それから二ヶ月。
舞鶴鎮守府は、かつての輝きを少しずつ取り戻しつつあった。
新たに建造された艦娘たち。
他鎮守府から戻ってきたベテランたち。
訓練、整備、遠征、哨戒……
日々の任務を積み重ね、今や舞鶴は、
「四大鎮守府の名に恥じない戦力」と大本営にも評価されるようになっていた。
整然と並ぶ艦娘たち。
眩しい朝陽の下、提督はふっと微笑む。
(……よくここまできたな)
昼下がりの訓練場。
「にゃしぃー!! うわぁぁ!!」
「また転んだにゃしぃ!!」
睦月が派手にこけて、妖精さんたちが小さな担架を持ってワラワラと駆け寄る。
「大丈夫にゃしぃー!?」「担架搬送用意!!」「モルモット、いける!!」
「モルモットじゃないにゃしぃー!!」
ドタバタと駆け回る睦月と妖精たち。
一方、
夕張が「超兵器だよ!」と笑顔で持ち込んだ奇妙な装置が、天龍に思いっきり叩き壊される。
「んなもん持ち込むなぁ!!」
「科学の進歩には犠牲が必要なんですー!!」
平和な日常。
賑やかで、笑い声の絶えない鎮守府。
ヴァルキューレも、その輪の中に、静かに混じっていた。
夕立がぴょこんと跳ねながら、ヴァルキューレに近づいてきた。
「ヴァルキューレちゃん、なんか、夕立と同じ……なんて言うんだろ……」
「……私と?」
「うーん…… なんだろ、懐かしい感じがするっぽい!」
無邪気な笑顔。
ヴァルキューレは戸惑いながらも、
心の奥に温かいものが広がるのを感じた。
(……懐かしい)
理由はわからない。
けれど、
この子と一緒にいると、なぜか心が和らぐ。
「……そう、かもしれませんね」
ヴァルキューレは、そっと微笑んだ。
夜。
誰もいない海辺。
ヴァルキューレは、一人、静かに海を見つめていた。
──その時。
「……還れ……還ってこい……」
風に混じって、聞こえた声。
ハッとして周囲を見渡す。
だが、誰もいない。
(今のは……)
胸の奥が、冷たく震える。
懐かしさと、恐怖。
二つの感情が絡み合い、ヴァルキューレを揺さぶった。
(私……なにか、大事なことを……)
しかし、思い出せない。
手を伸ばしても、掴めない。
ヴァルキューレは、
深い深い闇の向こうに、何かが蠢く気配を感じていた。
翌朝。
司令室に、緊急電文が届いた。
提督はそれを一読し、
険しい顔で、艦娘たちを招集した。
集まった艦娘たち。
鎮守府に緊張が走る。
提督は高らかに宣言する。
「──大本営より、作戦命令だ」
提督の声が、静かに、しかし力強く響く。
「これより、全国鎮守府合同による総力作戦──“鉄底海峡制圧作戦”──を発令する!!」
騒然とする艦娘たち。
鉄底海峡──
それは、深海棲艦が支配する、絶望の海。
その昔、多数の艦船、航空機がその海の藻屑となったことから言われる、まさに死地。
「作戦目標は、敵の拠点制圧。我々、舞鶴鎮守府も、作戦に参加する!」
提督は一歩踏み出し、拳を握った。
「生きて帰るぞ。必ず──誰一人欠けることなく!」
ヴァルキューレは、ぎゅっと胸に手を当てた。
(私も……行かなきゃ)
心の奥から、名前のない声が囁く。
(──あの海に)
どこかで、必ず出会う。
忘れていた何かに。
そんな、確かな予感を抱きながら──
ヴァルキューレは静かに目を閉じた。
ほら、そろそろヴァルキューレちゃん動かすから、今のうちにお気に入り登録をして追いかける準備を!!ね!?