【RE】ヤンデレ・シャトーを攻略せよ   作:白井あおい

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Q,なんでこんな遅れてるんですか?
A.ちょっとこの後の企画を詰めてたからです。
詳細はあとがきにて。


家族を攻略せよ【2/2】

 

 

 

起こされ方、というのがある。肩を叩かれたりはたまた目覚ましを鳴らしたり。

そんな起こされ方でも中々ない酷さだと思う。

 

「危ないなぁ…」

 

なんせナイフで肩を刺されそうになる起こされ方など始めてだ。…ちゃんと刃引きされてたからまだよかったけど、それにしたって充分怖い。

 

「このイタズラは…ジャックかな。にしたって危ない起こし方…」

 

「おかあさん、おはよう!」

 

ジャックちゃんにおかあさんと呼ばれるのももう慣れた。

 

「おなかすいてるんだもん、速く行こ!」

 

「わかったからまず俺の上からどいてくれない?」

 

俺のかわいい妹なのだが…この前助けたあとからおかあさんとして懐かれるようになった。誰一人とて血が繋がってないこの家の中で最年少ということもあり、意外と周囲に対する遠慮はない。

 

「別におかあさんならわたしのことを気にしなくてもいいでしょ?」

 

「気にするから出ていってくれ…頼むから…」

 

…頼むからもうちょいスキンシップを控えてほしいものだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

下のリビングに行くと、もう既にエリザ姉さんやバーゲスト母さんがテーブルに座っていた。

 

「おはよ、二人とも。おきるの遅くてごめんね」

 

「いえ、眠れているのならば結構です。昨日はエリザのライブの処理で大変だったのでしょう?」

 

ことりと置かれたのは母さんの好きなコーンスープだ。三半規管を治すための薬らしい白い粉がちょっとだけ浮かんでいる。スプーンでそっとかき混ぜるとあっという間に溶けきるあたり、もう既にやってくれていたようだ。

 

「ちょっとお母さん!コイヌは私のものだから何してもいいはずなんですけど!?」

 

「いやね…俺あんまり人の多いところと音が大きいところが嫌いって言わなかったっけ?」

 

エリザ姉さんの衣装から関係者への挨拶まで全部やるの嫌なんだけど。

 

「え、でも私のライブには毎回ついてくるじゃない?」

 

「そりゃ身内兼マネージャー代理やってるからな…しかも1回俺がいなかった時にだいぶ悲惨なライブがあったんだろう?」

 

聞いた話によると、いつにも増して相当ひどい歌声が出ていたらしい。

そもそもライブの時点で気絶するから関係はないが。

 

「もうしないわよ!昨日のライブだってちゃんとコーレスまで完璧な人ばかりだったじゃない!」

 

「というか昨日やったのに今日もまた武道館でライブ…」

 

「別に学校から休めるんだからいいじゃない!」

 

俺が一般的な高校生であることを理解してやっているのだろうか。

勉強ついていけなくなるからやめてほしい。この前ついに点数でジャックに抜かされたんだぞ…

 

「姉さんみたいに芸能科に進んでないんだけどな…まぁ公欠もらえてるしいっか…」

 

「あら、コイヌったら私のプロデューサー兼ユニットになるつもりかしら?」

 

「どこをどう読み取ればそうなるんですか…ジャック、あなたの席はこちらですよ」

 

「えー…」

 

不満そうな声をあげているけど座っているのは俺の膝の上。当然のように座っているけど揺れないでほしい。

 

「食べにくいからどいてほしいんだけどなぁ…離れてくれる?」

 

「おかあさん…」

 

「駄々をこねない。ほら、マスターが困る前に速く離れなさい」

 

「はぁい…」

 

母さんが引き離してくれたみたいだが、絶対また同じことされるだろうなぁ…

 

ジャックちゃんはまだバーゲスト母さんの恐ろしさを体感してないからな。最近は雨が降ってたし、まだまだ見る機会というのは少なそうだけど。

 

「私はこれから仕事があるので…マスター、二人の昼ご飯とエリザの付き添いをお願いしてもいいですか?」

 

「別に大丈夫だよ、母さん。買い物しといたほうがいい?」

 

「作りたいものがあるのならそのように…ええ、寧ろ私の分まで作っておいて欲しいというのが本音ですけど」

 

顔を赤くしてモニョモニョとしている母さんに微笑しつつ、買い物の量を少し増やすことを決めた。

親孝行って大切だからな。

 

「わかったよ、何食べたいの?父さんが先に帰ってくるとは思わないし、ちゃんと作っといてあげる」

 

「そうですね…では、小魚の佃煮とマスターの肉を使った肉じゃがを。やはり日本の素朴な味は無性に食べたくなりますから」

 

「わかったよ。母さんが大好きな肝臓を切り取っとくね」

 

母さんの日本語が滑らかなので忘れがちではあるが、イギリスの妖精國から来たらしい。大好きな子供の肉を食べたくなるのはその影響なのだ。

 

…妖精國なんて存在していなかったような気もするんだけど。

 

「とうしたの、コイヌ?私が食べさせないといけないのかしら?」

 

「エリザ、この前もそれで炎上しかけているのだから(つつし)みなさい」

 

「…慎むってなぁに?」

 

「勉強しなよそれについては…」

 

ジャックでさえもわかっているのにこの体たらくである。

アイドルとして成功していなかったら絶対に高校進学までいけてないんじゃないのだろうか。

 

「失礼なこと考えないの!これでもバラエティじゃ引っ張りだこなのよ!」

 

「ジャンルが少ないだけだろそれ…つーか父さんの七光りとかじゃないよな?」

 

「ねぇねぇおかあさん、はやくたべないの?冷めちゃうよ?」

 

やたらと騒がしい朝食だが、いつものことだ。ちょっかいをかけないでほしいんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、買い物いくけど…」

 

「おかあさんといっしょ!」

 

「もちろんついていくわよ?」

 

バーゲスト母さんが出ていって数分後。家でゴロゴロしているのもどうかと思いスーパーへ買い物に出かけることにした。

一応ジャックもついてくれるのならさらに買い物ができるしいいだろう。

 

「エリザ姉さんは来ないでほしいけど…」

 

「何よ!べつに普段の格好していれば問題ないでしょう!?」

 

「普段じゃなくて普通の格好をしてくれよ。ヴィクトリア調の格好されてちゃ俺が困る」

 

この前なんてファンサをしようとする姉さんを止めるのも大変だったんだからな。

整理するのも一苦労だし、買い物終わりに来られたら冷凍食品も溶けちゃうし。

 

「なによ、コイヌの服でも着ろってこと?」

 

「目立たなきゃ何でも。5分で着替えてね」

 

意外とライブの準備を考えると余裕がないんだよな。毎回大量の衣装から好き勝手に決めたのを含めて協議しなくてよくない…?

 

本当に家族じゃなきゃこの仕事やってらんない。

 

 

 

 

 

 

 

「ん…どうかしら?」

 

「別に。バーカーと青いジーンズで普通の人っぽいからそれでバレないように振る舞ってね」

 

ちゃんと適当に選んだ割にはファッションとして成り立っている。腐ってもアイドルとはこういうことをさすのか。

 

「ふふん、私が自分のことについて間違えるわけないじゃない!本当は香水をつけたかったんだけど…」

 

「俺の服に匂いをつけるな」

 

「マーキングみたいなものだしいいじゃない」

 

当然だがエリザ姉さんが着ているのは俺の服だ。いわゆる彼シャツみたいなもんだろうけど心は一切ときめかない。

 

というか龍の尻尾が出てるのをみるに改造をされて使えなくされている。この短時間でそんなことをできる器用さを他に活かしてくれよ…

 

「おかあさん、これでいい?」

 

「ジャックは…うん、問題ないかな」

 

ジャックが着ているのは水色のワンピース。いつもナイフを入れている腰のホルスターにはシャーペンがついていて、殺傷性は対して変わっていない。

 

下から覗かなきゃバレなさそうかな。

 

「ありがとう!はやくいこう?」

 

「そもそも待ってたほうなんだけどな…」

 

とはいえ、家族で買い物にでかけるなんてことは滅多にない。

父さんと母さんがやるのも仕事が忙しくて殆どないだろうし、エリザ姉さんはそんなことする暇あったらライブしてる。

 

…うん。なんかやっぱり違和感があるんだよなぁ…ナイフなんてそもそも普段使いで持つものじゃないし、アイドルだからといって人間には尻尾がついてないよな。

 

「おかあさん?ころしちゃうよ?」

 

「あ、ごめんごめん」

 

考え事をしているとおんぷしていたジャックちゃんがシャーペンを首にぴとっと当てていた。

 

「ジャック、コイヌを殺そうとしないで!しがみついてると後ろから燃やすわよ!」

 

「ころしちゃおうか?」

 

「二人ともやめろ…つーかこうなるなら一人で行くぞ?」

 

「「………」」

 

途端に黙る二人。

そもそもなんで買い物に付き合おうなんて言い出したんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

買い物と料理を終え、エリザ姉さんのライブ会場についた。

 

「ふぅ…流石私の専属プロデューサーね!今日の衣装は…これとこれね!」

 

「それならまぁ、違和感なく話せるか…」

 

ありがたいことにたまたま予定通りの衣装を持ってきてくれた。これなら協議も三十分で済む。

 

「ちょっとコイヌ?終わったらちゃんと私の楽屋にきなさいよ?」

 

「わかってるよ…」

 

この後の地獄の甘やかしタイムに気が滅入るものの、それはそれ。ライブの収入も普通に億単位なので失敗しないように最大限頑張るしかない。

 

…単にマネージャーの人件費を削ってるからなのかもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

協議こと『エリザベート対策会』は予想よりも速く終わり、比較的余裕があった。

 

「…そう、あのおてんば娘の行動が…大義だ、マスター」

 

「ギル様こそ演出ありがとうございます」

 

まさか術ギルが演出を手伝ってくれるとは思わなかった。普通に音楽家のサーヴァントが来ると思ってたんだけどな…

 

「フハハハハハハ!あの詐欺師の息子がとんだ正直とは…いや、違うか」

 

「いきなりマジメになるのやめてもらえます?普通になんでそうなるんですか?」

 

父さんの名前もわかんないけど貶されてるのはわかる。

 

「ほれみたことか、肉親の名前程度覚えられないでどうする?…(オレ)からあいつへ連絡しておく。ライブの直前になったら再度ここへ来い」

 

「あ、はい」

 

「洗脳されてなおお人好しか…ほれ、自分がどんな違和感を持ったのかを思案してみろ」

 

…感じてみれば呼び方と体の特徴で気付くべきだっただろう。

普通の妹が兄をおかあさんとは呼ばない。

普通の姉なら竜の尻尾など持っていない。

普通の母は子供をマスターとは呼べない。

 

 

つまり…またなんか洗脳されてたのか。

 

 

 

 

「…わかった。今の俺ってどうなってんの?」

 

「知るわけなかろう。しかしそうさな…カリスマに対して異常に弱いことだけはわかる。…まあ、これから先は場から出ない限り問題あるまい」

 

「ありがたい…というか今回のシャトー作った奴なんか恨みでもあるのか?」

 

最初のモルガンと比べて明らかにカリスマだけ強化されてるんだけど。

 

「あぁ…もう一人の(オレ)が『(わらわ)のカリスマならマスターをイチコロなのに!』とバカなことを言っていた…それと加えて蛇と会話がしたかった王をなのる獣がいたはずだ」

 

「なんで女体化の薬飲んでんだよあの英雄王…原因が酷いな…」

 

ヤンデレだとしても駄々こねる英雄王なんて見たくないぞ。子ギルにでも盛ったのか?

 

「だからイレギュラーとして尻拭いをする羽目になったのだ…」

 

「お疲れ様です過労死王…」

 

「労ってないではないか!?…まあよい、この悪夢での終わりは『家族全員に会うこと』だ。恐らく最後の父に会えれば十分を経たずして終わるだろう」

 

ギルからの情報で次の立ち回りがわかった。残り1時間くらいエリザと過ごしてからプリテンダーの誰かと会えばいいのか。

 

…頼むからトラロックじゃないことを祈るしかない。

 

「時間になればあちらから来るだろう。それまではバレないように戯れておけ」

 

「ありがと…」

 

何から何まで尽くしてくれるギルに感謝しつつ、俺はエリザの楽屋に向かった。そろそろ遅いとかなんとか言われそうだ。

 

 

 

 

 

 

「遅いわよコイヌ!今日は比較的速いって言ってたじゃない!」

 

「ちょっとライブの演出の話が長引いてな」

 

もう既に最終再臨に着替えたエリザからペチペチと尻尾で叩かれつつ、部屋に座って膝枕がとれる体勢になる。

 

「今日はもう着替えてるんだからこれで我慢しなさいな。昨日だって疲れたんだからこれくらいでいいだろ」

 

「ドレスにしわが寄らないかしら?」

 

「今まで1回もしわが寄った記憶がないから大丈夫だろ。…というかついてきてもこういう時間取れなかったりした最初のころに戻ってほしいんだけど」

 

知らない記憶から無理に引っ張ってくるしかないのは辛いな。間違ってたらまたカリスマをかけられるし…

 

いつまで竜の逆鱗に触れないでいられるかだな。

 

 

「まぁね…ダンテ父さんが売れてから私もお姫様になったから!」

 

「落ち着いてくれよ…というかその前もずっとワガママだったんじゃないか?」

 

これでも昔に比べて落ち着いたほうだとは思うが、それにしたって人力で空を飛ばれたりして演出が大変になることは考慮してほしいものである。

 

「アイドルは皆を元気づけるものでしょう?」

 

「まぁそれはそうなんだけどさ…それはそれとして人の血を吸おうとするのやめて?」

 

「いいじゃない、もうそろそろ甘やかしタイムも終わっちゃうし…それに血でメイクしないとダメでしょう?」

 

「家族の血でやる必要ないよね!?」

 

食紅やらなんやらで充分であるはずなのに、わざわざリアルで人の血を吸う必要はないと思う。

しかも最初の曲が終わる度に拭き取って舐めてるんだしいらんことしてるだろ…

 

 

「逃げないの。コイヌは私のものって自覚がないとダメよ…!」

 

そのまま首を固定されてちゅうちゅう吸われ始める。脱力感が凄いが、多分離したら悪化するような気もするので耐えるしかない。

 

「んぅ…終わったらまたちょうだいね。レバーはそこにあるから」

 

テーブルの上をみると、これでもかと増血作用のある食材が並べられてある。

 

「なんで全部調理されてるんだよ…」

 

「私が料理できないと思ったら大間違いよ。しばらく楽屋で休んでなさい」

 

エリザがスタスタ歩いていくとパタンと閉められる音。だいぶ血を抜かれたせいで気持ち悪いが、動けはする。

 

「マーキングにしたってこの量はおかしいだろ…200位は持ってかれたな…」

 

とりあえず応急処置として包帯を巻き、そのままエリザの楽屋から出る。

 

体がふらつくけど知ったこっちゃない。

下に降りるために階段まで這って移動すればいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと…マスターが階段から落ちてくるのは予想外だな…」

 

「ダンテ…!?」

 

受け止めたのは最近追加された男のプリテンダー、ダンテだ。

 

「いや、父親役だから出ただけだよ?マスターの明確な味方、と捉えていい…はず…」

 

パチっと音を鳴らすと倦怠感が消える。

 

「とりあえず天国にでも行くかい?エリザに血を吸われたのはちょっと辛そうだし…」

 

「いや、まだ死んでないので結構です」

 

「それはすまない…ふふ、生者に対するものではなかったね…仮にも父であるのに申し訳ない…」

 

ダンテってそんな父親として変とかは思わないけどなぁ…

 

「まあ、ヘファイスティオンがうじうじ言っていたけどもう終わりさ…」

 

「あ、そういやこれで家族と全員会ったのか…すまんね、ダンテ」

 

ダンテとあんまり話せなかったな。この夢ではもう会わないだろうけど…

 

「構わないさ…まあ、今度余裕があったら一緒に巡ろうじゃないか…家族サービスが必要なのだろう…?」

 

「まあそうなんだろうけど…そんなもんないだろ…」

 

バーゲストと違って*1ベアトリーチェ一筋のダンテには可哀想だな…しかもダンテの体ってバーゲスト好みな訳じゃないし…

 

「ふふ、またもし機会があればね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お兄ちゃん?私との婚姻届書いて?」

 

「はいはい…」

 

妹とのおままごとをやりつつ、ちょっとだけ安堵したのだった。

血を吸われるのはもうこりごり。

 

 

 

*1
失礼




Q,企画って?

今回遅れたことのお詫び…ゲフンゲフン、赤色に染まってるので日頃の感謝をこめてリクエスト企画をやりたいと思います。ただ、リクエストそのものはちょっと普通にやるよりちょっとだけミニゲームの要素をつっこもうかと。

具体的には次の【1/2】にてちょっとしたヤンデレサーヴァントの真名当てをしてもらいます。多分最初の方で一人だけ確実にわかるネタを入れるので心配しないでください。

次は明後日までに投稿します。
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