ゼノビアから別れた後、結局どこに行けばいいのかわからなかった。
(しかし他のサーヴァントに会うわけでもないし…認識阻害とかでも混ぜたのかな?)
「そんな考えごとを廊下でしないでください」
気がつくと足には尻尾だけ絡みついている。
「…ラウラか」
後ろから絡め取られたせいで動きにくいが、スキンシップでもしたいのだろう。
「それで、何に迷ってお父さんはここで悩んでたの?また女性関係?」
「その言い方やめてくれ…誰なのかわかってないんだからさ」
「つまり名前も知らない人を孕ませたと。ドン引きするよ?」
「ラウラをヤッた時点でもうドン引きしてるし自分のこと嫌いになってるから」
「…そんなお父さんとやっぱり結婚したいんだよね。実の娘を襲う気はない?」
「……ない」
そんな期待しているみたいな表情でこっちを見てくるのやめてほしい。父親に手を出されたいからって誘い受け、なしだと思います。
「で、なにか原因とかはわかっているのか?話が通じる時点で張り付いてたんだろ?」
このままだと押し倒される感じがするので強引に話題を転換する。
「そ。詳しいことはわからないけど、お父さんのもともと来てた方角から発生してたよ」
思ってるより重要なことだな。いった場所の中で作っていたとなると、二人くらいに絞られる。
にしても潜入の仕方上手すぎない…?
「スネークかなにか?」
「うん、そうだよ。コーダなんとからしい」
コーダ・スネーク?…メタルギアに詳しくないからようわからん。
コーダなんとかに似ている娘からの情報をもとに、俺は元凶がいるかもしれない研究室へと向かった。
「ん?どうした、マスター?まさかそいつが落とし物とは言うまいな?」
「ええ、お父さんが探していたのは娘である私のことですよ」
ゆらゆら、ゆらゆら。
嬉しそうに緩く尻尾を振り始めたラウラの言葉に苛立っているのだろうか。
「なんだ、そんなことか!私たち以外の娘がいたのは別に構わないぞ」
ゼノビアとしてはそこまで気にしていないのかそう言ってきた。ヤンデレだから殺す、みたいなことにはなってないようだ。
「私の娘が一番かわいいからな。ほれ、砂漠にいくから水筒もちゃんと持たないとダメだぞ」
「…話通じてないね。お父さん、大丈夫?」
「いや、問題はないけど…そんなやばい?」
今のところ特に問題のないような気がするから放っておいて大丈夫そうだけど。
「速くしろ。そうでもしないと手が狂ってついお前に当たりそうになる」
「修正するわ、全然ヤバそうだな…」
殺しにかかるわけでもないけど殺したいらしい。何を言っているのか俺にもわからん。
「これも認識阻害の効果だね。私って殺したいくらいムカつく存在にすらかかるのは恐ろしいね…」
「そんなにこれ強いの?」
「他人から干渉を受けたって気づいて自力で破れたお父さんがおかしいの。…ま、お父さんに巻きついてた甲斐があったね」
「巻き付いてたのかよ…別にいいけど…」
今のところどの世界線でも確定しているラウラにはどうも甘くなってしまう気がする。
「ま、このまま放置しててもゼノビアに気づかれるのは時間の問題だし速く逃げようか」
「気づかれる…まさか浮気か?そんなことは許した覚えなどないぞ…?」
「…これだから遠距離持ちは嫌いなんです」
呆れながらもまた弾を放って気絶させたラウラ。正直当たるだけで気絶するようなものを持っているから害悪度はこちらの方が上だろう。
「ラウラが言えることではないと思うけどな…」
「なんか言った?」
まあ、結局は理詰めで解ける謎の一つらしい。
今回自分の部屋であった、と明確に断言できるのは三人から四人。そのうちの半数は部屋から出ている時点で無力化されていたり敵対しないと明言している。
まさかヤンデレが想い人に対して嘘をつくことはあるまいし。
それにプラスして彼女だけが自身の領域に監禁しようとしていた。これがわかっていたから精神干渉だとあたりがついていた。
「…やっぱりお前しかいないよな」
「おや?キミにしては存外たどり着くのが速いじゃないか。一体どうしてそんなに焦る必要があるんだい?」
ゆっくりとこちらに語りかける万能の人であるダヴィンチちゃん。
俺が今来た理由はその傍らにおいてある明らかに怪しい機械。
(認識を阻害する結界って化物過ぎない…?)
「ああ、これはキミだけの為に作った私の作品さ。ここの造形美とか何から何まで綺麗だろう?」
愛おしそうにその機械を撫でる手つきは、まるで我が子を慈しむ親である。
(実際はかなりヤバいんだけどな…!)
「…それで、効能は?」
「おや、先ほど体験しなかったかい?君とその周辺にいた人物の認識阻害だよ。現にラウラちゃんは動いていなかったし、他のサーヴァントとの子供は一人だけだっただろう?」
「…なんか嫌な気配がするんだけど」
ラウラもいつのまにか消えており、握っているものの感覚は完全に娘から太刀のそれへとなっている。
「いいや、とってもステキな気配さ。娘が後ろから出てくるなんて素晴らしいことだろう?」
「それじゃお母さん。作ったごほうび、もらうね?」
後ろから来たのは水着ロリンチが持っていた銃弾。見た目よりも読みにくい曲がり方をしているのをみるに、ほぼ直線的に避けるのは絶望的だ。
「ちぇ、外しちゃったか。次はもう少し魔力を減らしたほうがいいかな?」
「減らすよりも少し推進力に変えるのはどうだい?そうすれば防御させにくいよ」
大学教授と学生の軽い会話にも聞こえるけど、間に行われているのは俺に対する無力化である。
「弾幕ごっこは苦手なんだけど?」
「おや?」
そんなことは微塵も思っていないよ?
言外にそう確信させる笑みでこちらへと向かってくる魔術。色とりどりなのは弾幕ごっこと言われたのを気にしてなのかもしれない。
「何でもできる私からどうして逃げようとするんだい?たった一つの家庭未来図じゃないか!」
「なんで未来を決められなきゃいけないんですかねえ!?」
ちかちかと目の前がフラッシュバックしつつ、それでも機械を壊しに行く。
(あれを壊すこと以外考えるな…!)
「もう一個作ってもいいんだけどね…ラウラがいないと作れないんだ」
「共鳴器官なんて見たこともないもんね。ラウラちゃんに今度見させてもらえないかなぁ」
篭手で半端な魔術を弾き、手でいつのまにか持っていた斧を叩きつける。当然のように娘には当たらないはずの軌道だが、にぶい音がして当たったのを理解する。
「へぇ…よかった、幻覚作用も効いてるみたいで。これなら壊される時間も引き延ばせるのかな?」
「それなら纏めて吹き飛ばされたらおしまいなんだよね…お父さん、痛いよ…」
眉を潜めた娘の通り、似たようなものが大量にある。かたっぱしから壊していかないとダメだろう。
(だけど英霊の娘だからとしても攻撃を受け止めるのはおかしくないか?)
違和感を覚えさせない機械を量産したのかどうかは知らないけど、相手の意図が透けた。
「…そういうことかよ…俺の娘じゃないのに呼ぶんじゃねえ!」
恐らくタネとしてはダヴィンチちゃんの娘の見た目そっくりな水着ロリンチをおくことで家庭未来を誤認させようとしたのだろう。
「あれ、バレちゃった?結構自信はあったんだけどな… ま、別にお父さんって甘えてもいいでしょ?」
「ロリだから甘えていいってことじゃねえ…!」
少し吹っ切れたからか、力のままに振るって周囲ごと壊す。
「俺は少なくともここを全部壊せばいいからな!」
「やっぱりバレたか。それならプランBに移行しよう」
「うん、任せて!」
連携をとってこちらに接近してくるけど、そんなものは無視して周囲を壊す。仮に危険なものは破壊不可にしているはずだ。
「これでも結構上手じゃないかな?なんせ1からやっているんだからね」
「万能の天才の言葉なんざ微塵もわかりゃしないんでね」
相手の持っている武器は遠距離に特化している今なら取れる戦法。
(近接特化で先に殺す…!)
機動力の高いものならなんとかダヴィンチちゃんを仕留められるはず。
問題は罠である可能性だけど…幻覚ならそれはそれで対処法がある。そう考えた俺は一直線に端へと突撃する。
「幻惑なのかどうかもわからないのにつっこむのかい?その癖は直した方がいいんじゃないかな」
当然のように空振るが、そのまま後ろへと倒して横をなぎ払う。当たらなくても振り回すのが目的である。
「じゃあ俺に近接しないのも直した方がいいんじゃあねえのか…!」
そのまま手に持っていた笛を吹き始める。
「え」
驚いているがそんなものを無視して大音量を鳴らす。明らかな爆音が出るが、大切なのは反響しなかったポイント。隠蔽の魔術を発動しているからなのかそこだけは聞き取れない。
(となれば天井の隅を壊さないと…!)
「アハハハハ…そんな方法で見つけられるとは思ってもいなかったよ!でも君がそれを壊せるのかい?」
「お父さんには届かない位置においたよ。不可能でしょ」
「否定されてもなぁ…なんで笛なのか考えれば?」
今度は垂直に壁を駆け上がる。普通なら頭に血が登るなりして動けなくなるのだが、そこはモンハン世界の武器の自己強化。難点といえば二人から狙い撃ちしやすくなったくらいか。
「ならば自己強化しても勝てない差があると教えてあげよう!夫婦関係はもう少し改善しないといけないからね!」
「っ!?」
被弾するのもおかまいなしに隅を回ってぶっ壊す。麻痺にしても毒にしてもそこまで速く回るまい。
それに対して相手が取ってくる手段は?
簡単、避けられも耐えられもしない宝具の展開だ。機械なんてこの状況になってしまえば守る必要などない。それよりも優先するべきは俺の確保。
(というか英霊のとんでも技術なら死んでも問題なさそうだろうからな…)
瞬間、ご丁寧に背中をぴったりと狙われた弾丸が光を纏って飛んでくる。…避けるのは無理だな。
「ありゃりゃ、これは失敗しちゃったかな?まあそれなら君の魂を切り取ってホムンクルスに移し替えようか」
光で吹き飛んだ天井からの瓦礫を壊しつつ、ダヴィンチはそう喋る。両方ともに無事で突破したのか。
「もう、全く乱暴なんだから。そうするよりは精液とって人工授精させたほうが速いんじゃないの?」
「…ま、考える必要はねぇよ」
武器そのものは壊れたが、最後に吹いた風圧無効と咄嗟に切り替えた拳でなんとかなった。
やはり拳、拳は全てを解決する。
とはいえ、ここまで暴れたなら他のサーヴァントも黙ってはいないだろうし…トンズラが一番かな。
「あーもう…お父さん、速くあの人たちのところに行くよ」
呆れ声を聞きつつ、後ろから首筋をかぷっと噛まれる。
「…なんでやねん」
「麻痺入れたかったんだけど…ま、お父さんが夢から覚める前の少しだしこれくらい許してね?」
ちらりと後ろを見ると、ぴくぴくと痙攣しているダヴィンチちゃん達。
「…とはいえ、奇妙ってほどじゃないしいいか」
どうせ夢の中なんだから平和なだけましだ。娘が帰り道を知っているならついて行ったほうがいいだろう。
「無事に帰ってきて母は嬉しいです!うぅ、怪我もしていましたし死んじゃったし…!」
むぎゅっと抱きしめてくるのはティアマトである。…確かにお母さんどうこうならまっさきに出てくるけど…
「ええ、ええ!拙僧、思わず手に汗が握ってしまいましたぞ!いやはやこういう趣向も中々に愉悦にて!」
「ふふ…愉悦の仕方がなってない。そもそもあの神を侮辱した天使も使うのは気が引けたが…結果として生き返ったしよかったとするか」
後ろから特徴的な声がしたと思えばリンボである。なんでいるんだ…?
当然ながらこれで終わるはずもなく、他のアルターエゴも話しかけてくる。
「今度は私たちも参加できるといいですねぇ…」
「ふん、私たちもそうなったら誰も緊急事態に対応できなくなるじゃない」
「そうなったとしても個性丸かぶりですからねー。ちゃんとお兄さんとお姉さんって呼ばせませんと」
「カウンターが入るのならそれでも構わないんだがな」
ガヤガヤと話しているのはアルターエゴ。前回はアヴェンジャーなのに…せめてムンキャからやらないとダメだろ。
(まあ、ズレた考えだってわかるけどな…)
「ま、これくらいなら大丈夫だったみたいだし…次からは母も入りたいです!」
「わいわいしなくていいから帰らせてくれよ…」
「ん、まってうどん作って食べてからでも…」
バニヤンがうどんを作っていると形容しがたいナニカができている。やめろ、食材を無駄にするんじゃない。
「えーっと、こうなったら粉で滅ぼして…」
「それなんなの?」
「たまたまメアリーから貰っていた灰になる違法な粉を持っていたからセーフだった…ふぅ、危なかったよ氷室さん」
「ヒムロではなくバゼットだ」
「なんで唐突に氷室さんなんだよ…?」
わけのわからないことを言ってるけど運営ってこんな感じだから…文化祭の運営もこんな感じだよな。
「あ、そろそろ時間じゃないですか?」
「そうですね。今度もし時間があったらそっちに行きたいです!」
「ティアマト母さんは来ないでくれ…」
呆れつつ光に包まれて消えていく。
「また会おうね、お父さん」
娘からのキスは避けられなかったが、これもこれでまた悪夢のせいということにしておこう。
…娘、めっちゃ可愛かったな。
どうでもいい事ですけれどきょう楽卓のなめこさんのところに入らせていただきました。
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