ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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神を切る刀と弟子入り1

「ハァ……ハァ……」

 

「トモナリがんばれー」

 

「顔出すなよ?」

 

「分かってるよぅ」

 

 ゆかりの許可が出たけれど少しばかり条件もあった。

 ちゃんと勉強することやヒカリの面倒を見ること、モンスターなので騒ぎにならないように外では出さないことなどしっかり話し合って決めた。

 

 トモナリはゆかりが仕事で家を出た後ジャージに着替えて外を走っていた。

 目的は当然体を鍛えるため。

 

 回帰してトモナリは自分の体の弱々しさにショックを受けた。

 骨格としては悪くないのにあまり体を動かすタイプではなく、体力筋力ともにギリギリ平均か貧弱なぐらいだった。

 

 これから来るべき時のために基礎的な体力ぐらいつけておかねばならない。

 何の道具もないトモナリにできるのは走り込むぐらいだった。

 

 体の調子を見るにそれでも十分だ。

 

「くそっ……貧弱な体め……」

 

 トモナリは肩で息をしながら悪態をつく。

 貧弱なのは自分の体なので悪いのは鍛えてこなかった自分なのである。

 

 少し走っただけで息が乱れる。

 初日でひどい筋肉痛に襲われた時に比べると少しだけマシになったが自分の中にある満足な基準にはとても及ばなかった。

 

 少しだけ荷重もある。

 大きめのリュックにヒカリを詰め込んで連れてきているので背中がずっしりと重たく、それもまた体力を奪う。

 

 息を整えながら周りを警戒する。

 こんな時間に中学生が外を出歩いていては警察に補導されてしまうかもしれない。

 

 補導されるだけならまだいいがリュックの中にヒカリがいるのでそれがバレてしまうのはまずい。

 だから多少周りを警戒しているのだ。

 

「水飲む?」

 

「いや、まだいい」

 

「そっか」

 

 リュックの中から水筒の先っちょが出てくる。

 ヒカリが出してくれている。

 

 ただまだ飲まないつもりだというとすぐに引っ込む。

 

「今日はもう少し走るぞ」

 

「どっかいくの?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

 最初こそ色んなものが珍しいようで大変であったがヒカリは頭が良いようで言い聞かせるとしっかりとトモナリの言うことを聞いてくれた。

 今でも何かを見つけるたびに目をキラキラさせてリュックの中から覗いているが、周りの様子は確認しているらしくバレてはいない。

 

 息を整えたトモナリは再び走り出す。

 

「ふぅ……」

 

「ここ?」

 

 なんとなく固定されていたルートを外れて走っていき、大きな日本家屋の前でトモナリは走る速度を落とした。

 これまで見たことのない作りの家に面白いとヒカリはリュックから顔を覗かせている。

 

「これ、なんて書いてあるの?」

 

 塀にポスターのようなものが貼り付けてあってヒカリはそれを指差した。

 

「剣道を習いませんか?」

 

 まだ文字の読めないヒカリに代わってトモナリがポスターの内容を読み上げる。

 どうやらトモナリがいる日本家屋で剣道を教えているようで門下生を募集している張り紙であった。

 

「けんどー?」

 

「ああそうだ。さて、物は試しだ。突撃してみよう」

 

「おろ? けんどー習うのか?」

 

「剣道な。今のところ習うつもりはないけどな」

 

 トモナリは日本家屋のインターホンを鳴らした。

 

「はーい」

 

「剣道の門下生について話を聞きたいんです」

 

 インターホンから女性の声で返事が返ってくる。

 

「あっ、そうですか。どうぞ中に入ってください」

 

「おお! 勝手に開いていくぞ! 魔法か?」

 

「科学だよ」

 

 塀の門が開いていく。

 魔法でも同じことができるけれどこれは魔法ではなく科学の力で開いている。

 

「あら、意外と若い方ね」

 

 トモナリが門をくぐると家の中から女性が出てきた。

 こういう家の人だと和服なんかをイメージしていたけれど普通に洋服姿の綺麗な人だった。

 

「あっちの方に行くと剣道場があるから。そこにいるおじいさんに声をかけて聞いてみるといいわ」

 

「ありがとうございます」

 

 トモナリのような若い人が訪ねてきたことも疑問に思わないのか女性は普通に受け答えしてくれた。

 変に学校は、なんて聞かれるよりありがたかった。

 

 家の中には入らず石畳の道を通って家の横に行くともう一軒家があった。

 これが剣道場らしい。

 

 ドアをスライドさせて開くと広い仕切りもない木製フローリングの建物の端の方で老年の男性が座禅を組んでいた。

 

「失礼します」

 

 軽く頭を下げながら靴を脱いで剣道場に入る。

 

「あのー」

 

「なんじゃ?」

 

 トモナリが男性に声をかけると目を閉じたまま答える。

 

「神切が欲しいんですけど」

 

「なんじゃと?」

 

 あれ、もんかせーは? とリュックの中のヒカリは思った。

 驚いたように目を開けた男性はトモナリのことをじっと見つめている。

 

「なぜそれのことを知っている?」

 

「なぜでしょうね?」

 

 トモナリはここに門下生になりにきたのではなかった。

 必要なものがあるから欲しいと思っていた。

 

 ただお金でも売ってくれないだろうことは分かっている。

 だからといって盗み出すなんてこともできない。

 

 ならば正面から欲しいと言ってみようと思った。

 怒られたところで子供の戯言で済む。

 

「なぜあれが欲しい?」

 

「必要だから」

 

「……こんな時間にふらついている……高校生? いや、中学生か。誰かに復讐でもするつもりか」

 

 思いの外話を聞いてくれるようでトモナリは驚いた。

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