【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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3部構成になったことをお詫びします


異界(オルタ)を攻略せよ【1/3】

 

 

 

 

「こんにちは!希望のいい朝だね!」

 

「…なんだこいつ?」

 

多分また夢の中。カルデアに来たと思ったのだが、それにしてはやけに背景が牢屋である。しかも目の前には普段とはちょっとだけ違う格好をしたエドモンがいた。

 

てか開口一番希望なんて言わないだろ。復讐者のイメージをぶっ壊すな。

 

「なんだこれ…まぁいい、悪夢じゃないのは今日のシャトーに関係するんだな?」

 

「違うね。僕は…特別な君なんかが知る必要のある名前なんかじゃあない。人類史上最後の希望とも呼べる君と話すなんてことは殆どありえないからね」

 

「質問に答えろ?」

 

にしても話が通じないなこの白わかめ。こちらを見てくる目も相まってなんだか気味が悪い。黒で塗りつぶしたから逆に白く輝いているとかそんな感じの光り方だ。

 

「ごめん、自分語りが長かったよね。今回は君の才能を知らしめるために来たんだ!」

 

「…何をするかだけ言えよ」

 

「君のサーヴァントの霊基を僕のように変えたんだ。藤村さんみたいに真の幸運の才能とはとても呼べない僕でもこれなんだ、他の人たちはもっと酷いんじゃないかな?」

 

霊基再臨のクロスバージョンってところか。…それだけではどうやら済まされなさそうな雰囲気を感じるが。

 

「今回はこの悪夢に含まれているオルタ化サーヴァント、その全てを当てられたら目が覚める仕組みになっているんだ。才能を僕以上に見分けられる君なら余裕じゃないかな?」

 

「…外と中身を両方当てろってことか?」

 

「その通り!もちろん判明すれば彼らはカルデアへと戻るはずだよ」

 

てことは判明すればするほど人が減る鬼ごっこだと思えばいいか。

 

「真名看破は君が心のなかで思えば大丈夫さ。もちろん、当てずっぽうじゃなくて根拠のある答えじゃないとダメなんだけどね」

 

「……」

 

一気に難易度が上がった気がする。ガラちゃんもいないし持ってるのは己の拳のみ…辛いなぁ…

 

「そんな悲観するような顔しないでよ…『超高校級のマスター』とも呼べる君が簡単に諦めないで!皆の為に希望を背負い続けるんだ!」

 

「諦めるわけじゃねぇが難易度がおかしいんだよ。助っ人みたいなのもいるのか?」

 

「当然呼べるさ!エクストラでコンテニューできないならそれ相応のものをつけないと絶望的に難易度が上がってしまうだろう…?」

 

七海さんならクリアに燃えそうだけどね、と付け足す白わかめ。

あの残業を嫌う人ではないのはわかる。が…

 

誰なのかさっぱりわからん。

 

 

難しそうなシャトーにうんざりしつつも、俺はどこかに飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めたときはギリ知ってる天井のようだった。マイクラの洋館みたいなそんな感じ。

 

「というか最近どこかで見たような…気のせいかな…?」

 

ポーチの持ち物について確認してみると、そこには大タル爆弾Gと依頼書。

俺はモンハンのハンターって設定かよ…まぁ、誰と戦うことになるとしても戦闘力はあるに越したことはないだろう。

 

「失礼します。入ってもよろしいでしょうか?」

 

トントントン。

来客に対して完璧なノックをされつつ、俺は声を返す。

 

「どうぞ…というより申し訳ありません…」

「いえ、お嬢様が許可したことですのでお気になさらず」

 

つんと澄ました顔で対応されたのは、本職でみかけるのが随分珍しいメイドさんである。かわいいというよりかっこいい系のような美人。

 

「もし体調が戻っているようでしたらお嬢様と面会しますか?」

「よろしいんですか?得体の知れないような男をお嬢様に会わせるだなんて」

 

もともと鎧を着た状態の俺をほっぽり出さなかったあたり優しいのには変わりないだろうけど…よくまあこんなことしてきたよな。

 

「従者は主の指示に従うのみです」

 

…とりあえずは成り行きに従って行動したほうがいいか。最悪煙玉で逃げだせばいい。

 

「では行きましょう」

 

「それでは案内させていただきます。何か不明な点がありましたらご遠慮なく」

 

 

 

 

 

 

扉が開いたあと、階段と廊下を何度も経由した。これくらい動けば軽い息切れをしそうなものなのだが、体力が切れるとは感覚的に違うとわかる。

ハンターの体って凄い。

 

「それにしても広い空間ですね…」

 

敬語を崩さないようにメイドさんに話す。というよりはこの体だと勝手に敬語で話すようになるようだ。

 

「まあ、この館の特徴ですから。あと5階ほどなのでどうか頑張ってください」

 

どれだけ増築したんだよ。手入れするメイドも見かけないのにここまで綺麗なのは流石に無理がある。

 

「失礼ですが、この館は何人体制で?」

 

「私を含めて5人のみです。基本的には私が全て請け負わせていただきますが」

 

…多分手入れされてないって言われたほうがまだ信じるぞ。しかし目に入ってきている情報的には紛れもない真実と結論づけられる。

 

尊敬とかそんなものひっくるめても怖いよこのメイド…

 

「さて、最上階に到着しました。覚悟はよろしいでしょうか?」

 

「構いません、どうぞ」

 

 

綺麗に整備された扉を開け、外へと出る。

 

「あら、もう客人が目を覚ましたのね。月が昇る前に起きたのは良かったというべきでしょう…ようこそ、紅魔館へ」

 

目の前で優雅に一礼する姿は、なるほどお嬢様と呼ばれるのも納得するものだった。

パタパタと生えている羽が明らかにミスマッチではあるものの、それが彼女の魅力を引き立ててはいるのだろう。

 

「紅魔館、ですか…」

 

ということは今回のヤンデレは紅魔組か。誰にしたって能力は恐ろしいし、隙を見て真名を判明させないとな。

 

「素敵な名前でしょう?まだ夜も長く続きますし、お茶会でもしましょうか」

 

「それはそれは…いえ、やめておきませんか。夜更かしは体に良くないですし」

 

この悪夢での食事はイコールでハメ技だからな。食べれないものを出されるのも気が引ける。

 

「いえ、私は寧ろ夜からが本番の悪い子供ですので…そんな硬くなさらずにお座りになってくださいな?」

 

「…まあ、少しだけなら」

 

子供の素直な頼みには恐ろしく弱いのはよくないな。いい加減直したほうがいいのに…

 

とはいえ、最低限の警戒はしていないといけない。椅子に怪しまれるギリギリのラインまで浅く座った。

 

「ありがとうございます。最近は妹も友人も楽しんではくれませんでしたの」

 

「そうなんですか…俺でよければ聞きましょうか?」

 

「ちょっと家族の取り分というものを話していただけですので。…紅茶でもお飲みになって?」

 

そっとメイドさんから出された紅茶を受け取り、テーブルマナーに従って飲む。王道とも呼べるアールグレイの上品な風味とわずかに入った砂糖で好みの味となっている。

 

「テーブルマナー通りには飲めるんですね。よく狩りをなさっているのでこういうことには疎いのかと」

 

「教養は身につけておいて損はないと思ってますので」

 

「それはそうですね。…では、ここからはのんびりと本題を話しましょうか」

 

俺よりもよほど丁寧な仕草で飲み終わったレミリアは、こちらへと濁った(あか)い目を向けた。

 

「というわけで私のところに嫁入りしてくださいな」

 

…話が見えてこないことをしないでくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よろしければ、事情を説明してもらってもよいでしょうか」

 

「つまり受けてくださるのね。…では説明させてもらいましょう」

 

パチンと甲高く指を鳴らすと、俺のポーチから依頼書が出てくる。これに何か書いてあったのを知らなかったのはだいぶまずかったな。

謎が解けるヒントになったかもしれないのに。

 

 

「マスターの渡した依頼は数人が挑んで死ぬことがスタートラインでしたの」

 

「そういうやり方もあるんでしょうね…」

 

この体の記憶から見るに、この世界では捨て駒の中から生き残った奴だけが優遇される世界らしい。一度でも死に近い経験をすればそりゃ強化されるだろう…

 

詳しいことは知る由もないけれど、ハンターが普通にもてなされるくらいには荒れているんだな。

 

「でもあなたは殺し合いを制して生き残った。ならば私の領民を安全させるのに足る存在であることに明白な存在を手もとに置いておきたいのは当然のことでしょう?」

 

「…それで婚約とは少し結びつかないものですけれどね」

 

設定上としてしっかり病む前の土壌はつくられているわけか。

変なところで律儀なシャトーである。

 

「婚約にしたのは早い話がこれしかなかったものでして。人を繋ぎとめるのなら鎖か人と相場が決まっているでしょう?」

 

「なるほど。しかし私はいつ命を落とすかわからない身でありますので婚約というのはなしにしていただけますでしょうか」

 

やんわりと断る方向にもっていきたいものではあるのだが…このレミリア、二次創作でよくみかけるおぜう様のようなおこちゃま頭脳じゃない。どちらかといえば領主としての側面が大きいようだ。下手な発言をして主導権を握られないようにしないと。

 

「いいえ、それなら私の眷属になればよい話ですわ。吸血鬼になれば永遠に若いまま生きられますし、それに真祖の直系の眷属なら制限はほどんどありません」

 

タンポポが苦く感じるくらいですわ、とほほ笑むレミリア。

 

「別にこの領地に縛り付けるつもりもありませんわ。ただ時が来たら結婚して子供をなして…ほんの少しの時間だけ、この領地で過ごしてくだされば」

 

「それ絶対に吸血鬼基準ですよね?」

 

500歳を超えている吸血鬼の彼女にとっての時間と人間の時間は絶対に違う。なんならしれっと吸血鬼になる前提で話が進んでいる。

 

このままじゃレミリアの思い通りに進むと判断した俺は別の場所に撤退しようとする。

 

「紅茶も飲み終わりましたしここらでおいとまさせていただきます。またこの地域に化け物が出たときにでも呼んでくだされば」

 

「何を言っているのかしら、マスター?あなたの居場所はここよ」

 

上の紅い月から何かが煌めく。咄嗟に持っていた太刀を抜刀して切り捨てた。

 

「今度はいきなり実力行使ですか。もう少し普通の交渉をしてくるとは思っていたんですけどね」

 

こちとら中身がハンターなだけの一般人である。横からの平面的な戦闘はともかく、上から立体的な弾幕がくるとなれば辛いのだ。

 

「いえ、身の程知らずの平民に立場をわからせる…ノーブレス・オブリージュなるものを実践するだけですわ。それに化け物となるなら私も真祖の直系ですので」

 

先ほど切り捨てたはずの弾が弾幕となって襲ってくる。ごっこだから力が抑えられてるなんて淡い期待は捨ておいた方がよいだろう。

 

「化け物胎退治といっても人型は専門じゃないんですけれどね」

 

とりあえず最低限当たらないように振り払い、いまだに余裕そうに紅茶を飲んでいるレミリアの腕を狙う。

 

「優しいですね、殺してもよかったですのに」

 

「片腕を失っても平然としているほうがおかしい話なんですけどね」

 

あっさりと切り捨てた腕は、逆再生のように持ち主の体へと戻る。やっぱり吸血鬼は再生をもってるよな…

逃げようにもレミリアに後ろを向けて駆け出すことになるし、ここで動かなくともいずれジリ貧でやられる。

 

「勘違いされては困るのだけれど」

 

やけにゆったりとした声が耳元で響く。

 

「別にお嬢様だけでここにいるわけではないのよ?」

 

隣から出てきたナイフにはほぼ反応できなかった。刺さってから相手の体を突き放し、追撃されるのを防ぐのが精一杯。

 

「今のをよく初見で対応できましたね」

 

「これくらいはできないとお話になりませんから」

 

ナイフは鎧の硬いところに合わせたが、ナイフそのものに液体が塗られているところをみるにかすらせることも手段としては褒められない。

 

「運命としては最初で仕留められる可能性がもっとも高かったのに…流石はマスターと言ったところかしら」

 

「そもそもここから無事に帰らせてくれればよかったのに…!」

 

「そんなことは不利なほうから言われてもおことわりよ。お嬢様はあなたと私たちのことを思って結婚しようとしているもの」

 

ということは紅魔館の女性は全員敵ってことか。理想としては気づかれる前に仕留めなきゃいけなくなるのか。

ますます難易度高すぎない…?

 

「だから大人しく私と結婚なさい?」

 

地面から槍がちらほらと出てくる。弾幕とは違い実体のある槍のようで、足場を崩す用途で使われているみたいだ。

 

「まだまだ逃げさせてもらいますよ…!」

 

崩れた足場を伝って下へと落ちる。紅魔館が広いなら見つかりにくいはずだ。

 

助っ人を探すための戦略的撤退。

 

 

 

 

「…まあいいわ。私の能力からは誰も逃げられはしない。精々手の中で踊りなさいな」

 

 




讐、槍、殺…
リクエスト欄はこちらから。
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