【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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ヤンデレを攻略せよ【5/5】

「今日は徐福ちゃんの一人勝ちだぜいぇーい!ゴネるの最高!」

 

「何度も出てきて恥ずかしくないんですか?」

 

「まだ2回目なのに!?私マスターさんにそんな嫌われてたっけ…?」

 

今は水着徐福と一緒に砂浜にいる。城のときよりはましかな。

 

「ごめん、ちょっとテンションがムカついたから」

 

「そんな理由で理不尽に怒られた徐福ちゃんかわいそー…よよよ…」

 

「…あっほ」

 

「ちょっと待って貶し過ぎじゃない?下手な塩対応より傷つくよ……うぅ」

 

「言い過ぎか、すまんかった」

 

「…ま、マスターさんが謝るならいいかー!ほれほれ手作りのソーダをぐいっといっちゃって!」

 

そっとストローでサイダーを飲んで口直し。爽やかなソーダの味とパチパチと炭酸が弾けるのが心地いい。

 

「どう?徐福ちゃんの最つよ形態の水着は?」

 

「今更言う必要あるのそれ。自分で気に入ってるものを着るのが一番だけどかわいいからオッケーですありがとうございます」

 

「…マスターさんやっぱり女の扱い上手だよねー」

 

 

今は監禁されてるわけでもなく、海の家でのんびり恋人用のソーダを飲んでいる。

…あっさり飲んでるけどまあなんとかなるかな。

 

「なんで海なんだよ…」

 

「だってせっかくの水着なんだぜー?楽しまなきゃ損だよ損!」

 

「今は冬だよ?季節もわきまえられなくて恥ずかしくないの?」

 

「その言い方やっぱり気に入ってない?私のことはお気に入り?」

 

くねくねと胸を思いっきり見せて誘惑してくるけど、俺がいまエロ方面に走ればこれまでの4日間が台無しになる。

 

つまりここでは性能面の話と勘違いすればいいのだ。

 

「本当お世話になりました…」

 

「うんうん、よきにはからえー!始皇帝からテスカトリポカまで私頑張ったしね!」

 

「マジで助かりました…!」

 

正直ストーリー攻略でお世話になった3人の1人である。残りは残りで皆強いから…

 

全員ことごとくクラス相性が合わないけど。

 

「ということなので私と一生過ごせーついでに結婚しろー!」

 

「え?単にぐっ様呼びたいためのハニートラップ?」

 

「さっきから私に対する評価酷いよー徐福ちゃんのチェーンソーのサビにするよー?」

 

さらっと殺しにかかるのはどうかと思うけれどフリだと信じてる。

どっかの殺人鬼よろしくチェーンソー吹かして走り回ったりとかしないはず。

 

「…もう、マスターさんったら薄情だねー」

「そもそも徐福ちゃんって史実では男だったろ」

 

「んーまあー、そういうところも含めてアルターエゴだからねーいいじゃんマスターとぐっ様だけの女ってことでさー!」

 

「それぐっ様抜いたらカンペキだったけど…まぁ徐福ちゃんだしいいのか」

 

「そーなんだ〜。マスターさんは推し活まで許可してくれるなんて心が広いなー夫にしたいなー」

 

悪友としての印象が常に強いサーヴァントであるからか、なんかそこまで女性として意識することはない。

 

「てなわけで取り出したりますはマスターさん人形でーす。こちら、共鳴りと呼ばれる藁人形の呪術を再現したものになってまーす!」

 

「おっと見た目より凶悪だな?」

 

 

バレンタインのお返しでもらったプレゼントよりも精巧に作られた人形はかわいいが、共鳴りとか聞き捨てならないことを言った。

 

「しかし呪いの天才である徐福ちゃんはそんなところでは止まりませーん!なんと痛覚を快感に変わるようにしましたー!」

 

「うわっ、むごっ…」

 

成功してても失敗してても辛いじゃん。拷問に使うのだろそれ。

 

「しょうがないじゃん、急がないと他にぶんどられちゃうんだし!まったく私のマスターさんったら人気者だよねー?」

 

「うん、おもむろに構えたチェーンソーをしまえ?人形の皮ずたずたになっちゃうでしょ?」

 

「気にすんなよぉそんなこと。ちょっと在庫分の心臓なくなるだけだからさ〜」

 

「やめてくれよ…」

 

素材集めが面倒なんだ、これ以上増やすな。

 

「チェーンソーには私が集めた死が集まってるんだ〜当たったらどうなるんだろうね〜楽しみだな〜」

 

「…俺死んだらどうするん?」

 

「そのときは死霊魔術で私の専属にしたげる!これこそ徐福ちゃんの完全勝利プラン!」

 

「だせぇ…というか快感になる機能を死んだらどうするんだ?」

 

チェーンソーの痛みには勝てないでショック死する自信があるぞ

 

「…ま、そうなったら第二プラン!おらおら、チェーンソーで爆走じゃい!」

 

「斬りつけに来てるじゃんそれ!?」

 

というか上に放り投げられてるからもう間に合わない。

 

快感か痛覚か。

 

いずれにせよ、そのあとに来る衝撃に体が強張る。

 

 

 

 

 

衝撃は腹から。

鋭い茶色の物体の一撃が人形を捕らえ、脇腹を思いっきりくすぐられた感覚がある。

 

「wwwwwwwww」

 

「草を生やしてるってことは成功してたのか〜…いやまて、何飛んできてるの!?」

 

「できたての熱々カレーパン以外ないでしょう!?行きますよ、マスター!」

 

ふっと脇腹をつねられる感覚。

 

「このカレーパンよりも価値のないあなたに付き合う暇などありません!そこで渾身の一作でも食べててください!」

 

「もぐむぐ…ってちょっと待ってよー!ちくしょーうめーじゃねーかー!」

 

なんかよくわからない捨てゼリフと共に、俺は徐福ちゃんの場所から誰かに誘拐された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が目覚めたときには濃厚なカレーの匂いと教室だった。

 

「…すみません、マスター。カレーパンで人形をふっ飛ばすなんてちょっとはしたないですよね…」

 

「シエル…で、合ってるよね?」

 

まあこれ以外でカレー推しが凄い人なんて知らない。そもそも落ちている人形を狙えるのはアーチャーかこの人だろう。

 

「はい!あなたのせいで猫ホリックに悩まされてますよ!」

 

満面の笑みでこちらにカレーをすっと出してくる。申し訳ないように感じるけれど、攻略と周回でお世話になっている人だからな。

絆が14だがまだまだ現役だ。

 

「とはいえ、私のことをちゃんと使ってくれるのなら満足ですよ。このままグランドにしてくださいよ?」

 

「…善処します」

 

というか平然とまたカレーよそってることにはつっこんでいいのかな?

これで4杯目じゃない?

 

「ねぇ、シエル。カレーって…」

 

「はい!せっかくならマスターとカレーを一緒に食べようということでして。定番のカレーからポーク、ビーフ、チキン。それからカレーパンにグリーンカレー、バターカレーも用意しました!」

 

「お、おう…」

 

そんなに出されても食べれないと思うのだが、そこは天下のシエル先輩。

食べれなければ全部食べてくれるそう。

 

「ふふ、ちょっと用意するのに一分もかかってしまいましたけれど…善は急げ、まずはポークからどうぞ!」

 

こちらに匙を向けて笑顔で固まるシエル先輩。

つい反射的に口の中に運んでしまった。

 

「どうですか?」

 

「うん、普通においしいけど…」

 

「けど…?やっぱりクミンの配合を間違えてましたか?」

 

「いや、これをずっとくり返す感じなの…?教室でやる内容じゃなくない?」

 

「…あ。そうですよね、教室ってやっぱり変ですよね!こういうのは喫茶店ですよね!」

 

途端に後ろからネコシエルがわにゃわにゃ湧き出てきた。

1人だけこっちに近づいてきたけどなんでだろう?

 

「おいおい、シエル先生を落とした生徒ってのはチミのことかね?」

 

「落としたってなんだその言い方…まあそうなんだろうけど…それがどうした?」

 

「いやいや、別に〜?シエルがわざわざ頼みこむくらいだから気になっていただけだよ?」

 

こちらをじいっと見つめてくるネコシエルを抱えこむ。

 

「うん、やっぱりこうすると安心するなぁ…ネコシエルもシエルとおんなじ匂いがして好き…」

 

「ちょっとぉー!?待って、シエルの目が酷く冷えてるんだけど!?和んでる場合じゃなーい!」

 

「いいじゃん、喫茶店になったんだし。少しぐらい店員として頑張りなよ」

 

いつのまにか制服を着ているシエルがこちらを手招きしたのでネコシエルを置いてイスの方に駆け寄る。

 

 

「ご期待に添えず申し訳ありません…やっぱり食べるなら喫茶店のほうがいいですよね」

 

「うん、こっちのほうがシエルの喜ぶ顔が近いしいいね」

 

「ええ。なんか、その…デートみたいです、ね?」

 

「デートでいいでしょ」

 

デートなら食べるものをもうちょい別のほうがいいんだろうけどな。パフェとか恋人が食べるようなものじゃなくてカレーで悪かったな。

 

好きだし後悔してないけど。

 

 

「マスター大好きですよ。ほら、カレーパンをどうぞ」

 

食べ歩きするときの白いナプキンに包まれたカレーパンを差し出される。

 

「ん、ちょっと付いちゃったか」

 

カレーパンって毎回食べるときに口につくから嫌いなんだよな…シエル先輩はこちらに白いハンカチを向けてくる。

 

「拭くので動かないでくださいね。あ、これについては洗浄可能なので気にしないで!」

 

「シエルさん本当にありがとうございます…」

 

とはいえ、この後は全部食べて眠ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全部食べてくださるとは…先輩としても鼻が高いです。ユニヴァースでカレーを広めたのは伊達ではありませんね」

 

「ん…?」

 

「しかし…あ、起きましたねマスター。目覚めはどうですか?」

 

「凄くフシギです」

 

目が覚めたらシエル先輩が天井だった。

こちらを覗いてくる瞳にハイライトはなく、しかもじゃらりと音が鳴る。

 

「それはマスターと私を縛る鎖…とはいえ、今は私といるのでかなり緩くなっているはずです」

 

体を起こそうとすると、シエル先輩に押さえつけられる。

 

「その、ここがどこかを知りたいんですよね?」

 

「まあそうだけど…シエル先輩は全部知ってるんだよね?」

 

「そのとおりです。というより、ここであなたに罰を与える執行人になったというかなんというか…」

 

照れくさそうに言っているけど、絶対やさしくないやつだ。

シエルってこんな執着する性格だっけ?

 

「詳しくはユニヴァース法を話さないとならないのですけど…2時間かかってしまうので今回は省略しますね」

 

「銀河法B85により、本日を持ってあなたをこの夢の世界、事象の彼方へと幽閉します。また同じく銀河法W56から身柄をカルデアより謎の代行者C.I.E.L.へと譲渡されます」

 

本格的に不味い状況になってきた。

 

「…すみません、こんな方法でしかマスターを独り占めできない私で」

 

「いや、そもそもなんで?」

 

「…私はもう、傷つくのを見たくないんです」

 

…奏章のことをさしているのか。

シエル先輩の意図を知らなければどうしようもない。

 

「ボロボロになって、殺されかけて、その上でまたずっと進み続ける?わかります。決意があったからこそ、私はあなたの召喚に応じたのです」

 

浮かんでいるのは2部以降の思い出。ヤガ、秦、アヴァロン、ミクトラン。

どの記憶を辿っても死ぬ苦痛が襲いかかる。

 

「だけど、それももう限界です。もう優しいあなたが傷つくのを見たくないんです」

 

彼女の目は、確かに愛に狂っていて。

それでいてこちらへの慈愛で満ちていて。

 

「バッドエンド先生と呼ばれた私のエゴで、慈悲で、裁定です」

 

しょせん人である俺には到底受け止めきれない。

 

「どうか、許してください」

 

こちらに覆いかぶさるシエルへと抵抗することはできない。

じわりじわりと諦めが体へと浸透する。

 

(もう、いいよな…)

 

 

 

 

 

 

 

《諦めないでください》

 

 

 

声が。

 

 

 

 

 

《あなたは強い人です》

 

 

 

 

 

酷く懐かしい声が。

 

 

 

 

《ソロモンを討ち取りし勇者よ》

 

 

 

 

助けてくれた声が。

 

 

 

 

《我が真名に、令呪で命じよ》

 

 

 

 

ただ、告げる。

 

 

 

 

《マスターよ、この身を捧げましょう─》

 

 

 

 

 

 

 

シエルに対抗するなら、彼女しかいない。

 

 

 

「来い、ジャンヌ・ダルク!」

 

 

令呪の最後の一画が赤く光り、聖女をここへと呼ぶ。

 

「マスター!」

 

「こうなったら…!マスター、避けないで!」

 

こちらへと投げられた黒鍵を倒れ込みながら避ける。

 

「なんで、どうして…!」

 

「シエルさん、あなたは道を違えました。マスターを監禁するのは決して許されてはならないことです!」

 

怒りの余り振るわれた旗は、シエルの体へと突き刺さる。

 

「これまでの彼の道のりを、ここに至るまでに犠牲にしたものを、全てを踏みにじるなど…!」

 

「あなたに何がわかりますか!?私と大して変わらない新参者のくせに…!」

 

技術は、シエル。

想いは、ジャンヌ。

 

「そんなものは、関係ありません!あなたも、私も、マスターへの理解が足りてないということです!」

 

 

戦闘である。己の欲望のままに、俺は─

 

 

《ジャンヌ・ダルクと戦闘する》

 

 

→《シエルと戦闘する》

 

 

 

 

【出撃するメンバーを選んでください】

 

 

 

 

 

 

 

 

「…勝てた…」

 

シエルはこの空間を作るために大部分の力を裂いていたようで、動きを止めた瞬間からポロポロと現実が見え始める。

 

「…マスター、ありがとうございます。私のこと、ちゃんと使ってくれるんですね」

 

「当たり前だろ。…また会えるかね?」

 

この夢の空間が続くのかどうかは未確定だ。

 

悪夢ではある。しかし確かに喜ばしくて、泡沫(うたかた)の夢。

 

「もちろんですよ。あなたがそれを、望むなら…っていいたいんですけど」

 

「知らないんだな。運営は結局誰なのかはわからないわけだ」

 

徐福だけは知っているようだが、特定まではできなかった。

 

「そうですね。なので、私としてはこうとしか言えないのです─」

 

彼女の最後の言葉を聞く余裕もなく、俺は夢から覚める。

 

 

 

 

 

 

なんと言ったのか。

 

会う機会があれば、聞きたかった。

 

 

 

 

神よ、我が祈りを叶えたまえ

 

 

 

 

 

 

 




終わりませんからね?

明日はモンハン…書けたら…
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