「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした!」
ご飯を食べて休めた。ヤンデレシャトーでは貴重な休憩でもあり、ラウラもかなりほっとしていた。
「…シエル姉さんと結婚しないの?」
「しないよ。というか英霊と結婚するってなったら親にどう説明するんだよ…」
「そこはまあ、お母さんと同じできちゃった婚で…」
本当にこの子のお母さんを俺が好きだったんだろうかね。
「ばいばい、シエルお姉ちゃん!また今度カレー食べさせてね!」
「ええ!また来たときに!」
パタンと扉を閉め、また別の場所に歩きにいく。
「なんか寂しいですね。さて、できたときのためにカレーづくりをしないと…」
「あらマスター。どうしましたか?」
「エウロペさんか…いや、単に娘ができたりできなかったりしてるだけだから」
ずっと牛に乗っているエウロペさんは全員孫とか言ってたから娘ができる心配はない。
「牛ですか…お父さんはああいう鈍くさいのんびり屋のが好きなんですか?」
「違う。というかなんでそんなにエウロペだけ当たりが強いんだよ…?」
「私が嫌いだからです。飴なんて血糖値のあがるものを…」
「そうなの?嫌いならごめんなさいね…はい、クッキーどうぞ」
何かを渡さないと気がすまないのだろうエウロペママである。ちゃんと配るときにも小分けにされてるのが女子力高いな…
「あらあら、カロリーはもう少し控えれるようにしないとダメよ?あなたのお母さんも健康的に過ごしてくれることを願ってるはずですから」
「…お母さんがそうとはとても思えませんが。娘にしょっちゅうお父さんとひっつけって言ってきますし」
「たぶん殺されるから近くに来てたんだろうな…」
ラウラなんてものは百害あって一利なしの天敵だもんな。娘なんて離婚のときに邪魔だろうし他の女との浮気の結晶だし。
(もしかしてラウラがいるから監禁されたり殺されかけたりしてたの…?)
じとっと目線を向けるけど、また腕に絡んでくる。隣には普通の娘。
「おばあちゃんはどの世界でもおばあちゃんなんだよ!」
「そうかぁ…安心できるな…」
「そうなら嬉しいわ。でも私としてはマスターに抱かれてもいいのよ?」
「ゼウスに対しての操はとうしてんだよ!?」
「あらあら、子供を作るくらいなら許してくださるでしょう。なんたって富国強兵、でしょう?」
「ネタが古い…」
というかしっかりヤンデレなのかよ。自分で理由をつけて納得させているように見えるけど、あいにく聖杯からの知識はそこまで偏らない。
「お父さん、速く行こ。こんな行き遅れババアに手間取ってちゃ全員回れないよ」
「…ふぅん。私のことをそんな風にいうんですね。ところでマスターはおっぱいは好きですか?」
「!?」
いきなりこっちにそんな話題を振らないでほしい。うーん…マジメに考えても別に好きでも嫌いでもないかな。人並みに大きいのは好きだが。
「まあ、うん…好き、ではあるかな…」
娘の手前そんな会話をしたくなかったけど質問には答えなければならない。案の定答えた瞬間からギリギリと音が聞こえるし、後ろからハープの音も聞こえる。
…あれ、ハープ?
「ママから教えてもらってるんです。パパの耳、汚してませんか?」
「そんなことを娘は気にしないの。私たちにたくさん迷惑をかけて…そして幸せなら充分ですよ」
【悲報】ほぼ最古の人妻を孕ませる外道、最後のマスターだった
頭の中にぱっとそんなものが思いつくくらいには現実逃避をしていたようだ。なんでそろいもそろってヤンデレの人ってこんなアグレッシブなんだよ…
(というかエウロペの娘も敬語なんだな…かわいいけど魅了されてるような…!?)
魅了。
そんなスキルがあることを自覚した瞬間、咄嗟に手に爪を食い込ませる。ラウラが静かな理由は当然その魅了によるものだろう。
「あらら、気づいちゃいました?じゃあタロスに捕まえてもらおうかしら」
「その程度のデカブツ、余裕だっての…!」
「パパ?私を見ないとだめだよ?」
(魅了は引き継がれてるのか…!おっぱいでかいなあちくしょう!)
正直な話ラウラを抱えつつ2人の魅了を振り切るのは不可能に近い。ハンターになっても五分五分だろう。
しかし勘違いされては困る。ここはカルデア、他のサーヴァントが可能性の数ほどいる。
「…ま、私ならそんなの関係ないんですけどね」
「というわけでマスター!一番安全なサーヴァント、アサシンのシャルロット・コルデーです!」
「でたらめプランと運だけのサーヴァントかぁ…」
エウロペをあっさり暗殺したアサシン、シャルロット。ヤンデレの定番である家庭的な包丁と隣にいる金髪の天使の少女が印象的である。
「ちょっと待てその天使はどうした?」
「ママの天使みたいなのがお友達になったからこうなったの!それとあたしの遺伝子はママともパパとも違うから近親相姦オッケー!」
「やっぱり頭おかしいのは遺伝してるのでよしとしましょう!というわけで早速皆で3Pです!」
「助けてくれラウラ!」
助けを求めにラウラのほうをみやる。
ヤンデレは恋愛になるとバーサーカーになるのは一貫してるのが本当に恐ろしい。
縄で拘束されるのも包丁で腹を刺されるのもガラじゃないし…
「お父さんを襲うのは許しません…!」
「じゃあラウラちゃんも含めて4Pにしましょう」
「………………………………………………いやです」
「そこは躊躇しないでほしいなぁ…」
「むむむ…それじゃマスターの童貞もどうぞ」
「……………………、」
「沈黙するなぁ!?」
というか無言でこちらに指を見せてくる時点で危険過ぎる。娘がそろいもそろってファザコンかよありがとうございます!
(思春期がきても嫌われないのはいいんだけどさ…!今狙われるのは話が違わないか!?)
「……………ええ、それなら!」
「鏡花の構え」
こちらに向けてきたガンドは素手で掴み、シャルロットからのナイフは太刀で斬る。娘はみたところ何も持ってないのでスルーし、その勢いのままにケムリ玉で巻きにかかる。
(幸運とか発動するな…頼むから平和に逃げさせろ…!)
「お母さんがいないのにお父さんといちゃつくのを止める理由はありません!」
「せめてそれ以外でやってくれよ!?」
誰に会ってもいいように抜刀した状態で廊下を走りつつツッコんだ。
娘がヤンデレとかもう手に負えないじゃん。
「やっほ、マスター!刀なんてもってどうしたの?」
「単に逃げてるだけだ。相変わらずの生兵法だがな」
「大怪我のもとになることしない!ほらほら、私の部屋に入る!」
入った先には道場…と、プール。似つかわしくないこの二つの併設だけど、隣の武蔵ちゃんよりまし。
というかずっと手を離さないのはやめてほしい。逃げようとしたら斬り捨ててくる感じだろ。
「もしかして武蔵ちゃんに見とれちゃった?いいわよ、私もマスターをお返しに襲うから存分に見とれちゃいなさい!」
「あ、殺されるなら帰ります…というか兵法を教えてくれるのでは?」
「え?私がいるんだから必要なくない?それにマスターだって好きな人の隣にいるんだからwin-winでしょ?」
(こっちもしっかりヤンデレですか…)
天眼を持ってる普通の武蔵ちゃんではないだけましかもしれないが至近距離にいるだけ危険なんだよな。
(ひきはがしたかったけどそう上手くはいかないか…)
「まあ兵法なんて私の二天一流を習えばいいのよ!というわけで早速やっちゃいましょう!武蔵ちゃんの二天一流は覚えることが大変だからね!」
(そもそも兵法なんて基礎だけでなんとかなると思うんですけどねえ…)
逃げることに関しては相手の搦め手さえわかればいいじゃん。嘘をついただけでこうもされるとは…世間って酷いなぁ…
「それじゃあまずは私と寝ましょうか!きっとそうするだけで少しはわかると思うわ!」
「全然説明になってないよ?」
後ろからヒュンっと綺麗な抜刀音。横に避けることはできないので足で上に乗って回避する。
「母様と話しているなら殺せると思ったのに…無念です」
(娘って連れてこなくてもできるんだ…考え的には酷いけど、妻と娘を置いて逃げるのもありかぁ…)
「なぁにこのかわいい女の子!美少女だけどマスターのことを殺そうとしたのは許しません!」
「…これでも二天一流の師範代にならせてもらいましたからね」
「んん?でも私のことを母様って呼んだし、どっかで見たことあるような…もしかして娘、みたいな?」
「その通りです…って来ないでください!」
「反抗期でもかわいい〜!」
刀を弾いて無理矢理抱きついてる武蔵ちゃん。位置的に挟まれる形になってしまい、ちょっと理性的なものが辛い。
(百合に挟まる男って殺したいけど大変なんだなぁ…って…)
ぎゅっと押し付けられる柔らかな感覚とそれを上回る2人からの殺意で死にそうである。おいこら密着状態で刀を拾ってお母さん共々殺そうとするな。
「ちょっとどうしようかしら?もしかしなくとも私の娘だし、一緒におうどん食べる?」
「ええ、いただきたいところですね。先に父様を殺してもいいですか?」
「ダメよ?大好きなものを奪う相手には容赦しないって未来の私から教わらなかった?」
「それを壊すために習ったのが二天一流です…!」
「……いい話っぽくしてるけど俺を殺そうとしてない?」
え?なんでそんなことを聞くの?みたいな表情でこっちを見ないでください。てかその刀もどっかで見覚えがあるんだけどな…あ、モンハンか。
(なんで娘がミラボレアスの持ってるんですかね…龍属性とか戦いたくないし逃げるのが吉かな)
ミラボレアスの影響で白い髪と黒い髪が半々になっている娘の正気が心配である。命の危険を冒してまで殺しに行く理由はどこにあるんだ…?
「父様のことが好きで殺したくてたまらないんです…!」
「ダメじゃんこれ…絶対に悪影響を受けたやつやんけ…」
娘の太刀を俺が持ってた太刀と入れ替え、その勢いのまま逃走する。俺には妖刀の類を扱える自信はない。
「そんなもん狩り殺すんじゃありません!」
捨てゼリフというのもあるけどこんなもん剣士が触っちゃダメなものだ。封印してくるか。
(どこに封印しにいけばいいんだろうな…)
「…で、私のところと。もしかして爆発物処理班かなんかだと思ってない?」
「いや、全然。呪術に関しては専門的だろう?」
この前誘拐された扉を潜ってやってきたのは徐福ちゃんのところ。決して呪いに負けたとかではない。
「それにしたって私とマスターさんの子どもね…ぐっ様のことちゃんと布教してるのかな…」
「日本人の学生には少なくとも布教されてるだろ…」
この前古典の予習としてやらされたからな。まさか人物の解釈がこうなるとは思われてないだろうけど…
(虞美人には今回強化はないしな…)
「むっ!なんか失礼なことを考えてるような気がするんだけどー!」
「安心しろ、ぐっ様を貶してただけだ」
「全然安心できない!しかもこの太刀なんか凄い怨霊とりついてるし!私が解呪できる代物じゃないんですけど!」
「前回はとことんひどい目に遭ったからな。罰みたいなもんだよ」
にっこりといい笑顔で言える。こちとらサイダーのせいでゲームオーバーになりかけたんだからな。
「あれは事故でも何でもないんだからいいだろー!そもそも労力に見合ってないんだけど!?」
「ふぅ…お茶おいしい…」
「なごむなー!」
わちゃわちゃ怒っているその風景を見てお茶を飲んでいると、後ろからやわらかい手のひらの感触。
(いくらなんでも見境なさすぎでは?絶対に恋人に選んじゃダメなやつだろ…)
「そんなこと思わないでよ父さん。推し活と監禁方法を教えるだけの無害なサーヴァントだよ?」
手を振り払うと目の前には呪いの刀と徐福ちゃんとチェーンソーを拭いてる娘がいる。
「徐福ちゃん本人が言うんじゃない。あと娘はなんでチェーンソーを優しく拭き拭きしてんの?」
「んーとねー、整備?ママはお人形作っても放置しちゃうし、パパは年中別のママに絡みつかれてるから誰もやらないの」
「うんうん、でもママのそのお人形が家計を助けてることを忘れちゃダメだよ?」
「ママ…徐福ちゃんって一人称はダサいからね」
「ぐはっ!?」
普段のらりくらりしている徐福ちゃんでも、娘からのダサいは相当効いている。
「パパの独り占めは嬉しいなーちょっとだけこうしててもいいー?」
「…徐福ちゃんが起きるまでな」
なんだかんだ娘と遊べる機会はなかったし、ちょうどいいか。
娘からの言葉で受けたショックから立ち直るまで、俺は娘と遊んでた。
「あれ?なんで私とマスターさんは遊んでるの?」
徐福ちゃんが混乱してたけど些細である。
娘、めっちゃかわいい。
高評価なら更に頑張ります!