いきなり【最強】の魔力を持つ魔王に転生したら、俺が強すぎて異世界のヤツらがまるで相手にならない件。 作:大月秋野
「
ザガートが正面に両手のひらをかざして呪文の詠唱を口ずさむ。彼の手に青白い光が集まっていって、ダチョウの卵くらいの大きさの光球になる。
「呪イノ
数秒遅れてアザトホースが詠唱と思しき言葉を唱える。ザガートの方を見ていた目玉の正面に白い光が集まっていって、長さ二メートルに及ぶ細長い金属の針が生まれる。彼も魔王の意思に応えて、この一撃で勝負を終わらせるつもりのようだ。
「……
「……
両者がそれぞれの必殺奥義と思しき魔法を同時に唱える。
大魔王が生み出した魔法の針が音速を超える速さで飛んでいって、魔王の胸元にブスリと突き刺さる。金属の針が魔王の胴体を貫くと、傷口から真っ赤な血が噴水のように噴き上げた。
魔王は胸を
だが
「ナッ……グワァァァァァァアアアアアアアアーーーーーーーーッッ!!」
断末魔の悲鳴を上げた瞬間、アザトホースの体が針を刺した風船のようにバァンッ! と音を立てて破裂した。千を超える数の肉片が床に降り注いだが、超高熱の炎で焼かれたような黒焦げになっており、砂のように崩れ落ちて灰の山となる。
一陣の突風が吹き抜けると、かつてアザトホースであった灰は風に飛ばされて空に散っていき、後には死体すら残らない。
「………」
戦いが終わりを迎えて、場がシーーンと静まり返る。誰も一言も発しないままカカシのような棒立ちになる。目の前で起こった出来事に思考が付いていかず、ただ
冷たい風がビュウビュウと吹き抜けて、魔王のマントの
血の海に倒れたまま動かない魔王と、極大魔法を受けて爆散した大魔王……そこに勝者の姿は無い。両者が共に致命的な一撃を食らって死んだらしい光景を、その場にいた者達は
「相討ち……だったのか」
レジーナが不意にそう
彼女の言葉がきっかけとなり、他の仲間達も冷静に現状を把握しだす。魔王を失った事実が実感として湧き上がると、深い悲しみが急激にこみ上げて、絶望で胸が張り裂けそうになる。
「ザガート様ぁぁぁぁぁああああああああああっ!!」
メンバーの中でルシルが真っ先に悲痛な声で叫ぶ。目に涙を浮かべて今にも泣きそうな顔しながら、床に倒れた魔王の元へと駆け寄る。
他の女達も後に続くように男の元へと走り出す。ただ一人ブレイズだけは何かに気付いたのかその場に立ったままであり、主君の元に駆け寄らない。
「ザガート、死ぬな! 死ぬんじゃない!!」
「師匠ッ! オイラ、こんな結末は絶対嫌ッス!!」
「魔王ッ!
女達の口から悲しみの言葉が漏れ出す。四人の女は魔王の上半身を抱き起こして彼に寄り
四人の女達は魔王が死んだ事実を
少女達の願いも
「……ムッ!!」
それまで閉じていた魔王の
「うわぁっ! ザガートが生き返ったあっ!!」
男がゾンビのように息を吹き返した事に仰天して、レジーナが心臓が飛び出んばかりに驚く。目を丸くさせてこの世の終わりを見たような顔しながら、反射的に後ろへと飛び
他の女達も同じ反応をして、全員が魔王から離れる。さっきまであった悲しみの感情は一瞬で吹き飛ぶ。
ザガートは二本の足でゆっくりと立ち上がると、自分の胸から突き出ていた針の
「フンッ!!」
気迫の篭った言葉を発すると、胸に刺さった針を力任せに引き抜く。針が抜けると傷口が急速に
ザガートは手に持っていた金属の針を、部屋の
「ザガート……無事だったのか。てっきり死んだものとばかり」
レジーナが顔を引きつらせたまま、恐る恐る男の元へと歩いていく。間違いなく死んだと確信を抱いた男が生きていた事への衝撃を言葉で伝える。
本来大切な仲間が無事だった事を喜ぶべき場面だが、それよりも驚きの感情の方が大きかった。
「ああ……大魔王の放った一撃が心臓を狙ったものだと瞬時に見抜いた俺は、すかさず横に数ミリ動いた。おかげでヤツの魔法は心臓からずれた位置に命中し、俺は致命傷を
ザガートが王女の問いに答える。敵の狙いに気付いて反射的に回避行動を取り、急所を
「まったく……相変わらずデタラメなヤツじゃのう」
魔王の話を聞かされて鬼姫がウンザリしたような
男が生きていた喜びと、いつもの不死身ぶりに
(だが避けるのがあと0.1秒遅かったら、俺は今の一撃で確実に死んでいた。さすが大魔王……この世界最強と呼ばれただけある)
ザガートは
戦いが始まる前こそ侮辱したが、彼も立派なこの世界の魔王だった……そう思わされた。
物思いに
「フンッ!!」
ザガートは服のポケットから一本の金属の針を取り出して、蜘蛛に向かって投げ付けた。針は蜘蛛の足の一本をブスリと貫いたまま床に突き刺さり、彼をその場から動けなくする。
蜘蛛は必死に逃れようと手足をジタバタさせたが、
ザガートはズカズカと歩いていって針を引き抜くと、蜘蛛を指で
「ザガート、その蜘蛛がどうかしたのか?」
レジーナが不思議がるように首を
「……これが魔力を失ったアザトホースの真の姿だ」
王女の疑問に魔王が口を開く。何の力も持ち合わせない無力な虫けらこそ、さっきまで激闘を
「えっ……ええええええぇぇぇぇーーーーーーーーっっ!?」
耳を疑うような言葉に、魔王の仲間達が目ん玉が飛び出そうな勢いで驚く。あまりに突拍子も無さすぎて、とても
……魔王の口から発せられた真実は、
「
魔王の言葉が
他の仲間達も彼女と心情は同じであり、
「俺も全てを把握した訳じゃないが、この蜘蛛から微弱ながらもヤツと同じ魔力の気配を感じる……こいつが大魔王の正体である事だけは疑いようがない」
声を荒らげた王女の問いにザガートが口を開く。
「推測ではあるが、この蜘蛛が長い年月をかけて魔力を
仮説だと前置きしながらも、蜘蛛がこれまで取った行動について語る。正体を見抜かれなかったため
もしここで蜘蛛を殺さず取り逃がしていたら、数百年の年月を
「さすがザガート……これまで
ザガートに指で
「アザトホース……お前は一体何者だ? お前ほど高い知能を持った蜘蛛が、いきなり無から生まれたとは到底考えにくい。お前を影で操っていた黒幕がいたはずだ。知っている事を全て話せ」
ザガートが事の真相を問い
「正体を知られた以上、私の運命もここで終わりだ……貴様らに全て教えてやる」
大魔王が観念したように口を開く。正体を見抜かれて捕まえられた以上、もはや死を逃れられる状況では無くなり、口を閉ざしていても無意味だと悟ったようだ。
「私を影で操り、人類抹殺をもくろんだ者……それはこの世界を
自分を裏から操っていた黒幕の正体を明かす。
「うっ……嘘だぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーーーっっ!!」
レジーナが
「ヤハヴェと言えば、人類を創造されたお方……全ての人を我が子のように愛する、慈愛の神だぞッ! そもそも人類を助けるために二度も勇者を異世界から呼んだのは、他ならぬヤハヴェじゃないか! そのヤハヴェが人類を滅ぼそうとしたなんて、信じられるか!!」
神が人類抹殺をもくろんだ黒幕だとする大魔王の
「お前達が信じようが信じまいが、
アザトホースが王女の言葉に反論する。この
「アザトホース……お前の言うヤハヴェとは、旧約聖書に名を
ザガートが冷静な口調で問いかける。真相を知らされても王女のように取り乱したりしない。この世界を治める神が、自分の知っている神と同一なのか聞いて確かめようとする。
「そうだ、ザガート……お前が元いた世界において
大魔王が男の質問に答える。この世界を治める神であり、人類抹殺をもくろんだ黒幕こそ、
「貴様ら人間に教えてやろう。アダムとイヴ……人類の祖たる二人が神と交わした契約、その真実を」
アザトホースは原初の人間が楽園を追放された