ライン方面従軍記   作:鬱展開/曇らせ好き

1 / 3
漫画無料公開部分が良かったので一気に31+1巻買ったので書きました
なので漫画版準拠です


Prologue: ライン転属指令

 

一九二三年 帝国西方方面 フランソワ共和国国境 ライン戦線

帝国軍集積地臨時指揮所

 

 

「少尉、これが貴官の小隊となる」

「はっ!拝見いたします」

 

今の心境を一言で言うなら、「最悪」としか言いようがない。

二言以上が許されるのであれば、小論文にしてでも提出ができるだろう。というかする。

 

 

 

 

 


 

 

 

かの忌まわしき神を騙る悪魔(存在X)に転生させられ、このわたしは「ターニャ・デグレチャフ」として再度の生を受けた(受けさせられた)

 

そして齢9歳にして、先の北方任務において、帝国軍最年少の英雄(エース)となってしまった。

 

 

銀翼突撃章。

 

 

生きているうちに授与される者のほうが稀である勲章。

さらには、おまけとして、「白銀」という二つ名まで下賜される始末だ。

 

これでわたしは死ぬまで前線に縛られ、念願の安全な後方勤務よさらば……存在Xに災いあれ!…と思っていたところに、わたしに届けられた人事書類は技術検証員の要請という、念願の後方勤務(地獄への片道切符)

 

これで穏やかな余生を過ごせると思ったのもつかの間、実際の現場はかつて(前世で)散々リストラしてきた無能共の心境に共感してしまうほどの地獄だった。

 

 

思い出すことすら憚られるので簡潔にまとめると、シューゲルとかいうMADによる、人体実験じみた無謀な研究につきあわされた挙げ句、悪魔から呪いのアイテム(エレニウム九五式)を押し付けられた。

 

はやくあのMADから逃げ出したいと真摯に願っていたところで、次の任務が言い渡された。

 

 

ライン戦線への転属指令。

 

 

協商連合(レガドニア)に便乗して宣戦してきた共和国(フランソワ)に対抗するためだろう。

しかし、北方に動員した隙を突かれたため、西方は教導隊のわたしすら駆り出す必要があるほど切迫しているらしい。

 

前線転属自体は忌むべきことではあるが、MADから逃げるという最優先事項のためには仕方ない。

それに、今回は以前のような弾着観測員ではなく、小隊長としての配属らしい。

 

まあ、これ自体は悪くはない。

これまで居なかった、「部下」というものをようやく持てる、ということなのだ。

 

自分一人で行ってきた仕事を分担する(押し付ける)こともできるし、最悪盾にもなる。

懸念点があるとするならば、先ほど未経験の新兵の教育も任されたと知らされたことか。しかも最前線で。

 

 

 

 

……懸念点どころではない!

前線での機動打撃要員など、反攻時の陽動ではないか!

いくら部下()がいても命が持つ気がしない……

 

中央からの主軍が来るまでの期間は、およそ二週間ほどと見込まれるらしい。つまり、帝国のドクトリンである、内線戦略が破綻しかかっているということだ。これでは、前線が先に崩壊する。

 

ノルデンに主力の大半が割かれてしまった結果、教導隊(わたし)軍事機密(エレニウム九五式)すら投入せざるを得なくなっているようだ。

 

戦略的には、まあ悪い判断ではないのかもしれない。戦略シミュレーションゲームでも、この戦法なら主力が来るまで持ちこたえ、その後反攻作戦を決行すれば問題なく勝利できるのかもしれない。

包囲殲滅や、戦力の一括投入など、ゲームですら常に行えるとは限らないのだ。

 

ただし、ここは現実だ。ゲーム上なら数字が減るのを眺めるだけでいいが、その減る数字の一つになるかもしれない現場にはたまったものではない。

 

 

……とはいえ、泣き言を言っている場合でもない。どれだけ嘆こうと、存在Xを呪おうとも、この状況は変わりはしないのだ。

 

ならば、新兵を損失無しで教育し、戦果を上げることで教導隊に復帰し、安全な後方勤務に舞い戻るしかない。

新兵教育で多大な結果を示せば、今後も中央で新兵教育を任されることになるだろう。そうなれば、優秀な教官として間違いなくエリートコースだ。

 

未経験の新兵が充当されたこと自体は仕方がない。中隊長であるシュワルコフ中尉のような、正統派の魔導師はライン方面軍全体で不足している。だからわたしが来る羽目になったのだ。

 

……と思っていたのだが。

 

 

 


 

 

「未経験の新兵が充当されたとの認識でありましたが……修正いたします。訓練未修の新兵と解釈すべきでしょうか」

 

想像の斜め下だった。まさか、最悪の更に下を行くとは思っていなかった。

充当人数が4()()であったことはまだいい。帝国の通例の1小隊4人ではなくなるが、多分上層部が、「全員新兵で小隊として戦力が足りないだろうから、もうひとり追加してあげよう!」……などと考えていたのだろうか? 実際にはただの足手まといにしかならないのだが。最悪、盾が一つ増えたと考えておこう。

 

もしくはツーマンセルのペアがあぶれた者をついでに送っておこうとか、そんなところだろう。

C大隊(志願組)からの2人は中隊が同じだから顔馴染だろうが、D大隊からのうちの1人は幼年学校すら違う。よりにもよってD大隊(徴募組)の方が馴染み同士ではないとは。本人たちも不安で仕方ないだろう。

 

 

しかし、全員が幼年学校に数日前まで居たような…ではなく、実際に数日前まで居た者だとまでは思っていなかった。ギリギリ卒業はしていたのが幸いか。

 

イーダル=シュタイン幼年C大隊第一中隊出身のクルスト・フォン・バルホフ伍長と、ハラルド・フォン・ヴィスト伍長。

 

そして、D大隊第三中隊出身のヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレヴリャコーフ伍長と、

なぜか一人だけ別の幼年D大隊第三中隊出身のイングリット・ウェーバー伍長。

 

カルガモのように、4匹の雛を連れて歩くだけなら最悪まだできる。相当に気を張らないと側溝に落ちるレベルで消えていくだろうが。

だが、4つの卵を抱えながらはほぼ不可能と言っていい。そして評価が下がって更に後方勤務が遠のく未来が見える……

 

更に嫌な予感がすることに…。

 

「その上…、この、ウェーバー伍長についてですが」

「ああ、貴官の言いたいことはわかるが……」

 

中尉も渋い顔をしながらこう言ってくれているし、そもそもなぜこのような者が前線に送られてきているのかがさっぱりわからないのだが……

 

 

 

魔導師のくせに、()()()()()使()()()()者など、どのようにして生き残らせればよいのだろうか?

 

 

 

 

 

 




術式とかの詳細については想像で補完しまくっているんで、変なところがあったら教えて下さい

ターニャさん視点は今回のみの予定です
あと小説に限らずいろんなものを失踪して来た実績があり、その上見切り発車です


とりあえず1時間ほど失踪します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。