夏だからってゲームのしすぎには気をつけなきゃならない。
そんな理由は関係なく俺はオケアノスに遊びに来た。理由は正妻戦争とかいうふざけた企画のせいである。
(昨日の今日でこんな変なことある?電子世界のBB…は、流石に難しいよな)
海は海でも電子の海。CCCコラボのときのような若干藍色が濃い海の中で戦争するのは嫌すぎるんだよな…明らかにサーヴァントが絞れてるのはよいことなんだが。
「ますたぁ?一緒にばぁちゃるで遊びましょう?」
「巴御前か…ん、いいよ」
剣で戦闘する程度のFPSならモンハンの力でゴリ押すくらいは可能だろう。なんせ一昨日は勝てたのだからいけるはずだ。
(剣士とどこまで戦えるかはわからないけどな…!)
「気楽に楽しみましょう!全部げぇむの世界ですから!」
「そんなことを言われたところで油断ができないんですよねぇ!?」
ちなみに今回担いでいる武器は笛。一人で戦うときに担ぐものじゃないしモーション大きすぎて当たらないやんけ。
できるだけ近くに寄せてから笛で剣を受けさせられる。振り辛い場所をわかっていやがる…つーか鬼畜すぎない?
「ならばいっそ思いっきり倒されてください!最近の無双げぇむよりこうやって対戦で圧勝するのも楽しいですから!」
レーザービームさながらの剣をバレルロールで避け、前へと叩きつける。大振りすぎて当たらない気もするが、ここからは俺のターンだ。
「なっ…!?ここまで早くなるとは、凄いで、すね、ますたぁ!」
「なんで受けながら喋れるんだよそもそも…!畜生こんなことならサンブレイクもっとやり込んどきゃよかった!」
疾替えとか合気とか上手く使えれば強そうな要素もあるのに使えないのは歯がゆい。
諦めてガッツリ上から殴るしかない。楽しいけれどこちとらノーダメ縛りになるからカウンターとか絶対に無理なんだよ。
巴御前の二刀流は普通に強いけどな。
「死に晒せぇい!」
「…参りました。まさかここまで強いとは…」
モンハンのときに手の内を見せていたからか、あっさりと巴御前は倒せた。ここから水着英霊七番勝負なんてふざけたことがないから一安心である。
(水着武蔵ちゃんから逃げられるかどうかもまた別の話かな…あっ、誰か来た)
こちら側に走ってくるが腰に浮き輪をつけていることを見るに泳げないのだろう。
「マスター!よかったら海の家がこっちにあるから来てくれないかしら?」
「うぅん…ま、いいよ」
現れたのはアナスタシアである。アーチャーの水着鯖はこいつとバーゲストしかいないし、そりゃそうか。にしてもなんで海の家がこんなところにあるんだろうか。
オケアノスにそんな風情のなさそうなものを置かないで欲しかったのが本音であるけど、そこはぐっと飲み込んで我慢しておく。
ともあれ、正妻戦争中において一番怖いのは死角からの不意打ちと遠距離からの行動。ソロにおいてという点を踏まえると状態異常も危険だが、そんな他のサーヴァントにも利があるような行いをするのはよほどのことがないとしないだろう。
(前回みたいに姉妹でもなきゃあり得んだろ…ヴィイも近くにいるし今のところは安心してついていっても大丈夫か)
電子の海であるから匂いはわからないし、感触も一歩ごとに砂の沈む感覚まで再現されていていやになる。
…頼むからオケアノスにもうちょっと現実味があってほしい。
「ついたわ、マスター!」
アナスタシアは完全に夏を楽しんでいるだけのようだ。他に企んでいるとかそういう訳でもなさそうだし…いや、海の家に入ることそのものがちょっと怖いな。
「悪い、そもそも俺が食べれるやつはあるのか?焼きそばとかはなくとも、こう…かき氷とか」
「勿論あるわよ。店員さん、かき氷を二つお願い」
注文を聞いた瞬間、どこかで見たことのある気がする愉悦の神父がドンッとテーブルに置く。こいつ麻婆豆腐以外も作れたのか。
そんな意外性に驚いていると、アナスタシアはテラス席に座ってこちらを手招いている。逃げる手段はなさそうだ。
(なんか今回水着なのにはっちゃけているサーヴァントが少ないな…二人だけしか会ってないから何とも言えんけど)
「ええ、速く食べてしまいましょう?夏だから食べないと溶けてしまうわ」
「まあそうだな…あ」
俺はテラス席でかき氷を食べようとしているアナスタシアの手に釘付けになった。そういうことか、それなら確かに危険なこともないな。
「ええ、やっぱりアナタは彼のことを知っているのね」
「少なくともカドックに対して思うところがないやつはいないだろ。少なくともストーリーをクリアした奴はな」
特に今回のイベントで見つけていたから何かしようとしていたのかと思ったけど、こういうことだったのか。アナスタシアとしてはそりゃそっち系になるのか。
「なんの因果かは知らないけど…今回の悪夢は比較的マスターにとっては安全なんじゃないかしら。今話している感じでもそうだけど、あなたに対しての執着は持つ人が少ないもの」
「巴御前も言われてみりゃそうだな。元の旦那とかカップリングができている人に対しては詳しく関与しない─ってな感じか。トップクラスで自制のきくサーヴァントだけなのはありがたいな」
「そうです。まあ、マスターのことを同好の士だと思っている節があるからこうやって会話をしているのだけれど」
「じゃあとりあえずカドックについて話してほしいな。多分聞いてる感じだと異聞帯のと混ざっているんだろ?」
「そうですね。じゃあ、まずは彼の性格から…」
かき氷をつつきつつ彼女のカドックトークを聞く。オタクとして誰かと話すのは始めてだが存外楽しめそうだ。
「…で、そのときのカドックったらこんな表情で私のことを見つめてきてね…」
「長い長い長い長い。絶対多すぎて寝てたもん今」
そんな理由でアナスタシアが話し始めて3時間。すっかり寝落ちするぐらいには長すぎる話である。
(というかカドックに対してヤンデレてる感じだから安全なんだよなあ…)
もしカドックからの行動を否定したら殺されそうだが、今のところそんなに刺激しなきゃ問題はないだろう。
「じゃあ、ちょっと誰かから狙われてる気がするから場所移動するわ」
「あら、そう?また会えたらカドックのことを話させてちょうだいな」
「かき氷もつけてくれよ」
無事になんか帰れそうな雰囲気で安心した。後ろから氷漬けにされないように警戒しつつ、暑い夏の砂浜を走り抜けた。
「…あ、待ってください」
で、外に出て砂浜で後ろから話しかけられる。…ふむ、つまりはつけられているってのもあながち間違いじゃなかったか。
(絶対あの人だったら最悪なんよ…)
「おっ、マスターじゃんどしたん?」
「お久しぶりです、マスター!私は最近出番がありませんでしたし、折角なのでカフェでカレーでも食べませんか?」
「…前言撤回しないとな、なんでお前ら二人が組んでるんだ」
確かに水着サーヴァントだけどさ、ここで二人同時にでてくるのは違うじゃん。シエルと徐福ちゃんは混ぜても別にいいけど俺が死ぬやつやん。
「話聞こうか?今なら私のおウチ空いてるよ?」
「えっと…確かイイコトさせてあけるからついてきて、と言えばいいんですよね!」
「…頼むからせめてナンパの仕方くらいは学んでから来てちょうだいよ」
二人ともそれぞれバラバラで喋られるし凄い腕に抱きついてくるので最高ですありがとうごさいます!
…さて、そんなバカな方向に頭を回転させていないで真面目に現実を直視しよう。
(まさかの一番強いだろう二人かぁ…)
「それは100マスターさんのお相手が悪いね。ほら、こういうときって誰かによりかかっていいんだよ?」
「あ、そうですよマスター!こういうときはカレーと言う便利な道具があるのですからこちらに来てください!」
「待って両方とも結託してないの?」
「ええ。だって私はあまりマスターとイチャラブしたいという欲望を隠せていますけど、そっちは煩悩の塊じゃないですか」
「そんな酷いことを言わないでよーシエルさんみたいに使われる機会が多くなかった私が他での優位性をよこせって言うのはそんなおかしいのかよーそう思うよねマスターさん?ってか思えよ」
「さらっと凶器を取り出さないでもろて」
ノーモーションで戦闘が始まるのは正直辛い。一応最初の行動は勝てたので何ともいえないけど…普通に戦えば俺が不利なんだよね。どうしたもんかな。
「いやー…やっぱりアルターエゴのほうがよかったかな…ちょっとマスターさんそんなに避けようとしないでよ、動くと当たらないじゃんか」
「そうですよ!大人しく私達のものになりなさい!」
「明らかに夏で解放されるのは闘争心以外なんじゃない!?今回はクソデカ感情向けてくるのこっち以外じゃないのかよ!?」
「ほら、ナントカは嘘つきってよく言うでしょう?オベロンさんの奴と似たような作品で」
夏の夜の夢…うん、何のことを言ってるかわからん。というかもしこれの影響がシエルと徐福ちゃんにいってるのは嫌すぎる。
ヤンデレとかそうじゃなくても絶対にダメなヤツじゃん。
「ほら、抵抗は諦めるんだマスターさん。諦めたらきっととんでもなく楽になれるよ」
「そうですよ。ずっと夏の想い出に浸りましょう?」
「そんなことしてたら失うから嫌だね…!」
笛を弓の矢として打ち出す。エミヤがやっていたことの真似事だが今回は回るのではなく音で確実に当てに行ってる。
(ずるいとかそれ以前に狙いが定まらねぇんだよ…頼むから悪夢を終わらせられる奴とか速く来てくれ…!)
引いて思うのはやはりめちゃくちゃきついということだ。アーチャーの皆さんを尊敬するけど…この状況じゃそんなことを言い訳にして失敗したら死ぬんたから必死だ。
「つーか逃げ場が少なっ…?」
ふと気づいたけど今いる場所は砂浜だ。海に潜ればいいんじゃないか?
思い立ったが吉日として海に飛び込む。
「あはは〜待て待てマスターさん〜今そっちに道術使ったから無駄だよ〜」
「ウルトラなシエルですくい上げますから安心して水遊びしましょう、マスター!」
「夏だからって好き放題し始めたなこいつら…!」
さて、そうなると増援も逃走もできっこない。諦めて中途半端な剣術で当たらないように丁寧に防御していくしかないだろう。
「くっ…強い…!」
「いやいや、後ろから出てきた扉を避けられるのは凄いよマスターさん。私こんなの作れるけどいざ自分が避けるってなったら無理だもん」
「始祖よりも手強いのは凄いですよ!カレー前の運動ではなく、カレーの食べ放題前の運動ですね!」
「徐福ちゃんはともかくシエルの例えは意味わかんねぇんだよぉ!?」
絶叫しつつ常に移動して避ける。これが世が世なら美少女相撲に挟まる豚なのだろうけど代わりたいならいつでも代わってもらいたい。
(そろそろ酸欠で辛いから強走薬を…いや、どうせ黒鍵でぶっ飛ばされるオチが見えるし地面を壊すか)
しかし砂浜なので地面をどうにかしても一時的な目眩ましにしかならないという悲しい現実である。
それでもやらないよりはマシだと判断して下に沈んで岩の足場を探す。強く踏み込めそうな岩があるのは幸いだが、その前に徐福ちゃんがチェーンソーで、シエルからの黒鍵がいた場所に飛んでくる。
「…あれ、マスターさん生きてるよね?」
「生きてると思いますよ?私に惚れ直してもらえてるでしょうか?」
「はっ、上だよ!」
エリアルの要領で上に飛び、その勢いで術の及ばない範囲の海へと飛び込む。
(あとは野となれ山となれ、だ…!)
「ぷはっ!」
海の中で息ができることともう一つ違和感。目の前にある海底の豪華な城。
「…長旅お疲れさまですますたぁ。とりあえず挨拶もできなかった私で申し訳ありません」
「…なんだ、清姫か…いや、よくないか」
なんでまた海底とかいう浦島太郎らしいところでいるハメになるんだろうか。
いや、別にそんな違和感はないんだけどさ。…それでもやっぱり前回にはいなかったのかな…
「いえ、ますたぁ殿が思う通り私は昨日にもいました。残念ながらメドゥーサ様に連れられていけませんでしたが、今回はあなたのほうから来ていただきましたし結婚しましょう」
「こうも頭がおかしいことを言うのが普通みたいな風潮やめよ?多分安珍様も悲しんでるよ?」
「今目の前にいるじゃありませんか。どこに悲しむ要素があるのでしょう?」
ダメだ、話が通じない。
とはいえやはりアナスタシアのときに寝ていたりやたらと物騒な美少女相撲に巻き込まれたから悪夢は終わりみたいだ。
「あと三十日後にまた会いましょう?」
「えっ、また来ないでほしいんだけど」
ついノンデリになってしまったのは許してほしい。
既に頭が夏だから弾けちゃいそうなんだ。
選出理由書く余裕が無さすぎるッピ…
セイバー→巴御前
やっぱりあっちの方で掘り下げられているところが多かったのでこちらではゲーム大好きな女の子として書きました。正直できるだけヤンデレにならないように工夫しました。
アーチャー→アナスタシア
かき氷を食べてたりとか夏の紫外線が痛いとか言っていた記憶しかない。という訳でもないけどカドックくんのことを一途に想い続けている重い異聞帯のアナスタシアが降臨しました。夏なのにずっと厚手の手袋をつけているのはなんでだろうね(すっとぽけ)
ランサー及びバーサーカー→清姫
何度もでてくるとは思わなかったんよ。どいうわけで前回ひょっこり書かれていただけの清姫、ちゃんと参戦しました。オチになった理由は龍宮城。ま、他にも相性よさそうな人いたけど今回は水着だからね、バーサーカーでも活躍できてなかったからしょうがないね。
ライダー、キャスター、アサシン→未所持
悪い、水着持ってなかった。アサシンは配布に頼るとスカサハ師匠と六人に追いかけ回されるからやめた。流石にかわいそうだと思う良心は残っていたのです。
エクストラクラス1→徐福
もはや語るまでもないいつもの彼女。今回は夏の仕様ということで頑張って某語録に近いやつを使ってたりします。実は今回の変なオケアノスになったのは徐福ちゃんの結界の弄りミスだったりなんだったり。
エクストラクラス2→シエル
出してなかった、不味いから出さないと。そんな理由で強制的に二人使いました。シエル先輩と徐福ちゃんのかけあいが楽しすぎたので他のキャラが入る余地がなくなったとかそういうわけじゃないので。
夏の夜の夢→被害者
アレのせいで相対的にヤバい認定されたオベロンが出てくるシェイクスピアの戯曲。チョッマッテクダサイ…
次回→作者は大暴走させてもらう。次はロンドン、つまりそういうことだ。