万装の記憶消失の艦娘と新人提督。   作:snooze

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第十二話 気合の建造

朝。

 

整備も終わり、建物も人員も整い、

今ここから、再び歴史が刻まれ始める。

 

提督の訓示に、艦娘たちがビシッと整列して応じる。

 

──が、

 

「にゃしぃーーーっ!!」

 

「にゃ、また転んだ!!」

 

整列中に思いっきり転ぶ睦月。

すかさず曙が蹴飛ばして列に戻す。

 

提督は遠い目をしながら、

(先が思いやられる……)と小さく呟いた。

 

それでも、鎮守府に再び活気が戻ったのは間違いなかった。

 

舞鶴鎮守府の再建第一歩として、新しい艦娘を建造することに。

 

資材もギリギリ、でも気合いは十分。

 

提督の号令と共に、工廠がざわめき始める。

 

建造炉の周りに、ぞろぞろと現れる妖精さんたち。

 

「よーしやるぞーー!!」

「資材持ってこーーい!!」

「鉄材? いや、まず燃料燃やすかーー!!」

 

何の打ち合わせもなく、自由に暴れ出す。

 

「えええ!? そっちじゃないにゃしぃ!!」

「違うでしょ!こっちの資材でしょ!!」

「バカばっかり……」

曙が心底うんざりした顔で呟く。

 

資材コンテナを頭の上に乗せて走る妖精、

ドラム缶に乗ってコロコロ転がる妖精、

爆発する炉を見てハイタッチする妖精。

 

もう工廠は完全にカオス。

 

提督は頭を抱えた。

 

「頼むから……せめて手順通りにしてくれ……!」

 

ヴァルキューレも、初めて見る光景に目を丸くしていた。

 

(これが……人類の希望?)

 

「いくぞぉぉぉ!!」

 

妖精さんたちの掛け声と共に、炉が轟音を上げた。

 

白い光が溢れ、

そこから元気いっぱいの声が飛び出す。

 

「こんにちは、白露型駆逐艦『夕立』よ。よろしくね!」

 

「駆逐艦夕立、改装の必要な練度が低く、早くから鎮守府の戦力となりますね」

 

その瞬間、ヴァルキューレ胸の奥に、

ぎゅう、と締め付けるような痛みが走った。

 

(……なに、これ)

 

懐かしい。

苦しい。

でも、思い出せない。

 

夕立が笑っているのを見ながら、

ヴァルキューレは一人、言葉にならない胸騒ぎを覚えていた。

 

 

 

「まだまだいくぞぉぉぉ!!!」

 

テンション上がった妖精さんたちが、ノリノリで次の建造に入る。

 

また光が弾けて──

 

「オレの名は『天龍』。フフフ、怖いか?」

 

「………」

 

「…」

 

「…………」

 

「………」

 

「おい!黙るんじゃねぇ!!」

 

 

 

さらに、舞鶴鎮守府が正式再稼働したことで、

以前派遣されていた艦娘たちも続々と帰還してきた。

 

「ただいま戻りました!」

「やっぱ舞鶴は落ち着くなぁー」

 

鎮守府がどんどん賑やかになる。

 

提督は、心の底から思った。

 

(やっと、ここからだ……)

 

皆が笑い、にぎわう鎮守府。

でもヴァルキューレだけは、少し離れた場所で海を見ていた。

 

(なぜ、私は……)

 

夕立を見たときに覚えたあの胸の痛み。

それが何なのか、彼女にはまだわからない。

 

けれど、

確かにそれは、心の深い場所で、何かを呼び覚まそうとしていた。

 

──静かに、確実に。

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