【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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遅くなってすみません。強欲のマミー様への解答です。


繋いだ絆なんてなかった【リクエスト企画】

「我が夫よ、結婚式ですよ?」

 

寝耳に水、ということわざの通りのことがおきたらどうするだろうか。俺はまず間違いなく自分の正気を疑う。

 

(そんな結婚とかしてなかったはずなんだけど…)

 

「考えているようですけど、恐らくほとんど私のこの姿に見とれているだけでしょう。やはり本来は見ないような美しい白無垢は効果バツグンですね」

 

「違う、そうじゃない。かわいいのは否定しないけど」

 

 

そもそもモルガンの性格ってこんなにぐいぐい来るものだったっけ?普段から会話するようなことがなかったのを踏まえると違う気がする。

 

(トネリコになった訳でもない…つーか俺のカルデアにはモルガンしかいない…)

 

「ふふ、それならばやはり式の段取りを忘れているだけでしょうね。和式の文化には少しほど疎いですが、聖杯から知識を輸入すればいいでしょう」

 

「無駄のない魔術の無駄な使い方じゃん…」

 

基本的に聖杯はそうぽんぽんと使えるようなものじゃないんだけどな…やっぱり配られすぎたか…?

 

「現代のスマホとなんら変わりありませんよ、夫よ。知識はもっているところから引っ張った上で真偽を判断するのです」

 

「だからといってこの服装からは辛くない…?着方とか未だによくわかってないよ?」

 

ちなみに今着ているものは袴。シワ一つない新品であり、帯や前のひもも閉められている。

 

「ああ、それですか。ハベトロットにお願いして状態保存の魔術を仕込んだ一品です。仮に液体が飛び散っても水滴一つつきません…」

 

「それと同じようなものがつけられているのがその白無垢か。…なんでいきなり結婚式が始まってるんだ?」

 

そもそも悪夢に説明を求めるのもどうかと思うが、それとこれとは話が別だ。こんな感じで一人一人やっていくんだったら面倒なことになるぞ。

 

(主に嫉妬方面のことが怖い…次からスタートで詰む可能性もあるしな)

 

「人理修復が終了したお祝いがてら、とのことです。ドクターも別次元をねじ曲げてやって来させましたしね」

 

「…ごめん、なんて?」

 

「ですから、ドクターが戻ってきたと」

 

…少なくともロマニじゃないんだろうな。

 

(多分別ゲーのドクターだな…いや、そもそもここからどう抜け出せばいいんだ?)

 

モルガンが恥ずかしげに持っているロンゴミニアドは普通に恐ろしい。今はまだ優しく握ってくれるだけで済んでいるが、逃げるのならば足を貫くことを躊躇わないはず。

 

「彼も気恥ずかしそうにしていましたし、もしかしたら顔を合わせないのかもしれませんけれど」

 

「いや、充分。ありがとうモルガン」

 

絶対なんでここに来たんだっていう疑問からだろう。いきなり異世界に来て「結婚式を祝ってください」なんて言われたら困惑するよ。

 

「夫のためなら当然のことです。…では、バーヴァンシーのもとに向かいましょうか。国よりも大切な娘に祝福されるのは嬉しいですから」

 

顔を恥ずかしげに隠しながら言われるとそれっぽくなるから本当にやめてほしい。魅了がされてないだけましと思うべきか…?

 

「リクエストされていた飲み物をどうぞ」

 

「やっとですか」

 

いつのまにかペンギンをてちてちと連れた明らかに足が人外な青髪の人がメイドとしてやってきていた。お盆の上に乗せてある徳利をみるに日本酒を運んできたのだろう。

 

(というかなぜその恰好なんだ…?)

 

変装にしては雑すぎるだろ。スタァの輝き隠せてないからな?

 

「実を言えば初めてこういうものを呑むのです。日本酒は知りませんからね。式の最中に驚くよりも夫の前で見せたいものですから」

 

「…そうですか」

 

そんないきなりぐいっと呑むようなものではないのだが、妖精のやり方だとそんな感じなのかもしれない。

 

「あら…ここまでアルコール濃度が高いとは…予想外ですね…」

 

ふらりとその場に倒れ込むモルガン。演技だとしても流石にちょっと倒れ方がおかしい。ラムダが持ってきた液体に毒が盛られてると考えるのが普通だ。

 

(ラムダが運んでいたあたりレベルドレインとかその類か…認識阻害とかじゃなくて普通に知らなかった、ってことか)

 

「…マスター?速く行きましょう?」

 

ペンギンの手がぺちぺちと体を叩いてくる。従わないと碌でもないことになるので従うとするか…

 

(モルガンが魔術をかけたとしても今の状態じゃ破られてるし…)

 

「ねえ?まさか他の女のことを考えていたのかしら?」

 

「違う。単に脱出プランがちゃんと可能なのかどうかだ」

 

「疑り深いのはいいことだけどね…ま、今回の私は式場の盛り上げ役として来ていたから帰るくらい訳ないわよ」

 

言われるなりペンギンのパーカーの中にいきなりしまいこまれる。

 

「大人しくしなさい。これが一番安全な方法だってわかってるのよ」

 

「(絶対実益も兼ねてない?バレンタインデーのチョコを食べさせればよかったのでは?)」

 

「あれ、よく覚えていたのね。…ま、詳しい話は後にするから今は静かにね?」

 

言葉の通り大人しくしていれば問題ないだろう。…これだけでヤンデレシャトーが終わるなんて甘いことはないのだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、着いたわよ。スタァらしい豪華なお家でしょう?」

 

「そう思うならもっと熱愛報道されないようにしろよ。これじゃ秒でバレるぞ?」

 

連れてきてもらった家はフィギュアスケート用の練習場とその隣にある『マスターの家♡』と書いてあるペンギンの家。空が見えているならもっと見えるだろうけど、それすらないのでしょうがない。

 

「海の家、ってこういうのでしょう?」

 

「違うよ?こんな物理でやられたら誰も入ってこないでしょ?」

 

ちなみに今は魔術で作られている水泡でなんとかなっている。少なくともこの状況でラムダに勝てることはほぼない。

 

「ほら、早くきなさい。ここでぼうっとしているとリヴァイアサンに囲まれて食べられちゃうわよ?」

 

「あ、あぁ…ごめん。すぐ行く」

 

「それでいいのよ。皆、ちゃんと周りで守りなさいよ?」

 

ここで殺されるのもそれはそれでステキな死に方だとは思うが、ラムダからしてみたら不本意なんだろうな。

 

申し訳ないと思いつつ、ペンギンに囲まれながらてちてちとついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう?あなたのための特別なステージ、気に入ってくれたかしら?」

 

「…明らかに俺が場違いだよな?マネージャーだからって俺も滑れると思うなよ…?」

 

 

そんなこんなで連れてこられたのはスケートリンク。足そのもので動ける彼女のように自由には動けない。

 

(今回なんか状況で縛られること多いな…しかも袴のままでスケート靴を履いてるから気持ち悪いったらありゃしない…)

 

水着でスケートは明らかなミスマッチではあるが、そこはやはり一流のプロ。違和感なく体を使って踊っていく。

 

「マネージャーのあなたは元プロだったから育ててくれたのよね…ええ、ちゃんと言われた通りカジノにも呼ばれるしマイホームも建てられた」

 

(なんもそういうこと言ってないと思うんだけど…)

 

「ね、これなら許嫁から助けて駆け落ちできるわよね?」

 

「あ、モルガンって許嫁だったの…?」

 

いまいちシャトーの雰囲気がつかめていないからだろうか、情報量がおかしい。

 

(二部終章が終わってモルガンの許嫁で元プロスケート選手のマネージャー?情報過多過ぎる…)

 

というかマネージャーやらなんやらとやり過ぎだろ。友人の奴だってもっと少ないぞ。

 

「ね、踊りましょう?それとも激しいスピードスケートがいいかしら?」

 

「いや、踊りましょうか。マドンナ様の仰せのままに」

 

袴で踊りなんぞやれる気もしないがなんとかしよう。

芝居がかった仕草で手を出すと嬉しそうにこちらに微笑むラムダ。

 

「ええ、任せなさい。あなたを鮮烈に踊らせてあげるわ。私のもの、としてね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の恋人を返しやがれぇ!!

 

「今日は厄日か何かか?」

 

地面からアルビオンに突き上げられたまま、口に緩く咥えられる。

 

「僕の財宝は逃がさないっていったでしょ?そのまま海上デートとしゃれこもうか!ふふ、久しぶりだから楽しみだね、マスター!」

 

「喋ると落ちるかもしれないから黙ってくれ…」

 

音が聞こえるだけで気持ち悪いくらい落ちそうで怖い。

 

「待ちなさい…!せっかくマスターが建ててくれたマイホームを壊して帰れると思ってるのかしら!?」

 

ラムダの方からカンカンと許されない怒りを込めた音が聞こえてくる。あと俺は大工じゃない。

 

「君は35億いる男からまた探せばいいのさ!僕みたいに異形なものよりは見つけやすいスタァなんだからね!」

 

「チッ…待ってなさい、駄竜。せいぜい私のマネージャーを預かっていることね」

 

ぱしゃんと海のうず潮に飲まれ、だんだんと姿が見えなくなる。

 

「…はあ。あんなのは放っておいてさっさと遊びに行こうか。あっちに遊べる場所もあるしね」

 

呆れた、と言わんばかりに肉体をもとに戻したメリュ子。

さっさと帰って恋人らしいことをしたいらしい。

 

「というかモルガン陛下はどうした?」

 

「なんか倒れてたからバーヴァンシーに任せてきちゃった☆」

 

てへペロとかの擬音がつきそうな声音で言っている。

 

「確かに間違ってはいないだろうけどさ…それにしたってもう少し優しくしてあげてもいいんじゃないか?」

 

「マスターはやっぱり優しいんだね!僕のことをあそこから救い出してくれたのはやっぱり間違いない!オーロラに拾われなくてよかった…!」

 

「…まじかぁ…」

 

さらっと聞き捨てならない言葉を言われたが、言った当の本人は平然としている。どうやらこれが正しいと考えているようだ。

 

(なるほど、今回は存在しない記憶をそれぞれ持ってるってことか…そうじゃないとつじつまが合わない)

 

今回のラムダへの接触ではっきりしたけど、間違いなくサーヴァント同士で思い出を言い合わせたら地獄になる奴だ。

 

 

「思い出すよねマスター。ナンパから助けてくれたときの僕の言葉、とか…」

 

「そう、だな…」

 

とりあえずはしみじみと思っているフリで考え込んでおこう。

 

(今回ってどうすりゃ逃げ切れるんだ…?舞台が海だってのもあるから襲われたら辛いし…)

 

もしかしたらどこかに糸口があったのかもしれないけど、俺にはよくわからない。

 

…ラムダ来ないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま空の旅を続けるとビーチが見えてきた。パラソルやソーダなど夏を楽しもうとしているために準備してきたのだろう。

あ、ちゃんと海の家がある。

 

「ふふ、どうだい?ステキな場所だろ?あんな水没した場所よりも君のことを理解した、私の領地だよ!」

 

その問いかけに答えようとしたが、それより先にキスをされて口を塞がれる。

 

「ええ、あなたがいなければそうなんじゃないかしら?早急に消えなさいよ」

 

「??????」

 

爆速でやってきたラムダに対して困惑しかないけど、とりあえずペンギンが無事でよかった。

 

(そんな思考放棄している余裕がないはずなんだけどな。…何が起きてんだよ、これ)

 

平和に終わってくれないかなぁなんてバカなことを考えつつ、海の家の椅子に座った。

 

「まずは休むのね。うん、かき氷を作ってくるから待ってて!」

 

「全く…あ、メロンソーダでいいわよね?」

 

「…頼む」

 

貢がせているのには申し訳ないけど、夢の中だしまあいいか。戻れるための目安なんてものもなさそうだし…

 

(んん…?あれ、扉?)

 

そんなことを考えてると帰れそうな扉が向こうのほうに出てきた。どんな理屈か、を考えれば脱出できそうだな。

 

「願えば叶う、みたいなもんか…ラムダが魔術なんて覚えてるわけないよな」

 

「悪かったわね、ガサツで」

 

いつの間にか飲み物を持ったラムダが隣に座っている。明らかにストローが一人で飲むのに適してないのはお約束だ。

 

「それで、気になってることは合ってるわ。あんたが思っている通り人の心象風景を再現され続ける特異点のような夢よ」

 

「…やっぱりか。でもそれにしては色々と不自然な点があったからさ…」

 

「それは全員の考えとのすり合わせの結果よ。ちなみにあなたと一番近いサーヴァントの願いが優先されるみたい」

 

「なるほど…だからあんなにくっついてきたのか」

 

「あれは趣味よ?感覚が鈍いからあなたと離れたくなかっただけ」

 

平和に終わらせるように努力はするけどね、といった表情。流石劇場版メインヒロイン。

 

「じゃ、せっかくの海の家だし楽しみましょう?キスもしたし、これを飲んだら終わりにしてあげるから」

 

「そうならいいんだけど…」

 

結局こうやって喋って終われるなら楽だろう。優しいラムダなら…おっと、飲まれかけてた。

 

飲み物に意識を集中させたかったけれど、目の前のクールな美貌には逆らうことなどできるはずもなく。

 

そのままもう一回キスしてしまった。

 

「…ふふ、嬉しいわ。といっても、伴侶どうこうよりも心から繋がってる関係を確かめるのが心地良いわね」

 

「暗に関係に拘るのに文句を言ってるのかな?…いや、別に僕からしてみたら不用意に恐れる必要もないからいいんだけど」

 

メリュ子がいつのまにか顔ほどのかき氷を持ってやってきていた。よくそんなでかいの運んでこれたな…

 

「…関係性なんてもうできているからに決まってるじゃない。私から離れないならより深めたいのよ」

 

「僕はもう未来の伴侶って決定された未来があるから充分なんだよ。…あ、君はそもそもストーリーがクリアされてないんだっけ?」

 

「いいわよ、それくらい。そんなのがなくても私のことを愛してくれてるんだから」

 

…逃げよ、ヒートアップしたこいつらに何されるかたまったもんしゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪夢から覚めてまだ悪夢の中みたいな顔してるけどどうしたの?」

 

「…別に」

 

いきなり妹の顔がドアップで映されて驚いただけ、ということにしておく。

 

…ラムダの顔、至近距離だとかなりヤバかったな。

 




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