ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ただいま

「おかえりなさい」

 

「えっ、母さん?」

 

「ゆかり、帰ってきたぞ!」

 

「二人とも元気そうね」

 

 全てが終わってようやく本当に夏休みに入った。

 No.10ゲートの攻略なんて数日の出来事なのに長かったと思える。

 

 一応多少の遠出とはなったのでお土産を片手にトモナリは家に帰ってきた。

 鍵を開けて中に入るとトモナリの母であるゆかりが顔を出した。

 

 そしてトモナリとヒカリのことをギュッと抱きしめた。

 トモナリは驚いた。

 

 今日は平日でありゆかりは本来仕事でいないはずだった。

 

「どうして……」

 

「あなたたちが帰ってくるって聞いたから休みを取ったのよ」

 

 いきなり帰るなんてことはしないで事前に帰る連絡は入れていた。

 だからゆかりはトモナリとヒカリを迎えるために休みを取って待っていたのである。

 

「そっか……」

 

 やられたなとトモナリは思った。

 ゆかりは仕事でいないから先に帰って何かご飯でも作って待っていようと考えていたのに逆に驚かされてしまった。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい」

 

 トモナリは照れたように笑いながらゆかりを抱きしめ返した。

 守りたい温もりがここにはあった。

 

「ただいまだぞ、ゆかり」

 

「ヒカリちゃんもおかえり」

 

 ヒカリもギューッとゆかりを抱きしめる。

 あまり他の人に触られることは好きではないヒカリもゆかりには心を許していてぶんぶんと尻尾を振っている。

 

「それにしてもトモナリ!」

 

「な、なに?」

 

 優しかったゆかりの表情が急に険しいものになった。

 

「あなたまた危ないことしたわね?」

 

「えっ……」

 

「試練ゲートだったかしら? あなたでしょ?」

 

「な、なんでそれを……」

 

 No.10攻略の事実は公表されている。

 色々なところで話題となっているけれど攻略したのは鬼頭アカデミーの学生ということまでしか開示されていなかった。

 

 マサヨシがトモナリたちが面倒なことに巻き込まれないように配慮したからだった。

 そしてトモナリはゆかりにNo.10に挑むことを伝えていなかった。

 

 言ってしまうと心配をかけるし、下手すると止められてしまうかもしれなかったからだ。

 言ってもないし公表もされていない以上トモナリだとバレることはないはずである。

 

「これよ」

 

 リビングにあるテーブルの上に雑誌が置いてあった。

 ゆかりはあまりそうしたものを買わないので珍しいなとトモナリは思った。

 

「見なさい」

 

「げっ……」

 

 いわゆるゴシップ誌というやつでゆかりは折り目をつけてあったページを開いた。

 ページの見出しには“本当のNo.10攻略のメンバーはいかに!”と書いてある。

 

 ページの上半分には写真が載っていてそこには課外活動部の生徒たちが写っている。

 

「これって……」

 

 トモナリが写真をよく見てみる。

 写真には課外活動部の生徒だけじゃなく覚醒者協会の覚醒者たちも写っている。

 

 宿泊するホテルに入るところに入るところのようで、やや遠く顔はぼけ気味だった。

 正直トモナリもトモナリだと断定するのは難しいけれど、トモナリにはヒカリという大きな特徴がある。

 

 流石に多少ボケていてもヒカリはヒカリだと丸わかりだ。

 さらに記事を読み進めるとNo.10を攻略したのは鬼頭アカデミーの一、二年生の可能性が高いとまで書かれている。

 

 夏休みに帰るのが遅れたのは部活のためだとゆかりには説明してあるが、写真のヒカリと夏休みに入ったのに帰るのが遅れたこと、記事の内容やなんかを考えるとトモナリが関わったことは推測できてしまう。

 

「あなたが関わってるんでしょう?」

 

「……はい」

 

 情報を言わないということはするけれど嘘までついて誤魔化したりはしない。

 トモナリは素直に頷いて肯定する。

 

「…………怪我はなかったの?」

 

 怒られるかもしれない。

 そう思っていたけれどゆかりは心配そうな目をしてトモナリの身を案じた。

 

「怪我はなかったよ」

 

 ただゲートの中ではという言葉は言わない。

 外に出た時に襲われて怪我はしたけれどわざわざそんなことを言う必要はなかった。

 

「あなたが無事ならいいの。覚醒者が危ないことなのも、試練ゲートっていうものをやらなきゃいけないも分かっているわ。だから止めない。……でも無事でいて。またこうして顔を見せてほしい」

 

 ゆかりはトモナリの頬に触れて微笑んだ。

 

「分かってるよ母さん」

 

 トモナリはゆかりの手を自分の手でそっと包み込む。

 ゆかりはトモナリがやろうとしていることに一定の理解を示してくれる。

 

 きっと止めたいだろうに、やめてほしいと言いたいだろうにトモナリを信頼して見守ると決めてくれているのだ。

 

「みんなを、母さんを守るためなんだ。怪我をしないとは言えない。でも絶対に生きて帰ってくる。何がなんでも生き抜いてみせるから」

 

「まかせろ、ゆかり。僕がトモナリを守るから」

 

「……きっと二人なら大丈夫ね」

 

 自信満々のヒカリを見てゆかりは微笑みを浮かべる。

 

「またきっとこうしておかえりって帰ってくるよ」

 

「じゃあただいまって迎えるわね」

 

 帰るところがある。

 ただの場所ではなく、心から迎えてくれる存在がいる。

 

 この笑顔を今度こそ守るのだ。

 No.10もそのための第一歩に過ぎないのである。

 

 ーーー第二章完結ーーー

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