サンタクロース諸島へ向かう直前のドック。
妖精たちが総動員で艦娘たちの装備を整えていた。
「ほいっ! 魚雷詰め直し完了! 次ぃ!」
「爆装3、艦載機4、補給良し!」
「高角砲、いつもより多めに積んでますー!」
……やたらハイテンションな妖精たちに、夕張がツッコミを入れる。
「テンションだけで全部済ませようとするなー!!」
その声が響く中、艦娘たちが次々に整備を終え、
準備区域に集合し始めた。
提督は作戦指令室で各艦隊の再編を確認していた。
第一艦隊:長門・陸奥・赤城・加賀・神通・吹雪
第二艦隊:高雄・愛宕・夕立・睦月・雷・電
旗艦:神通
支援艦隊として、ヴァルキューレが別行動で海域を展開予定。
彼女の艤装はまだ完全ではない。
空母形態も雷巡形態も封印中。
駆逐と戦艦形態のみ使用可能という制限付き。
それでも──戦わせる価値があると、提督は判断していた。
艤装室。
ヴァルキューレは無言で装着手順をこなしていた。
夕張がすぐ横でチェックをしながら言う。
「空母形態は一応動かせないことはないけど……出力安定せず。
雷巡形態に至っては、安全装置解除できません。ごめんね」
「……構いません」
「筋肉痛は?」
「……踵に少し」
「そこっ!? ……いや、もーっ!」
夕張が頭を抱える一方で、明石がぽん、とヴァルキューレの肩を叩いた。
「安心して、みんながついてる。ちゃんと生きて帰るんだよ?」
「……はい」
ヴァルキューレは、その言葉だけには、小さく微笑みを見せた。
サイレンが鳴る。
舞鶴鎮守府の艦娘が、一斉に桟橋へ駆け出した。
提督は高台からその姿を見送りながら、
ひとつだけ呟いた。
「……全員、帰ってこいよ」
艦娘たちは振り返らない。
海に向かって、ただ前進していく。
蒼く、広く、そしてこれまで以上に深く重たい海が──
その先に待っていた。
現地時間:0430。
、第一接触。
偵察艦が敵艦隊を視認。
「敵、飛行甲板を展開中! ……艦載機、来ます!」
「くっ、全員、対空陣形に移行!」
第一波、深海艦載機が上空から殺到する。
赤城・加賀の艦隊が迎撃態勢に入り、
雷や電が必死に対空砲火を続ける。
「──敵艦載機、高速すぎます!」
雷が叫ぶ。
だがその瞬間、背後の空を切り裂いて、
新たな艦載機群が姿を見せた。
通常の深海棲艦とは違う、艶のある漆黒。
そして、驚異的な旋回性能。
その影の奥に、
一際大きな艦影が、ゆっくりと姿を現した。
長くなびく漆黒の髪。
異常な艤装量を誇る巨大空母型。
──装甲空母姫。
艦載機群が一斉に展開。
海面から空に、黒い雨が降るかのようだった。
第一艦隊がその砲撃圏内に入る直前──
「ヴァルキューレ、応戦可能か!」
司令部からの呼びかけに、ヴァルキューレは即答した。
「はい、──やれるだけ、やります」