ルンバ沖海域。
泊地棲鬼を中心とした深海棲艦の猛攻に、
舞鶴艦隊は押されに押されていた。
「くっ……!!」
砲撃をかわしながら長門が叫ぶ。
「まだだ……! 耐えろ!」
赤城と加賀の艦載機隊も必死に制圧を試みるが、
敵の数は次から次へと湧き出してくる。
睦月たち駆逐艦は満身創痍、
雷も電も、互いを支え合いながら必死に戦っていた。
──限界だった。
その時、
夜空を裂く閃光が走った。
海面に舞い降りる、一筋の流星。
ヴァルキューレだった。
新たな艤装を背負い、
背中から白い蒸気を噴き上げながら、
海面すれすれに着地。
「ヴァルキューレ……!」
神通が、思わず声を漏らした。
「なにあれっぽい……すごいっぽい!!」
夕立が、輝く目で叫ぶ。
「(……さて、行きますか)」
ヴァルキューレは言葉もなく、
即座に敵陣へ突っ込んだ。
──ズドンッ!!
放たれた主砲弾が、深海駆逐艦を一撃で粉砕。
そのまま高速で加速し、
次の目標に肉薄。
炸裂する砲火。
轟く雷撃。
一瞬にして、数隻の深海棲艦が沈んでいく。
「な、なにあれ……!」
飛龍が、目を見開いた。
「あれが艦娘一人が出せる威力なの……?」
加賀も、僅かに声を震わせた。
そんな中、ヴァルキューレの耳に通信が飛び込んだ。
「ヴァルキューレちゃん! 聞こえる!?」
夕張の声だった。
「君の艤装、駆逐・雷巡・戦艦・空母、四つのモードに切り替えできるの!」
「状況に合わせてモードチェンジして! 君ならできる!!」
ヴァルキューレは、ほんの一瞬だけ驚いた。
(四つ……の形態……?)
だがすぐに理解する。
(いいね、おもしろい)
一瞬で決意を固めると、ヴァルキューレは操作盤を叩いた。
(だいたいこんな感じでやれば…)
ヴァルキューレは、通信機越しに聞こえた夕張と明石の声に、
短く息を飲んだ。
恐らく夕張が提督に言って吹き込ませたのだろう、艤装から提督の声を編集した音声が聴こえてくる。
「──駆逐艦形態、起動」
シュウウウッ──!
艤装が軽量化し、
背部の補助ブースターが高回転音を立てる。
次の瞬間、
ヴァルキューレは海面を滑るように走り出した。
「はああああっ!!」
超高速の移動と共に、
放たれる大量の魚雷が一直線に敵駆逐艦群を串刺しにする。
ズドン! ズドン!
深海棲艦たちは反応する間もなく爆散した。
「次──雷巡モード、切り替え!」
「雷巡形態、起動」
カシャンッ!
艤装が変形し、
腕部から大型の魚雷発射管がせり出す。
ヴァルキューレは、狙いを定め──
「散れッ!!」
ズドドドッ!!!
一斉発射された重雷装が、
中型深海棲艦たちをまとめて吹き飛ばした。
海面が爆発の炎で赤く染まる。
「さらに──戦艦モード、展開!」
「戦艦形態、起動」
ゴウンッ……!
艤装の背部が重厚な砲塔に変形し、
大口径砲が火を噴く。
──ドオォン!!
轟音と共に、泊地棲鬼の肩を掠める弾丸。
「……ッ!」
泊地棲鬼の漆黒の外殻に、
わずかに傷が刻まれた。
「トドメに……空母!」
「空母形態、起動」
ギィィィ──!
艤装がさらに変形し、
小型の艦載機ドローンが次々と発進。
ヴァルキューレが手をかざすと、
無数のドローンが上空に舞い上がり、
広域に支援爆撃を開始した。
ズガガガガガ!!
深海棲艦たちは、空からの無数の弾幕に逃げ惑う。
「このまま……押し切る!!!」
ヴァルキューレは吠えるように叫び、
四つのモードを縦横無尽に切り替えながら、
戦場を無双していった。
泊地棲鬼は、
ヴァルキューレの猛攻に初めてぐらりと後退した。
暗黒のオーラがたゆたう。
──その顔に、
確かに「焦り」の色が浮かんでいた。
「……ナゼ、オマエガ……イヤ、ソウイウコトカ…!!!」
海にこだまする、低く震える声。
ヴァルキューレは、
黙って泊地棲鬼を見据えた。
その瞳には、
微塵の恐れもなかった。
戦場は、静かに凍りつく。
ヴァルキューレと泊地棲鬼。
二つの異質な存在が、
互いに重低音のような“力”をぶつけ合う。
次の一撃が、すべてを決める。
(──私は、みんなを守る)
ヴァルキューレは、
ぎゅっと拳を握った。
「これで終わり」