なまえのないかいぶつ 作:アニメ見て
____数週間前。
病院の待合室には、微かに消毒液の匂いが漂っていた。午後の診察時間、壁掛けの時計は四時半を指している。患者はまばらで、椅子に座る者もいれば、スマートフォンを眺める者もいる。その中で、一人の青年が静かに順番を待っていた。
金髪に端正な顔立ち、白いシャツに黒いジャケットを羽織った姿は、日本人には見えない。だが、受付で交わしていた会話は流暢な日本語だった。
「ハインリヒさん」
名を呼ばれると、彼はゆっくりと立ち上がり、診察室の扉を押した。
「こんにちは、どうされましたか?」
部屋には、穏やかな声が響いた。
白衣を纏った医師は、カルテを確認しながら青年を見上げる。
「最近、頭痛がひどくて」
青年──ハインリヒは柔らかく微笑みながら言った。
「頻度は?」
「毎日のように。特に夜がひどいですね」
診察をする医師___天馬 賢三はペンを走らせながら、患者の表情を観察する。青い瞳はどこか遠くを見ているようで、焦点が合わない。
「何か心当たりは?」
「……いいえ」
短い沈黙が落ちる。
天馬はカルテを閉じ、落ち着いた口調で続けた。
「まずは軽い検査をしましょう。異常がなければ、ストレス性のものかもしれません」
ハインリヒは静かに頷く。
「日本語がお上手ですね」
不意に天馬が言った。
ハインリヒは軽く目を瞬かせ、すぐに微笑む。
「ええ、僕は養子なので」
その言葉に、天馬は一瞬だけ目を細めた。
「そうですか」
それ以上は何も言わず、彼はカルテに視線を戻した。
____ハインリヒは診察室の雰囲気を静かに観察していた。机の上に置かれた書類、壁に掛けられた人体図、整理整頓された棚。どこにでもある病院の光景。だが、この空間の主である医師だけは、彼にとって特別な存在だった。
名前も、声も、仕草も、記憶の中にある人物と変わらない。けれど、天馬の瞳には何の感情も浮かんでいなかった。
天馬はふと、青年の視線が自分に向けられていることに気づく。
先ほどから、青年はじっとこちらを見ていた。
不思議な視線だった、単なる患者が医者を見る目ではない。
「……何か?」
「……先生は、どうして医者になったんですか?」
不意の質問だった。
天馬は一瞬、言葉を探すように視線を落とす。
「……どうして、と言われると……まあ、人を救いたいと思ったから、かな」
「人を……救いたい」
青年はその言葉をゆっくりと反芻した。薄く笑う。
「素敵な考えですね」
「別に、特別なことじゃないさ。医者なら、みんなそう考えてるだろう」
天馬は軽く肩をすくめた。
青年は再び、天馬をじっと見つめる。
その目には、奇妙な静けさと、言葉にならない何かが滲んでいた。
「……先生は、人を選ばずに救いますか?」
その言葉に、天馬はカルテを記入する手を止めた。
「……当たり前だよ。医者だからね」
「そうですか」
青年はゆっくりと立ち上がる。
「何だか頭痛は治ったみたいです、ありがとうございました。Dr.天馬……貴方は名医です」
その瞬間、ふっと一瞬だけ、天馬の背筋を冷たい感覚が走った。
理由はわからない。だからだろうか、天馬にしては珍しく青年を引き止める言葉が出てこなかった。
「あ、ああ。それは良かった…。お大事に…」
青年が部屋を出ていくのを見送りながら、天馬はふと、自分でも理解できない違和感を覚えていた。
やはり、覚えていないのか。
それとも、自分を知らない別人として生きているのか。
ハインリヒと名乗った青年は小さく息を吐いた。
診察が終わり、ハインリヒは静かに病院の廊下を歩いていた。
ポケットに手を突っ込みながら、ふと立ち止まる。
ガラス越しに見える夕焼けの色。
赤く染まった空は、どこか遠い昔を思い出させた。
──なまえのないかいぶつは かんがえました
どうして ぼくには なまえがないのだろう?
「あの日、僕は逃げ出してしまった」
まるで祈るかのように呟く。
──おそらのうえの おおきなおおきなおうじに
たのみました。 おねがいです ぼくに なまえをください
病院の自動ドアが開く。
冷たい風が、頬を撫でる。
「あなたが僕を生かしたんだ…また、あなたが僕を…」
壊れかけた人形の様に繰り返すと、そのまま彼は振り返ることなく病院を後にした。
_____かいぶつはしっぱいしました
すてきな なまえがついたのに よんでくれるひとがいないと いみがないのです。
ヨハン すてきな なまえなのに。。。
うまれかわった かいぶつはもういちど
たびにでることにしました。
こんどは なまえをよんでくれるひとを さがすたびに こんどはしっぱいしないように。
最近ハマりました。
Monsterからはヨハンと天馬しか出す予定無くて、他は名探偵コナンベースなのでこの2人だけ調べたら読めると思います。
1話と2話の順番を入れ替えました。
Podívej=見て/見ろ