なまえのないかいぶつ   作:アニメ見て

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犯罪都市編、スタートです。
話の順番を入れ替えました。


Setkání

 

 

 

偶然立ち寄った銀行で、まさかこんなことになるとは——。

 

 

天馬賢三は壁に寄りかかりながら、静かに息をついた。銀行強盗による立てこもり。周囲には怯えた人々の姿がある、天馬自身もまた状況を飲み込めずにいた。

 

「……おじさん」

 

不意に小さな声が耳に届いた。

視線を向けると、そこにはメガネをかけた幼い少年がいた。なんだか利発そうな顔立ちだ。

 

「僕、江戸川コナン!おじさんのお名前は?」

 

「私か? 私は天馬賢三」

 

「よろしくね、天馬おじさん……ねぇ、僕たち協力しない?」

 

「おじさん、か…まあいい。協力、とは?」

 

苦笑しつつも、天馬は少年の案を聞いた。

どうやら互いに縛られた縄を外すそうというのだ。

リスクがあると窘めはしたが、少年の自身は揺らがない。その為、天馬は1人で行動させるよりはマシと考え協力する事にした。

 

 

少しずつ力を合わせ、2人の縄が外れたその時。

 

____ふいにこちらを見張っていた強盗に見つかってしまった。

 

「おい、何をゴソゴソやってやがる!」

 

怒鳴り声とともに、乱暴に近づいてきた男が、少年の襟首を掴んだ。

 

「な、何もしてないよ」

 

「言い訳すんじゃねえ!」

 

バシン、乾いた音が響いた。

コナンの小さな体が床に叩きつけられ、思わずバウンドする。頬に赤い痕が残り、口の端から血が滲んだ。その光景を見た瞬間、血が沸騰したかのように体が熱くなる。

 

「子供に何をするッ!」

 

天馬の怒声が場を裂いた。

 

「うるせえ! てめえも大人しくしてねえとぶっ殺すぞ!」

 

荒々しく銃口が向けられる。天馬は睨みつけたまま、冷静になるためにゆっくりと息を吐いた。

 

「……分かった」

 

ひとまず、今は刺激しない方がいい。

だが、コナンの怪我を放っておくわけにはいかない。天馬はすぐに彼の元へ膝をつき、手早く状態を確認した。

 

「ちょっと傷を診るぞ」

 

「っ…ありがとう、おじさ…天馬さん……」

 

「無理に話すんじゃない、痛むだろう」

 

上唇の端が切れ、軽い打撲の痕もある。

傷口を応急的に圧迫し、手持ちのハンカチで血を拭った。

 

「おい、勝手なことするな!」

 

天馬のその様子に怒りを顕にした強盗一味が、再び拘束をしようと縄を持って近づいてくるも、天馬が動じることは無かった。

 

「ただの応急処置だ。邪魔をするな」

 

低く、しかし強い口調。

「処置が終われば、縛るなり殴るなり好きにすればいい」 その迫力に、強盗は舌打ちをしながらもそれ以上の干渉をしてこなかった。

 

 

 

 

 

一方その頃——。

 

「さて、あなた方の心理状態を考えればこちらの要求が呑めるはずだ」

 

冷静な声が、通信機の向こうで響いていた。警察の手に負えない状況の中、犯人との交渉役を任されたのは、犯罪心理学を学ぶ若き学生——ヨハン・リーベルト、そう名乗る青年だった。

 

「な……なんだお前、何者だ?」

 

「僕ですか? ただの学生ですよ」

 

穏やかな笑みとともに、静かに言葉を重ねていく。まるで全てを見透かしているかのような口調で。

 

「僕の声をよく聞いてください。今、あなたが感じている恐怖も、焦燥も、全て理解できます」

 

「お前なんかに何がわかるって言うんだ」

 

その言葉に反発する犯人。それに警察は刺激してしまったかと焦るが、ヨハンは続けた。

 

「心の中で、誰かが君を試しているのでしょう?あなたの中にいる”怪物”は、ただの幻に過ぎない事、気づいてるんじゃないですか?」

 

犯人がしばらく黙り込む。

 

「辛かったんですね。背負わなければならなかったものが重すぎた。それでも、もう終わりにしましょう。これ以上は、あなたの望みじゃないでしょう」

 

本当は、別の生き方を望んでたんじゃないですか?ヨハンの言葉に、犯人は堰を切ったように言葉が溢れ出す。

 

「ああ…あああ…どうして、どうしてこんなことに…こんなはずじゃ…」

 

「いいんです、あなたは悪くありません。ただ、少しだけ道を外れただけです。だから今、すぐに手を引けばまだやり直せます」

 

犯人の懺悔が、電話越しに次々と溢れ出す。

 

それらを静かに聴きながら、ヨハンは傍らの警官に静かに状況を伝え、銀行に警察が突入した。

 

 

交渉していた強盗のリーダーは一切の抵抗をしないまま捕まり、それを見た仲間達も戦意喪失したのか、大きな抵抗は無いまま連行され事件は驚くほど静かに収束したのだった。

まるでそれが、必然だったかのように。

 

 

 

 

___無事救出された天馬の腕の中に少年は居た。

 

「この子が犯人に殴られました。応急処置は済ませましたが、念のため検査した方がいい」

 

天馬の言葉に、警察官が頷く。

 

「私は目暮と申します。失礼ですが、お医者様ですかな…? いや、あなたどこかで見た顔だ」

 

「はい、私は医者の天馬賢三と言います」

 

「ああ、貴方があの世界的名医Dr.テンマ! ニュースでお見かけしました、お会いできて光栄です」

 

「いえ、そんな大層なものでは……とにかく、この子を病院に」

 

「お任せください」

 

騒がしさが落ち着いた後、コナンが天馬の元へ歩み寄る。

 

「天馬さん、本当にありがとう!」

 

「気にするな。君は……無茶をする子供だな、もう少し自分の身を大切にする事だ」

 

「あはは…ごめんなさぁい…」

 

 

やり取りを終え、天馬はふと視線を上げる。

そして、すれ違う青年と目が合った。

 

——「彼は?」

 

目暮が軽く説明する。

 

「あの方は犯罪心理学の学生さんですよ。犯人に対するプロファイリングがピタリと当たるもので、ときどき知恵をお借りしているんです。いやあ、不思議な魅力のある青年ですな」

 

「なるほど……あんなに若いのに、大したものですね(それにしても、どこかで……)」

 

天馬は思い出した。彼は以前、診察を受けたことのある、あの時の変わった患者だった。

 

「彼、学生だったのか……」

 

「おや、お知り合いでしたか?」

 

天馬のつぶやきに、目暮が問いかける。

 

「いえ、そういう訳では…。一度診たことが有りまして、ただ医者と患者の関係ですよ」

 

 

『医者と患者』____それだけの筈だ。

噛み合うようで噛み合わない、少しの違和感。

そのデジャヴに一瞬、脳がチリチリと痛んだ。

 

 

 

再び視線を向けた時、青年の姿はもうどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 




Setkání=遭遇

主人公は天馬のつもりで書いてるので、世の不条理を出していきたいと思ってます。今回コナンが殴られたのもそうです。
あとヨハン迷ったんですけど、犯罪心理学専攻の大学生にしました。タートルネックで顔のいい大学生……妙だな…もう一人いる…?
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