ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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十番目の試練ゲート10

「みんな今だ!」

 

 トモナリに続いてみんなで同族喰らいオークを攻撃する。

 コウが火の魔法を放って同族喰らいオークの注意を逸らし、その間にミズキたちは足を狙う。

 

「な、なんだこいつ!」

 

 これまでのオークは足を切って地面に倒すことも難しくはなかった。

 左右の足をそれぞれ狙って攻撃すれば簡単に痛みに怯んで踏ん張りが効かずに倒れたのである。

 

 同じようにユウトとマコトで同族喰らいオークの足を切り付けた。

 普通のオークなら倒れるような攻撃でも同族喰らいオークは倒れなかった。

 

「避けろ!」

 

「クッ!」

 

「わわっ!」

 

 コウとマコトが振り下ろされた棍棒を慌ててかわす。

 

「同族喰らいオークは通常のものより硬くて痛みに強い。何度も足を攻撃するんだ!」

 

 同族を喰らうことを覚えて目が赤く染まった化け物は普通の個体よりも強くなる。

 強いとは単純に力だけではなく体の強靭さにおいても通常の個体よりも上になるのだ。

 

 体が硬くなったために今までと同じように攻撃すると刃の通りが浅くなってしまう。

 さらに同族喰らいは理性を失い感覚も鈍くなる。

 

 痛みを感じにくくなりダメージに対して反応が薄くなってしまう。

 体が硬くなるということとダメージに対して鈍くなるということの二つが合わさると耐久度がグッと上昇して厄介な相手になるのだ。

 

 トモナリはあえてそのことを口で説明しなかった。

 見た目がそんなに変わらないからと油断してはいけないしボスはボスとしてただのモンスターじゃないと身をもって知ることは大事だからだ。

 

 そのためにトモナリが最初の一撃で腕を切り飛ばして攻撃面で弱体化しておいたのである。

 

「サーシャ!」

 

「うん!」

 

 前に出たサーシャが同族喰らいオークに対して魔力を放つ。

 魔法ではなく魔力。

 

 これは一般的な挑発方法である。

 タンクはモンスターを引きつける必要があるのだが乱戦にもなりやすいモンスターとの戦いで何もせずタンクに攻撃が向けられることは少ない。

 

 普通ならば攻撃を仕掛ける人にモンスターの注意も向きがちなのであるが、タンクはモンスターに魔力を差し向けることで自分に注意を引きつけるのだ。

 モンスターは大概魔力に敏感であり、敵意の込められない魔力を向けられるとそちらの方に注意が向かうのである。

 

 挑発された同族喰らいオークは真っ赤に染まった目をサーシャに向けた。

 

「フッ!」

 

 サーシャは棍棒をかわすと同族喰らいオークの腕を槍で突く。

 浅いが痛みをしっかりと与えてさらに注意を引きつける。

 

「行くよー!」

 

 サーシャが引きつけてくれている間にミズキが同族喰らいオークの足元に入り込む。

 同族喰らいオークは足元のミズキに気づいていない。

 

 ミズキはしっかりと刀を振りかぶり、同族喰らいオークの足を切り裂いた。

 足を深々と切り裂かれた同族喰らいオークはぐらりとよろけた。

 

「スキルブレイクアタック!」

 

 クラシマがスキルを使いながらハンマーを同族喰らいオークの足に振り下ろした。

 足の甲に直撃したハンマーの衝撃が同族喰らいオークの足を駆け抜けた。

 

 ミズキに切られた足の踏ん張りが効かなくて同族喰らいオークのバランスが崩れてゆっくりと倒れる。

 

「総攻撃だ!」

 

 頭が攻撃しやすい位置にきた。

 同族喰らいオークを倒そうとみんなで一斉に攻撃を仕掛ける。

 

「サーシャの動きがいいな」

 

 同族喰らいオークは抵抗しようとしたのだがサーシャはそれを察して腕を激しく槍で突いて反撃を封じていた。

 モンスターのトドメに固執せず周りのことをよく見えているとトモナリは感心していた。

 

「どりゃーーーー!」

 

 最後の一撃はミズキのものだった。

 ボロボロになった同族喰らいオークの頭が地面を転がっていき、体がパタリと動かなくなる。

 

「……やったー!」

 

「俺たち……試練ゲートを攻略したのか!」

 

 同族喰らいオークが死んだのを確認してみんなは喜びの声をあげる。

 

「みんな、何か……」

 

 ドスンドスンと響く音が聞こえてきてマコトが振り返った。

 赤い目をしたオークが走ってきている。

 

「えっ、まだ……」

 

 血の匂いを嗅ぎ取って興奮した同族喰らいオークはとんでもない速さで走ってきて大きく飛び上がった。

 

「みんな、避けるんだ!」

 

 コウが叫ぶ。

 完全に気を抜いていたミズキに同族喰らいオークの棍棒が振り下ろされる。

 

「……っ!」

 

 かわせばかわせたのかもしれない。

 しかしとっさの出来事にミズキは目をつぶってしまった。

 

「目を閉じるな。どんなことがあっても相手から目を離してはいけない」

 

 トモナリの声が聞こえてミズキはそっと目を開けた。

 振り下ろされた同族喰らいオークの棍棒をトモナリは剣で受けてミズキのことを守っていた。

 

 敵が強なればまばたきの一瞬の隙すら危険に陥るし、相手もそれぐらいの隙すら見せないこともある。

 敵を目の前にして目を閉じるなんてしてはいけないのだ。

 

「ヒカリ!」

 

「ファイヤー!」

 

 同族喰らいオークの目の前に飛んでいったヒカリがカパッと大きく口を開いた。

 一瞬ヒカリの口の中がきらめき、真っ赤な炎のブレスが吐き出された。

 

 上半身に火がついて同族喰らいオークはバタバタと火を消そうとしてもがく。

 

「さっさとこんなところからおさらばさせてもらうぜ」

 

 トモナリは地面を蹴って大きく跳躍した。

 縦にまっすぐ剣を振り下ろして地面に着地し、同族喰らいオークに背を向けてルビウスを優しく鞘に収めた。

 

「トモナリ!」

 

「おつかれ、ヒカリ」

 

 ニコニコとしたヒカリが小さい拳を突き出し、トモナリも拳をコツンと合わせて応じる。

 その瞬間同族喰らいオークが頭から縦に真っ二つになって地面に倒れた。

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