ライン方面従軍記 作:鬱展開/曇らせ好き
なので漫画版準拠です
一九二三年 帝国西方方面 フランソワ共和国国境 ライン戦線
帝国軍集積地臨時指揮所
「少尉、これが貴官の小隊となる」
「はっ!拝見いたします」
今の心境を一言で言うなら、「最悪」としか言いようがない。
二言以上が許されるのであれば、小論文にしてでも提出ができるだろう。というかする。
かの忌まわしき
そして齢9歳にして、先の北方任務において、帝国軍最年少の
銀翼突撃章。
生きているうちに授与される者のほうが稀である勲章。
さらには、おまけとして、「白銀」という二つ名まで下賜される始末だ。
これでわたしは死ぬまで前線に縛られ、念願の安全な後方勤務よさらば……存在Xに災いあれ!…と思っていたところに、わたしに届けられた人事書類は技術検証員の要請という、
これで穏やかな余生を過ごせると思ったのもつかの間、実際の現場は
思い出すことすら憚られるので簡潔にまとめると、シューゲルとかいうMADによる、人体実験じみた無謀な研究につきあわされた挙げ句、悪魔から
はやくあのMADから逃げ出したいと真摯に願っていたところで、次の任務が言い渡された。
ライン戦線への転属指令。
しかし、北方に動員した隙を突かれたため、西方は教導隊のわたしすら駆り出す必要があるほど切迫しているらしい。
前線転属自体は忌むべきことではあるが、MADから逃げるという最優先事項のためには仕方ない。
それに、今回は以前のような弾着観測員ではなく、小隊長としての配属らしい。
まあ、これ自体は悪くはない。
これまで居なかった、「部下」というものをようやく持てる、ということなのだ。
自分一人で行ってきた仕事を
懸念点があるとするならば、先ほど未経験の新兵の教育も任されたと知らされたことか。しかも最前線で。
……懸念点どころではない!
前線での機動打撃要員など、反攻時の陽動ではないか!
いくら
中央からの主軍が来るまでの期間は、およそ二週間ほどと見込まれるらしい。つまり、帝国のドクトリンである、内線戦略が破綻しかかっているということだ。これでは、前線が先に崩壊する。
ノルデンに主力の大半が割かれてしまった結果、
戦略的には、まあ悪い判断ではないのかもしれない。戦略シミュレーションゲームでも、この戦法なら主力が来るまで持ちこたえ、その後反攻作戦を決行すれば問題なく勝利できるのかもしれない。
包囲殲滅や、戦力の一括投入など、ゲームですら常に行えるとは限らないのだ。
ただし、ここは現実だ。ゲーム上なら数字が減るのを眺めるだけでいいが、その減る数字の一つになるかもしれない現場にはたまったものではない。
……とはいえ、泣き言を言っている場合でもない。どれだけ嘆こうと、存在Xを呪おうとも、この状況は変わりはしないのだ。
ならば、新兵を損失無しで教育し、戦果を上げることで教導隊に復帰し、安全な後方勤務に舞い戻るしかない。
新兵教育で多大な結果を示せば、今後も中央で新兵教育を任されることになるだろう。そうなれば、優秀な教官として間違いなくエリートコースだ。
未経験の新兵が充当されたこと自体は仕方がない。中隊長であるシュワルコフ中尉のような、正統派の魔導師はライン方面軍全体で不足している。だからわたしが来る羽目になったのだ。
……と思っていたのだが。
「未経験の新兵が充当されたとの認識でありましたが……修正いたします。訓練未修の新兵と解釈すべきでしょうか」
想像の斜め下だった。まさか、最悪の更に下を行くとは思っていなかった。
充当人数が
もしくはツーマンセルのペアがあぶれた者をついでに送っておこうとか、そんなところだろう。
しかし、全員が幼年学校に数日前まで居たような…ではなく、実際に数日前まで居た者だとまでは思っていなかった。ギリギリ卒業はしていたのが幸いか。
イーダル=シュタイン幼年C大隊第一中隊出身のクルスト・フォン・バルホフ伍長と、ハラルド・フォン・ヴィスト伍長。
そして、D大隊第三中隊出身のヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレヴリャコーフ伍長と、
なぜか一人だけ別の幼年D大隊第三中隊出身のイングリット・ウェーバー伍長。
カルガモのように、4匹の雛を連れて歩くだけなら最悪まだできる。相当に気を張らないと側溝に落ちるレベルで消えていくだろうが。
だが、4つの卵を抱えながらはほぼ不可能と言っていい。そして評価が下がって更に後方勤務が遠のく未来が見える……
更に嫌な予感がすることに…。
「その上…、この、ウェーバー伍長についてですが」
「ああ、貴官の言いたいことはわかるが……」
中尉も渋い顔をしながらこう言ってくれているし、そもそもなぜこのような者が前線に送られてきているのかがさっぱりわからないのだが……
魔導師のくせに、
術式とかの詳細については想像で補完しまくっているんで、変なところがあったら教えて下さい
ターニャさん視点は今回のみの予定です
あと小説に限らずいろんなものを失踪して来た実績があり、その上見切り発車です
とりあえず1時間ほど失踪します