いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
鬼女と不死騎王が大きな魔物と戦っていた頃、ルシル、レジーナ、なずみの三人は人間サイズの魔物の群れと対峙していた。
百五十体の人型の魔物と三人の少女が十メートルほど間隔を空けたまま、
「業火ヨ、放テ……
「
「火炎光矢ッ!!」
やがて
「精霊の力よ、我を守りたまえ……
ルシルは
バリアは三人を守ろうとするようにスッポリと
何十発も同時に発射された火球は少女達めがけてガトリングの弾のように降り注ぐが、バリアには
やがて敵の魔力が尽きたのか、火球の連続発射がピタリと
「大地と大気の精霊よ、
今が絶好の好機とみなし、ルシルが次なる魔法を唱える。三人の少女の体が
「五分間だけ全ての能力が十倍になる魔法ですッ! 一日に一度きりしか効果を発揮しないので、その間に敵を片付けて下さい!!」
少女が呪文の効果について説明する。無制限に使えるシロモノではない事を教えて、効果が持続している間に敵を始末するよう指示を出す。
「分かった、任せてくれ!」
「了解ッス!」
レジーナとなずみが仲間の言葉を了承する。身体能力が強化された事により体の
「死ネェェェェエエエエエエーーーーーーーーッッ!!」
一体のナラク・ニンジャが背中の帯に
「……ッ!!」
ニンジャが慌てて振り返ろうとした瞬間、少女が刀をサッと横に振る。ニンジャの首が胴体から離れてゴロンッと床に転がり落ちると、首を失った胴体が真っ赤な血を噴水のように噴き上げたまま、崩れ落ちるように床に倒れた。
「クワァァァァアアアアアアーーーーーーッッ!!」
今度は二体のガーゴイルが王女へと襲いかかる。最初の一体は地面を走っており、彼の後ろにいる二体目は人間の背より上の高さを低空飛行する。武器や魔法は使わず、手の鋭い
「でぇぇぇぇやぁぁぁぁああああああーーーーーーっっ!!」
レジーナは腹の底から絞り出したような雄叫びを上げると、剣を両手で握ったまま正面にいる敵めがけて走り出す。剣を横
「ギャアアアアアアアアアッ!」
「グワーーーーーーーッ!!」
ミスリルソードの一刀を食らったガーゴイル達が阿鼻叫喚の絶叫を発した。血の海に沈んだまま数秒間体をピクピクさせたが、すぐに物言わぬ死体となる。
魔法により身体能力を十倍に強化された王女が
「フハハハハッ! 前衛ニ意識ヲ集中サセ
一体のナラク・ウィザードが大きな声で高笑いしながら、ルシルのいる方へと走り出す。肉弾戦担当の二人が離れている
「しまった!」
ルシルを狙われた事にレジーナが内心深く動揺する。一人だけ肉弾戦に向かわせて、もう一人は仲間の護衛をすべきだったか……そんな後悔の念が広がる。
だが王女の懸念に反して、ルシルは焦る素振りを全く見せない。想定内の展開だったと言いたげに平然とした態度を取る。工具のバールのようなものを魔力で生み出すと、それを両手で握って構える。
「そぉーーーーーいっ!!」
威勢の良い掛け声を発すると、バールをバットのように豪快にスイングして、眼前に迫ってきたウィザードの顔面をドガァッ! と思いっきりぶん殴った。
「ヘブルゥゥゥゥァァァァァァアアアアアアアアッッ!!」
魔道士が
「オイ、ナンダ! ソノバールハ! ソンナ物ガアルトハ聞イテイナイゾ!!」
別の一体のウィザードが、少女が武器を持ち出した事に憤慨する。これまで収集したデータに無い戦法を取り出した事に、声を荒らげて猛抗議する。
「こんな事もあろうかと思って、
ルシルが自分の取った戦法について得意げに解説する。
「身体能力が十倍に強化された今なら、ザコモンスター程度には負けませんっ! ボコボコに叩きのめして、返り討ちにしてやります!!」
少女はそう叫ぶや否や、敵の一団めがけて走っていく。敵軍の
「ギャアアアアアアッ!!」
「グワァァァァアアアアアアッ!!」
阿鼻叫喚の悲鳴が辺り一帯にこだまする。少女の腕力は魔物の想定を
三つ編み巨乳メガネの地味な田舎娘がバールを振り回して返り血を浴びながら魔物を
「………」
レジーナとなずみはしばらく
(……よい子のみんなは、工具のバールで人を殴ったりしたら絶対ダメだぞ)
王女は誰に向けて言うでもなく、心の中でそう
……しばらくルシルに任せきりにしていた二人であったが、やがてふと冷静に立ち返る。このまま彼女一人にばかりザコの掃除を押し付けてはいけないと思い直して、自分達も戦いに加わるべきだと考える。
今後の方針が決まると、二人は魔物の大群めがけて走り出す。敵軍の
いくらルシルの戦い方にドン引きしたと言っても、純粋な戦闘力は女騎士とくノ一の方が上だ。太刀打ちできる魔物などいない。
一体、また一体と魔物の数が減っていき、当初百五十体いた魔物の数が半数以下となる。このままなす
「女騎士レジーナッ! 貴様に決闘を申し渡す!!」
最後尾に控えていたオークロードが突如勇ましく気勢を発しながら正面へと駆け出す。名指しで王女の名を呼ぶと、進行ルートにいた魔物をドカドカと力ずくで押しのけながら進んでいき、魔物達の最前列へと出る。
王女の前に立つと両手で握った槍を高々と振り上げて、彼女めがけて振り下ろす。王女は右手で
両者は槍が止まった状態のまま全く動こうとしない。互いに相手を力で押し切ろうとしたものの、両者の力はほぼ互角のようで、どちらか一方が相手を押す状況に
「王女様っ!」
「
仲間が苦戦している状況を見て、二人が心配するあまり言葉を掛けた。もし彼女一人で倒せない相手であれば、自分が助太刀に向かわなければ……そんな考えが少女達の頭をよぎる。
「二人とも、心配は
レジーナが槍を受け止めた状態のまま言葉を返す。敵のリーダーの注意を自分に向けている間に、人型のザコモンスターを
二人は一瞬迷った表情を見せたものの、仲間の覚悟を無駄にできないと考えて目の前の敵との戦いに意識を集中させる。
「フンッ、余裕だな……素直に仲間の力に頼ればいいモノを。こんな所で意地を張るとは、馬鹿な女だ」
オークロードが王女の覚悟を
「……意地ではない」
王女がそう口にしてニヤリと笑う。決して考え無しに行動したのではない余裕に満ちた笑みが表情に浮かぶ。
「本気で勝てると……そう思ったからだ! でぇぇぇぇやぁぁぁぁああああああーーーーーーっっ!!」
勝算があった事を大きな声で告げると、
「ウオオオオオオッ!!」
思わぬ反撃にオークが悲鳴を上げた。一瞬何が起こったのか全く理解できず、受身が取れないままドスゥーーーンッと地べたに落下して
「オークロードッ! この勝負、私の勝ちだッ!!」
レジーナが勝利を確信した
「おのれ小娘ぇっ! まだだ! まだ終わらんぞぉぉぉぉおおおおおおッ!!」
オークが怒声を発しながら慌てて立ち上がる。気力によって自らを奮い立たせると、槍を両手で握って戦闘の構えを取る。
「ヌゥゥゥゥォォォォォォオオオオオオオオーーーーーーーーッッ!!」
腹の底から絞り出したような雄叫びを上げると、槍による高速の連撃を放つ。目にも止まらぬ速さで繰り出された突きが、ヒュヒュヒュンッと音を鳴らしながら王女へと迫る。一撃の重さを捨てて数に任せた機関銃のような攻撃だ。
「うぉぉぉぉおおおおおおーーーーーーーーッ!!」
王女も負けじと大声で叫びながら剣を盾代わりにして相手の攻撃を弾く。刃の側面に槍の先端がぶつかると、ギィンッ! と鈍い金属音が鳴って槍が後ろへと跳ね返される。だがオークは間髪入れず次の一撃を繰り出す。王女がまたそれを弾く。
秒間十発を超える速さで繰り出された突きを、王女が正確に防ぎ続ける。両者のスピードは互角であり、一撃の防ぎ漏らしも無い。互いの武器がぶつかる金属音がギンギンギンギンギンッとリズミカルに鳴る。それが一分半ほど続いた。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「ハァ……ハァ……」
最後の一撃をガードして王女が数メートル後ろに押された瞬間、それまで続いた攻防がピタリと止む。
二人とも表情に疲労の色が浮かび、ゼェハァと肩で激しく息をして、
このまま両者のスタミナが尽きて、勝負がお開きになるかに思われた時……。
「うっ……うぁぁぁぁぁぁあああああああああああっっ!!」
王女が上を向いて背筋を伸ばしながらしっかりと立つ。自身に
オークも一瞬遅れて体勢を立て直すと、王女めがけて突進する。二つの影が重なり合った瞬間ズバァッと鎧が切り裂かれる音が鳴った――――。
二つの影は交差を終えてもそのまま走り続けて、互いに数メートル離れあった地点でピタリと止まる。そのまま硬直したようにピクリとも動かない。相手に背を向けて武器を振り下ろした構えのまま数秒間固まる。
ザコの始末を終えて二人の戦いを見守っていたルシルとなずみがゴクリと
場がシーーンと静まり返り、息が詰まりそうな静寂が永遠に続くかに思われた時……。
「……見事だ」
オークロードがそう口にしてフッと笑みを浮かべたまま、崩れ落ちるように倒れた。背丈三メートルほどある巨体がズゥーーーンッと音を立てて地べたに倒れ込むと、剣で斬られたと思しき脇腹がバックリと割れて、そこから赤い血がトマトジュースのように流れ出す。オークはピクリとも動かず、立ち上がる様子も無い。
「王女様、勝ったんですね!?」
「
仲間の勝利を確信したルシルとなずみが歓喜の言葉を漏らしながら王女の元へと駆け寄る。彼女の健闘ぶりを心から
「ああ……勝った」
王女が安堵の笑みを浮かべたまま仲間の問いに答える。少し疲れたような顔しながらも、一仕事を終えた達成感に包まれたようにフゥーーッとため息をつく。
(オークロード……手強い相手だった。いくら身体能力が十倍に底上げされたとはいえ、旅に出たばかりの経験が浅い私では到底
レジーナは地べたに倒れたまま起き上がらない豚頭の死体を眺めながら、さっきの戦いを回想する。自分を苦戦させた好敵手の強さに敬意の念を抱くと同時に、これまで積み重ねた経験が決して無駄にならなかったと思いを