【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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ヤンデレを攻略せよ【4/5】

「私には治療が必要です!」

 

「話がいきなり見えてこないんだけど?」

 

「ええ、治療を終わったあとで話は聞きましょう」

 

まだヤンデレの恐ろしさを味わっていない悪夢も四日目。目を開ける前に押し倒された。

 

治療とか言ったあたり、ナイチンゲールだろうか。

 

「わたしは不治の病に罹患しています。よって治療が必要です」

 

「せめて病の症状を言ってくれよ…」

 

バーサーカーの同類、モルガンとは全くの別類が過ぎて話が通じない。

要点はまとめてから話せよ。

 

 

「マスターを視認してからの動悸、息切れ、心拍数の増加、子宮に対する鈍痛、思考機能の低下…これらはマスターと性交をしていないことによるものだと断じました」

 

「恋しているだけなのではそれ?」

 

しかも患者がナイチンゲール自身か。医者の不養生を患者に押しつけないでください。

 

「恋、いいですね。私に起きている病を以後恋だと仮称します。それではマスター、襲わせていただきます」

 

「止まってくれ?それと1回感染する可能性を考えろ?」

 

それっぽいことを言えば止まってくれるのではないかと期待するが、正直バーサーカーにどれたけ通用するか。

 

「感染についてまで考えているのは素晴らしい。しかしこの病状の一つに特有の生殖機器に対しての鈍痛があることから男性に感染しても発症することは殆どないと考えられます」

 

「なんでそれだけわかっているなら俺に詰め寄るんだよ!?」

 

「安心してください、コンドームを着用すれば性病に罹患するリスクは0%です」

 

「説明になってない!?」

 

ベッドの上で押し倒してるあたりマシなのかもしれないけれど、英霊の握力で触られていたら普通に骨が折れる。

 

「安心してください。もし不安なら今から発散させますから」

 

「そんなことされても好きにならないだろ!?そもそも俺以外の奴に頼めばいい話じゃ…!?」

 

喋っているときにいきなり口を塞がれてキスされた。直後、口の中に広がる甘いスッキリした味。

 

「…ぷはっ!あなたには少々思考が凝り固まっています。よって性管理など私に委ねても問題のないようにアルコールを経口摂取で投与しました」

 

「無駄なんだよな…そもそも未成年者に酒を飲ませる時点で正常な判断ができてないのはそっちじゃ?」

 

「いいえ、とても私は正常です」

 

「なんで誤変換したAIみたいになってるんだ…?」

 

しかしここから抜け出すのは不可能であるため、令呪を使う。

 

「ナイチンゲール、今すぐ肉体がマイナス10度になるまで冷蔵庫で体を冷やせ!」

 

どの場所で、とかを指定しないのはナイチンゲールの判断が面倒だからだ。

 

「くっ…殺せ…」

 

「それを言っていいのは女騎士だろ…ナースじゃねぇよ」

 

多様性を認めなきゃだけど、ここだけは譲れない。

 

捨てゼリフを吐き、とっとと自分の部屋から抜け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…疲れた…」

 

 

最初から襲われる危機である。…まあ、あのまま大人の階段を上がったほうがいいのではないかと体は思っていたが。

 

(こんなヤンデレだらけの場所でヤッたら他もどうなるのか想像ができるしな…)

 

現状で危険なのかどうかをわかっていないことを確かめる理由はない。

万が一この悪夢で死にました、ってなれば恐ろしいし。

 

 

「せめて誰かいればなぁ…」

 

「呼びました?」

 

「呼んだけれど…リリィか」

 

カリバーンをぶんぶん振り回しながらやってきたのはアルトリア・リリィ。

ザビーズピックアップでのすり抜けで凸完成しているが、未だに全然育ってない。

 

「酷いですよね、マスター!なんでスキル9で止めてるんですか!」

 

「そもそもまだオルタも育ってないからね…リリィだってそんな使わないし…」

 

ナーサリーがいたら子供として横バフが多くなって使い道が増えるんだけどな…

 

「罰として私のマイルームに来てください!ブリテン流の食事を見せてあげます!」

 

「じゃがいものマッシュ以外の料理ちゃんと覚えた?エミヤとかキッチン組からオッケーってもらったの?」

 

「…とーもーかーく!私の部屋に行きましょう!」

 

ぐいぐいと押してくるリリィ。

…ちゃんと料理できてるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしましょうマスター!何を作ればいいかわかりません!」

 

し っ て た。

 

「おちついて。冷蔵庫の中って何があるの?」

 

「えーっと…あ、じゃがいもとじゃがいもとじゃがいもがあります!カヴェインの言ったとおりですね!」

 

「カヴェイン…なにやってんだあの借金取り…」

 

「じゃがいも以外の野菜の名前を知りませんので!」

 

「本当にじゃがいもしかないのはやばすぎるからね…?もっと料理は勉強しなよ?」

 

とはいえじゃがいもだらけなわけないと信じ、俺も一度冷蔵庫を確認する。

 

「牛乳と玉ねぎ、じゃがいも…見事に野菜だけだな…」

 

肉が一切ない。子どもの成長を見越すにしてもやり過ぎだろ…

 

「チーズがあるだけましだな」

 

好き嫌いとかではない…はず。

肉とか魚が嫌いとか言われたらちょっと悲しい。

 

「お待ちください!今すぐマッシュしてお出しします」

 

カヴェインに毒されてる…

 

「止まれ!やっぱりエミヤの許可もらってないだろ!」

 

「ふふ、マスター。恋する乙女は止まりませんので!」

 

「今回なんか話通じないなぁ!?そういうところ集めただろ運営!」

 

でも包丁ではなくカリバーンでマッシュしようするのはやばい。

マッシュに必要なのはせめて素手だろう。

 

「料理一緒に作ろう?な?」

 

「え、いいんですか?そんな、一緒に作ってくれるなんて…!」

 

「作らないと俺が命の危険を感じるんだよ?王様になれるからって努力するのをやめないで?」

 

逆算してももっといいのがあっただろうに。これだから考えてない魔猪の一族(アルトリア)は…

 

「むっ、どうやら私のことを笑いましたね!」

 

「直感って凄いな…まぁいい。この状況で俺がやらない理由がないだろ」

 

変に異物混入されても困るし、2人で料理したほうがいいだろう。

 

「リリィ、包丁は?」

 

「もちろん用意してます!未熟ですけど…ご指導よろしくお願いします!」

 

「勢いだけで走らなきゃいいんだけどな…ま、シチューとグラタンのどっちかだな」

 

ちょうど最近やったところだ。家庭科の先生、千里眼でも持ってるのか?

 

「シチュー!なんか素朴な響きがいいのでこっちにしましょう!」

 

「まあ、やることはちょっとだけ変わるくらいだし気にしなくていいぞ」

 

シチューの上にチーズ乗せて焼くかどうかぐらいだし。

 

手の消毒をちゃんとさせ、まずは包丁を握らせる。

 

「うん、持ち方は剣と一緒じゃないからな。人さし指をこうやって背に当てて、反対の食材を持つ手は猫の手」

 

「こ、こうですかにゃん?」

 

包丁を持つ手の方まで丸めて持ってなくてよかった。後ろに密着してるから変な動きをされなくていいな。

 

「猫の語尾はつけなくてもいいんだぞ…?いや、手は合ってるからそのままニンジンを切る」

 

「はい、マスター!」

 

「それと包丁を勢いよく振り下ろすなよ?そんなことをサーヴァントの筋力でやったらキッチンごと壊れるから」

 

料理が下手な人って包丁に力を込めすぎているからな。コンパクトにしたほうが厚さや長さが均一になるし、もし怪我をしたとして切り落ちるみたいなことにはならない。

 

「マスターって博識なんですね!」

 

「これぐらいなら学校で教えてくれるからな。日本の教育をおろそかにしないほうがいい理由の一つだ」

 

そんなことを言っても恋人とか作れないんだけど。

まあ、このカルデアの中では言ってはならない禁句の一つだろうし声に出すことはしないだろう。

 

「…マスター?」

 

「すまん、考え事しててな。玉ねぎは危ないから大きめに切って…」

 

「うぅ…涙が…」

 

「本当ならそうならないようにゴーグルとかつけるんだけどな。今はないから我慢してくれ」

 

「マスター、見ていてくださいね…?」

 

「見なくなればだいぶヤバいのはわかるからな。少なくとも今のうちは離すつもりはない」

 

こんな料理初心者のテンプレみたいなのを放っておけば炭を食わされるだろうし。

 

結果的にもちゃんと正解を選んだと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、最後にじゃがいもをやろうか」

 

 

じゃがいもと聞いた瞬間から目がキラキラし始めた。

英才教育ってこういうことか…

 

「マッシュ!マッシュですね!?」

 

「そうだな…この際半分くらいはマッシュしようか」

 

こうもマッシュしたいのならちゃんと叶えた上で料理させてあげよう。

自分のやりたいことで満足できるならそれに越したことはない。

 

「マスター!マッシュするときのコツはなんてすか?」

 

「まずカリバーンをしまえ?そして手にビニール袋をはめろ?」

 

なんでこんなにカリバーンを出したがるのだろうか…子どものお気にのおもちゃを見せびらかしたい欲望と同じ感じなのかね?

 

「んで、マッシュするなら手首を使って体重を載せろ。そうそう、イメージとしては心臓マッサージの手でいい」

 

「なんかこぼれてるんですけど!?本当にこれであってますよね?」

 

「そもそも潰すんだからこうやるのは当然だろ。マッシュするなら茹でたりしたほうがいいんだけどな…」

 

ちなみに危険がないように包丁はもうしまってある。切った食材は全部放置してあるけどまだ大丈夫。

まさかひっくり返すなんてベタなミスをするわけがないだろう。

 

「マスター、どうでしょう?」

 

「うん、ちょっと雑かな」

 

「ひどくないですか!?」

 

そもそも何もやってなかった俺に詰め寄るのが悪い。

じゃがいもは徹底的に潰さなければマッシュとはいえないし。

 

「ま、シチューのとろみをつける分にはこれくらいでいいか…」

 

玉ねぎとニンジンを炒めてある程度火を通す。

 

「まだ他の食材はいれないんですか?」

 

「火入れしとかないと後で面倒になるだろ。…今回はこれくらいで牛乳を入れようか。マッシュも忘れないように」

 

どんどん作成が速くなっているのは謎なんだよな。調理には慣れが必要だけど、いくらなんでも速すぎるのでは?

 

 

「…まあ、詳しいことは考えるだけ無駄か」

 

カレーを一分で作ってそうな光景が目に浮かぶが、そんなことよりシチュー作りだ。

 

「ほら、牛乳が沸騰したらよくかき混ぜろ。とろみがついたのを確認するには…ホットケーキは?」

 

「それはエミヤゼミでやりました!ふつふつって穴が空いてきたらひっくり返せばいいんですよね!」

 

「そ。その状態が2分くらい続いたら火を止めて冷ましな。暖かい内に食べたいのはわかるけど、ヤケドしたりしないように気をつけて」

 

残りはリリィにやらせたほうがいいだろう。

 

「あとはリリィの好みの味付けになったら呼んでね。甘くしたかったら砂糖、しょっぱくしたいなら塩を入れて」

 

「はい!マスターの期待に応えられるよう頑張ります!」

 

「ん、頑張ってね」

 

この様子なら外に出ても問題ないだろう。

一息つくついでに、深呼吸するか。

 

「あれ?マスターのことをメロメロにする予定だったのに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、マスターじゃん。私のことわかるー?」

 

「このそこはかとないウザさは徐福だな」

 

廊下に出てきて数分もしない内に部屋へと引き込まれて目を塞がれた。

言い当てたらぱっと視界が広がる。

 

「えー、つまんないでやんの。というか私昨日出るはずだったんだけど何か知らない?」

 

「知るわけないじゃん。ゴネたらまた出番もらえるんじゃない?」

 

この軽い言い方、間違いなくアルターエゴの方だろう。

 

「そーかなー?そうなのかなー?そーならいいな!」

 

「その三段活用やめてくれ。というかなんでわざわざこのタイミングで出たんだよ?」

 

「えー、そんなつれないこと言わないでくれよ。あんだけORT相手に粘ってやったろ?」

 

「あぁ…」

 

「露骨に嫌そうな顔しないでー!?」

 

めんどくさくて結局聖杯まで捧げてゴリ押したな。

育てる必要なかったんじゃないの、とはずっと思ってたけど。

 

「そんなこと思わないでよー、私だってぐっ様に会えなくてしょんぼりしてるんだぜー?」

 

「スト限を引く余裕はないからな…大人しく待ってろ」

 

「やーだー!マスターさん課金してよー!」

 

「しない!こんなんがある時点で引きたくないに決まってんだろ!?」

 

スト限なんてほぼ女じゃん。

 

「少なくともこの悪夢が一区切りつくまでガチャは引かない」

 

「じゃあ明日!明日終わるように交渉するから!」

 

徐福はなんで運営側にツテがあるんだよ。

 

「交渉する相手知ってるんだ?」

 

「ふふーん、徐福ちゃんの腕にかかれば問題なし!…あれ、繋げなくなってる?昨日いじっちゃったからかな?」

 

「出れなかったのただの自業自得じゃん…」

 

設定をいじるのは絶対許されないやつでしょ。

というか本来4人なのか?

 

「マスターさんの心の疑問に答えとくとねー、わかんない!」

 

「それは答えてないと変わんないだろ!?」

 

「正確に言うとね、その時の運営の人で変わるみたい。3人ぐらいで決めようとしていたらしいけど、昨日みたいにメカクレだけでこじつけたわけじゃないらしいよ?」

 

「ニトクリスが選ばれたのはそういうことかよ…」

 

ともかく、基本は3人しかいないらしい。

疑問が解けてスッキリしていると、体がキラキラ光り始める。

 

「はぁ…ってかもう終わりじゃんマスターさん。明日は起こさないぜ?」

 

「頼むから起きさせてくれ。明後日は大会なんだよ?」

 

「だいじょーぶ、明後日は平和でしょ…たぶんね?」

 

徐福の言葉が全くもってわからない。

 

 

 

 

 

 

「頭がクラクラする…」

 

その日、二日酔いで授業に集中できなかった。

ヤンデレのカルデアって怖いな…

 




違う、そうじゃない(確信)
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