【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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周年記念の作品はこれですね、しばらくは作品を並行して作るので結構辛そうです。


正妻戦争を生き残れ 一日目

『正妻戦争─まさか聖杯を使ってまでやろうとするアホがいるとはな』

 

「いきなりどうした?碌でもなさそうなことだけはわかるが…」

 

いきなりオベロンである。なんでいるのかはわかんないけどイライラしている声から焦っているのが伝わってくる。オベロンが自分を隠していないしな。

 

『各クラス一騎ずつでお前の正妻になるのが誰かどうかを争うんだとよ。しかもお前のところにいる女性サーヴァント全員が、だ!』

 

…聖杯戦争で全クラスと戦争して生き残れ、と。そして全員でやるからほぼ修羅場になり続けることが確定している。

 

『とりあえず俺をルーラーの座にねじ込めたから7日間長引かせろ。終わらせるな。いいな!?』

 

長引かせる─つまり決めてはならないということ。たとえどんな誘惑があろうとも正妻になるサーヴァントを決めてはならないということか。

 

「任せとけ。長引かせろってことは生きる必要はないんだよな?」

 

『死にはしないけどダメージを負うたびに負わせた奴のことが好きになる。スリップダメージも同じようなもんだから注意しろ』

 

「嫌すぎる…使えるもんはなんだって使うからな?ブレイヴと狩技は全部使えるよな?」

 

『ああ』

 

これは相当やばい夜だな。手元にあるスキルを全部使えるようにしてあるくらいにはえげつなさそうだ。

 

(つーか今回だけブレイヴ状態も狩技も無制限ってなんだよ。これで生き残れないだろうって判定が恐ろしいんだが?)

 

『ぜんぜん構わない。アンリマユを引き当ててるなら楽なのに…とにかく、絶対に生き残れよ?』

 

グランドのときのような、明日になれば解放される夜ではない。

地獄のような正妻戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

最初のリスポーン地点はフランスの森だった。なるほど、つまり戦争の舞台は各特異点ってことか…?

 

「ともあれ、誰とも会わないように移動しないと…」

 

幸いにしてこの世界はリアルのフランスと変わらないくらい広いようで、戦闘するにしても逃走するにしても一手が取りやすい。他と比べてまだましだろうか。

 

(とりあえず重ね着で変装しておくか…?いや、それよりはどこかの場所に陣地を敷いたほうがいいのか…?)

 

恐らく接触されてしまうことは確定なので回避や迎撃をするための構えをしてから待つとしよう。

そんな理由で構えていたので地面からの攻撃にもギリギリ対応ができた。正確に言えば焦土作戦から、だろう。

 

「見つからないから燃やす、か…!これで見つけられるようなやつは少ないんじゃ…?」

 

火で見つけにくくなるはずだからこの作戦は成り立ちにくいはず。必ず解決する手段を持って挑んでいるはずだ。

…そう考えれば明らかに光っている鳥に気づいた。よく見たこともあるその鳥は上空で旋回するとこちらへと向かい始めた。

 

「落としてやるよ…!!」

 

ガンランスで空を飛び、先端で片翼をはたき落とす。本音を言えば発信機ごと壊したかったが贅沢を言えるほど慣れてない。

 

着地はガンランスを突き刺して地面に衝撃を逃がしてなんとかする。確認した感じは間違いなくダ・ヴィンチちゃんの鳥だ。これでキャスターは確定。

 

「おやおや、もうバレてしまったか。マスターのことだ、森から逃げないで火を払う可能性があると考えていたけれど…その心配は不要だったね」

 

「燃やした上で索敵手段を考えない英霊はバーサーカーだけ。それ以外ならキャスターぐらいだってところまでは初歩的な推理だろ?」

 

「ふぅん…ホームズらしい推理も出来るようになったみたいで私は鼻が高いよ。別れてから少しは成長しているね」

 

…こんな会話をしているけれど、彼女はジリジリと距離を詰めてくる。逃げる場所は火で埋め尽くされている。

正面突破をするならダ・ヴィンチちゃんを殺さないといけないだろう。

 

「じゃあ私の家に行こうじゃないか。なぁに、少し遠いけどキャメロットのときに作った車があるから簡単に辿り着くさ!」

 

「あいにくアヴァロンには自分の足で行きたいんでね!」

 

言葉を皮切りに太刀を構えて全力で振り抜く。避けられて後ろを取られても構わないから全力で駆け抜ける。

 

「なるほど、今のマスターは英霊と変わらない速さになっているのか。なら、私はその自信を潰してあげよう!絶対的に君は私に敵わないのさ!」

 

さっき横に見えた車に乗ってこちらへと向かってくるがそれなら太刀でカウンターできる。ダ・ヴィンチちゃんとの戦闘で一番辛いのは火炎放射とかいうイナシ以外に対処法がない技だ。

 

(よし、ギリギリまで引き付けて…!)

 

瞬間、本能に従ってイナシをする。車に対してではなく横からの放水に、だ。蛇口を一気に捻ったような水の流れを避けることはせず流れに少し身を任せて移動する。

横から文字通り水を刺されたものの、そこまでのダメージではなさそうだ。

 

(う〜ん…ま、大量の水を使えるやつは少ないしバーゲストだろうな)

 

それに今ので森の火もいくらか鎮火されているし、逃げる手も使えるようになった。状況はよくなったのかもしれない。先に目の前の脅威を排除することが大切だが。

 

「死んどけ、ダ・ヴィンチちゃん!」

 

倒れている彼女の首に確実に刃を叩き込んだ俺はそのまま燃えていた森の方へと駆け出した。バーゲストが嗅覚を効かせて探してくるかもしれないが、水を被ったり火の近くにいたからまだ追いにくいはずだ。

 

…と、思っていたのだが。

 

 

「流石ですね、マスター。咄嗟の判断力も含めて尊敬に値します」

 

「燃えた森から逃げるのは辛いんだからな?ましてや獣なら尚更だ」

 

追ってきている時点で戦闘は避けられないのが確定している。しかも最悪なのは森林という得意なフィールドでの戦闘であるということだ。

 

(これじゃあ逃げたくとも逃げられないし…空を飛んだら多分銃口を濡らされて死ぬ…交渉の余地は少しだけありそうかな?)

 

「勘違いしないでください、マスター。私はあくまで森林保護の一環で迷子を保護しようとしているだけなのてす」

 

「…本音は?」

 

「ものすごく奉仕したいので…いや、食べさせてもらってもいいですか?」

 

本能を隠してくれよ。別に隠しておかなきゃダメって訳ではないけどさ。

 

くだらないことを考えつつ追尾してくる水とバーゲスト自身の追撃を避ける。一番は車を潰してからの逃走だけれども、このままじゃ難しそうだな。

 

(何歩分離れたら動くとかを確認してトラップを仕掛けるとか…いや、無理だな。そんなのは絶対にバーゲストに気づかれる。自動操縦じゃなくて他のサーヴァントが隠れている可能性だってあるわけだし。となると安全に逃げるためにアレを探すか…)

 

他のサーヴァントと組んで果たして共存できるかどうかは別だが、ともかく。

 

手持ちのポーチを漁りながらひたすらに距離を取る。幸いにして目の前の火はバーゲストの攻撃の余波でなくなっていることだ。

 

「!…喰らえ!」

 

探していたのはシビレ罠。既に水で濡れているこの周辺では紛れもなく強い手である。

 

(問題は自分も巻き込まれそうってところなんだけどな!)

 

ついでに見つけたマタタビ爆弾を踏みつけて跳躍する。そのまま火の中を潜って焼け野原となった森だったところへ着地する。

 

これなら別の場所に逃げられそうだ。とりあえず…都市の方に逃げよう。草原で出会ったら最後、まくことができない鬼ごっこの始まりだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

近くにある町へと逃げ込もうとしたが、先にこちらへと牽制の剣が飛んでくる。

 

「あ、マスターじゃん。もしかして私んとこ来たかったの?」

 

「今度はエセJKですか…」

 

上から落ちてくる剣を避けたら鈴鹿御前がいた。毎回のごとく難易度高そうでもう泣きそうである。幸いにして雨のようにランダムだったので壊せたが次はどうしようもなさそう。

 

「ってか魅了持ちが来る時点でろくでもないことは確定してんな…」

 

「まあ私くらいだと目を見ないようにしたら問題ないからね。やっぱ『いと屋の娘』*1じゃなくても目で殺せないとね〜」

 

「古典のネタをそのまんま使ってくんな!わかんねぇんだよ!?」

 

鈴鹿御前と目を合わせてはいけない関係上、相手を視界に入れてはいけない制約と変わらないで降り続ける刀の雨を捌くのは辛い。

 

「…ありゃま、こんな避けれるとか聴いてないんですケド?」

 

「俺は抵抗するからな、拳で」

 

使っているのはブシドー双剣…というか拳だ。武器を捨てたときに頼れるのは拳、逃げるときに必要なのは拳だ。

 

ともあれ町の中へと逃げ込んで撒いたほうがいいのは確実なので扉を拳でぶっ壊す。中に仮に他のサーヴァントがいたとしても可能な限り地形を利用して逃げやすいはずだ。

 

「おっ、マスターを逃がすと思う?出番だよ、タマモっち!」

 

「バーサーカーの正妻キャットにお任せあれ!これがエクストラの逆襲なのだよ!」

 

出待ちのサーヴァントはある程度いることは想定していたのでそのまま狩技を発動させる。タマモキャットのオムライスのケチャップも掠らない勢いで走り抜ける。

 

「馬鹿め、それは残像だ…!」

 

ラセンザンで壁の方へとめり込みにいく。血風独楽でもよかったが刀を避けるのが難しいからな。

 

「なぬっ!?まさかこのタマモの目すらも欺くとは…しかしそうなってもいいように我々は結託しているのだ!」

 

嫌な予感がしたと同時にラセンザンが不自然に曲がる。ターゲット集中の効果を喰らったらしい。

 

(嘘だろ…?でもターゲット集中を持っている女性サーヴァントはいなかったはずじゃ…!?)

 

聖杯戦争をモチーフにしているからと油断してはいけなかった。あくまで異質な戦争なんだから忘れてはならないクラスを失念していた。

 

「任せて!マスターは私の胸に収納されてください!」

 

凶悪な胸がこちらの目線を固定させる。セクハラとかしたいわけじゃなくて単にスキルの効果でここに固定されている。

 

「エクストラクラスは出ないんじゃねぇのかよ…!」

 

問題はターゲット集中よりラセンザンでリップを攻撃することじゃない。どっちかというとリップに抱きしめられることだ。

 

(クラッシュとかこのルールで喰らいたくない技筆頭なんだよ…?てかタマモ以外はことごとく遠距離で攻撃してくるな…)

 

とはいえネロがいないからセイバーの枠が鈴鹿御前なのか。他になんのクラスがいたっけな…?

 

後隙を絶対回避で消してけむり玉で視界を隠す。これなら少しくらいは時間を稼げるはず─

 

「あーもう面倒なことばっかりしてくるわね!まとめて私の歌で吹き飛ばすわよ!」

 

 

─と、思ったが予定変更。音爆弾で自分の鼓膜を破り、ガンランスの砲撃で周囲の建物を爆破する。火が揺らぐのに合わせて小タル自爆しかねえ。

 

(こんだけやっても宝具の威力は軽減できないからなぁ…それはもう小タル自爆しかないか…) 

 

問題は歌がどれくらい持続するかである。そこはもう諦めるしかないのですぐに終わることを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、コイヌじゃない。私のものになる前に小細工をしていたからこんなにボロボロになって…」

 

 

「─【不死鳥の息吹】」

 

ある程度は和らいだ気もするけど、少しだけエリちゃんに対して好きになったくらいで済んだ。恐らく音が消えたくらいのソニックブームだから少なくて済んだんだろうな。

 

「アイドルのプロデューサーなんてお断りだよ」

 

そのまま恐ろしく速い手刀で回避すら許さずに首を飛ばした。どうせこのあと蘇るからいいだろう、たぶん。

 

(とはいえこれで他のサーヴァントも巻き添えで死んだし…)

 

鼓膜も戻ったし、あとはライダーとアサシンから逃げるだけ。それなら余裕だと思う

 

「いや、わかんないよ?ボクは君と一緒だったから問題ないけど紙耐久のアサシンだったら死んでるんじゃないかな?」

 

「ハベにゃんか…」

 

既に一日目からヘビーな内容である。サーヴァントの貯蔵は充分か?

 

「ふふっ、とりあえず拘束しちゃおう。いい服を作るのならまずは君のことをよく知らないといけないだろ?」

 

「ハベにゃん、先に花嫁を決めろよ…どうしたんだその顔。まるで自分に都合の悪すぎる悪夢を見たあとの顔みたいになってるぞ?」

 

まだ話が通じそうで助かるが、どうも少し話が噛み合っていないような気がする。

 

「え、マジで言ってる?やっぱりマスターのギャグセンスは悪いよね。ほら、ボクと結婚して守ってくれるって言ってくれたじゃん!」

 

なんだ、ただのヤンデレか。しかしいかんせん油断ができないままの状況であることは変わらない。

 

(今回のヤンデレ・シャトーは『正妻を決めないこと』が条件だよな…ハベにゃんはお嫁さんをサポートする能力が豊富だから一応こうやって結婚式とかの具体的なプランを建てられると困るんだよな…)

 

もし本当に俺が正妻だと認識してしまえばそれでこの戦争は終わってしまうのだから末恐ろしいものだ。

 

「…でね!ちょっと聞いてるかいマスター?」

 

「ああ。とりあえず子供とハベにゃんと一緒に過ごすマイホームを建てるってところまでは聞いてた」

 

「そんなことボク全然言ってないよ。でもそういう家庭もいいよねぇ…」

 

そんな風にトリップをしているハベにゃんを流していると時間になったようで、体が少しだけ透けてくる。

 

「あー、もう終わりかぁ。でもマスターもこの後大変でしょ?」

 

「…どういうこと?」

 

恐らく今回はオベロンからの手助けの上限はないはずなのでハベにゃんからの言葉が気になる。消えるのに少しくらいは時間があるし聞いておこうか。

 

「あのさ、今回はボク以外のサーヴァントが全滅だろう?だからライダー以外のクラスはマスターへの想いが『死ぬような痛みの強さを打ち消す』ものが追加されるんだよ!」

 

…わあ。最後の言葉から地獄度が増したなぁ…

 

 

やけに蒸し暑い夏の中。

 

悪夢はまだ、これからだ。

 

 

*1
起承転結を覚えるためによく使われる作品。目で魅了する姉妹の話




今回の選出理由を下に書きました。長いんで飛ばしてもらって構いません。

セイバー→鈴鹿御前
なんとなくで出した。正直スタレのエミヤみたいなことを小説に使いたかった。あとは魅了も込みで暴れまわって欲しかったけどJKの言葉が難しくて断念。
実はグランドセイバーのときに星4以上のガチャキャラで唯一グランド用の宝具を作れてない可哀想なキャラ。
ま、これくらいなら許してくれるっしょ。

アーチャー→UDK-バーゲスト
アーチャーだけ水着が二人いたからね、もう一人と比べると森があるから登場させやすいからここで出した。ぶっちゃけ軽装すぎて戦闘に向いてないってずっと思ってる。

ランサー→エリザベート・パートリー
どうせこの後エリちゃんだけで飽和する可能性があったので先に消化しておきたかった。ちなみにほぼガチャサーヴァントが槍にいないので結構やばそう。
何度も出てくるなんて恥ずかしくないんですか?

アサシン→シャルロット・コルデー
でたらめプランニングが裏目に出たため出番なし。本来なら異世界テンプレよろしく道端に倒れてもらおうと思ってたけど鈴鹿御前のとこで主人公が門を壊せなくなったので没。

キャスター→レオナルド・ダ・ウィンチ
森を燃やしたかった。それだけで火炎放射を持っているダ・ヴィンチちゃんを選びました。正直キャスターがバーサーカーと変わらないやばさだから何ともいえない。万能の天才だからもう少し活躍させてもよかったかな。

ライダー→ハベトロット
ハベにゃんって強いよねってノリで入れた。実は正妻戦争的には殺されて後続に繋げたほうがよかったけどマスターとのおしゃべりで時間を潰してしまった。
ちょっとした戦犯兼勝者。

バーサーカー→タマモキャット
基本はノリと勢いで使える汎用バーサーカー。なんか他のサーヴァントと組み合わせられないか考えてたらちょうどいい場所にいたので採用。バーサーカーとしてはえっちゃんと同じくらい使ってる。

エクストラクラス→パッションリップ
今回はエクストラからエクストラクラスのアルターエゴを参戦させに来た。横文字ばっかで見にくい。
選出したのはターゲット集中と体が柔らかそうなキャラで上のサーヴァントと絡みができそうなキャラ。リップ以外いないじゃん。

被害者→オベロン
(まだ引けて)ないです。

次回→ローマ
恐らくは九人中六人が姉妹であり、その内四人が同じ。つまりローマである(?)
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