!」
「師匠には指一本触れさせないッス!!」
少女達が魔王の指令を
「ブレイズ、鬼姫! お前達は数分の間、龍の注意を引き付けろ!!」
魔王は次に二人の
『御意に!』
「安心して任せるがよい! なんなら
黒騎士と女が主人の依頼を快諾する。かなり危険な役目だが、実力者である二人だからこそ信頼して仕事を任せられる……男はそう考えた。
指示を終えるとザガートは地べたにあぐらをかいて座り、両手を組んで
三人の女達は魔王を取り
「スノードラゴンとやら、光栄に思うがよい! この鬼族の王たる
龍の前に立ちはだかると鬼姫が威勢の良い言葉を吐く。右手に持った刀の
「鬼姫……貴様ノ事ハ、魔族ノ間デハ
ドラゴンが女を前にしてニタァッと笑う。相手を見下した悪魔のような笑みを浮かべると、グワッと開いた右手を高々と振り上げた。
「常ニ
目いっぱい女を侮辱する
ドラゴンの爪が触れた瞬間、女の姿が霧となって散っていく。ガスか何かの気体を攻撃したようで、肉を
「ナニッ!?」
女が消えた事に龍が困惑する。敵に一杯食わされた考えが頭をよぎり、慌てて周囲を見回すと、鬼姫の数が三体に増えていた。むろん本物が増殖した訳は無く、彼女が生み出したまやかしである事は明白だ。
「噛ませ犬かどうか……その身で確かめるがよい!!」
鬼姫は反論の言葉を口にすると、龍めがけて走り出す。三人の女が同時に喋り、同じタイミングで敵に向かっていく。龍にはどれが本物か判別が付かない。
「クソガッ!
ドラゴンが腹立たしげに吐き捨てる。何としても相手の思い通りになってたまるかと対抗意識を
破れかぶれの一撃が命中すると、三人の体が霧となって消滅する。肉を攻撃した感触が全く無い。
(三体全テ、マヤカシダト!? ナラバ本物ハ一体何処ニ!!)
敵の姿を見失った事に龍が慌てる。想定外の事態にうろたえたあまり周囲をキョロキョロ見回した時、背後から何かが飛んでくる姿が地面の影に映る。
ドラゴンが
「でぇぇぇぇやぁぁぁぁああああああーーーーーーっっ!!」
女は気迫の篭った雄叫びを発すると、龍の首めがけて急降下しながら両手で握った一振りの刀を縦に振る。ドラゴンの首を一刀の
胴体から切り離された龍の頭がゴロンッと地面に転がり落ちる。
「やった!!」
渾身の一撃を当てられた事に女が気を良くした。作戦を成功させられた満足感で思わずガッツポーズを決める。
だが勝利の喜びに
「馬鹿メ……体ヲ粉々ニ粉砕サレテモ死ナナイ龍ガ、首ヲ落トサレタ程度デ死ヌト、本気デ思ッタノカ!?」
復活を遂げたドラゴンが早口で
「
死を宣告する言葉を発すると、大きく口を開けて息を吸い込む。龍の口の中に吸い込まれた空気が急激に冷え込んで、洞窟内を照らす魔法の光を反射してキラキラと輝く。
『危ない!!』
仲間の身に危険が迫ったと感じたブレイズが、横から走ってきて鬼姫を突き飛ばす。女の体が数メートル離れた地面に倒れて、女がさっき立っていた場所に不死騎王が立った瞬間、龍の口から白いガスのようなものが放たれた。
『……ッ!!』
ガスをまともに受けた騎士の体がビキビキと凍りだす。全身を
龍の口から放たれたのは液体窒素に匹敵する冷気のブレスだった。
「フンッ!」
龍は
「きっ……騎士の
なずみが悲痛な声で叫ぶ。仲間が倒された光景を目にして深い悲しみに