万装の記憶消失の艦娘と新人提督。   作:snooze

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ヴァルキューレ、起動


第十四話 無双ゲーの主人公ってこういう気分なのか

ルンバ沖海域。

 

泊地棲鬼を中心とした深海棲艦の猛攻に、

舞鶴艦隊は押されに押されていた。

 

「くっ……!!」

 

砲撃をかわしながら長門が叫ぶ。

 

「まだだ……! 耐えろ!」

 

赤城と加賀の艦載機隊も必死に制圧を試みるが、

敵の数は次から次へと湧き出してくる。

 

睦月たち駆逐艦は満身創痍、

雷も電も、互いを支え合いながら必死に戦っていた。

 

──限界だった。

 

その時、

夜空を裂く閃光が走った。

 

海面に舞い降りる、一筋の流星。

 

ヴァルキューレだった。

 

新たな艤装を背負い、

背中から白い蒸気を噴き上げながら、

海面すれすれに着地。

 

「ヴァルキューレ……!」

 

神通が、思わず声を漏らした。

 

「なにあれっぽい……すごいっぽい!!」

 

夕立が、輝く目で叫ぶ。

 

 

「(……さて、行きますか)」

 

ヴァルキューレは言葉もなく、

即座に敵陣へ突っ込んだ。

 

──ズドンッ!!

 

放たれた主砲弾が、深海駆逐艦を一撃で粉砕。

 

そのまま高速で加速し、

次の目標に肉薄。

 

炸裂する砲火。

轟く雷撃。

一瞬にして、数隻の深海棲艦が沈んでいく。

 

「な、なにあれ……!」

 

飛龍が、目を見開いた。

 

「あれが艦娘一人が出せる威力なの……?」

 

加賀も、僅かに声を震わせた。

 

そんな中、ヴァルキューレの耳に通信が飛び込んだ。

 

「ヴァルキューレちゃん! 聞こえる!?」

 

夕張の声だった。

 

「君の艤装、駆逐・雷巡・戦艦・空母、四つのモードに切り替えできるの!」

 

「状況に合わせてモードチェンジして! 君ならできる!!」

 

ヴァルキューレは、ほんの一瞬だけ驚いた。

 

(四つ……の形態……?)

 

だがすぐに理解する。

 

(いいね、おもしろい)

 

一瞬で決意を固めると、ヴァルキューレは操作盤を叩いた。

 

(だいたいこんな感じでやれば…)

 

ヴァルキューレは、通信機越しに聞こえた夕張と明石の声に、

短く息を飲んだ。

 

恐らく夕張が提督に言って吹き込ませたのだろう、艤装から提督の声を編集した音声が聴こえてくる。

 

「──駆逐艦形態、起動

 

シュウウウッ──!

 

艤装が軽量化し、

背部の補助ブースターが高回転音を立てる。

 

次の瞬間、

ヴァルキューレは海面を滑るように走り出した。

 

「はああああっ!!」

 

超高速の移動と共に、

放たれる大量の魚雷が一直線に敵駆逐艦群を串刺しにする。

 

ズドン! ズドン!

 

深海棲艦たちは反応する間もなく爆散した。

 

「次──雷巡モード、切り替え!」

 

雷巡形態、起動

 

カシャンッ!

 

艤装が変形し、

腕部から大型の魚雷発射管がせり出す。

 

ヴァルキューレは、狙いを定め──

 

「散れッ!!」

 

ズドドドッ!!!

 

一斉発射された重雷装が、

中型深海棲艦たちをまとめて吹き飛ばした。

 

海面が爆発の炎で赤く染まる。

 

「さらに──戦艦モード、展開!」

 

戦艦形態、起動

 

ゴウンッ……!

 

艤装の背部が重厚な砲塔に変形し、

大口径砲が火を噴く。

 

──ドオォン!!

 

轟音と共に、泊地棲鬼の肩を掠める弾丸。

 

「……ッ!」

 

泊地棲鬼の漆黒の外殻に、

わずかに傷が刻まれた。

 

「トドメに……空母!」

 

空母形態、起動

 

ギィィィ──!

 

艤装がさらに変形し、

小型の艦載機ドローンが次々と発進。

 

ヴァルキューレが手をかざすと、

無数のドローンが上空に舞い上がり、

広域に支援爆撃を開始した。

 

ズガガガガガ!!

 

深海棲艦たちは、空からの無数の弾幕に逃げ惑う。

 

「このまま……押し切る!!!」

 

ヴァルキューレは吠えるように叫び、

四つのモードを縦横無尽に切り替えながら、

戦場を無双していった。

 

 

泊地棲鬼は、

ヴァルキューレの猛攻に初めてぐらりと後退した。

 

暗黒のオーラがたゆたう。

 

──その顔に、

確かに「焦り」の色が浮かんでいた。

 

……ナゼ、オマエガ……イヤ、ソウイウコトカ…!!!

 

海にこだまする、低く震える声。

 

ヴァルキューレは、

黙って泊地棲鬼を見据えた。

 

その瞳には、

微塵の恐れもなかった。

 

戦場は、静かに凍りつく。

 

ヴァルキューレと泊地棲鬼。

 

二つの異質な存在が、

互いに重低音のような“力”をぶつけ合う。

 

次の一撃が、すべてを決める。

 

(──私は、みんなを守る)

 

ヴァルキューレは、

ぎゅっと拳を握った。

 

「これで終わり」

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