ツープラトンはクロスボンバーです。
目を開けてみると私達は白い神殿のような所にいた。クラスメイトも突然の出来事に慌てふためいている。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
すると聖職者のような格好をした胡散臭い爺が私達に語りかけてきた。
その後私達はデカイテーブルのある大広間に通された。私と幸利は後ろの方に移動した。
全員が着席すると、それを見ていたかのようなタイミングでカートを押しながらメイド?が入ってきた。……見たところかなり弱い。格闘技の"か"の字も知らないだろう。
「弱っちそうなやつらだなぁ」
すると私の左隣にいた弟、幸利が呆れたように言ってきた。
「姉さん…メイドは本来闘ったりはしないんだよ…そもそも給仕とか家事がメインだし…」
「なんだ、つまんないの」
そう言って横に来たメイドの一人を横目で見てみた。すると他のメイドとは明らかに違う雰囲気を纏っていた。
「……なぁ、あんた」
「……なんでございましょう」
「あんたさ……強いだろ?」
「……ッ!?」
「時間があったら手合わせしないか?」
「………わかりました」
そんなやり取りをしていると、あのイシュタルとか言う胡散臭い爺が何やら説明をし始めた。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」
そうして話した内容を要約すればこうなる。
──この世界はトータスという異世界である。
──今、この世界の人類は魔人族と戦争している。
──理由は不明だが最近魔人族の戦力が増大した。
──そんなとき、エヒトっていう神が増援として私達を(強制的に)召喚した。
まあこんなところだろう、こいつをイシュタルとやらが顔を赤らめながら語っているのはおそらくそのエヒトとやらを心酔しているからなのだろう。私は誰にも聞こえない声で
「……狂信者か」
そう呟いた。
そんな中、猛然と抗議を行う人物が現れた。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
畑山先生だ。25にもなるのに低身長であり、さらには童顔だが、頼れるしっかりとした大人であり、私が強い弱いということ抜きで尊敬している数少ない人である。といっても畑山先生が怒ったところで和やかムードになるだけで問題自体が解決するわけではない。
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です。先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「そ、そんな……」
畑山先生は脱力し、席に腰を落とす。どこか他人事であったクラスメイト達もようやく自分達の状況を把握し始めたのか口々に騒ぎ始めた。
「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
「ウソダドンドコドーン!!」
なんか変なやつがいたが気にしないでおく。
そんな中、私と幸利、そして私の右隣にいたハジメは三人で今の状況を話し合ってみた。
「どうにも胡散臭いな、そう思うだろ?」
「姉さんの言う通り、異様な点が多すぎる。そもそも俺たち戦争を経験してない世代だぜ…?そのエヒトとやらが凄いならもっと他に呼ぶべき奴を呼ぶはずだろ?」
「……考えにくいけど一番最悪なのは……奴隷扱いされることかな…?」
「……それは嫌だなぁ」
「まったくだ」
そんな中、ある意味使える奴が声を上げた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
薄っぺらい演説だ。だがうちのクラスは先程の雰囲気が嘘のように活気づき始めた。
「はぁ……うちらも狂信者ってことか?」
「……みたいだね」
「そう…みたいだな…」
私達三人は同時にため息をついた。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
坂上が賛同する。昔からその場のノリで動いているような気がするが、異世界に来てもそれは変わってない。
「…………はぁ。今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
一瞬こっちを見て、少し考え込んでいたようだが、彼らの保護者である八重樫も賛同する。
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
私達三人を除いた最後の一人白崎が賛同した。賛同してしまった。もう私達三人ではどうにもならないだろう。ましてやハジメは白崎が賛同してしまった時点で賛同しないという選択肢は無くなってしまった。
「それで、コガネさんはどうするんだい?」
「ん?あぁ、私か」
不意に
「私は勿論反対だが?」
「なっ……!?」
「当然だろ…私は人殺しにはなりたくない。ただそれだけだ」
"人殺し"、その言葉に他の奴らが動揺したような様子になる。
「コガネ!そんな馬鹿な事言うんじゃない!」
「へっ、これだから馬鹿は困る。……戦争で血が流れないことなんて有り得ないってのに」
なにか言いたげな様子の
「そもそも国際法もあるか分からない。言ってしまえばルール無用の戦争だろ。それがどんなに恐ろしいか……畑山先生」
「えっあっはい!」
「確か、戦争では不必要に人間を傷つける兵器は使用不可能…って事項ありませんでしたっけ」
「はい、他にも人道的に反した行為は国際法などで禁止されています。……私達がいた元の世界では」
「ってことだ。つまり私達の常識が通用しないってこった。もし戦争に行って捕虜になって人体実験の実験体にされたとしても…文句は言えないってことだ」
私の言葉を聞き、想像してしまったのか青ざめてる奴や吐き気を催している奴もちらほら出てきた。
「コガネ!皆を怯えさせるな!」
「事実なんだがなぁ…まあいい、私はとりあえず参加しないってことで。そんじゃあな」
そう言って私は大広間から出ていった。
結局、全員が戦争に参加することとなり、受け入れ先のハイリヒ王国に向かった。重臣達の紹介があった気がするが覚えていない。
その日の晩餐会で出てきた料理は見たことないものばかりだったが、「ウメーウメー」言いながら平らげた。
……出来れば米が食いたかった。
その頃、白夜は
餅つきの犠牲になっていた。