TS長身コミュ障女は旅に出る   作:Revak

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第10話

 

 旅をするのに必要な物は幾つもある。

 

 食料。変えの衣服。移動手段。その他諸々。数え上げればキリが無いだろう。

 だがエディスは持ち前の魔法能力でそれらの問題を解決した。

 まず食料は要らない。高位の魔法士ともなれば何かしらの魔法で食事そのものを不要に出来る。勿論エディスも魔法で食事が入らない体になっている。

 衣服も要らない。汚れようが魔法で一瞬で浄化出来る上新品をその場で魔法で作り出す事も出来る。

 移動手段とて自力で走れば最低で時速百キロはあるし、本気を出せば新幹線や旅客機よりも早く走れるし飛べる。

 更にその他の歯磨きやらの細かいものも最悪その場で魔法で作るという超常ありきの暴挙が出来る以上は問題に成らない。

 

 結果、エディスは何の憂いも無く町の外に居た。

 

「……」

 

 エディスは無言で町の城壁を見上げる。

 これでも約半年は暮らしていた町であり、それなりに愛着もある。

 だがそれ以上に知らない誰かの軌跡をたどりたいという衝動が勝っていた。

 

(行ってきます)

 

 本当は口に出したいけれど、心の中で呟いて、エディスは走り出した。

 

 

 エディスがこれまで出した速度での最高は約千二百キロ。正しこれはこれまで出した速度での話であり、本気で走れば時速何キロに成るのか本人は正しく認識していない。

 当然こんな速度で走れば周囲はそれはもう酷い事に成る。ソニックブームが巻き起こり地面ははじけ飛び木々は裂け通行人はミンチすら残らない。

 ただしそれは地球での話。異世界の耐久性は高くマッハを出した程度では割と世界に影響は出ない。それはそれとしてソニックブームが起こり木々が揺れたりはするが。

 そして当然エディスがそんな速度で走る訳がない。そもそもとして目的地であるグラプスが何処にあるのか詳細が分かっていないのだ。

 ある程度の方角と位置はわかる。だがそれだけ。日本の様に具体的に何処にある、などというのは分からない。

 故に速度を落とし街を見逃さないように走るしかない。

 時速に換算すれば約三百キロで。エディスは走り続けた。

 

 走り始めて約三時間程で、エディスは目的地を見つけ出した。

 道中幾つか街や村を見つけるものの、透視と遠視の魔法で街の名前を確認しては走り出すという事を繰り返し、ようやっと目的地であるグラプスに辿り着いたエディスは深呼吸をして心を落ち着かせていた。

 

 立派な城門の前にエディスは立ち尽くし、見上げていた。

 

 ──でけぇ。

 

 それがエディスの感想であった。

 街の規模としては前まで住んでいたパウルの数倍はあるだろう。人口も万を優に超えている。

 

 となればそれに相応しいだけの城壁を携え、城門を拵える必要がある。その威容にエディスは圧倒されていた。

 

 数分、見上げていたエディスは気合を入れて進み、城門へと進んだ。

 

 

「其処の者、何者だ?」

 

 城門の前には衛兵がおり、槍を携えている。

 城門は朝から夕方までは基本的には開いており、通行が可能となっている。だが誰でも彼でも通す訳にはいかない為、衛兵を配備し通る者を制限している。

 城門前に努めている衛兵はエディスを見て槍を構え、厳格な声を発し問い詰めた。

 

(そりゃ声かけてくるわな)

 

 傍から見ればエディスは全身ローブで体を隠し顔も仮面で隠している不審者である。これを問い詰めない者は衛兵失格である。

 

「冒険者です。旅をしていてここに来ました」

 

 大人しくエディスは答え、<資材空間>(ポケットスペース)から冒険者カードを取り出し見せる。

 

「……それだけでは信用出来ん。顔を見せろ」

 

 冒険者カードを確認した衛兵であったが、それでも顔を確認しようとする。

 当然の事だ。顔を隠すという事はやましい事があるという事なのだから。

 これで犯罪者が顔を隠していました、などの可能性がある以上確認しなければならない。

 

「わかりました」

 

 エディスは大人しく仮面を取り、顔を見せる。

 エディスが顔を隠すのは心無い言葉を言われるのを避ける為であり、業務上必要な時などに顔を晒すのは別に何とも思わない。

 

「……」

 

 エディスの顔を見た衛兵は言葉を失い、顔を見つめる。

 何か変な物でもついているだろうか、とエディスは心配になり口を開く。

 

「あの、何か?」

 

「……い、いや、何でもない。よろしい」

 

 衛兵の言葉を受けてから仮面を付けて普段通りの状態にエディスは戻す。

 

「では、これで」

 

 街と街を行き来するのに旅人や冒険者等は通行税は掛からない。

 これが商人などの場合積み荷次第でかかりもするが、冒険者の場合は問題ないのは全ての責任を冒険者ギルドが負ってくれるから。何かあった際の補償をギルドがするのと、魔法という超常がある以上はある程度のリスクは受け入れないと話が進まないのもある。

 後は<資材空間>(ポケットスペース)等の異空間収納系の魔法がある以上冒険者などの魔法士相手に所持品の検査などしていたらそれだけで日が暮れてしまうからというのもあるが。

 

 エディスは少しばかり速足で城門を潜り抜けた。

 

 城門を抜けた先は、当然街がある。

 ただパウルよりは規模が違う。

 第一に、歩道がよく整備されている。

 へこみや歪みの無い整備された石畳み性の歩道と車道。

 幅も広く取られており、両隣で馬車が行きかう事も可能だろう。

 街路樹も植えられており、景観的にも良い。

 

 

「……さて」

 

 この街に来たのは図書館を求めてである。図書館で目的地について調べればそれでこの街の用事は終わる。

 だが肝心の図書館の位置がわからない。今更門番に聞きに戻るのも気恥ずかしい。

 

 エディスは諦めて、この世界に来て三つ目の、グラプスの街中を進んだ。

 

 

 

 ■

 

 

 そうして進み始めて、エディスは目的地を見つけ出した。

 人に頼る事無く見つけられたのは、目的地である図書館が非常に大きかったからだ。

 街の外周部の城壁よりも高い建物は、街の何処にいても見える位置にあった。

 何の建物なのかと好奇心に駆られ歩いていたエディスは建物の入り口に大きく書いてある"図書館"の言葉にエディスは心躍った。

 意気揚々と両開きのドアを開けて、エディスは中に入り込んだ。

 

 ──広い。

 

 それが第一印象だった。

 

 ただの受付ですら、広い。横手についている受付が三つほど付いている。

 

 一歩ずつ、エディスは足を進め、受付の前につく。

 

「……本館に訪れるのは初めてでしょうか。でしたら入場料千Gかかりますが」

「わかりました」

 

 受付の言葉にエディスは大人しく懐から冒険者カードを取り出す。

 冒険者カードが有する機能の一つに電子マネーが存在する。

 

 この世界での通貨は二つある。

 一つが硬貨、銀貨や銅貨等のファンタジーらしい通貨である。と言っても魔法的手段で製造される通貨であり偽装防止の魔法等も掛かっている為偽通貨等は流行りようが無いように工夫されている。

 偽通貨を作る手間暇をかけるなら普通に働いて金を得た方が楽な程度には偽造を難しくしている。

 

 もう一つが冒険者カード等の魔法道具(マジックアイテム)による仮想化、データ化された通貨によるやり取りだ。

 これには民営の会社等がカード発行をすることもあり、とどのつまり日本におけるカードと何も変わりはしない。

 主に使われるのは通貨類だが大金を容易く稼ぐ冒険者や商人などはカードを使う事が多い。

 

 冒険者カードを受け取った受付はカードを専用の魔法道具(マジックアイテム)に通して支払いを済ませるとカードを返却する。

 

「どうぞ。とう図書館をご堪能くださいませ」

 

 

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