死んだと思ったが、昨日からみなれた距離でいる顔だった。
というか安心感が凄い。
「ユニヴァースからこんにちは!銀河アイドルの配達便、成層圏からやってきました!」
「…ねぇさ、うん…」
どっと力が抜けた。別の意味でつっこみたいけれど、それはそれ。
あんな高さから落ちても無事でよかった。
「これはお土産の抗竜石です!心眼と剛撃、この二つがいいんですよね?」
「そうなんだけどさ…そうなんだけどさ…!」
結構つっこみたいことはあるけどちょっと待て。
整理する時間がほしい。
「混乱していますか。…私はウルトラなシエルなのです!」
「それじゃ説明になってないよ!?何度も出てきて、恥ずかしくないんですか!?」
「何を言っているのですか、マスター?先生ではなく銀河アイドルですよ?つまり単なるお届け便のオプションで選ばれただけの美少女、ということです!」
確実にお届け便としても過剰すぎるだろ。
あとよくわからんけれどスターシエルとシエル先生は別人格らしい。
もう考えるのをやめよう。
「はぁ…ともかく、スターシエルはどうするんだ?」
「私はネコシエルからありったけのカレーとマスターの隠し撮り写真を取り引きされ、このように救援依頼を受けました」
「あいつら…さては眠らせたのは写真を撮りたかったからとかじゃないよな?それで八つ当たりで監禁されかけたら世話ないんだよ?」
「と、私に言われましても…ネコシエルによるとカレーの前に摂取していた液体から検出された眠り薬が原因らしいので…」
「あのサイダーが原因かよ!?」
つまりこんなことになったのは徐福ちゃんが原因か。
…運営側であってるんだよな、抗議しなきゃいけないところって。
「まあ、どんな基準で誰が運営しているかを知るのさ不可能ではありませんけど…こうやって遊べるだけのもの、そう捉えていいでしょう。詳しく知ろうとすると…」
「知ろうとすると…?」
「風邪をひくので気をつけましょう!」
「思ってるよりマイルドだなそれ!?」
こんな話をしているが、ここは氷海。そしてモンハンのフィールドである。
普通にモンスターが襲いかかってくるとはいえ、のんびりして…いけるな。スターシエルってこんな感じで倒すのか()
「あ!マスター、このお肉がカレーに使えそうですよ!出汁に出来ますし、やっぱり魚類はカレーと合いますよね!」
「そういやシーフードカレーは食べたことなかったな…」
考えてみれば、グリーンカレーくらいから意識が飛んでしまって食べた気がしなかった。
「本当ですか!?もしそちらの世界にお邪魔できれば、マスターの家で作らせていただきますね!」
「うん、そうしてくれるなら助かる」
正直青髪の美人先輩って好みドストライク過ぎて…
ヤンデレ成分がなければこの夢って吉夢なんだよな。
「っと、話しているのは楽しいですけれど目的を伝えませんと。ガララアジャラ亜種ちゃんと力を合わせないとこの悪夢は脱出できないそうです。気軽に名前をつけてかわいがってくださいね!」
ぽんと渡されたのはシャーシャー手の上で鳴いているガララアジャラ亜種ちゃん。
クソモンスと呼ばれていたこいつもこう見るとめっちゃかわいい。
「これで捕獲はできましたね?銀河のアイドルからのファンサでまずサブターゲットが終わります!」
「ありがとうございます!」
これで帰れると思ったが、そんなことをしたら何が起きるかたまったもんじゃない。
「鋭いですね、マスター。あなたが思う通り、もしここで帰還したらあの二人は狂竜化したまんまです」
「さらっとえげつない状況になるんだな…」
「まあまあ、ここで帰っちゃったマスターさんは後悔しかしませんから。となると、どうすればいいかは丸わかりですね?」
「…殴ってもとに戻せと?」
「はい、そのとおりです!本当は殴られればいいんですけど、どうやらサーヴァントは殴らないと感染が治らないそうなんです!」
…ややこしいのでとりあえず殴り続ければもとに戻ると考えとこう。
「そうです!しかし正面から向かわなくともゴッホさんのほうはあなたを捕捉して向かってくるでしょう」
「なるほど…そういえばこの子に名前とかってあります?」
「いえ。マスターのお好きな名前でお呼びください」
こっちにすりすりとなつき始めているガララアジャラ亜種。死なないように生きさせられないかな…
「じゃあガラちゃん。いやだ?」
「シャッ」
首を横に振り、こちらの首まではってすりすりしてくる。
「これがいいんだね、ガラちゃん?」
「シャー!」
「意思疎通ができるようになれば大丈夫です。いつか別れるまで大事に育て上げてください」
「まあこんだけかわいいなら手放したくはないけどな」
というかガラちゃんならそんな危険でもないだろうに。
ゴルゴーン三姉妹に対抗できそうな唯一の存在だぞ?
「そんなわけで、ここから一刻も早く脱出してください。マスターが1乙したら…ふふ、ハンターの記録がなくなりますよ?」
「絶対にごめんだな。頑張るしかない」
死にたくない理由もあるし、こっから逃げだしてこの後も続くであろうヤンデレシャトーを高難易度にしたくない。
「さあ、頑張ってください!私はこのあと真祖を倒すライブがあるので失礼します!」
シエルは一瞬で身体から魔力を噴出させ、空の彼方へと飛び去った。途中で赤い光とぶつかって消失していたのも追記しておく。
「…バルファルクよりやべーやつじゃん、これ」
ヤンデレにならなくてよかった。
あれに攫われそうになったらソニックブームで先に死ぬからな。
「それで、俺はガラちゃんと一緒にゴッホをまず捕まえるわけだが…」
隣のエリアからゴンゴンと氷を叩き割っている音が聞こえる。軽快にそんな壊せるわけないもんだろこれ…
「巴に比べりゃましか…」
巴御前。生前馬に乗った状態で相手の首を叩き折るという逸話を持つ女性。
つまり抑えつけられたら因果的には俺を殺せるわけだ。馬がイビルジョーとかいう化け物で認識されることを除けば。
「殺されるくらいなら自分から向かったほうが速いな、うん…」
ゴッホをやるならまだしも、巴は一人じゃ無理すぎる。
抗竜石で武器を研ぎ、エリアへと向かった。
「あ、マスター様?来てくれてありがとうございます!やっと私のことが大好きだって気づいてくれたんですね!」
「その前に止血してくれ?」
ゴッホを見つけたけれど、体は完全に傷だらけだった。しかも防具を貫通している斬撃がところどころにある。
「いいんです!マスターが近くに来てくれるなら血まみれになったって暖かいですから!」
「とりあえず応急処置するから…!?」
ガラちゃんが体の足元でくるくるし始めた。待て、ということだろうか。
いま信用がおけるガラちゃんのことだ、1回冷静に考えてみる。
あんなに大きな音がなっていたのに氷が割れた形跡もなく、血の垂れた形跡すらない。
「フェイクか…!」
ゴッホなら地形に色をつけて偽装するのも、そしてそれをできる技術も持っている。
つまり、この下には宝具で使っていた機械がある…!
「気づいちゃいましたか…マスターが賢くて萌え萌えキュンですけど…許せません…!」
「今の状態で捕まっても困るだけなんだよなぁ!?」
そんな言葉を交わしつつも、下からの振動を避ける。
「マスターの髪の毛1本たりともゴッホのものなんですから、喜んでハグさせてくださいよ!」
ピッケルの攻撃も恐ろしいが、それよりも怖いのは砕かれた地面で戦闘がしにくいったらありゃしない。
「ゴッホの血、どうですかー?たぁっぷり受け取ってくださいね!」
「何つーもん仕込んでんだよ!?」
ところどころにあるのは血の匂いが漂う爆弾石。炭鉱夫なら常備していておかしくないかもしれないけれど…ここで戦闘するなら危険すぎる地雷だ。
(せめてエリアルでも使わせてくれないかな?)
願ったところでどうしようもない。やれなきゃ死ぬだけだ。
踏み場とも言えない氷を使って跳躍して避ける。
「マスター、新しい力が手に入ったんですね!バッタみたいにぴょんぴょんできるようになっちゃったから逃げ出したんですか?」
「そもそも、先に、殺そうとしたのは、そっちだろ!」
会話しているが相手の攻撃の手は一切緩まない。手刀で落とすにしても限界がある。
「えへへ、それもそうでしたっけ?でもマスターがあの時に告白してくれたじゃないですかぁ」
「告白したのは、絶対、曲解、だろ!」
「そうですよね!ゴッホも教会で愛の告白をしてほしいです!どんな建築しましょう?」
「話を聞け!」
ダメだ、話が通じない。ゴッホはもともと妄想が激しいからこんなことになってるんだろうが…
「やっぱり素直にマスターのキス顔ですよね!監禁する場所も、エッチする場所も…ふへへ、やりがいがたくさんあっていいですね!」
「隙あり!」
逃がしてなるものかとぶん投げたのはガラちゃんの鱗。
未だにこれがなんなのかわからないゴッホならいけるはず!
「なんでマスターに飛び道具が…!?」
「水ブレスだよ、そのまま気絶しろ!」
水ブレス。それはガララアジャラ亜種に搭載されているとんでもない技の一つ。地形だろうがなんだろうが貫通して相手に届く圧倒的に強い技。
その技を喰らってよろめいたゴッホをぶん殴る。
紫色の煙が途端に霧散した。
「あ、気絶したか」
…もっと力加減を考えればよかったな。
「はぁ…やっと一人終わったか」
ゴッホをもとに戻し、ガラちゃんに近くのモンスターを狩って食べさせる。
そんなことをして体感で約10分。やっとゴッホが起き上がった。
「すいません、マスター。やっぱりここはゴッホの血で償いを…!」
「しなくていいから作戦を伝える。これを上手くやれば巴を戻せてなんとかなるはずだ」
巴御前のエピソードは確かに強力ではある。されてから防ぐ方法もないし、巴御前が乗っているイビルジョーが防がせる道理もあるまい。
「そんな勝ち目ないことするんですかぁ…?」
「いや、これはゴッホがいないと出来ないからな。思いついたのは咄嗟のことだし…学校の授業ってやっぱり偉大なんだよなぁ…」
「どうしてそうなるんですか?いい加減ゴッホにも教えてくださいよ」
「まず俺が死にかけるだろ?」
大前提として死ぬ寸前にならなければならない。というか作戦的に五分五分で失敗するものだと思ってるし。
「その発言が何でくるんですか!?」
「舞台を作れば巴には勝てる。ほれさっさと隣のエリアに行くぞ」
殆どおかしい状態にするからな…作戦を伝えつつ、次のエリアへと向かう。
正念場だ、しっかりやらないと。
「義仲様!?」
こちらを見て巴は勘違いしてくれた。当然のことだけど、俺は義仲様の顔とは似ても似つかないし憑依させたわけでもない。
「場を整えただけでこうも上手くいくとはな…」
原作通りでは、巴が逃がされてから木曽義仲におきる状況がある。
『動物が氷を踏み抜いて動けなくなる』
『親しい存在を探すために兜をあげる』
今回はこの二つを再現して錯覚をおこしたわけだ。
この事象が起きるならその人物に違いない。
順接の確定条件。
予想通りイビルジョーの上に乗せてくれた巴に微笑みかける。
「2度目の生で、やっと救えました…あぁ、なんであの時逃げよと命じたのですか…!」
嘆く巴に対してやることではないと理解しているけど、終わらせなければならない。
すっとハグしたときに爪をたて、抗竜石でウイルスを浄化させる。
「あ、あれ、マスター?」
「正気に戻ったのか…ん?」
もとに戻したと思えばすぐに光り輝く。どうやら巴がイビルジョーを従えていたから捕獲とみなされていたみたいだ。
ガラちゃんだって俺と一緒だけどサブターゲットは達成されているらしいからな。
「すみません…今度埋め合わせしますから」
「やはり血で償うしか…」
「だから気にしなくていいよ。まあ狂竜化なんてほぼみないししゃあない」
こちらに謝る2人に対しひらひらと手を振ったところで悪夢から覚めた。
「ん?…そういやワイルズのときに寝落ちしたんだっけ」
朝起きて隣をみると、寒色系のかわいい子がいた。
「ガラちゃん?なんでここにいるの?」
「シャー♪」
「すりすりよってくるのはかわいいからいいけどね?説明くらいして?」
ピラリと視界の端から落ちた紙をひょいと拾い上げる。
『はっはっはー!今度やることの試験運用にガラちゃんをそっちの世界に送らせてもらったのさ!…エッチなこととかするんじゃないぞ!』
「はぁ…とりあえず今日は蛇について調べるか」
ガラちゃんを飼うための準備が大変だったことがわかった。
ガラちゃんかわいい。